2012年7月31日火曜日

第371話 天ぷらとかき氷 (その3)

けして食い合わせがよいとはいえない天ぷらとかき氷。
ランチタイムに両方やっつるのだからこれはチャレンジである。
まっ、腹をこわすこともないやろし・・・。

やって来たのは浅草・ひさご通りの「初音茶屋」。
東京一のお墨付きを与えたいかき氷がここにある。
久々の来訪なのに店の女将は
いろいろとよく覚えていてしばし談笑。
旧知の人間同士が久しぶりに会うと、
必ずといっていいほど3月11日の話題になる。
互いのその日を語り合い、あらためて無事を確認し合い、
ともにうなずき合って、ほかの話題に移行するのが常だ。

話の間もスプーンを動かさないと氷が溶けてしまう。
「初音茶屋」のかき氷はまるで今降ったばかりの新雪だ。
氷の花びらは味わうヒマもあらばこそ、
舌の上で瞬時に消えてなくなる。
氷のいのちは短くも 楽しきことのみ多かりき
なのである。

この日お願いしたのはシンプルな氷スイ。
砂糖のシロップだけの無色透明なヤツだ。
子どもの頃、スイは大人たちのもので
子どもが頼むものではないと思っていた。
無色だと美味しそうに見えないし、
赤いイチゴと緑のメロンのほうが魅力的に映った。
ソーメンだって1本か2本混じっている、
赤いのや緑のを狙って食べたものである。

一方の友人は氷ミルクを注文した。
ミルクといっても牛乳ではなく練乳で
いわゆるコンデンスミルクのこと。
スーパーの苺売場なんかに置いてある、
仔牛のロゴの練りチューブだネ。
ん? そんなこと誰でも知っておる! ってか?
はい、ハイ。

当日のわれわれは氷スイと氷ミルクだったが
実はこの店のイチ推しは氷コーヒー。
エスプレッソ以外はほとんどコーヒーを飲まないJ.C.が
ススめるくらいだから、だまされたと思って試してもらいたい。

もう1品はヨソではめったに見掛けぬ氷しるこ。
餡子につぶ餡とこし餡があるのはご存知だろう。
おしるこの場合、
つぶ餡が田舎じるこ、こし餡は御前じるこ。
それがかき氷となると、
つぶ餡が氷あずき、こし餡は氷しることなるのです。

世の中、あずきがしるこを圧倒しているが
J.C.は断然、氷しるこ派。
味わい繊細にして見た目にも気品が漂う。
もっとも甘党じゃないから
口にするのは多くても年に一度だけどネ。

=おしまい=

「初音茶屋」
 東京都台東区浅草2-23-3
 03-3844-7658

2012年7月30日月曜日

第370話 天ぷらとかき氷 (その2)

毎日がロンドン五輪のTV観戦。
昨日は男子66kg級の準々決勝にブッタマげた。
延長後の旗判定は主審・副審の3人が雁首揃えて
韓国のチョ・ジュンホに青旗を上げたのだ。
延長に入ってから日本の海老沼匡の掛けた技が
有効ポイントとなったものの、
ジュリー(審判監視委員)の介入で取り消され、
試合続行となった経緯もあり、観客はみな、
海老沼の勝利を信じていたからサァ、大変。
会場はブーイングの嵐となった。

殊に観客席にいた篠原監督が口角泡を飛ばして猛抗議。
結局、再びジュリーが介入して旗判定のやり直し。
今度は手のひらを返したように揃って海老沼の白旗だとヨ。
前代未聞の不祥事、と言いたいところながら
よみがえるのは12年前のシドニーだ。
例の100kg超級決勝における大誤審事件である。
歴史は繰り返す、あのときも当事者は篠原だった。
思えばもしも彼が今回みたいに猛抗議していたら
ヒョッとして・・・んなことあるわけないか。

しっかし、あのジュリーってのはうっとうしいねェ。
何のために主審が畳に上がっているのか判らなくなる。
ジュリーのほうが主審より権威があるってのも何だかなァ。
まっ、おかげでシドニーみたいな誤審がなくなるんなら
ジュリー制度の導入に反対はできないけどネ。
戦いすんで何の因果か、
海老沼とチョは銅メダルの表彰台に仲良く並ぶことになる。

立ち上がりからしばらくモタモタしていた、
男子サッカーのモロッコ戦は結果オーライでめでたし。
あんな試合運びでもかなりのシュートチャンスを作るんだから
それなりに強いチームになったのだろう。

てなこって五輪ネタはここまでにして先週のつづき。
日本とスペインが戦った木曜日。
その日、天ぷらからかき氷に移動する前に
こなすべき用事がまだ入谷にあった。

「天ぷら大塚」を訪れる際、交差点を右折するところ、
左折したせいで1軒の精肉店に遭遇する。
店名は「坂原商店」。
店頭に並べられた弁当や惣菜が
いかにも昭和の肉屋風で美味しそう。

深夜にはサッカーもあることだし、
自宅でゆっくり晩酌しながら試合開始を待つ気になり、
酒の肴を調達する必要が生じていた。
いろいろ購入したが報告はまた近々。

さて、天ぷらのあとのかき氷。
とここまで書いたものの、
柔道の珍事件のせいで紙面に余裕がなくなった。
明日あらためて仕切り直すこととします。

=つづく=

2012年7月27日金曜日

第369話 天ぷらとかき氷 (その1)


台風並みの暴風雨が来襲したりもして
今年の梅雨はとんでもない梅雨だった。
そんなバカ梅雨が明け、本格的な夏の到来だ。
夏大好き人間のJ.C.,は夏バテとはまったく無縁。
炎天下に傘も差さず(男は差さないか)、帽子もかぶらず、
ひたすら歩いてさんざん汗かいて、一人悦に入っている。

今年最高の35℃を記録した昨日も
北からの来訪者を案内して午前中から入谷へ。
ところが行く途中で右折すべき角を
左折してしまい、思わぬ回り道を強いられた。
可愛そうにツレは額に汗して青息吐息。
さもありなん、東京の夏は北国よりずっとキビしい。

この稿を書いたのは昨日の夕方。
入谷・浅草のプチツアーから帰宅後、
ぬる目のシャワーで汗を流して書き始めた。
今は亡き松尾和子の2枚組CDを聴きながらネ。
掛かっているのは「イルカに乗った少年」で次が「シャレード」。
Disc1はアメリカン・スタンダード特集なのだ。

さて、到着したのは「天ぷら大塚」。
コンパクトにして清潔な店内が好もしい。
天ぷらランチ(940円)とそのかき揚げ付き(1260円)をお願い。
かき揚げは二人で分け合うつもりだ。

海老・小メゴチ・穴子切り身・かぼちゃ・オクラ・稚鮎2尾・
海老アゲイン・小柱かき揚げの順で供された。
しじみ味噌椀・新香・ごはん・デザートが付く。
この値段でこの内容、しかも揚げ立てには脱帽。
あえてアラ探しをすれば、可愛らしいメゴチ&穴子と、
かき揚げが少々フリッター風だったこと。
特筆すべきはごはんの美味しさで、珍しくお替わりしたくらい。

Disc1が終了し、Disc2にチェンジ。
こちらは16曲すべてがフランク永井とのデュエットだ。
フランク&和子、あの世でも仲良くしてるかな?
「東京ナイトクラブ」でスタートした。

「天ぷら大塚」は正午を過ぎるとにわかに立て込んで
順番待ちの客が壁際に並び始めた。
長居は無用にして店にも迷惑、速やかに席を立つ。
このあとは来訪者のリクエストに従い、
東京一のかき氷を味わいにゆく。
おっと、その前に大事なミッションがあったっけ・・・。

ここで =つづく= としたのだけれど、
サムライブルーがプチ無敵艦隊を撃破したため加筆。
ただ今、本日の午前3時である。
フランク永井の「東京午前三時」がBGMにふさわしいが
聴いているのは EGO WRAPPIN’の「色彩のブルース」。
真夜中にはピッタリだわ、この曲は。

日本VSスペインはスピード感あふれるナイスゲームだった。
後半50~60分の日本の攻撃は
スペインのディフェンスラインをズタズタにしたものの、
シュートは枠内に飛ばさなきゃ入ることはない。
75分あたりから足が止まるのではと危惧したものの、
それは杞憂に終わって何より。
もちろん11人対10人の数的有利に加え、
15℃のスコティッシュ・ウェザーにも後押しされている。
とは言え、世界中にそれなりの衝撃を与えたことも事実。
終了と同時に湧き起こった観客の拍手喝采が
如実にそれを物語っている。

どちらかがトーナメントで日本と当たると予想される、
ブラジルVSエジプトまであと数十分。
これじゃまったく寝られやしないや。

=つづく=

2012年7月26日木曜日

第368話 1960年3月20日 (その2)

浅草六区の新世界に入館するわれら親子。
と・・・このときであった。
買ったばかりのハーモニカがないことに気がついたのは!
ハーモニカなんかスラれるわけないから置き忘れに違いない。
さすれば鮨を食べた食堂だろう。
あわてて舞い戻ると、店のオバちゃんが預かってくれていた。
やれやれ、である。

そうして入った新世界は
瓢箪池の埋立て地に建った奇妙奇天烈なビルヂング。
1959年から’74年までの短いイノチだったが
中には大食堂や大宴会場、はたまた温泉大浴場もあった。
何でも”大”なのである。
おまけに大キャバレーまであったのだ。

大宴会場の一角で民謡やら踊りやらを見聞きした記憶がある。
それから確か地下だったかな、大浴場でのんびり入浴。
湯上りの休憩室で観たのが栃若対決という次第。
このタイミングでなければ日付の特定は不可能だったろう。

勝敗の結果は先述した通りだが
翌日の新聞に載った勝者・若乃花の談話が面白いので
紹介してみたい。

昨日はリラックスしようと、映画館に入ったんだ。
そしたら前のほうの席でチョンマゲ姿が見える。
よく見たら栃関だった。
やっぱり同じ心境なんだなと・・・。
映画が終わったらすぐに出たよ。

ねっ? 面白いでしょ? こんなことってあるんですなァ。

新世界をあとにした親子が次に訪れたのは映画館。
定かではないが、おそらく電気館ではなかったかな?
観たのは3本立てだ。
K・ダクラスの「バイキング」とJ・ウェインの「赤い河」は
ハッキリ覚えており、最近ともに再見した。
入館した際に終わりかかっていたもう1本が思い出せない。
ジャングルの中をヒョウが徘徊したりして
ドキュメンタリーの動物映画だったように思う。

居眠りもせずに観た映画がハネると、空腹感が襲ってきた。
親父に連れられて行ったのは「菊水」なる焼きとん屋で
場所は当時あった仁丹塔の裏手あたり。
お好み焼き「染太郎」の70メートルほど先になる。

カウンターに並んで食べるシロとレバーの旨かったこと。
ここでもビールのおすそ分け(なんてモンじゃなかった)があり、
さすがに歌は出なかったものの、幼きJ.C.、もうごキゲンである。
掘っ立て小屋みたいだった「菊水」はその後、
大きなビルになって屋号も「菊水道場」を名乗ったが
とっくの昔に消えた。
今は菊水通りとしてストリートにその名を留めている。

のんきなごキゲン親子は千鳥足で帰路に着く。
田原町が最寄りなのに
始発駅から座って帰ろうと思ったものか浅草に向かう。
雷門の前まで来て再びハタと気がついた。
ハーモニカがない! 
子が子なら親も親で、二人ともバッカじゃねェのっ!

かくして8歳と54歳が夜の街を走った、疾った。
女ねずみ小僧も真っ青だろうヨ。
浅草に土地カンのある人ならお判りだろうが
距離がけっこうあるんだな、これがまた。
ブツはカウンターの下で無事だったけれど、
J.C.が常日頃、まず荷物を持たないのは
このときのトラウマのせいである。

2012年7月25日水曜日

第367話 1960年3月20日 (その1)


出し抜けに年月日のサブタイトルで失礼サンにござんす。

それよりも昨日のイチロー電撃移籍にはビックリ。
以前から、なぜマリナーズに居続けるのか?
このままシアトルに骨を埋めてしまうのだろうか?
そんな思いを引きずっていただけに
グッドニュースに違いはないけれど、
惜しむらくは遅きに失した感否めず。
しかし、過去を振り返っていても仕方ない。
今はただ、Wシリーズ制覇にまい進してほしい。

と、TVで観戦しながらここまで書いたら
ヤンキースでの初打席でヒットを打ったヨ。
あらら、今度は盗塁を決めちゃったヨ。
生半可なこっちゃ、できない芸当だぜこりゃ。

さて、今をさかのぼること52年、
1960年3月20日、日曜日のことである。
半世紀も昔なのにこの日のことは実によく覚えている。
日付の特定までできるのは一つのスポーツイベントのおかげだ。
そう、昨日のブログの幕切れでもふれたが
栃錦VS若乃花の楽日全勝対決であった。
熱戦の末、若乃花が寄り切って全勝優勝を遂げる。

しばらく思い出話におつき合い願いたい。
当時J.C.は小学2年生で、3年生になる直前だった。
街には「黄色いさくらんぼ」と「黒い花びら」が流れていた。
子どものくせによく口ずさんだからマセたガキだったんだねェ。

その日は父親と二人で出掛け、母と弟は留守番。
向かったのは銀座のヤマハである。
3年生から音楽の授業で使うハーモニカを買うためだ
購入後、銀座をブラブラしたあと、地下鉄に乗った。
行き先は父親が好きだった浅草。
どうやら息子の浅草好きは親譲りらしい。

昼めしは花やしき近くの和食堂。
食べたのは一桶のにぎり鮨だ。
うれしかったのは父親が注いでくれたコップ1杯のビール。
めったにありつけないビールはサイダーやプラッシー、
ましてや渡辺のジュースの素よりずっとうれしいものだった。

まだ陽は高いところにある。
奥山、本堂、仲見世を経て六区にやって来た。
映画がTVにじゅうりんされる前だから
六区興行街の繁華なこと、とても現在の比ではない。
何を思ったのか、ひょっこり飛び込んだのが今はなき新世界だ。

=つづく=

2012年7月24日火曜日

第366話 日馬に振り回された場所

一作日の日曜日は夕方早くから
TVの前で大相撲名古屋場所の観戦。
29年ぶりの千秋楽全勝同士の対戦、
しかも史上初の横綱・大関による相星対決は
放映するNHKに3日も前からあおられていたものだ。

白鵬、日馬富士、両者ともに楽日まで
負けるハズがないというNHKの強気の予想は
見事に的中したことになる。
いや、ご立派。
ただ、横綱VS大関による史上初の全勝対決ってのは
あんまり意味がないように思う。
ずっと続いている一人横綱という特殊な状況が
たまたま生み出した珍現象だからネ。

千秋楽・結びの一番はご覧の通り、日馬富士の圧勝。
振り返ると、この勝敗の伏線は13日目にあった。
デカい魁聖を一気のノド輪で押し倒した日馬富士。
あの強さ・早さには瞠目した。
全盛時の千代の富士、朝青龍にもあんな豪快な勝ち方はない。
わが大相撲観戦史に大きな足跡を残す一番となった。

一方の白鵬は魁聖よりパワーのある把瑠都と
立会いからガップリ四つの長丁場。
浪費とは言わぬが、かなりのエネルギーを消耗する。
最後は把瑠都の力を利用しての投げが決まったものの、
あの相撲では疲れが残っちゃうよ。

従って決戦の大方の予想も過去の成績にとらわれず、
日馬富士有利の声が大きかった。
今場所の絶好調ぶりを度外視しても
白鵬は比較的相性のよい相手でもあるしネ。

今場所の日馬富士は一皮も二皮もむけて
大きな相撲を取れるようになった。
ケガさえなければ来場所で横綱昇進をスンナリ決めるだろう。
殊に印象に残ったのは左上手まわしを深めに取って
振り回し気味に相手を攻め立てる戦法。
把瑠都、琴欧州、白鵬、すべてコレで圧倒した。
スタイルは違うが元横綱の輪島にあやかって
”ニュー黄金の左”の誕生である。

まわしの深いところを取って振り回すのだから
浅めに取って送り出すように投げる出し投げとは異なるが
あの投げ技には新しい決まり手を与えてもいいのではないか。
まわしを振り回して投げるので”回し投げ”でいかがだろう。
いや、体操の技みたいに編み出した選手の名前をとって
”日馬投げ”が理想だけれど、これは協会が許さんだろうヨ。
取ったまわしの位置の深い順に
上手回し投げ、上手投げ、上手出し投げとすれば、
実際に取組みを観ていない者にも判りやすいハズだ。

ところで、千秋楽には思わぬ視聴者プレゼントがあった。
過去の楽日全勝対決をビデオで見せてくれたことである。
思わず身を乗り出したのは昭和35年春場所(大阪場所)、
栃錦VS若乃花(初代)の一番であった。
ちょうどよい機会なのでこの詳細はまた明日―。

2012年7月23日月曜日

第365話 水曜日の楽しみ (その2)

「ご存知 女ねずみ小僧」のテーマ曲、
「真夜中の子守唄」はヒデとロザンナのナンバー中、
「愛の奇跡」の次に聴き込んだ曲といえよう。

今、手元に1本のカセットテープがある。
演歌やら歌謡曲やらJポップやらがごちゃ混ぜで
すべてレコードのシングル盤やLPから自分でダビングしたもの。
いわばお手製テープなのだ。
制作したのは34年前の1978年。
サザンオールスターズがデビューした年のことだ。
’77~78年のヒット曲が中心だが
もっと古いナンバーも混じって全17曲が収められている。

ヒマに任せて紹介してみましょう。
エッ? 
オメエのマスターベーション・テープなんか興味ねェ! 
ってか?
まァ、まァ、そうおっしゃらずに。
一応、当ブログの主筆はJ.C.なんですから
ここはしばしのガマンを要請いたします。

=A面=
①カスマプゲ ②帰らざる日々 ③そんな女のひとりごと
④時には娼婦のように ⑤しあわせ芝居 ⑥裏切りの街角
⑦勝手にしやがれ ⑧カナダからの手紙
=B面=
①この空を飛べたら ②飛んでイスタンブール 
③真夜中の子守唄 ④迷い道 ⑤赤いハンカチ
⑥ディスコ・レディ ⑦よろしく哀愁 ⑧勝手にシンドバッド
⑨たそがれ・マイ・ラブ

あまりにも懐かしいのでコレを聴きながら書いている。
A①の「カスマプゲ」ってのがスゴいや、笑わせる。
マイ・フェイヴァリットはA⑤、A⑥、B⑤、B⑧の4曲。

そんなことより、ところでいったい何が水曜日の楽しみなんだ! 
ってか?
そうでした、そうでした。
あれは2週間前の水曜日のこと。
ひかりTVをザッピングしていたら
偶然にもホームドラマ・チャンネルHDにおいて
「ご存知 女ねずみ小僧」にブチ当たったのであります。

実はJ.C.、主題歌は知っているのに
TVドラマはただの一度も観たことがなかったんですわ。
このところ小川真由美にハマッてしまって
彼女が出演している映画を何本も取り寄せては観ている身、
これには小躍りしやしたネ。
しかも朝・昼・晩と日に三度も放映してくれるから
見逃しはまずありやせん。
ただどうにも残念なのは31回シリーズなのに
出会ったときはすでに第26回にもなっていたこと。

明後日の水曜は朝7時から第27回の再放送。
そして11時と20時に第28回が放映される。
これが本当に楽しみ、楽しみ。
明るいうちは常磐津のお師匠さん、
街が眠ると泣く子も黙る女ねずみ小僧。
いやあ、実に素敵な女優だったんですなァ。
シリーズ最初の「浮世絵 女ねずみ小僧」から
もいちど再放送してくれないものだろうか。

2012年7月20日金曜日

第364話 水曜日の楽しみ (その1)

  ♪ 街が眠る頃 夜の虹が出る
   名もない人の希望(のぞみ)が 
   かける夢の虹が
   おいで鎖りをはずし しなやかな獣になり
   奪い取られた何かを 取り戻しに行こう
   夜はあたたかい 夜は美しい
   愛し合うだけ 他に何がある
   もう一人のお前を もうひとつの人生を
   誰も知らない                  ♪
              (作詞:山川啓介)

さあてお立会い、この曲をご存知の方はおられましょうか?
エッ? ヒントを出せ! ってか?
いいでしょう、いいでしょう、お出ししましょう。

ヒントその1: 歌っているのはヒデとロザンナ
ヒントその2: 人気TV時代劇のテーマソング
ヒントその3: 主役はご存じ小川真由美

まあ、若い人には難しいかもしれやせん。
何せ、世に出たのが1977年ですからネ。
でも、そこそこお歳を召した方はもうお判りでしょう。
そう、「ご存知 女ねずみ小僧」の主題歌、
「真夜中の子守唄」であります。

そもそもこの”女ねずみ小僧シリーズ”は
1971年の「浮世絵 女ねずみ小僧」が始まり。
テーマソングのタイトルは「急げ風のように」だった。
メロディーは同じでも詩が異なっており、
歌っているのも平田隆夫とセルスターズだ。
あの「ハチのムサシは死んだのさ」のネ。

歌詞のアタマだけ紹介すると

 ♪ 夜はわれらのもの 夜はみんなのもの
  見せかけだけの言葉は 心は通らない ♪

ヘンに理屈っぽいワリには稚拙。
最後まで紹介したくないほどに。

総合的に比較したら「真夜中の子守唄」の圧勝。
まったくもって異次元の世界である。
歌唱だって断然、ヒデとロザンナ。
ロザンナのハスキーでありながら
鈴を転がすような声質は日本人にはないものだ。
つくづくヒデの早逝が悔やまれる。
今彼が生きていてデュオが健在だったら
どのような歌声で聴く者に迫り来るのであろうか。
オマケに編曲が馬飼野康二だものねェ。
これじゃハナから勝負にゃなりやせんぜ。

=つづく=

2012年7月19日木曜日

第363話 偽りの生ジョッキ

ある夕暮れ、かつての色街・白山と
門前町・巣鴨の中間に位置する千石に赴いた。
所用を済ませてハタと思い悩む。
もちろん直後の身の振り方について。
いや、身の振り方など決まりきっている。
日課の晩酌のほかに何があろう。
問題はどこでその行為に及ぶかだ。

千石にはこれといって惹かれる店がない。
近場のベストタウンは大塚なれど、
しょっちゅう飲みに出掛けてるしなァ。
ここはひとつお婆ちゃんの原宿にでも行ってみようか。
てなこって巣鴨を目指す
北北西に進路をとったのだ。

老舗の居酒屋「千成」が浮かんだものの、
イマイチその気になれなかった。
結局、存在を認知していても
未訪だった「ながしま」に入った。
本来、ここはうなぎ屋だが専門店ではない。
言わば、うなぎ居酒屋といった性格を持つ。

例によって最初はビール。
スーパードライの生が400mlのジョッキで400円とある。
はっきり400mlと明記されているのが好もしい。
そんならソレにするかと注文したら
ほどなくやって来たソレはヤケにちっちゃい。
こりゃどう見ても400ccは入っちゃいないだろう。
まっ、いいか。

うなぎの蒲焼きはハシゴ派には向かないし、
先立つものに多大な悪影響を及ぼす。
よってうなぎの肝焼きを2本所望した。
1本210円で1本から注文可能というのがエラい。
負け惜しみでなくJ.C.は蒲焼きより肝焼きが好きだからネ。

生ビールと肝焼きはバッチリだった。
トータル820円でシアワセを呼び込めるんだから
婆ちゃんだけでなく何人(なんぴと)にも巣鴨の町はよい町だ。
気をよくして肝わさを追加する。
うなぎは身肉も肝も生では食べられない。
当然、肝わさの肝はゆがいてある。
3粒350円は少量ながら安くて旨いのもまた事実であった。

さて、生ビールのお替わりをするときに
ふと思ったのはジョッキの容量のことであった。
疑問を抱いたら確認すべきであろう。
殊にわれわれ諜報部員(?)はウラを取るべきであろう。
よってスーパードライの大瓶(650円)を頼み、
可愛いオネエさんの運んできたコップをあえて押し返し、
飲み干した生用ののジョッキに注いで計ってみた。

結果、ジョッキの容量は330mlと判明。
明記した容量の2割近くも少ないじゃないの。
店主の判断かメーカーの差し金かは存ぜぬが
まったくもって余計なことをしたものである。
黙っていればどうでもよいことも
いざ宣言しちまったら最後、
責任という名の呪縛がついて回ることになるんだヨ。

「ながしま」
 東京都豊島区巣鴨3-28-7
 03-3918-3255

2012年7月18日水曜日

第362話 赤羽発・十条経由・駒込行き (その3)

東十条から歩き始めて王子を抜け、
チンチン電車の荒川線沿いに
栄町・梶原の駅を過ぎた。
都民といえどもこの町々を歩いた人は多くないハズ。
いや、町名を知る人ですら少なかろう。

梶原から軌道を修正して上中里へ。
ここまで来れば、駒込は目と鼻の先である。
闇に沈む旧古河庭園を右手に見ながら
霜降橋の交差点に到達した。

訪れたのは「炒め処 寅蔵」なる小さな中華料理店。
およそ1年ぶりのことになる。
幸いカウンターに席を取ることができた。
中国人の店主が料理、
日本人の奥さんが接客を担当する二人三脚だ。

そこそこの距離を踏破したから
再びノドが渇いてビールが旨いのなんのっ。
M鷹サンの要望に従い、まず焼き餃子を注文。
ついでにすぐ出てくる腐乳も頼んだ。
腐乳は明の時代に沖縄へ伝わり、
豆腐餻(よう)の原形となった発酵食品。

紹興酒と迷った末、
チャイナウォッカの異名を取る白酒の二鍋頭を選ぶ。
ストレートで飲って、あやうくむせそうになった。
度数を確かめたら実に56度だもんネ。
こ~りゃたまらんと、あわてて水と氷をお願い。
酒類のリストには
"北京市民の定番 高粱(コーリャン)から作る蒸留酒”
と明記されている。
おやまあ、そりゃそうだろヨ、コーリャンたまらん。

ハシゴして来たとはいえ、
餃子と腐乳だけではお店に悪い気がする。
何かもう一品ということで、選んだのは木須肉。
豚肉・玉子・青菜・キクラゲの炒め
本場・山東ではムースーロー、
アメリカではムーシュー・ポークと呼ばれる。
本場には行ったことがないが
ニューヨークではランチタイムにさんざっぱら食べた。
当地では北京ダックのように
薄餅(バオビン)に包んで食するのだが
サンドイッチの好きなニューヨーカーに受けもして
みんなでよく分け合ったものである。
おそらく山東でもそうして食べるのであろう。

そういえばこの夜、なぜか名物の鮮魚の清蒸がなかった。
広東料理の代表格、清蒸は大好物。
極め付きのハタは出てこないが
鯛であったり、カレイであったり、とにかくオススメである。

かくして城北ツアーは終焉を迎え、
星のない夜を二つの影はトボトボと・・・。

「炒め処 寅蔵」
 東京都北区西ヶ原1-1-1
 03-3918-2385

2012年7月17日火曜日

第361話 赤羽発・十条経由・駒込行き (その2)

やって来ました東十条の町。
赤羽は街だがここは町。
違いはどこにあるんだ? と問われても
これが違いだ! と明確に指摘はできない。
ただ、個人的に漠然と区別しているのは
そのマチの持つ、サイズとパワーの差かな?
実際に東京を例にとれば、
銀座・新宿・渋谷・池袋・上野・浅草・品川等は街で
日暮里・根津・大塚・広尾・白金・月島・森下等は町。
ン? 大阪ならどうだ? ときましたか。
いえ、上方のことは存じません。

てなこって東十条。
焼きとんの「埼玉屋」がもっとも有名な店だが
ここへは軽く立ち寄るというわけにいかない。
タップリ飲んでガッツリ食わないとオヤジの機嫌が悪くなる。
要するにあちこちハシゴなかせずに
寄るのはウチだけにしろよ! という無言の圧力。
ヨソに金を落とすことなく、すべてここに置いていけ!
という、意地悪な見方をすれば
業突張りな経営方針なんだよなァ。
居酒屋・カラオケ・ラーメン店、みんな揃えて
カモを町に逃がさない、行楽地の大ホテルみたいなもんだ。

「埼玉屋」より気軽に入れる「新潟屋」もある。
思い描いていた候補店の一つだった。
ところが店先にはすでに数人の客がたむろ。
それならと向かったのが日本そばの「和久」。
未踏ながら評判はちゃんと聞き及んでおり、
悪いものではなかった。

ちょいと歩けばすぐにノドが渇き、
ビールの旨さを倍加させる。
突き出しにバイ貝の煮たのと梅酒の梅がお出まし。
小ジャレた組合せ
つまみはそば味噌と板わさだ。
板わさの盛りつけが美しく、おろし立ての本わさもたっぷり。
芋がらがこれまたシャレでいる
さてさて、そば屋に来て、そばを食わにゃあハナシにならない。
しばらく品書きとにらめっこした末に
M鷹サンはかき揚げせいろ、J.C.は二色そばを注文。
御前と田舎の二色盛り
意外なことにこの店の魅力は田舎であった。
イタリアンのパスタのごとく、噛み締め感が快適だ。
田舎はヒドいのに遭遇すると、
どうにもならないものだがコイツはいいや。

だがネ、問題はわさびだ。
板わさのときには100%モノホンだったのに
そばには混ぜを添えてきた。
鮨屋ですらつまみは本わさ、にぎりは混ぜわさなんて
セコいマネをする店があるくらいだから糾弾はしないが
画龍点睛を欠くとはこのことだ。

今度は東十条をあとにして
一路、駒込を目指す二人でありました。

「和久」
 東京都北区東十条1-18-1
 03-3912-0883

2012年7月16日月曜日

第360話 赤羽発・十条経由・駒込行き (その1)

6月好日。
同世代ののみとも・M鷹サンと
お天道様の高いうちから酒を酌み交わすこととなった。
天をも怖れぬ所業である。

待合わせたのはJR赤羽駅。
昼下がりに本郷にいたJ.C.は
東京メトロ南北線で一本の赤羽岩淵へ赴く。
時間の余裕があれば荒川から分流する、
隅田川の始まり近辺を散策するところなれど、
あいにくその余裕がない。
まっすぐ赤羽駅に向かう。

落ち合っての1軒目は街でもっとも有名な「まるます家」。
朝の9時から飲める奇特な店で
いつ訪れてもほとんど満席状態。
鰻と鯉を主力に据えた川魚料理が自慢だ。

さっそくの乾杯はサッポロの生大。
つまみはちょい焼きたら子に小肌酢。
たら子は旨し。
ところが壁の貼り紙に”佐賀産・新子”とあった小肌がイケない。
これには笑い話があり、貼り紙を見たJ.C.が店のオバちゃんに
「新子あるの?」―こう訊ねたら
「あるよ、茄子と胡瓜!」―こんな返事が返ってきた。
「ハイ~ッ? 新香じゃないよ、新子だよ!」
そしてコヤツが新子どころか小肌を超え、
ナカズミに近いサイズでガックシ。

「まるます家」が元祖の焼酎モヒートに切り替える。
一くしのレモンを浮かべた焼酎のロックと
ミント&カボスを盛った皿がセパレートで来た。
予想以上のの相性に目からウロコがポロリ。

泉州・岸和田の水茄子となまず唐揚げを追加する。
ともに旨し。
とりわけこの時期の水茄子はまことにけっこう。
秋茄子同様、嫁に食わせてはならない。

向かいの薄暗いアーケードにある「丸健水産」、
通称「健ちゃんおでん」に移動。
驚いたことにこのみすぼらしいアーケードは
シルクロードというんだそうだ。
「健ちゃん」はおでんと缶ビールとカップ酒だけの立ち飲み店。
ここのおでんはサラッとしているわりに滋味深いものがあり、
似たタイプで王子にある「平澤かまぼこ店」より好きだ。

つみれ・練りすじ・生揚げ・シューマイ巻きをみつくろう。
ベストは生揚げ。
お替りしたいくらいのものだが、まだまだ序の口、
東十条・駒込と流れる腹積もりにつき、あきらめた。
腹ごなしと酔いざましを兼ね、歩いて行くことにする。
隣り町の東十条を目指し、赤羽をあとにした。

「まるます家」
 東京都北区赤羽1-17-7
 03-3901-1405

「丸健水産」
 東京都北区赤羽1-22-8
 03-3901-6676

2012年7月13日金曜日

第359話 鮨屋でしのぶ安二郎

銀座・京橋・日本橋、
東京を代表する老舗がずらりと並ぶこのエリアで
イチ推しのランチとなれば、
京橋「明治屋」そばにある「京すし」の鉄火丼。
週刊「FRIDAY」のマイ・コラムを
”連読”してくれている方なら
深紅に映えるどんぶりを覚えておられよう。

コラムでは紙面が足りず、
筆が及ばなかったことどもをあらためて紹介してみたい。
これはアシスタントのH.S子嬢の取材によるところが大きい。
「京すし」は明治10年代後半の創業で
戦前は「魚岩」という仕出し屋だった。
現・親方は四代目。
古くからいる二番手の職人さんと
将来、五代目になる次男坊が親方を支える。
長男はヨソで修業しているが実家に戻る予定はないそうだ。

四代目は嘆く。
以前、たまたま目にしたネットの口コミサイトで
「京すし」は練りチューブのわさびを使っていると
根も葉もないデマを書かれ悲しい思いをさせられた。
以来、ケースの目に付く場所に生わさびを置くようにした。

この件についてはJ.C.も証言台に立とう。
何度も訪れているが
練りチューブや粉わさびを目にしたことはただの一度もない。
本わさびにこだわり続ける鮨職人は
貞操観念を美意識として貫く淑女に等しいのだ。

仕事で地方から地方へゆく友人が
東京を通過するときに拿捕した。
東京駅に近い「京すし」が何かと便利で赴いた。
夜訪れるのは数年ぶりのこと、親方の正面に着席する。

落ち着いたたたずまいの店内が素敵だ。
古く良かりし東京の空気が流れている。
小津安二郎の世界に踏み入ったかのごとくである。
もっとも小津は鮨にせよ、刺身にせよ、
生モノをあまり好まなかったようで
彼の作品にうなぎ屋は出てきても
鮨屋はなかったように記憶している。

ビールは「明治屋」との長いつき合いもあってキリン。
一番搾りの中瓶であった。
突き出しにあわびの肝煮が出た。
墨いかと小肌を少しずつ切ってもらう。
自分では頼まぬアジのたたきだが
友が注文したヤツをちょいとつまんだ。
これはこれでよいけれど、
やはりアジ・イワシ・サンマの類は酢で〆たほうが好みだな。
もう1品、〆さばをいただき、にぎりへ。

"蒸し”がなかったので”生”のあわびで始め、
北寄貝・ゆで車海老・赤身づけ・中とろづけと継いで
最後に穴子を持ってきた。
当夜は白身の不在が残念なれど、
この空間に身を置けただけでもシアワセな一夜となった。

「京すし」
 東京都中央区京橋2-2-2
 03-3281-5575

2012年7月12日木曜日

第358話 ふぐの白子と天然うなぎ (その2)

墨田区・玉の井の「うを徳」に来ている。
昨日・今日のサブタイトルは「ふぐの白子と天然うなぎ」。
両方いただいちまったが、この稿はまだ終わらない。

うなぎがとっつかまった松江の宍道湖は何度か訪れた。
あの湖のほとりで陽射しを浴びたことはほとんどなく、
いつも小雨が降っていた。

♪ 静かな雨 並木の雨
  あなたを待つ 胸に降る
  流れる唄 なつかし唄
  夢をささやく あのメロディ ♪

コンチネンタル・タンゴとして生まれ、
のちにシャンソンにもなった「小雨降る径」よりも

♪ 雨はふるふる 城ヶ島の磯に 
  利休鼠の 雨がふる 
  雨は真珠か 夜明けの霧か 
  それともわたしの 忍び泣き ♪

北原白秋の「城ヶ島の雨」のほうがしっくりくる山陰の雨。
湖はいつもこぬか雨に霞んでいた。

うなぎの前のまながつお西京焼きあたりから
酒は芋焼酎のロックに切り替わっている。
その名も「うを徳」であった。

おもむろににぎりに移行する。
皮切りは大好物のキスだ。
江戸前随一の繊細さを誇るキス
にぎりのキスもくちづけのキスもやさしさが大切。

二番手はこれも必ず注文する小肌。
小肌はひかりモノの代表格
何たって光り輝くかすり模様が命だ。

三番手がさば。
さばも好きな部類だが酢との相性よろしきこのサカナは
江戸前よりも上方寿司に適していると思う。

四番手・五番手は貝の王者・赤貝だ。
べっこう飴を思わせる照り輝き
ヒモの柱はまさしく大黒柱

六番手はまぐろ赤身のヅケ。
キメこまやかな身肌が特徴

赤身はむろん、中とろも大とろもヅケのほうが好きだ。

七番手が茹で立ての車海老。
かき揚げは桜だが、にぎりは車だネ。
ナマで食うなら北海縞海老に如くはなし。

かんぴょう巻きの代わりに
どんこ椎茸を何日も掛けて煮〆たのをつまみに
お茶代わりのビールを飲んで締めとした。

この稿は金子由香利、菅原洋一&冴木杏奈、
寺内タケシとブルージーンズで「小雨降る径」。
藤山一郎、倍賞千恵子、チェット・アトキンスで
「城ヶ島の雨」をそれぞれ聴きながら書きました。

大好きな江利チエミの「城ヶ島の雨」が
youtubeで聴けなくなって哀しい。
山野楽器で探してみようか・・・。

「うを徳」
 東京都墨田区東向島4-24-26
 03-3613-1793

2012年7月11日水曜日

第357話 ふぐの白子と天然うなぎ (その1)

日本が暗黒の時代に突き進み、
帝国陸軍によるクーデター、
二・二六事件が勃発した1936年。
浮世離れした文人・永井荷風は
足繁く陋巷・玉の井に通っていた。
その結果、生み出されたのが「濹東綺譚」である。

かつての東武伊勢崎線・玉の井駅は現在、
東向島などと味も素っ気もない駅名を
おっかぶされてはいるが
わが愛しの陋巷であることに変わりはない。
いや、陋巷では住人に失礼だろう。
哀愁がそこはかとなく漂い、趣きにあふれた町だもの。

荷風もたびたび訪れた向島百花園のすぐそばに
界隈随一の鮨店「うを徳」がある。
この夜が二度目の訪問だった。
靴を脱いで掘りごたつ式のつけ台に着く。
京都は先斗町辺りのお茶屋さんに似たスタイルだ。

冷たいビールでのどの渇きを鎮め、
さっそく開始した箸の上げ下げである。
こちらが何も言わないうちに
親方が指した初手は大胆にもふぐの白子だった。
ふぐはふぐでも胡麻ふぐの白子焼き

虎と胡麻では刺身にしたら比べるべくもないが
白子の場合は大差ない。
それでいて値段のほうは雲泥というから
胡麻の白子を食べにゃあ、損、ソン。

お次は煽りいか刺し。
墨いかの季節が終わり、その赤ちゃんの新いかが
出回る晩夏までは煽りいかが天下を取ることとなる。

珍しや、大名竹が焼き上がった。
台湾原産の唐竹のことで産地は主に九州。
生食でもイケる繊細な味覚

本場・駿河湾産の桜海老はかき揚げで来た。
つぶらな瞳に恋しちゃう

実はJ.C.、天ぷらなら才巻きより桜が好み。
桜海老と新玉ねぎのかき揚げは全天種中、
マイ・ベストワンと言い切ってよい。

うなぎ中骨の素揚げとみょうがの甘酢漬けをはさみ、
まながつおの西京焼きが運ばれた。

上方で西京焼きといったら第一にコレ

ニューヨークやパリでも珍重されるまながつおは
ポンパノ、あるいはポンフリットなんぞと呼ばれている。

にぎりに移行する直前、最後のつまみは天然うなぎ。
宍道湖産の傑物がこれである。
                                               久しぶりだぜ天然野郎
先刻の中骨もコヤツのものだ。
わがままを言って白焼きでも蒲焼きでもない、
醤油つけ焼きにしてもらった。
フフッ、不味いわけなどありゃしません。

=つづく=

2012年7月10日火曜日

第356話 レバ刺しとフォワグラ (その2)

カリフォルニア州のフォワグラ禁止令に先がけて
わが日本では今月からレバ刺しが食べられなくなった。
刺身というか、獣禽類の肝臓の生食が不可となったのだ。
幸いなことにJ.C.はフォワグラ同様、
生レバにもまったく執着しない。

焼肉店にはすすんで行かないし、
生(ナマ)を提供する焼きとん屋でも
まず注文することはない。
たまに訪れる焼肉店でレバ刺しを頼むことはあるが
それだって生で食べずに軽くあぶっている。
レバーはチョイ焼きに限るのだ。
そして焼肉用のレバーよりも
刺身用のレバーを焼いたほうが断然旨いもんネ。

だが、世のレバ刺し人気は根強いものがあるらしい。
6月末には駆け込み需要のせいで
焼肉店がにわか繁盛したと聞き及んでいる。
なんでんかんでん禁じられると欲望がうずくものねェ。
禁断の果実は魅力的だもの。

そういえば友人のN濱クンからこんなメールが舞い込んだ。

こないだXXXにレバ刺しを食べに行きました。
最後のレバ刺しかと感慨深く食っていたんだけど、
お店の人曰く、
「今後も同様のレバーを提供する。
  生食用として提供はしない。
  でも、どう食べるかはお客さん次第」だと。
なので、7月以降も食べられることがわかって
ほっとしましたとさ。

以上、全文を紹介。
ふ~ん、食おうと思えば食えるんだ。
まっ、店によっては出さないところもあるのだろうけど・・・。
ちなみにXXXは台東区のとある町。
つまびらかにするとお店に迷惑がかかるやもしれず、
伏せておくことにした。

刺身は別としてレバーはかなりの好物ではある。
焼きとん・焼き鳥のレバーは必注科目だし、
うなぎ屋でも蒲焼きよりも肝焼きが好きなくらい。

今は昔、浅草の「弁天山美家古寿司」では
平目の肝を湯がいたり、煮付けたヤツを出してくれた。
まだ四代目が元気な頃で
脇でちょこまかやってた現五代目が
「ヒラフォアでございます」なんて言い添えてきてネ。
親子してシャレッ気たっぷりの江戸っ子だった。

そう、そう、レバの生食といえば、
イの一番に思いうかぶのは皮はぎの肝。
白無垢の身肉を肝醤油でやったら
それこそ河豚の上をいっちゃうヨ、皮はぎクンは!
生じゃないけど、湯引きで出てくるあん肝は
ヒトが言うほど旨いとは思わない。
読者のみなさんはいかがでしょう? 
あん肝、お好きですか?

2012年7月9日月曜日

第355話 レバ刺しとフォワグラ (その1)

昨日の日曜はスポーツ三昧。
いや、実際に身体を動かしたんじゃなくて
TVの前に居座っての観戦ですけどネ。
午後の早い時間から巨人ー阪神戦。
この対戦は昔の部下と永久にニギッており、
巨人の勝利でメデタシ。
途中チャンネルを切り替えて
WBCスーパーフライ級の世界戦。
これまた佐藤洋太の快勝防衛でメデタシ。

続いては大相撲名古屋場所初日。
これといったヒイキの力士不在につき、
目出度くも忌まわしくもナシ。
心惹かれるお相撲サンにはしばらく出会ってないなァ。
昔の力士は実に個性的だった。

打ち出し後に晩酌タイムである。
のみともと酌み交わす酒もよいが独酌もまた楽しからずや。
この間(かん)、ビートたけしが選んだ漫才師の競演も観た。
J.C.はサンドイッチマンの隠れた大ファンなんざんす。
途中30分だけNHKに浮気。
「ダーウィンが来た!」は自宅に居ればハズせない。
今回は大好きな生物のカエルが主役だからなおさらだ。

そうこうしているうちウィンブルドンの男子決勝が始まった。
英国のアンディ・マレーは残念でした。
フェデラーのアンちゃんよォ!
オメエさん、過去6回も優勝してるんだから
少しは場の空気を読めヨ!

さて、ただ今月曜の午前3時過ぎ。
この稿をチャチャッと書いちまって
もう一度、大相撲のダイジェストをおさらいし、
全米女子オープンの最終日になだれ込む手はずだ。

ここでハナシを表題に移す。
今朝のニュースで知ったことだが
アメリカのカリフォルニア州が
州内のレストランにフォワグラの提供を禁止した。
違反すると1000ドル(8万円)の罰金が科せられる。
首根っこつかまえてエサを強制的に流し込む、
あの飼育方法が動物虐待と見なされたためだ。
さもありなん、ありゃ残酷だもの。

J.C.はフォワグラにほとんど興味がない。
むしろ
「鶏のレバーは食べられないけど、フォワグラはベツなの」―
こういうことを平気でほざく馬鹿オンナには腹立たしさすら覚える。
したがって東京都がカリフォリニア州に倣ったとて
痛くも痒くもありゃしないんだ。
捕鯨を禁止するくらいならフォワグラを禁止してほしい。
ベツに無理矢理肥大させなくともフォワプチでいいじゃないか。

=つづく=

2012年7月6日金曜日

第354話 西荻でハムレット

 ♪ 食って来るぞと 勇ましく
   誓って家を 出たからにゃ
   いいモン食わずに 帰らりょか
   西荻窪に 来るたびに
   必ず迷う 丼と麺  ♪

だしぬけに軍国調で失礼サンにござんす。
何だ、またかヨ! ってか?
まあ、まあ、そうおっしゃらずに先へお進みくだされ。

その日は大好きな町、西荻へやって来た。
しかるに丼と麺のはざまで心が揺れている。
丼とは何ぞや?
北口は「坂本屋」のかつ丼だわさ。
麺とは何ぞや?
南口は「はつね」のタンメンだども。

その朝は快適な目覚めを迎え、
しあわせの朝シャンで髪を洗いながら
目を閉じて考えあぐねていた。
もっとも洗髪中は誰しも目を閉じるけどネ。

かつ丼にするかタンメンにするか、それが問題だ。
昼めしにつき合ってくれるオフェリアがいたら
ハムレットもこんなに悩むことはない。
あいにく手駒にそんなのはおらんしなァ。
仕方なく独り降り立った西荻のプラットフォームである。
おっと、この日は早めに家を出たので
時間調整のため、一つ手前の荻窪で下車。
テクテク歩いて到着した次第。

「坂本屋」と「はつね」。
現地に乗り込んでもまだ決断がつかない。
駅から近いのは「はつね」だが
たったの7席しかないから行列は必至。
まっ、長蛇の列なら「坂本屋」に回るとして
取りあえず、のぞいてみるとしようか。

時刻は11時半ちょっと前。
あれれ、誰も並んでないぞ。
それどころかガラス越しに背伸びすると
ややや、空いてる、空いてる、しかも2席も。
今は亡きポール牧じゃないが思わず指パッチンだ。
いえ、若モンじゃないから実際に鳴らしゃしません。
鳴らしたつもり、つもり。

出来上がったタンメンの麺と野菜を丸ごとひっくり返す。
キャベツともやしがスープに沈んで麺が浮き上がった。
こうしておけば麺が簡単にはノビない。
澄んだスープは相変わらず。
肉の姿が見えないのも相変わらず。
でもこれが素朴に旨いんだよねェ。
700円を支払って表に出ると、並んでいたのはおよそ10人。
ご苦労なこってス。

勝手知ったる西荻の町を散策しながら、ふと思った。
(やっぱ、かつ丼にしときゃよかったかな?)
さんざ迷った挙句、未練心につまづいてるヨ。
バカか、お前は!

「はつね」
 東京都杉並区西荻南3-11-9
 03-3333-8501

2012年7月5日木曜日

第353話 ほどなく小岩を再訪 (その2)

朝7時から飲める稀有にして奇特な居酒屋、
小岩の「銚子屋」にまた来てしまった。
爺チャン、婆チャン、お嫁チャンで営む、
三チャン商業は客をして応援したい気持ちにさせる。
しかも駅からトコトコ歩いてゆくに値する飲み屋なのだ。

北国の友を誘い込んだ小岩の一夜。
昨日紹介した「大竹」とこの「銚子屋」で
相方は満足するハズだ。
ビールを頼んだらクラシックラガーの大瓶が登場。
あれれ、確か前回はスーパードライだったんだけどな。
これは単に銘柄とサイズの指定を忘れただけのこと。
中瓶がドライであった。

壁に掛かったホワイトボードにはこうあった。

銚子直送
 釜あげしらす   400円
 めかじき照やき  600円
 いかやき      500円
 あじさしみ      400円
 いわしさしみ    400円
 鯨ベーコン     550円

そこで、あじさしみと鯨ベーコンを所望する。
すると、あじはそこそこ。
くじベコは値段のワリに質自体は悪くないものの、
振りかかった”化学の子”がいかんともしがたい。
そう、日本のある年齢層、とりわけ昭和30年代に
ちゃぶ台を囲んで食事を摂っていた人々は
この化学の呪縛からなかなか逃れられないのだ。

ひとしきりくつろいでお勘定。
「もうお帰り?」
「いや、たぶん駅前でもう一杯かな?
  『浅草バー』あたりで軽くネ」
「ああ、あそこはあと2~3日で閉店するんだよ」
「エッ、エエ~ッ! 本当ッスかそれ?」
「うん、こないだ新聞に出てた」

普段あんまり驚かないJ.C.が色を失う。
だが、ちと待てヨ、情報が閉店後じゃなくって助かったぜ。
心なしか早足で小岩駅前にとって返したのだった。

「浅草バー」では運よくカウンターの店主の真ん前。
いろいろ話を聞くと、出身は浅草の大衆酒場「ニュー浅草」。
なるほどネ。
営業は今夜を含めてあと3日。
その翌日は常連を集めてのお別れパーティーなんだと。

どうにかスレスレで間に合った。
もうしばらくすれば、
リリーの背後に映ったあの看板も撤去されるだろう。
東京在住の寅さんファンなら
「ハイビスカスの花」を観たうえで
小岩の町にお出かけください。

「銚子屋」
 * 一昨日のブログを参照してください

2012年7月4日水曜日

第352話 ほどなく小岩を再訪 (その1)

”寅さんシリーズ”に3本も出演した浅丘ルリ子。
「寅次郎ハイビスカスの花」では
彼女扮するキャバレー歌手・リリーが江戸川区・小岩に現れる。
リリーの影を慕いつつ、J.C.は独り小岩の駅に降りたのだった。

その日からほどなく、小岩再訪の機会に恵まれた。
いや、実は自分で機会を意図的につくったのだ。
北国の酒友が出張で上京してきた折、
一夜、小岩を案内することに。
「ディープな町で面白いぜ」―
水を向けると二つ返事のご承諾である。

仕事を済ませて駆けつけて来る友には悪いが
こちとらノンビリ待ってなどいられやしない。
一足先に現地に乗り込み、
軽く生ビールを1~2杯という腹積もりだ。

チェーン店の「かぶら屋 小岩店」へ。
チェーンのワリにここは使える。
一人か二人での零次会に打ってつけなのだ。
なんとなれば、つまみをあんまり取らなくとも
イヤな顔をされないからネ。
ありがたいことにくだらぬ突き出しなんぞもない。

焼きとんが1本80円。
串焼きや串揚げも80~100円。
当夜はカシラとハラミが塩、レバはタレで。
あとは玉ねぎの串揚げを1本だ。
焼きとんのタレが独特でニンニクが効いている。
以上で生中(小に近いがネ)を2杯飲んだ。
滞在時間は45分ほどだったか。

到着した友を最初にエスコートしたのは
小岩随一の大衆酒場「大竹」。
珍しいじゃが芋入りの煮込みが名物だ。
ん? 煮込みに芋なんか邪道だ! ってか?
その気持ち、よく判りますがここのは別格。
一度味わってみておくんなせェ。

下手な中華屋のそれなんざ、
足元にも及ばぬレバニラ炒めを追加する。
ここでは生中とレモンサワーを1杯ずつ。
相方もなかなかの飲み手で順調にグラスを傾けている。

何しろ小岩一の人気店につき、次から次と客が到来する。
長居は迷惑、前回も訪れた「銚子屋」へと向かった。
京成の北小岩とJRの小岩の中間点に位置するこの店は
どっちから歩いても10分はかかろうか。
歩くのが苦手の向きにはさぞ億劫であろうよ。

見覚えのある一軒家が庶民的な住宅街に現れた。
 やって来ました町はずれ

ツレは興味津々の様子で瞳を輝かせている。

=つづく=


「かぶら屋 小岩店」
 東京都江戸川区西小岩1-22-10
 03-5694-5290

「大竹」
 東京都江戸川区西小岩1-19-26
 03-3658-2179

「銚子屋」
 * 昨日のブログを参照してください

2012年7月3日火曜日

第351話 リリーの面影

渥美清の”寅さんシリーズ”はTVドラマの頃から好きだった。
映画化された全48作はむろん制覇。
そのうちマイ・ベストファイブは以下の通りだ。

① 第7作 「奮闘篇」 (榊原ルミ)
② 第29作 「寅次郎あじさいの恋」 (いしだあゆみ)
③ 第27作 「浪花の恋の寅次郎 (松坂慶子)
④ 第1作 「男はつらいよ」 (光本幸子)
⑤ 第6作 「純情篇」 (若尾文子) 
次点 第22作 「噂の寅次郎」 (大原麗子) 

( )内はマドンナ役の女優サン。
なお、複数回登場している吉永小百合と
浅丘ルリ子の作品は気がばらけて対象外にしてしまった。
何度も出てきた後藤久美子も
甥っ子・満男のマドンナなので外した。

先日、渥美清の死後に再編集された、
「寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」を観ていて
とあるシーンに思わず身を乗り出した。
マドンナ・リリー(浅丘ルリ子)と義弟の博(前田吟)が
JR小岩駅の高架下で言葉を交わしているのだ。
バックに「浅草バー」の袖看板が見え、
並びにはキャバレー「ハリウッド」がある。
J.C.は必死に記憶の糸をたぐった。
うん、この看板には確かに見覚えがあるゾ。

数日後、リリーの面影を追いかけて小岩に遠征。
するとあった、あった、「浅草バー」が生き残ってる。
原版の「寅次郎ハイビスカスの花」は第25作で
1980年8月に封切られた作品。
小岩なのになぜか「浅草バー」を名乗る居酒屋は
32年を経た今も元気に営業中だった。
明るい時間の「浅草バー」

残念ながら「ハリウッド」はパチンコ屋になっていた。

「浅草バー」の開店にはまだ数時間ある。
そこで朝7時から夜10時まで
通し営業している「銚子屋」に回った。
この営業時間には脱帽で
しかも老夫婦と嫁サンの家族経営。
店主は昭和3年の生まれと聞いた。
店内には常連サンが独り

「銚子屋」ではビール大瓶と酎ハイを飲んだ。
つまみは卯の花に海老フライとホルモン焼き。
ホルモンは豚の白モツに限る

この日は「浅草バー」に入店かなわず
近々、小岩にリターンせにゃならぬ。

「銚子屋」
 東京都江戸川区北小岩2-19-6
 03-3658-9381

2012年7月2日月曜日

第350話 戦いすんで夜が明けて

現在、7月2日朝6時。
終夜降り続いた小雨もやみ、
幸か不幸か徹夜明けときたもんだ。
日曜夜は北千住で飲んだ。
3軒ハシゴして日付けが変わる頃に帰宅。
しばし愛猫と戯れ、
一休みしたあとに臨んだユーロ決勝戦である。

ハナシは変わるが先週末のこと。
高校同期の友人たちと池袋にて小宴会を催した
行った先はニューヨークに本店を構える「T.G.I.FRIDAYS」。
スペアリブやらチキンウイングやらで
生ビール(プレモルで大不満)、
モスコー・ミュール、キューバ・リブレを飲んだ。

その席でギャンブル仲間、
いわゆる”賭けとも”のKチャンが
ユーロはドイツ優勝でキマリの一言。
この言葉をJ.C.がふと思い出したのは
準決勝、ドイツVSイタリアの直前であった。
頭の中でピカリ閃くものがあり、彼に電話を入れる。

「Kチャン、ユーロはドイツって言ってたよネ?」
「うん、言った」
「じゃニギろうか?」
「いいとも!」
かくして賭けは成立してご覧の通りイタリアの圧勝。
最後のPKはレフリーの慈悲というか、まっ、カタチ作りだ。

下馬評は10人中、8、9人がドイツであったろう。
だがネ、自慢じゃないけどJ.C.の場合、
サッカーを観てきたキャリアがハンパじゃない。
何せ、あの釜本が早大三年生、あの杉山が明大四年生、
関東大学リーグにおいて全勝同士でぶつかった決勝戦まで
こちとら中学時代にバッチリ観てるんだ。
昨日・今日のにわかサッカーファンとは年季が違う。

ドイツやイングランドのスタイルが
スペインやイタリアを凌駕したら世も末で
日本サッカーに明日はない。
大男がゴール前に殺到し、
力ずくで点を取りにゆくサッカーなんか観たかないんヨ。

こうして迎えた決勝戦前夜の会話。
「Kチャン、決勝は当然スペインだよネ?」
「いえ、いえ、決勝はイタリア!」
「エッ、エエエッ! あっそう、じゃオレ、スペインね」
こういうのを世間様は飛んで火に入る夏の虫という。
またもや実にオイスイ賭けが成立した。
でもって結果はご覧の通りだ。
予選リーグですでに両者は一戦交えており、
どこをどう見たってイタリアに勝ち目なんかないでしょに。

早いハナシが今のスペインは誰にも止められない。
親善試合はともかくも公式戦ではしばらく敵なしだろう。
ストップ・ザ・スペイン!
この責務を負うのは2年後のブラジルしかありゃしません。