2013年3月29日金曜日

第544話 自由に歩けぬ自由が丘 (その1)

目黒区・自由が丘はかつてひんぱんに訪れた町。
かれこれ10年ほどになろうか、
当時、たびたび酒盃を交わしたのみともが
東横線沿線の東白楽に棲んでいたため、
互いの住まいの中間点で飲んだわけだ。

ときは移り、いつしかご無沙汰と相成った。
とは言うものの、年に一度は出没しているんじゃないかな?
ただし、なじみの店はない。
とにかく自由が丘は道が狭くてまともな歩道がないから
脇をすり抜けるクルマがうっとうしくて
おちおち散歩などしていられないのだ。
したがって下北沢と並び、都内ではキライな町の筆頭格となる。

久々に偽グルメ隊、”SKYAMKO”が開催の運びとなった。
幹事の森チャンが選んだ舞台は当地の中華料理店、「わさ」である。
中目黒で電車を乗り換えて今、話題の東急東横線に乗り込んだ。

その夜は遠来のゲストが1名。
会場に伴う前に自由が丘駅そばの「金田」にいざなった。
目黒区、指折りの居酒屋がここである。
多彩なつまみの品揃えがことのほかうれしい。
プリントアウトされた品書きが置かれていて
目を通す楽しみは実物を味わう歓びを上回るくらいのもの。
ぜひとも読者のみなさんに紹介せずにはいられない。
すべてをつまびらかにはできないから抜粋してお目にかけたい。

<お造り>
 活け〆皮はぎ薄造り     1800円
  〃  平目薄造り      1600円
 関あじさしみ          900円

<蒸し物>
 甘鯛酒むし           950円
 里芋満月むし         850円
 
<鍋物>
 鳥なべ             750円
  かき味噌なべ        1200円

<煮物>
 めばる煮付け        1800円
 かさご煮付け         2000円
 牛すじ大根煮         700円

<酢物>
 たこポン            650円
 小肌酢              600円

<焼物>
 太刀魚             1000円
 生にしん            1000円
 甘鯛かぶと焼           900円

と、ここまで記して、以下は来週でござる。

=つづく=

2013年3月28日木曜日

第543話 日本で歌のうまい歌手 (その4)

男性の場合、本職の歌手以外にも
歌のうまい人がたくさんいる。
その最たるところは俳優だろう。
男優にはそうそうたる顔ぶれが並んでいる。

古くは高田浩吉、鶴田浩二の師弟コンビ。
森繁久弥も古さで負けちゃいない。
裕次郎・旭・圭一郎の日活トリオは揃ってよく歌った。
ちょいと偏りのある渥美清と勝新太郎はともかくも
高倉健は上手じゃないがシブさはある。
彼の場合、別れた亡き妻がうますぎましたヨ。
渡哲也や舘ひろしも歌っちゃいるが何だかなァ。
加山雄三はもともと俳優だったのに
今はミュージシャンがオモテの顔になっちゃった。

男優陣にあっては鶴田浩二が抜きん出ている。
聴力に問題を抱えながらよくあれだけ歌えるものだ。
日活トリオでは旭の歌唱力が卓抜。
ただし、ムードメーカーの裕次郎には独特の味があり、
J..C.はもちろん裕次郎派である。

反面、女優はパッとしませんネ。
「寒い朝」の吉永小百合は聴けるけど、
「夕陽の丘」の浅丘ルリ子はリンダじゃないが困っちゃうナ。
緋牡丹シリーズのお竜さんこと、
藤純子も歌っちゃダメだヨ、女を下げた。

「週刊現代」ではデュオやコーラスが対象外。
でも素通りするにしのびないのでちょいとふれておきたい。
デュオの断トツは女性のザ・ピーナッツ。
男性はちょいと思いつかないが、しいて挙げたら狩人かな?
その代わり混声ならば、ヒデとロザンナ、トワ・エ・モワ、
チェリッシュははずせないでしょうヨ。
コーラスだと真っ先にダーク・ダックスでキマリ。

それではマイ・ベストの発表であります。
ベスト15は気がバラけるため、ベスト5に絞りました。

<女性編>
 ① 江利チエミ
 ② 美空ひばり
 ③ ちあきなおみ
 ④ 島倉千代子
 ⑤ 西田佐知子
 次点:小柳ルミ子

<男性編>
 ① フランク永井
 ② 三橋美智也
 ③ 三波春夫
 ④ 尾崎紀世彦
 ⑤ 桑田佳祐
 次点:吉幾三

多くの名歌手がカバーしている「城ヶ島の雨」は
ひばりを抑えてチエミが一番。

フランクの「有楽町で逢いましょう」は歌謡史に輝く名曲。
一度でいいから「紅白」の大トリを歌わせてあげたかった。

=おしまい=

2013年3月27日水曜日

第542話 日本で歌がうまい歌手 (その3)

昨日のつづきに行く前に、昨夜のヨルダン戦をひとくさり。
スポーツに興味のない方々のためにメンションしますが
サッカーのブラジルW杯最終予選、
いわゆるザックJAPANのアウェー戦のことであります。

ゴール前で打たない清武。
決め切れなかった前田。
油断で置き去りにされた吉田。
そのあとをノロノロと追いかけた酒井。
オフサイド・ポジションから戻れない内田。
揃いもそろって、困ったものよのう。

PKはずしはキッカーの背負った宿命だから
遠藤を責めることはできない。
アレは相手GKの完全な読み勝ち。
GKは南ア大会のデンマーク戦でFKを決めた、
遠藤のクセやボールの弾道を観ていたに違いない。
昨夜のPKはあのときの縮小版そのものだもん。
いくらなんでもあの場面でコロコロPKってワケにいかないし・・・。

とにかく最大の課題はいつまで経っても
セットプレーに対処できない永遠の弱点。
もはや日本サッカー界の伝統ですな。
しかもこればっかりは一朝一夕に治るものでもない。
まあ、けっして悪い試合じゃなかった。
もっとも香川の1点がなけりゃ溜飲が下がることもなかったろう。

昨日のつづき。
<男性編>の<その他に挙がった名前>

 松山千春 宮本浩次 さだまさし 郷ひろみ 
 谷村新司 前川清 水原弘 宇都宮隆
 植木等 トータス松本 氷川きよし

であるが植木等にゃ驚いた。
まあ、うまいっちゃあ、うまいがネ。
上記では水原・前川・松山が御三家でしょうネ。
3人ともベスト15に入選してしかるべき歌唱力の持ち主だ。
いや、ぜひとも入れなきゃいけない。

<女性編>同様に<男性編>も
J.C.の独断に基づいてA&Bグループを選んだ。

Aグループ
 藤山一郎 春日八郎 三橋美智也 フランク永井 
 菅原洋一 吉幾三  
 
Bグループ
 村田英雄 細川たかし 野口五郎 井上陽水 
 大川栄策 鈴木雅之

といった具合。

選者に対する不満は<女性編>よりも大きい。
16人の方々に猛省を促しはしないが
ささやかな反省はしていただきたい、心からそう思う。

=つづく=

2013年3月26日火曜日

第541話 日本で歌がうまい歌手 (その2)

「週刊現代」の特集記事、
「日本で一番歌がうまいのはこの人だ」
まずは<女性編>のつづきから。

ベスト15は昨日紹介したが
<その他に挙がった名前>として

 小比類巻かほる 臼澤みさき 伊藤由菜 島津亜矢
 大橋純子 吉田美奈子 岩崎良美 K-C-O 
 小泉今日子 由紀さおり

の面々が並んでいる。

でも、なんか不満なんだなァ。
誰か忘れちゃいませんか? てな感じ。
いかにも出てきそうな和田アキ子と小林幸子の落選は
納得できるとしても、かなりの漏れがありやすぜ。

そこでJ.C.なりに選んでみた。
水も漏らさぬ覚悟で臨んだゆえ、「紅白歌合戦」の出場者を
1951年の第1回から昨年の第63回まですべてチェックした。
こうまで徹底すれば、手ぬかりなどあるハズもない。

そこで絶対に候補に挙げるべき歌手のAグループと
できる限り挙げておきたい歌手のBグループに分けてみた。
もちろんAのほうがずっと重要でっせ。

Aグループ
 島倉千代子 西田佐知子 佐良直美 青江美奈 
 加藤登紀子 小柳ルミ子 森昌子 高橋真梨子

Bグループ
 ペギー葉山 弘田三枝子 伊東ゆかり 岸洋子 
 水前寺清子 金子由香利 岩崎宏美 八神純子 
 五輪真弓 中森明菜 坂本冬美

まあ、こんな面子になりました。
少なくともAグループに中島みゆきや山口百恵より、
歌の下手な人はいないと確信している。

次に男性歌手をみてみよう。

=歌がうまい人ランキングベスト15<男性編>=

 ① 桑田佳祐        96点  ↓
 ② 沢田研二        94点  ↓
 ③ 尾崎紀世彦       93点
 ④ 布施明          92点
 ⑤ 久保田利伸       91点
 ⑥ 五木ひろし       90点
 ⑦ 坂本九          89点
 ⑧ 三波春夫        88点   ↑
 ⑨ 矢沢永吉        86点   ↓
 ⑩ 稲葉浩志        85点
 ⑪ 北島三郎        84点
 ⑫ 山下達郎        82点
 ⑬ 橋幸夫          81点
 ⑭ 徳永英明        80点
 ⑮ 藤井フミヤ        79点

桑田が1位でジュリーが2位かい?
演歌&歌謡曲がずいぶんないがしろにされている。
コイツはちょいとばっかり違うんでねェの?

=つづく=

2013年3月25日月曜日

第540話 日本で歌がうまい歌手 (その1) 


スーさんの歌声を聴いていて
ふと、あることを思い出した。
何週か前の「週刊現代」の記事である。
雑誌のラックを探ってみたら
幸いにも捨てられずに残っていたので
引っ張り出すと、3月2日号だった。

「日本で一番歌がうまいのはこの人だ」と題されて
サブタイトルは
「美空ひばりか、ちあきなおみか、沢田研二か、
 それとも松田聖子か」

冒頭の説明書きにはこうあった。

あらゆるものの「日本一」を決める新シリーズ。
記念すべき第1弾は、誰もが気になる「一番歌がうまい人」。
音楽界の一流識者が16人集まり、熱い議論を繰り広げる。
見事1位に輝く歌手の名前は!?

16人の選者プロフィールは見たら
J.C.が識っていたのは
泉麻人、来生えつこ、つのだ☆ひろ、平尾昌晃、
山川静夫の5名のみ。
ほかにはラジオのアナウンサーやDJ、
音楽プロデューサーなどが名を連ねている。

記事をすべて紹介するというわけにはいかないので最初に

=歌がうまい人ランキングベスト15<女性編>=

 ① 美空ひばり        99点
 ② ちあきなおみ      96点
 ③ 都はるみ         95点  ↓
 ④ 中島みゆき       93点  ↓
 ⑤ 山口百恵       92点  ↓
 ⑥ 石川さゆり       90点
 ⑦ 江利チエミ     89点  ↑
 ⑧ 八代亜紀       88点
 ⑨ 越路吹雪      87点
 ⑩ 松田聖子      85点
 ⑪ MISIA       83点 
 ⑫ 渡辺美里      82点
 ⑬ 藤圭子        81点
 ⑭ 森山良子      79点   ↑
 ⑮ 天童よしみ     78点     

点数の右側の矢印↑↓はJ.C.が勝手に付けたもので
↑は過小評価につき、もっと高ランクに位置すべき歌手。
↓は過大評価につき、もっと低ランクに位置すべき歌手。

美空ひばりの1位は誰もが認めるところであろう。
ちあきなおみの2位にも異論はない。
ただ、中島みゆきや山口百恵が
江利チエミ、森山良子よりも歌がうまいとは
百恵だけに百歩ゆずっても、到底思えないのだ!

=つづく=

2013年3月22日金曜日

第539話 近くで演歌を聴きながら (その3)

スーさんから賜った2枚のCDはかくの如しでござる。

#1は懐メロと女性ヴォーカル特集。
「白い花の咲く頃」(岡本敦郎)、「別れの一本杉」(春日八郎)、
「白い海峡」(大月みやこ)、「かもめの街」(ちあきなおみ)、
「北のアカシヤ」(キム・ヨンジャ)などが収録されていた。
けっこう幅が広いんだわ、これが。

#2は石原裕次郎が中心。
「サヨナラ横浜」、「恋の町札幌」、「ブランデーグラス」ほか数曲。
あとは「抱擁」(箱崎晋一郎)、「うしろ姿」(矢吹健)なども。
ムード歌謡のオンパレードだな、これは。

歌は上手だし、ケレンのない歌い方にも好感が持てて
つい、つい、聴いてしまう。
今も近くで・・・ってゆうかァ、
耳元で聴きながらコレを書いている。
現在、かかっているのは三橋美智也の「あの娘が泣いてる波止場」。
やれやれ、よくもこんな曲を知ってるもんだ。
次は「わたし祈ってます」。
敏いとうとハッピー&ブルーだヨ。
花菱アチャコじゃないが、無茶苦茶でござりますがな、もう。

そのスーさんから電話が入った。
そのときJ.C.はかかりつけの医者、
じゃなかった、ヘアサロンにいたわけサ。
髪を切られながら、いい気持ちでウトウトしてたところに
青森県は八戸からの長距離コール。
いや、正確には八戸から久慈線なるローカル線で
30分ほど行ったむつ湊からだった。

訪れた「みなと食堂」があまりにもすばらしく、
電話を入れずにおられんかったそうな。
そこで食べたのは、いちご煮とばくだんとのこと。
いちご煮は存じている。
あわびと海胆を塩味で炊いたヤツ。
これはデパ地下あたりでも缶詰を見掛ける。

かれこれ三十余年前、八戸の料理屋で
いちご煮を食したが、べつにどうってことなかった。
スーさん曰く、「みなと食堂」のそれを食ったら
金輪際、缶詰なんか食えないそうだ。
彼のブログによれば、

平目、えんがわ、ホタテ、イカ、タコ、中とろ、イクラを卵黄にからめ 、
タレのかかったご飯に混ぜてかっ込む 「ばくだん」。
こんな旨い丼は築地でもお目にかかった事はない。

又いちご煮のスープは例えようの無い絶品だ。
二度と缶詰のものは買わない。

とのことである。
写真をご覧になりたい方はこちらをどうぞ。
http://shosenkyo1.exblog.jp

「オカちゃん、ぜひ行って食べてみてくれ!」との仰せで
この夏には久々の八戸、
初めてのむつ湊へ旅立つ決心をしたJ.C.でありました。
いや、持つべきものは友でござりましょう。

=おしまい=

2013年3月21日木曜日

第538話 近くで演歌を聴きながら (その2)

ニューヨーク時代のポン友・ホケンは
年に数回、帰国してくるのでそのたびに卓を囲むことになる。
WBCで日本が一敗地にまみれた直後にメールが届いた。
45年もWBAを観てきただけに彼の論評には説得力がある。
ちょいと紹介してみたい。

WBCは寒さと相手ピッチャーの投球間隔のスピードにやられたね。
なぜ前日まで気温30度超えのアリゾナにいたのか?
サンフランは風が強く、夕刻は10度以下で野外球場はチョー寒いんだ
日本の野球はスロープレーが目立つ、特にピッチャーがっ。
ゆえにバッターが間合いを取りづらく、あわててボール球を振っていた。

まさにその通り。
決勝戦の雨模様を見たら、なんでこの時期にフリスコでやるの? 
当然の疑問でありましょう。
ライバルに南の国が多いから
アメリカにアドバンテージありと算段したのだろうか?
プエルトリコ戦を将棋に例えれば
名人が若手に早指し戦でヤラれたようなもの。
まっ、そこまでの実力差はないけれど・・・。

ハナシを元に戻す。
昨年の暮れだったか、春日の雀荘「ロンロン」に
ホケンがスーさんを伴って現れたのだった。
この人が桁はずれにオモロい人物でオマケに大の歌謡曲ファン。
J.C.はゲーム中、よく鼻歌まじりで牌の取捨を繰り返している。
スーサンも負けじと歌を口ずさむので
互いに歌謡曲愛好者であることが判明したわけだ。

麻雀もさることながら、スーさんの将棋は玄人はだし。
われわれのヘボ将棋を上から目線で眺めながら
せせら笑ったりもしている。
「あの玉(ぎょく)を詰ますにはケツから角を打つんだヨ」―
局後にそんな科白をささやかれちゃうのだ。

ある日。
「オカちゃん、オレのを20キョクほど録ったヤツあげるからな」―
言われたときに感心したものだ。
ホオ~ッ、スーさんクラスになると自分の棋譜を記録してるのか。
録ったということはEテレのNHK杯みたいに録画してるのかも・・・。

「さすがじゃないッスか! そこまでいくともはやプロ棋士です」
「ん? 何だって、将棋? フッ、フハッハハ!
 ちゃうちゃう、20キョクって将棋じゃないよ、カラオケだヨ」
「エエ~ッ、20局じゃなくて20曲なのっ!」
けっこう笑えるでしょう? 漫才のサンドイッチマンも真っ青だ。

そうして手渡されたCD2枚組は全37曲、心底ビックラこいた。
しかも曲名と歌い手のリスト付きでっせ。
世にカラオケが好きだから一緒に歌いに行こうという人はいても
自分で歌ったのを録音して他人にくれるって人は前代未聞。
今もそれを聴きながらコレを書いている。

=つづく=

2013年3月20日水曜日

第537話 近くで演歌を聴きながら (その1)

   ♪ 悩みつづけた日々が まるで嘘のように
   忘れられる時が 来るまで心を閉じたまま
   暮らしてゆこう 遠くで汽笛を聞きながら
   何もいいことがなかった この街で   ♪
            (作詞:谷村新司

アリスの「遠くで汽笛を聞きながら」は1976年9月のリリース。
同じアリスの「帰らざる日々」もこの年だった。

ここでいつものクセ、1976年のヒット曲のマイ・ベストテンを選んだ。
「ケッ、またかヨ!」などと、邪険にしないでしばしおつき合いくだされ。

① 横須賀ストーリー          山口百恵
② 東京砂漠              内山田洋とク-ル・ファイブ
③ パールカラーにゆれて      山口百恵
④ 逢いたくて北国へ          小柳ルミ子
⑤ 青空、ひとりきり          井上陽水
⑥ 陽かげりの街             ペドロ&カプリシャス
⑦ あの日にかえりたい         荒井由実
⑧ 20歳のめぐり逢い         シグナル
⑨ 春うらら               田山雅充
⑩ なごり雪                イルカ
次点:およげ!たいやきくん     子門真人

百恵チャンが金と銅、二つのメダルに輝いている。
べつに彼女のひいきじゃないんだが
たまたま百恵ナンバーのマイ・ベストとセカンド・ベストが
この年にリリースされていたわけだ。
「東京砂漠」はクール・ファイブのベスト。
以下、「そして、神戸」、「噂の女」と続いてゆく。

この年のレコ大受賞曲は都はるみの「北の宿から」。
「ペッパー警部」でピンク・レディーがデビューをはたしてもいる。
小椋佳の「ゆれる、まなざし」は曲自体より、
資生堂のCMに登場した16歳の真行寺君枝の印象が強烈。
もともとこれはキャンペーンソングだしネ。

さて、アリスは汽笛を遠くで聞いたが
J.C.は演歌を近くで聴いている。
今、現在もコレを書きながらCDを聴いている。
誰の演歌だってか?
歌っているのはスーさんなるアマチュアだ
「釣りバカ日誌」で浜ちゃんの相棒をつとめたスーさんと
同じ苗字のオジさんである。

ことのいきさつはこうだ。
かれこれ25年来の友人にY田サンがいる。
ニューヨーク時代のゴルフ&麻雀仲間で
一時期、保険業を営んでいた関係上、
仲間うちでは”ホケン”の愛称で通っている。
J.C.より二つも年長なのにこちらは”ホケン”と呼び捨て、
あちらは”オカちゃん”と、ちゃん付けで呼んでくれているのだ。

=つづく=

2013年3月19日火曜日

第536話 はるばるきたぜ 雑色へ (その3)

つい、食べ過ぎちゃった「もつやき三平」をあとに
第一京浜国道を渡り返して雑色の駅近くに戻った。
ブルガリア料理店「ザゴリエ」は小さな路地にひっそりとある。
珍しいブルガリア料理店は都内にもう1軒、
東京駅そばの八重洲に「ソフィア」という店があるだけだ。
ここは明治乳業の直営店で
大関・琴欧州のCMでおなじみのブルガリアヨーグルトは
明治乳業の製品だ。
あとは小田急線・代々木八幡に
「ヨーグルト・サン」なるブルガリアン・カフェがあるらしい。

銀座から表参道に移転したルーマニア料理店「ダリエ」は
何度か訪れており、ここの料理は好きだ。
ブルガリアはルーマニアの南に位置するする国だから
料理も似ているものと想像していたが実際はずいぶん違った。
ブルガリア料理はそのまた南側、ギリシャとトルコの影響が色濃い。
ギリシャ料理のムサカがあるし、
ショプスカサラダはトルコのチョバンサラタ(羊飼いのサラダ)に
山羊乳のチーズをトッピングした感じ。

赤ワインのテラ・タングラ マヴルッド '10年を抜いてもらう。
もちろんブルガリア産で、しなやかな口当たり。
水で割ると白濁する地酒・ラキヤも1杯ずつ飲んだ。
トルコのラク、ギリシャのウゾと同様にアニスが香る国民酒。

メニューを吟味したものの、
結局、注文したのは前記のショプスカサラダとムサカのみ。
どちらもボリューム満点だった。
シェヴレ(山羊乳チーズ)があまり好きではないから
ショプスカサラダよりトルコのチョバンサラタのほうが口に合う。
ムサカもギリシャのものはナスが主張するが
こちらはじゃが芋たっぷりで相当ポテトチック。
どちらかといえば、ナスのほうがありがたいな。

ワインはフルボトルだし、
本来ならブルガリア名物のキュフテやケバブチェなど、
ハンバーグ系のグリルと合わせるべきだが
何せ、炭火であぶったもつ焼きを何本も食べたあと、
とてもとても食指は動かない。

居酒屋のはしごなら何とでもなるけれど、
本格的なレストランが組み込まれると、どうにもならない。
近頃はフルコースを食する機会がめっきりと減っている。
酒量のほうは衰える気配がないのになァ。
朝から飲むわけじゃないから、まっ、いいか。

食後は二人してレトロスペクティブな雑色商店街をぶらぶらと。
いつのまにか(去年の秋らしい)駅は高架化されたのに
商店街はほとんど変わっちゃいない。
映画「三丁目の夕日」のロケに使えると思えるほどのもの。

雑色は品川と横浜の中間あたり。
夕方のラッシュと重なったらいやだが
さいわいに「もつやき三平」は早い時間から営業している。
毎週はムリでも月に一度くらいは訪れることになりそうだ。
そんなことをぼんやりと考えながら
相変わらずスピード出し過ぎの電車に揺られゆられて帰った。
社名に忠実なのか、京浜急行は飛ばし過ぎるんだヨ。
小学一年生のときからずっとそう思ってきた。

=おしまい=

「ザゴリエ」
 東京都大田区仲六郷2-42-3
 050-3586-310

2013年3月18日月曜日

第535話 はるばるきたぜ 雑色へ (その2)

東京の南のはずれ、大田区・雑色にやってきた。
「もつやき三平」の評判を聞きつけたからだが
まさか、3週ぶっ続けで通うとは思わなんだ。

初回に驚いたのはお通し(無料)のたくあん。
パリパリの歯ざわりが快適で
5切れもあったのについ、お替わりしてしまった。
たくあんのアンコールなんて生涯初ではあるまいか。

残念だったのは名物トリオの不在。
店は14時開店で稀少部位は夕方早い時間に売切れてしまう。
名物というのは、あわぴー、なんなん、わっぱの3品。
聞きなれないものばかりだけれど、
それぞれ子宮、食道、気管のことらしい。

こいつは食べにゃあならんと、翌週は早めに仕掛けた。
あわぴーは食感があわびソックリながら旨みには乏しい。
赤身肉のなんなんは歯応えのあるカシラみたいな感じ。
わっぱは輪っかの付いたナンコツで脂のノリもよろしい。
でも、やはり定番のレバ・シロ・ハツ・ガツ・アブラが好きだな。
殊にちょい焼きのレバは特筆に価する。

忘れられないのが、ねぎ。
ほどよい焦げ目のついたねぎが皿に置かれたときに
立ち上がった甘い香りは今でも鼻腔の奥に残っている。
ここのねぎは都内随一でありまっしょう。

ふと、アイデアが浮かんだ。
普段は必ずタレで食するシロを塩で頼み、ねぎと合わせてみた。
いや、これがバッチリ! 旨いのなんのっ!

人気商品だったレバ刺しが当局の禁止令が出て以来、
生ではダメになり、生モノはガツのみになった。
ただし、レバと違って一度ゆがいたものを冷製で供している。
しかし、コイツがヤケに旨い。
醤油・食酢に練り辛子・青海苔を合わせていただく。
必注の一品として太鼓判を捺したい。

三度目は上京してきた北ののみともを案内した。
せっかくの一夜にビールともつ焼きだけでは気の毒なので
前回、町内散策の際に見つけておいた、
ブルガリア料理店に移動する腹積もり。
したがって胃袋には余裕を持たせておかねばならない。

それがそうもいかないんですヨ。
何せ、相方も根っからのもつ好きにつき、
東海林さだおサンじゃないけれど、
あれも食いたい、これも食いたい状態なんざんす。
結局は薬局、かなり飲み食いしちまって
満足のうえにほぼ満腹に相成りましたとサ。

=つづく=

「もつやき三平」
 東京都大田区南六郷1-8-5
 03-3732-1468

2013年3月15日金曜日

第534話 はるばるきたぜ 雑色へ (その1)

今日のサブタイトルから
北島サブちゃんの「函館の女」の歌詞が
出し抜けに登場すると思った方は少なくあるまい。
殊に中高年の方々はネ。
中には「また唄の文句かヨ!」―こう嘆いて
げんなりした向きもおられたことでしょうヨ。

でも、それはやめといたんだもんネ。
何となればサブちゃんの「女」シリーズでは
後年の「薩摩の女」や「加賀の女」のほうが
好きだからでござんす。

今回、はるばるやって来たのは雑色という町。
東京都民でもご存じない方のほうが多いのではないだろうか。
ざっしょく? ぞういろ? ざつしき? 読みくだすのも難解だ。
これは、ぞうしきと読みます。
品川から三浦半島の突端まで走る京浜急行の駅で
品川から行けば、京急蒲田の一つ先になる。

ここでハナシは半世紀以上もさかのぼる。
京急・平和島がまだ学校裏というのどかな駅名だった昭和30年代。
学校裏が最寄り駅の大森第五小学校に通っていた。
三年生だったから1960年のことだ。
ある日曜日の午後、
級友二人と校門前で待ち合わせ、大田区内・探険の旅に出掛けた。

行く先のアテなどなく、文殊の知恵で取り決めたルールはただ一つ。
二股だろうが、三叉路だろうが、十文字の交差点だろうが
とにかく道の分岐点に差し掛かったら、必ず三人でジャンケン。
そしてその都度、勝者が進む道を選ぶというもの。
ただし、今来た道を逆戻りするのだけは認めないことにした。

この方式、普通のウォーキングと違い、ものすごく時間が掛かる。
何せ、目的地に向かって直進するわけではないからネ。
昼過ぎに出発しておよそ2時間後、三人は池上本門寺の境内にいた。
学校から寺までの直線距離はたかだか2キロ。
大人の足なら30分もあればじゅうぶんだ。

さらに続けて到達したのが雑色駅前で
駅の時計は17時半を指していた。
小学生低学年にとっては、はるばるきたぜ雑色へ、なのだ。
すでに陽は落ちて辺りは薄暗く、
心細いわ、腹は減るわで、即電車に乗って帰った記憶がある。

そのつぎ、雑色に来たのは2006年のGWのさなか。
池上線・池上駅前の「松花江」で昼食のあと、
思い立って横浜まで歩いて行った。
その途中に通過したというワケ。
池上―雑色間をテクったのは46年前とまったく一緒。
偶然とはいえ、歴史は繰り返すんだなァ。

そして2013年1月、早いハナシが2ヶ月前ですな。
初めて訪れた雑色の「もつやき三平」にハマッてしまい、
この月だけで三度もやって来た。
のめり込んだらとことんのめり込む、
自分の性格がおそろしいヨ、マッタク。

=つづく=

2013年3月14日木曜日

第533話 みぞれまじり 砂まじり (その5)

サザンオールスターズが一躍有名にした茅ヶ崎。
駅から1分の「升源」で何とか席を確保した。
駅の南北をさまよって白羽の矢を立てた店だ。

茅ヶ崎ならば評判の居酒屋、
「えぼし茅ヶ崎本店」の存在は知っていた。
神楽坂の「蕎楽亭」で修業した店主が
独立して開いた「蕎房 猪口屋」も認知している。
だがネ、どちらも駅から遠いんですわ。
平塚寄りの相模川河口に近い柳島海岸ってとこにある。
おそらくサーファーを当て込んだ商売をしてるんだろうな。

キリンラガーの中ジョッキをグイッと飲み干し、
頭上の品書きを仰ぎ見た。
御殿場の「妙見」でちらし寿司を食べたばかりだから
空腹にはほど遠い。
何かちょこっとしたものを1品でいいや、でな心積もりでいた。
だが、こういうときに限ってそそられるモノが目につくんだ。

最初に目に飛び込んだのはこの2品。

 カシラを特製にんにくダレで!!  満洲焼き  ¥170
 網脂を巻いたレバのやきとり  網巻きレバ ¥170

どちらも好きだが、この店はミニマム2本から。

 丸福の酢タコ ¥600
 おつまみタコス ガーリックトースト付き ¥550

これも気になった。
たまたまどちらもタコだが、殊に酢タコのほうは
福の字が〇で囲まれており、名の通った造り手によるものだろう。
帰宅後に調べたら仙台は丸福水産の品物だった。

結局、頼んだのはごくフツーのレバたれを2本。
満洲焼きや網脂巻きを見送ったくらいだから
よほど食欲がなかったんだろうネ。

この文言にも注目させられた。
なるほど、そういうことか!

心よりお願いされちゃ、従わざるをえませんや。
レバの1片を前歯で咬みざまに串を引き抜いた。

トイレの真ん前のせわしない席は最悪かと思ったものの、
目の前のカウンター内にはオバちゃんと若い娘。
彼女たちの仕事ぶりが丸見えのうえ、交わす言葉も筒抜けだ。
オンナというのはスゴいねェ、この忙しいのによくしゃべるんだ、ジッサイ。
けっこう際どいハナシの内容をここで明かすことはできないが
聴いていてまったくあきないもん。
思い直せば独り飲みには最良のシートだったかもしれないな。
人間万事、塞翁が馬ってこった。

=おしまい=

「升源」
 神奈川県茅ヶ崎市幸町1-8 岡崎店舗2F
 0467-86-9496

2013年3月13日水曜日

第532話 みぞれまじり 砂まじり (その4)

歌の文句とは打って変わって砂まじりどころか、
砂ぼこりすら立たない茅ヶ崎の街に独り。
まずは内陸側の北口を徘徊する。
東海道線沿線の駅の常で北口はあまり面白くない。
海辺側の南口のほうに活気と雰囲気がある。
まあ、駅によっては例外もあるがネ。

さっそく寄り道横丁なんてのに出くわしたが
寄り道に値するとも思えない。
横丁の二筋手前に中華料理屋が四軒連なる路地があった。
いったいこれは何なんだ! プチ・チャイナタウンかいな?
中では一番手前の「横浜飯店」がもっとも盛況だ。
それにしても何て店名だろうか。
いくら大中華街を擁する横浜とはいえ、あまりにベタじゃないか。
茅ヶ崎のプライドはどこに消えたんだ。

南口に移動してさらに徘徊を続ける。
何だかんだ能書きたれても勝手知らない街を歩くのは楽しい。
30分ほど散策して目ぼしい店が見つからず、駅に戻った。
駅前のバスターミナルの端っこ、
交番の隣りの二階に気をそそる居酒屋を見つけておいたんでネ。

駅に隣接するようにあった店の名は「升源」。
そういえば御殿場に向かう途中、
プラットホームから看板が見えていたっけ・・・。

18時半くらいに引き戸を引いて
「うわっ!」―思わず出た叫び声。
右を向いても左を見ても、あふれんばかりの客の群れに
ビックリしたヨ、驚いた。

カウンターにもテーブルにも空席が見つからず、
あきらめ掛けたところに奥から手招きするオバちゃんありき。
「オニイさん、カウンターの奥、左の角に一つ空いてるからネ」―
いいでしょう、いいでしょう、
こちとら単身、椅子は一つでじゅうぶんでござんす。

何よりも”オニイさん”、この響きがいいじゃないの。
地道な人生を歩んでいれば、
孫の一人や二人は抱いていてもおかしくないわが身、
くれぐれも”オジイちゃん”と呼ばれなくてよかったぜ、イエイッ!

席にありつけてつかのまハッピーではあった。
ただし、カウンターの奥で生ビールを飲みながら思った。
席は厨房とホールをつなぐ出入り口のすぐ脇で
オマケに隣りはトイレットときたもんだ。
トイレに行き来する客が通るたびに床はミシミシ。
いかんせん居心地が悪いんだよなァ。

=つづく=

2013年3月12日火曜日

第531話 みぞれまじり 砂まじり (その3)

JR御殿場線に乗って御殿場から国府津に戻った。
今宵の晩酌はどこにしよう?
熱海じゃ東京から遠ざかるし、
駅のそばに真っ当な店が少ないから選択肢が限られてしまう。

沼津もまたしかり。
三島には塩ラーメンの旨い店があるが
中華そば屋で晩酌は味気ない。
富士山の湧水に活かされたうなぎに定評のある三島ながら
うなぎじゃ、ちょいと重い気がするし、フトコロも傷む。
小田原と平塚は比較的最近訪れているので避けておきだい。

そうだ! 茅ヶ崎に行ってみよう。
不案内な街とはいえ、駅周辺をウロつけば何とかなるわい。
てなわけで、みぞれまじりの御殿場から砂まじりの茅ヶ崎に移動した。

 ♪ 砂まじりの茅ヶ崎 人も波も消えて
   夏の日の想い出は ちょいと瞳の中に消えたほどに
   それにしても涙が 止まらないどうしよう
   うぶな女みたいに ちょっと今夜は熱く胸こがす

   さっきまで俺ひとり あんた思い出してたとき
   シャイなハートに ルージュの色がただ浮かぶ
   好きにならずにいられない お目にかかれて

   今何時 そうねだいたいね
   今何時 ちょっと待ってて オー
   今何時 まだはやい
   不思議なものね あんたをみれば
   胸さわぎの腰つき  
   胸さわぎの腰つき 胸さわぎの腰つき ♪

             (作詞:桑田佳祐)

大好きな曲なので、つい、長々と紹介してしまった。
1978年、サザンのデビュー曲がコレだ。

その年のことである。
どんなパーティーだったか、すっかり忘れてしまったが
(おそらく自民党の〇〇クンを励ます会)
芝公園の東京プリンスホテルでアルバイトをしていたとき、
デビューまもない彼らが突如としてステージに現れ、
いきなり歌い始めたのがこの「勝手にシンドバッド」。
まだほとんど知る人とてない未明のサザンオールスターズだった。

いったい、コイツら何者なんだい? なんかスゲェな!
ウエイター・ウエイトレス仲間が口々にささやき合ったものだ。
彼らをナマで観たのはわが人生、このときが最初で最後。
まさか日本を代表するミュージシャンに成長しようとは!
誰しも夢にも思わなかったのでありました。

=つづく=

2013年3月11日月曜日

第530話 みぞれまじり 砂まじり (その2)

御殿場の「妙見」は昭和10年の創業。
丹那トンネル開通の翌年である。
東海道本線のルートが変わってしまい、
乗客はずいぶん減ったハズ。
微妙なタイミングで普通は開業に二の足を踏むんじゃないかな。
なのに断行した妙な見識から屋号を「妙見」としたのだろうか?

名物の鱒姿ずしはハナから持ち帰るつもりだった。
総合和食の店だから料理は多彩なのだ。
ずいぶん立派なメニューを入念にチェックすると、
店がこだわるモノに1ページを割いている。
紹介してみよう。

 木の花名水(富士山の湧水)  店内飼育の国産車海老
 御殿場産真妻わさび  高級ゴマ油  天然本まぐろ
 絶品うなぎ  厳選こしひかり

といった具合。

料理はこうであった。

 季節のとれたてお刺身膳 (梅)(竹)(松)
 お野菜の煮物と海の幸のちらし (桜)(梅)(椿)
 活国産車えびの天ぷら・天重 (亀)(鶴)
 富士山湧水仕込みのうなぎ (亀)(鶴)

このほかに
”日本各地からとれたて鮮魚満載”と銘打ったにぎりが
妙見寿司・とれたて一番・おまかせにぎりの3種類。

各料理ともおおむね上は4800円、下は2500円といったところだ。
値段が高騰しているうなぎはとびきり高く、
(亀)が5300円、(鶴)は4600円。
もっともうなぎに興味はないし、予算的にも高嶺の花で手が届かぬ。
お手頃な煮物と海の幸のちらしにした。
それも最安で2500円の(椿)を選ぶ。
野菜の煮物と海の幸が同居

魚介の内容は、さより・あじ・中とろ・いか・海老・いくら・焼き穴子。
小ぎれいに盛り付けられてはいるが、少々の割高感は残る。
味のほうもそれなりの美味しさのあとにもの足りなさを感じる。
ビールの中瓶と一緒にいただいたが、そのあいだ、
話好きの女将が往時の御殿場の状況を問わず語りに語ってくれ、
とても興味深いものがあった。

鱒ずしを一つブラ下げてお勘定。
テイクアウト可能な姿ずし・押しずしは計5種類。
鱒・鯖・鯛・うなぎ、そして6~9月限定の鮎である。
掛け紙がシャレている

帰宅後、包みを開いた

鱒といっても養殖の虹鱒だから
富山の鱒寿司と比較すれば分が悪いが
下手な駅弁よりナンボかよかった。

さて、みぞれまじりの御殿場をあとにして
これからどこへ向かおうか・・・。

=つづく=

「妙見」
 静岡県御殿場市新橋1983
 0550-82-0142

2013年3月8日金曜日

第529話 みぞれまじり 砂まじり (その1)

ひと月以上も前になるが、富士山麓の御殿場を訪れた。
平方根の√5を ”富士山麓オウム鳴く”と覚えた若き日。
あの頃は身にも心にも汚れがなかった。
そんなことはさておくとして、数学はからっきしダメだったなァ。

御殿場に来たのはこれが初めて。
もともと山は好きじゃないから仕方がない。
でも御殿場の名前からは

 ① 陸上自衛隊の演習場
 ② VISA太平洋マスターズ
 ③ プレミアム・アウトレット

以上、三点が連想され、
歴史に敬意を表して古い順から並べてみた。

自衛隊にはご苦労さんと言いたいが
生まれてこのかた、入隊を希望したことは一度もない。
ゴルフもクラブを納めてから早や十年余の月日が流れた。
アウトレットにいたっては、まったく興味がございやせん。

では、何を好きこのんで真冬の山間部に踏み入ったのだろうか?
これが本人にもよう判らんのですわ、ハハハッ。
強いて言えば、そこに山があるからだ。
てなことはなく、たまたまその日が朝から晩までヒマだった。
未訪の近場に日帰りで出掛ける気になっただけだった。

東京駅から乗った電車を国府津で御殿場線に乗り換える。
昭和9年に丹那トンネルが開通するまで
東海道本線はこのルートをエッチラオッチラと走っていたのだ。

御殿場駅に到着すると、いや、寒いのなんの。
標高差がもたらす寒気だろうが
ンなこと気にせず、普段着のまま来ちまっただヨ。
J.C.の冬の普段着は基本的にコートなしである。
まあ、小1時間も歩けば身体が温まるだろうと駅をあとにしたが
ほどなくチラチラ小雪が舞いだした。
ありゃあ、あられだかみぞれみたいなのも混じってやがる。
コートもなければ傘もない、オマケに富士山なんか見えるわけもない。

やみくもに歩き回って駅周辺に戻る。
ここで凍える身体は「妙見」なる鱒寿司の老舗に遭遇した。
店先に立つと、急に空腹感に見舞われた。
ところがちょうど14時~15時半の休憩中ではないの。
腕時計の針は15時ちょい過ぎを指している。

すぐそばに書店があり、時間つぶしに立ち寄った。
40年近く前に読んだ松本清張の推理小説、
「黄色い風土」に確か御殿場の演習場が出てきたような・・・。
おぼろげな記憶を確かめようと書棚を探したものの、
当作品は見当たらなかった。

そうこうするうち15時半。
開店早々だといかにも待ち構えていたみたいで
(実際そうなのだが)何となく小っぱずかしいから
10分ほど無駄に時間をやり過ごし、
余裕しゃくしゃくのしたり顔で暖簾をくぐった。

=つづく=

2013年3月7日木曜日

第528話 湯島のシラけ梅 (その2)

湯島天神下の「大喜」に到着。
短かい協議の末、店頭の食券販売機で購入したのは
どちらも780円の中華そばと梅塩らーめん。
中華そばが780円かい? ラーメンも高くなったものよのォ。
ちなみに梅塩は”うめしお”とひらがな表記されていた。

どのみち生ビールを飲むことになるのだが
なぜか飲みものは食券不要、店内で注文を受けてくれる。
接客の女性にその都度、キャッシュを支払えば済む。
キリンの中ジョッキ(小さめだがネ)が1杯400円也。

食券システムなのに卓上にメニューが置かれている。
これって順序が逆じゃないの。
席を確保したあと、店外に出てチケット買うわけじゃないんだから。
客への配慮が足りず、なんかチグハグだなや。

そのメニューをながめていて気がついた。
人気のとりそば系から最安だったとりそば(730円)が消えている。
高額な上とりそば(850円)と特製とりそば(950円)だけになっている。
こういうのってイヤだねェ、エゲツないねェ。
(上)と(特)を残しておいて、なぜ(並)を消すんだろ。
それともメニューから外しただけで注文すれば作ってくれんのかな。
確認する気にもなれなかったわい。

本格中華料理屋でも高級店になればなるほど、
最安値のラーメンを意図的にメニューから外す店が見受けられる。
その点、日本そば屋はいいよねェ。
もり・かけを品書きから隠すなんてあざといマネは絶対にしないもん。
これが中国人と日本人の品格の差とはけして言わんけどな。

ビールを飲みながら待つこと10分、運ばれ来たる二つのどんぶり。
一目で麺とスープのバランスの悪さが見てとれた。
スープが少なすぎるというか、ケチッてるんだなこりゃ。
横から見ると逆三角形のどんぶりの形もよくない。
もっと丸みを帯びたんじゃないと、温かみが伝わらんヨ。

梅塩の麺を一箸つまんだP子が小首を傾げた。
続けてスープを一匙すすってキツいひとこと。
「おいしくないなァ、コレ!」―
オイ、オイ、そんなにハッキリ言わんでも・・・。
だがネ、中華そばのJ.C.もアグリー・ウィズ・ハーなのだ。
途中でどんぶりを交換し、互いのダメ出しを再確認した。
う~ん、殊に梅塩はイケませんな。

そもそもメニューが多すぎるんだヨ。
二兎を追うもの一兎を得ずのことわざに逆らい、
四兎も五兎も追いかけては失敗した典型例がここにある。
たまたま数日前にひかりTVで観た故・伊丹十三監督の「タンポポ」。
スジの軸は不振きわめるラーメン店の再生物語だが
山崎努扮するヒーローが言い切った。
「メニューはラーメンとチャーシューメンだけで勝負する!」―
ハイ、まさしくその通り。

わざわざ「大喜」なんぞに連れ込んで面目丸つぶれだぜ。
湯島だけに連れ込むならラブホのほうがよっぽど気が利いてらァ。
湯島の梅塩にシラけきった二人でありました。

「大喜」
 東京都文京区湯島3-47-2
 03-3834-0348

2013年3月6日水曜日

第527話 湯島のシラけ梅 (その1)

昨日までのシリーズ、「言問橋と吾妻橋」は終了したが
その夜はまだ終わっていなかった。
早めに仕掛けたおかげで夜は浅い。
観音裏を突っ切り、ひさご通り・六区・すし屋通りと歩く。
相方は鎌倉に帰らず、湯島に宿を取ったとのこと。
それなら時間を気にせずに済む。

田原町から地下鉄・銀座線に乗って上野広小路下車。
上野広小路と湯島天神下の交差点はきわめて至近、
300メートルとないだろう。
J.C.にしてみれば、当日は松坂屋前でバスに乗ったから
双六(すごろく)でいう振り出しに戻ったってヤツだ。

「ニュー王将」で炭水化物をトースト1枚に抑えたのは
ラーメンをすすってお開きにする算段があったため。
そんな胃に負担の掛かるマネは滅多にしないが
この夜は若い相棒に合わせてやることにした。
ついでにもう一つ合わせて、彼女のホテルのある湯島に来た。
「湯島だからって、ラブホじゃないのヨ」―だとヨ。

 ♪  湯島通れば 想い出す
   お鳶主税の 心意気
   知るや白梅 玉垣に
   残る二人の 影法師  ♪
     (作詞:佐伯孝夫)

明治の文豪・泉鏡花の「婦系図」が
昭和17年に映画化されたときの主題歌「湯島の白梅」だ。

 「切れるの別れるのって
 そんな事は芸者の時に云うものよ
 私にゃいっそ死ねと云って下さい」

お蔦の名セリフがあまりにも有名。

それにしても作詞の佐伯孝夫が意想外だ。
この御大は吉田正とのコンビだけではないんだネ。
二人の天才のハナシとなると、
長引いて簡単には終らないから稿をあらためるとしよう。

さて、狙いを定めたラーメン屋は天神下の人気店「大喜」。
TVや雑誌に何十遍も紹介された露出度の高い店だ。
12年前の初訪問から数えて今回が4回目。
数をこなしたわりに、この店の人気の理由がいまだに判らない。
いろんな種類の麺を試したものの、
旨い!と思ったことが一度もないのだ。

あえて選んだのは未訪のP子に食べさせてやろうという親心。
とは言ってもコヤツ、なかなかの食道楽につき、
臆することなくダメ出しするからなァ・・・あなどれないのよネ。

=つづく=

2013年3月5日火曜日

第526話 言問橋と吾妻橋 (その3)

水面に灯りを映す吾妻橋を渡っている。
このシチュエーションだと、
口をついて出るのは健サンの「唐獅子牡丹」。

♪  おぼろ月でも  隅田の水に  
  昔ながらの  濁らぬ光  
  せめて夜明けの  来るそれまでは
  意地でささえる 夢ひとつ
  背中で呼んでる 唐獅子牡丹  ♪  
    (作詞:水城一狼/矢野亮)

せっかくだから映画のラストシーンを真似て
並び立つ花田秀次郎と風間重吉のように
肩で風を切りながら歩きたいが
その筋のオアニイさんとすれ違ったりしたら
イチャモンをつけられかねない・・・やめとこう。

当夜、予約を入れたのは観音裏の「ニュー王将」。
一人もしくは二人の場合は5席しかないカウンターに決めている。
手の空いた店主夫妻と交わす会話が楽しいからだ。

ビールは飲んで来たから
ハナからボトルキープの芋焼酎・縁(えにし)でよいが
サッポロラガー、いわゆる赤星の中瓶を1本もらった。
最初のつまみ、刺盛りの陣容は槍いか・平目・中とろ。
千住大橋の足立市場で仕入れた魚介は良質である。

本日のスペシャルに本マスが居た。
サクラマスの呼称のほうが通りがよいかもしれない。
淡水魚のヤマメが海に下っておよそ1年後、
桜花咲く季節に回帰したものをこう呼ぶ。

フライとムニエルがあり、ムニエルをチョイス。
揚げものならのちほどメンチカツかハムカツサンドをいただく。
ともに相方・P子の大好物、、
必ずどちらか、あるいはどちらも頼むことになる。
芋ロックのピッチが速いのはお互いさま。
近況を報告するのもお互いさま。

テーブル席の客からナポリタンのオーダーが入った。
すかさず店主のヤッチャンにハーフポーションをお願いする。
カウンターの特権が他人の注文にハーフで便乗すること。
こうすれば品数をこなせる。
造り手の二度手間にならないよう配慮しながら
ちゃっかりご相伴にあずかるわけだ。

ラストはメンチカツにトースト&バターでいった。
実際はバターでなくマーガリンだけどネ。
自宅の冷蔵庫には居ないマーガリンもたまには悪くない。
「ニュー王将」のトーストサンド(カツやハムカツの)は
みなパンにマーガリンが塗られている。

料理の品数を抑えたのは締めによそでラーメンの腹積もり。
向島の元芸者置屋、「らん亭」に狙いを絞っていたが
寒空に人気(ひとけ)のない桜橋を渡るのは気がすすまなくなった。
人恋しさにも拍車をかけられ、
観音裏から表側に進路を変えた男と女の影二つ。

=おしまい=

「ニュー王将」
 東京都台東区浅草5-21-7
 03-3875-1066

2013年3月4日月曜日

第525話 言問橋と吾妻橋 (その2)

上野松坂屋発、亀戸駅ゆきのバスを言問橋で降りた。
言問通りと三ツ目通りの交差点を対角に渡って
「埼玉屋小梅」の前にたたずんでいる。
何年ぶり、いや、10年ぶりかもしれない。

最初にことわっておくが、このお店、
有名な「言問団子」とはまったくの別店である。
地番はともに向島なれど、あちらは5丁目、こちら1丁目、
あちら桜橋のなおも上流、こちら言問橋の東詰、
両店は距離にして1キロ以上離れている。

読者はすでにお見通しだろうが
J.C.は懐かしさに見舞われると、とてつもなくモロい。
常に過去を振り返りながら現在を生きているからだ。
案の定、店先で懐旧の情につまづき、誘い込まれるように店内へ。
ただし、言い訳を頭の中にちゃあんと用意してネ。

寒風吹きさらす中、隅田のほとりをしばらく歩くのだ。
吾妻橋の「23BANCHI CAFE」では
スーパードライのエクストラコールドを飲み干すのだ。
冷えた身体の空きっ腹に、いきなりの冷たい生ビールはよくない。
さいわい、「埼玉屋」には団子の磯辺バージョンがある。
醤油のつけ焼きを海苔で巻いたヤツだ。
そいつをビール前のつまみとしてかじりながら、
川風に吹かれようではないか。

ところが見栄っ張りのこの男、
団子を1本だけ買う勇気がどうしても持てない。
寒い中をやって来るのはP子とて同じこと、彼女にも1本買ってやろう。
でもなァ、大の男がなァ、団子屋にわざわざ入店して団子2本かァ、
これじゃカッコがつかないぜ。
結果、磯辺団子2本、小梅団子1本、
桜もち2つを買い求めたのでありました。

隅田公園では池のほとりにつかの間くつろぐ。
岸辺には数羽のオナガガモが水かきを休めている。
団子を与えようとも思ったが絶対量が足りないので見送った。
身体も冷えているが団子も冷えている。
口中、味気ないことはなはだしいが、
そしゃくするうち、旨みが徐々に増してきた。

1杯目の生ビールが終わりに近づく頃、相方登場。
磯辺団子を進呈し、あらためて乾杯だ。
フードの持ち込みはルール違反なのだが
ここのつまみに旨いモノはないし、
団子1本くらい大目に見てくれるだろう。

「23BANCHI CAFE」のエクストラコールドは大好きだけれど、
真冬は通常のスーパードライのほうがいいかも・・・。
傍らでP子がまだ団子をモグモグやっている。
食べ終わるの待って、夕暮れの隅田川を浅草側に渡り返す。
吾妻橋の上で振り向けば
黄金のオブジェの向こうにスカイツリーがそびえ立つ。
この橋の西詰は絶好の撮影スポットになっている。

=つづく=

「埼玉屋小梅」
 東京都墨田区向島1-5-5
 03-3622-1214

「23BANCHI CAFE」
 東京都墨田区吾妻橋1-23-36
 03-5608-3831

2013年3月1日金曜日

第524話 言問橋と吾妻橋 (その1)

 ♪  なにも言うまい 言問橋の
   水に流した あの頃は
   鐘が鳴ります 浅草月夜
   化粧なおして 
   エー 化粧なおして 流し唄 ♪
      (作詞:石本美由起)

1959年、こまどり姉妹のデビュー曲「浅草姉妹」は
その翌年、同名映画化されて
当時小学三年生だったJ.C.は大田区・平和島の三原映画で観ている。
もっともあらすじはちっとも覚えちゃいませんがネ。

同じ双子デュオのザ・ピ-ナッツとは大の仲良しだった。
しかし多くのヒットに恵まれたピーナッツと比べて
こまどりはそうでもなかったように思われる。
名曲「浅草姉妹」を超える曲はとうとう生まれなかった。
1960年代に連続して7回も「紅白歌合戦」に出場しているが
なぜかこの曲は一度も歌われていない、不思議だ。

ピーナッツより3歳も年長なのに
いまだに芸能活動を続けているのは見上げたものながら
可愛らしかった容貌は見る影もなく、
今では施すその化粧の濃さからくまどり姉妹などと揶揄されている。
いくらなんでもそりゃ、あんまりじゃないかエ?

何と言っても 

 ♪ なにも言うまい 言問橋の ♪

この出だしが好きだ。
歌詞もメロディーもすさまじく浅草チック。
観音裏あたりの飲み屋でこの曲がかかったりすると、
なつかしさのあまり、心乱れるJ.C.なのである。

それともう一つ、言問橋となれば六歌仙の一人、
在原業平サンにも登場してもらわねば―。

 名にし負はば いざ言問はむ 都鳥
 わが思ふ人は ありやなしやと

ですネ。
ここに歌われている都鳥は
チドリ目のミヤコドリ(オイスターキャッチャー)ではなく、
あのかわゆいユリカモメである。

上野松坂屋の前から出るバスで根津・入谷・浅草経由、言問橋を渡った。
この日は鎌倉武士の末裔、P子と吾妻橋の「23BANCHI CAFE」で待合わせ。
浅草の名店をハシゴしようというのである。

橋のたもとで下車すると、はす向かいに「埼玉屋小梅」の暖簾が見えた。
いつだったかなァ、花見の際にいなり寿司や団子を買ったのは・・・。

=つづく=