2014年3月31日月曜日

第805話 8年ぶりのミルクホール

ときどき顔を出すJR神田駅そばの大衆酒場「三州屋」。
同名店が表通りと裏路地、目と鼻の先にあって
いつも行くのは裏のほうだ。
フフッ、座頭の市っつぁんじゃないが
ずいぶんとご法度の裏街道を歩いてきたからネ。

ともに暖簾分けだから出生は一緒でも経営はまったくのベツ。
それぞれに、そこそこに、常連客をつかんでおり、ご同慶の至り。
裏路地で軽く飲んだあと、
旧連雀町(現神田淡路町界隈)を散策するつもりで
多町の本通りを足早に歩いていた。

とある店の前に差し掛かり、
そのまま素通りしたものの、すぐ足が留まった。
「栄屋ミルクホール」。
ニューヨークから戻り、
日本橋室町のオフィスに通い始めたころだから
かれこれ15年も以前になるんだねェ。
時計が止まったような店内の雰囲気に
心なしか安らぎを覚えていくども訪れた。

そうだ、ハシゴをやめてラーメンを食ったらウチに帰ろう。
記憶が確かであれば、ここのラーメンはすばらしくはなくとも
素朴で昔風で、昭和の香りが立ち上る1杯だったハズ。
間違っても今どきありがちなギトギト脂っこく、
ケモノの臭いまみれの駄品ではない。

何の迷いもなく引き戸を引いていた。
すると先客はゼロ。
背の高い中年のオジさんが独りで
接客と調理を兼ねている様子だ。
注文を受けたら調理場に消えていった。

どんぶりは湯気を立てて運ばれた。
おっ! おおっ!
ひと口すすったスープに舌が即反応する。
ややっ! こりゃ明らかに以前より進歩しているゾ。
チキン主体の出汁がよく出ている。
穏やかなコク味を伴って、食べ手のほほを緩ませる。

ひと箸すすった麺も好きなタイプ。
ストレートの細打ち麺は固めにゆでられており、
しっかりとコシを残している。
量はだいぶん多くなったように思う。
どっしりと食べ応えがあった。

具はもも肉チャーシュー、支那竹、小松菜の3品。
ここにナルトと海苔が1枚づつ加われば、
典型的な昭和の中華そばと相成る。
いや、何とも旨いラーメンに生まれ変わったものだ。
帰宅後、調べてみたら前回の訪問は2006年。
実に8年ぶりの訪問であった。

「栄屋ミルクホール」
 東京都千代田区神田多町2-11-7
 03-3252-1068

2014年3月28日金曜日

第804話 赤い激痛

先週、「岸辺のアルバム」がらみでふれたTVドラマ「赤い激流」。
数名の方から「山口百恵は主役じゃないですヨ!」と、ご指摘があった。
そのうちのひと方、I澤サンのメールを紹介したい。
長文につき、割愛させていただいたものの、脚色はしていない。

「岸辺のアルバム」の回を読んでいて気がつきました。
もう指摘された方がいると思いますが、
同時期に放映された”赤いシリーズ”史上、
最高視聴率を誇るのは「赤い激流」で合っています。
しかし、主演が違います。

これは唯一、山口百恵が主演を演じなかった作品です。
じゃあ、主演は誰かって? 
今では「相棒」で人気を博す水谷豊さんです。
周りを固めたのは先日亡くなられた大好きな俳優、宇津井健さん、
そして惜しまれつつ鬼籍に入られた緒形拳さん、石立鉄男さん。
女優陣は、岸恵子さん、松尾嘉代さん、竹下景子さん、
そして山口百恵さんもゲスト出演していました。

山口百恵の代わりに無名の水谷豊が主演だったのに
どうして高視聴率を取れたのか? 
何故だと思います? 
観ていたければ判ると思いますが書いちゃいますね。

① ”赤いシリーズ”史上初の推理ドラマだった
② 水谷が弾くショパンの「英雄ポロネーズ」のインパクトが強かった
③ 宇津井健と水谷豊の師弟愛、親子愛が感動を呼んだ

当時、私は中学生でしたがクラスの全員が観ており、
犯人は誰だ! で意見を交わしていました。
そして水谷豊が劇中で弾いた「英雄ポロネーズ」、
「ラ・カンパネッラ」、「テンペスト」で
私は一気にクラシックにはまってしまいました。

もし、お時間がありましたら、ぜひDVDを観て下さい。
 (レンタル無いかもしれませんが)
昔のドラマなので今観たら、わざとらしく感じるかと思います。
犯人もすぐに判ってしまうかもしれません。
時間の無駄になったらご容赦下さい。

I澤サン、まことにありがとうございました。
すると数日後に第2便が着信。

”赤いシリーズ”を調べましたら
山口百恵が出演しているのは全10作品中、7作品だけでした。
そう言えば、柴田恭兵主演の”赤いシリーズ”を思い出しました。
失礼しました。

いえ、いえ、ごていねいに、重ねて感謝いたします。

観てもいないドラマを引き合いに出して、ポカをやらかしてしまい、
J.C.の胸には激流ならぬ、激痛が走りましたとサ。

2014年3月27日木曜日

第803話 ありそでなかった中華のレバ焼き

宮城県・登米市となれば、
「麺や文左」のほかにもう1軒、
是が非にも紹介しておきたい店がある。
実は今回もスキを見ておジャマしたかった。
ところがスケジュールはあまりにもキツキツ。
よって訪問かなわずであった。

それでもちょっと間、
身体が空いたので電話を入れたものの、
休憩時間だったらしく、ノー・アンサー。
仕方なく断念した次第だ。
したがって前回訪れた際のリポートとなる。

忘れもしない昨年の日本シリーズ第6戦。
地元、楽天のマウンドには今をときめくマーくんが
あのどんぐりマナコで巨人打線を見くだしていた。
そのときJ.C.は店のTVの真ん前に独り、陣を取っていた。
プレイボールからゲームセットまでじっくり観戦したが
何せ2013年における田中将大の敗戦はこの1試合のみ。
貴重なゲームを観ることができた歓び、いかばかりであろうか。

中華料理店の名は「賢龍」。
ストリートの名こそ知らねど、
幹線道路に面したプチ・ドライブインのような店。
目の前には晩秋の田んぼが拡がっていた。

この店を訪れるのは二度目だった。
前回、目にとめて惹かれ、オーダーしたレバ焼きを再びお願い。
もともとレバーは大好物だから
しょっちゅう焼きとん屋をたずねているが
中華料理店においてはせいぜいニラレバくらいしか選択肢がない。
しかもニラレバを謳っているのに実際はモヤシレバであることたびたび。
不満は残るし、納得もいかない。

しかしこの店ときたら豚レバがビシッと主役を張るレバ焼きなのだ。
試しに注文してみたがズドンと真ん中に命中だった。
オラ、こんなレバ好きだ!
これぞ純レバなりき
いいですなァ、いいでしょう?
脇の長ねぎとピーマンがことのほかうれしく、
かれらはかれらでおのれの存在をけなげに訴える。
うん、キミたちの美味は、よお~く判っちょる。

レバを口元に運びながらTVを観レバ、
おや? 今夜のマーくんはいつもと様子が違うじゃん。
得意の持ち玉、スプリット・フィンガーに心なしかキレがない。
あらら、高橋由伸が打ったヨ、
あやや、やったヨ、巨人が勝っちゃったヨ。

こんなシーンはまず観られない。
思わずビールを追加して最後まで観きったのだった。
よって夜更けの会合に遅刻すること半時間。
失礼こうむった次第ながらワケを弁明すると、みなさん許してくれた。

しっかし、このレバ焼きを炊きたての登米米の友としたら
さぞや旨かったことでありましょう。

「賢龍」
 宮城県登米市南方町王塚50−1
 0220-58-5228

2014年3月26日水曜日

第802話 酒宴は「酒縁の会」だった!

宮城県きっての美米の産地、登米市に到着。
かの伊達政宗はことのほか、この地の米を愛でたという。
品種はひとめぼれが主流となっている。
ここしばらく、自宅では登米米しか食していない。
これが実に旨いのだ。
コシヒカリとはまったく異なる美味しさである。

当夜は「麺や文左」で催された酒宴に出席した。
”麺や”といっても都内にありがちなラーメン店に非ず。
古民家を改築した素敵な和食店である。
開業して2年余りになるが、この地にこれ以上の飲食店舗はない。
市のランドマークになる日も遠くはあるまい。

あれはちょうど2年前。
ハーピストの石崎千枝子サンのディナー・コンサートだった。
MCを仰せつかり、訪れたのが初めて。
それ以来、ご縁が生まれた。

当夜は地元の造り酒屋、一の蔵酒造とのコラボ・イベント。
題して「酒縁の会」、料理の内容をつまびらかにしておこう。

☆先付三種  
 ほたる烏賊塩辛  サーモンと菜花の黄味辛子  登米牛たたき

☆蟹しんじょうと雪菜の吸物

☆お造り三種 
 寒すずき肝醤油  まぐろ磯辺和え  烏賊筋子醤油  

☆どんこと大根と芹の味噌煮 

☆天ぷら二種 
 めひかり  真鱈白子の湯葉揚げ 

☆宮城産小麦のうどん青葉の恋 

☆塩麹のアイスクリーム    

すばらしかったのは蟹しんじょう。
京都の老舗料理屋でさえ、ここまでの逸品にはそうそう出会えまい。
桑の葉を練り込んだ青葉の恋も特筆に値しよう。
青葉の恋は商品開発されて近々、市場に出回るそうだ。

加えて一ノ蔵の美酒群が拍車をかける。
いや、まいったなァ。
清酒と和食の相思相愛を実感した次第でありました。

乾杯の発声、福引きのクジ引きと卓を離れることいくどか、
だけどそれがなければ、あわや轟沈するところだった。
くわばら、くわばら。
ちなみに「麺や 文左」の所在地は南方町雷(いかずち)でしたとサ。

「麺や 文左」
 宮城県登米市南方町雷35
   0220-29-7227

2014年3月25日火曜日

第801話 鯊(はぜ)と穴子とジェラートと (その2)

初めに訂正です。
第794話、「岸辺のアルバムを観たけれど・・・(その1)」で
TVドラマ「赤い激流」を山口百恵主演と書いちゃいましたが
”赤いシリーズ”でもこの作品に彼女は出ていませんでした。
I澤Y一サンはじめ、数名の方からご指摘をいただきました。
感謝いたします。

なお、I澤サンからのメールがとても興味深いものがあり、
”みちのくひとり旅シリーズ”が終わりましたら、紹介したいと思います。

さて、松島の絶景をしばし眺めたあと、
地元では知る人ぞ知る、そして知らない人は知らない、
天ぷら店「大漁」の小上がりに脱靴した。
店舗は幹線道路の奥松島パークラインに面している。
運ばれた料理をご覧いただきたい。
ボリューム満点のはぜアナゴ定食
こちらもガッツリ、かきフライ定食
「大漁」だけに大量だぜ、こりゃ!
難敵のはぜアナゴ定食はまず大ぶりの鯊が3枚、
その下に20センチはある穴子が丸1尾だ。
鯊はホクホクとキスとメゴチの中間的な食感。
秋口になれば東京の天ぷら屋でお目に掛かれても
そう簡単に食する機会に恵まれないのが鯊だ。
二人仲良く1枚半づついただいた。

穴子も半身づつ分け合う。
鯊・穴子ともに身肉の旨さは格別。
ただし、サラダ油主体で揚げた天ぷらは好みではない。
多少なりとも胡麻油をブレンドしてもらいたい。
その旨を相方に伝えたらことのほか落胆した様子。
言わなきゃよかったと、後悔のほぞをかむ。

かきフライのかきは地元の磯崎産。
旬の峠を越えていてもじゅうぶん楽しめた。
もともとかきは瀬戸内よりも三陸が好きだ。
ところが最近は播磨灘のものがとても良質。
兵庫県・坂越産なんか、三重県・的矢産にも似たエレガンスが漂う。

昼食後、のみともが若かった時代に御用達だったジェラート屋に赴く。
天ぷらに不満をもらしたJ.C.にこれなら絶対、気に入るハズとの仰せ。
言わば、天ぷらの仇を氷菓で討つ腹積もりなのだ。
だがネ、口には出さず胸のうちでつぶやいた。
(アイスクリームかよォ、あんまりうれしくないなァ)

でもって行きました「ポポロ」なる、
ローマの広場の名前を冠したジェラートショップへ。
ここはテイクアウト専門店。
「どれにする?」と訊ねられ、迷っているうちに
結局は薬局、二つとも相棒が決めちゃったヨ。

選定はヴァニラとラムレーズンであった。
支払いをする友を背にコーンを両手に自動ドアのボタンを押す。
すぐに店外に出ればよいものを
振り向いたりしているうちにドアが閉まって右手を強打。
「痛っ!」― Oh, my God ! まっさかさまにヴァニラが堕ちていきました。

 ♪ まっさかさまに堕ちて 痛いやァ ♪

ところで明菜は元気になったんだろうか?
2ヶ月ほど前に結婚の噂を聞いたけど・・・。

ともかく堕っことしちゃったジェラート。
でもネ、それを見ていたお店のマダム、親切にも新しいのをくれた。
ありがとうネ、オバちゃん!
そうしてこうしてジェラートをなめながら次の目的地、
県北・登米へ向かいましたとサ。

「天ぷら 大漁」
 宮城県宮城郡松島町磯崎長田80-47
 022-353-2235

「ジェラートショップ ポポロ」
 宮城県宮城郡松島町高城字浜38-3
 022-354-6322

2014年3月24日月曜日

第800話 鯊(はぜ)と穴子とジェラートと (その1)

まだ宮城県にいる。
前日は昼夜を分かたず酒友の世話になりっぱなし。
ディナーの骨付きポークチョップが旨かった。
添えられたラタトゥイユも上デキ。
スペインはリオハの赤ワインともバッチリだった。
ただひたすら感謝。

さて、この日はアナザーのみともと松島へ。

 松島や ああ松島や 松島や

の松島である。
松尾芭蕉の句と信じている方もおられようが
これは狂歌師・田原坊の

 松島や さて松島や 松島や

が出自で芭蕉の作ではない。

恥ずかしながらJ.C.、日本三景の松島を訪れるのは初めてだ。
なるほど、湾内に散在する大小の島々は粒不揃いの真珠の如し。
昨日は狐崎浜の真がきだったが今日は松島湾の穴子。
松島は東京湾、東瀬戸内海、対馬海峡と並ぶ穴子の名産地である。

敷居をまたいだ店の名は「大漁」。
何だか上野あたりにありそうな大型活魚居酒屋みたい。
確か、花街・向島にも同名店があった。
この河豚料理屋は客の面前で
まな板の上の活きた虎ふぐをさばくパフォーマンスがウリだった。

のみとものイチ推しは穴子天丼。
ところが隣客のテーブルに運ばれるところをたまたま垣間見た。
ゲッ、おっそろしいサイズだヨ。
20センチはあろうかと思われるアナゴが丸々2本、
どんぶりに堂々と平行棒状態。
これには怖気づいちゃいましたネ。

相方曰く、2年ほど前に東京からやって来た視察団を
当店に案内した際は10人が10人、
穴子天丼を注文して全員完食したんだと―。
中には年配者も女性もいたが、みんなペロリだったんだと―。

ハナから天丼でいくつもりの相方に抵抗を試みる。
夜には和食のフルコースが控えている身、
胃袋がフルアップではフルコースに臨むべくもない。
よって注文品に注文をつけたワケだ。

壁の品書きを仰ぎ見ながら吟味に入る。
磯崎産かきフライも見える
はて、どうしたものか。
結局、合意をみたのは、はぜアナゴ定食とかきフライ定食。
だが、この2品、
殊に鯊と穴子の連合艦隊は想像を上回る難敵であったのだ。

=つづく=

2014年3月21日金曜日

第799話 市場の中のかき小屋で

立ち飲み酒場と座り飲み居酒屋でくつろいだ翌日。
仙台の空模様は妙であった。
陽射しがあるのにささやかな雪が舞っている。
天気雨というのは何度も経験しているが天気雪は記憶にない。
いや、ニューヨークで一度あったかな?

迎えに来てくれた酒友のクルマで行ったのは仙台・杜の市場。
市の中心の東側に位置するのに
なぜか広瀬川のせせらぎを渡り、30分近く走ったろうか―。
「杜のかき小屋」は市場内にあった。

隣りは仙台名物・牛タンの店だが厨房が中でつながっており、
焼きがき専門店のこちらに牛タンメニューがあるかと思えば、
牛タン専門店でもかき料理を出す。
経験上、こういった二兎を追うタイプはハズレが多い。
もちろん案内してくれた相方にそんなことは言えない。
ましてや運転があるため、酒をガマンしてくれているのだ。
恐縮した当方も缶ビールを2缶にとどめた。

店の中央にガラス張りの大きなボックスがデンとある。
ボックスといっても天井までとどいていて
中には緑葉植物がいっぱいだ。
接客の女性がすすめてくれたのはその葉野菜を使ったサラダ。
見た目が食欲を刺激する
メニュー名は”水耕栽培の生野菜サラダ(380円)”。
ルッコラやバジルに混じり、
珍しいスイスチャードも盛込まれている。
これは別名・リーフビート、和名を不断草という。
生野菜たちはみなとても美味しかった。

そうこうしているいち、焼きがきが焼き上がる。
石巻は狐崎浜の産である。
身はプックリと小太りで
最初の3個はサービス価格で400円。
もちろん1人3個じゃ足りないから
もう3個づつ追加すると、今度は500円にアップだ。

この時期(3月初旬)、生がきはイケないそうで
それならかきフライである。
ここでJ.C.が過ちを犯した。
かきだけにしとけばよいものを
あまり好きでもない海老フライと盛合わせた、
ミックスフライを主張してしまったのだ。
定食仕立てで1200円
かきはまずまずながら海老がデカすぎ。
しかもコロモが厚すぎ。
かなり腹にこたえ、これでは晩めしが不味くなる。

やや季節はずれとはいえ、狐崎のかき自体は悪くなかった。
遅めに取った昼めしのあとは酒友のお宅へ乗り込んで宴会だ。
2缶のビールが呼び水となって、さらに飲みたいし、
せっかく杜の都まで遠征して来たカイもない。
第一、酒を酌み交わさずにどうして酒友と呼べようか!

「杜のかき小屋」
 宮城県仙台市若林区卸町5-2-6 仙台場外市場杜の市場
 022-231-8371

2014年3月20日木曜日

第798話 雪がチラチラ 仙台の夕べ (その2)

仙台は勾当台公園近く、立ち飲み「ぼんてん酒場」にいる。
市内には鮮魚中心の姉妹店、「ぼんてん漁港」があり、
どちらも仙台っ子に人気をはくしていると聞いた。
昨日はドリンクを披露したので今日はフードの番。

★フード
 とりあえず・・・枝豆・赤ホヤの塩辛・おかか奴チーズ
 焼物・・・帯広風焼豚・イカポッポ・鮭とばソフトチップ
 刺身・・・本日のお刺身・鮪中落ち・炙り〆鯖
 サラダ・・・スパゲッティサラダ・男爵ポテトサラダ・旨冷トマト
 揚物・・・串カツ・ハムカツ・甘海老揚げ・揚げたてコロッケ
 一品料理・・・もつ煮・豚角煮・肉じゃが・焼おにぎり(2個)
 本日のおすすめ(計8品)・・・店内の黒板からお選びください

一部だが、こんな感じですべて300円。
注文したつまみは以下の2品だ。
蛍いかと新わかめの酢味噌かけ
おすすめの一品だが身はまだ小さく、痩せ気味。
これは本場・富山湾に揚がったのではないな。
おおかた兵庫産だろう。
近頃は鳥取産も市場に出回るようになった。

赤ホヤの塩辛
ともに日本酒との相性がよいが、こちらがベター。
何たってホヤは三陸の特産品だからネ。
きざみねぎが乗って、塩辛の下には大根おろしが潜んでいた。
結局、熱燗2杯に常温2杯、計4杯飲んじまった。

例によって当夜も1軒で済むワケがない。
チラついていた雪はほぼ止んだし、
進路を真北にとって北四番丁に移動。
これもあらかじめ調べておいた居酒屋「呑斗丸」に入店した。

本日初のビールはスーパードライの中ジョッキ。
翌日のスケジュールが詰まっているので深酒は避け、
2杯だけにとどめておく。
この店ではオッツケのお通しが2品出て
貝ヒモのメカブ和えに、何とまたもや蛍いかの煮付け。
仙台市民は蛍いかがお好みらしい。
注文のないモンを置いても仕方ないし、
人気のない料理を突き出しにしても不評を買うだけだ。

1品頼んだつまみは気仙沼ホルモン。
その名は聞き及んでいたものの、食べるのは初めて。
何でも港町・気仙沼には30年ほど前まで屠畜場があって
ホルモン焼きが盛んに食べられていたそうだ。
その名残りなのであろう。
下ゆでしない豚の生モツを使用するのが特徴とのこと。
期待してつまんだが、それほど美味しいものでもなかった。
東京の下町の焼きとんのほうが好きだなァ。

明日は地元ののみともが牡蠣をご馳走してくれるという。
自分としてはわりと早めにネグラに帰り、
一浴して寝(しん)に就いた。

「ぼんてん酒場」
 宮城県仙台市青葉区一番町4-5-19東一市場ビル1F
 022-721-5150

「呑斗丸」
 宮城県仙台市青葉区二日町18-22
 022-223-767

2014年3月19日水曜日

第797話 雪がチラチラ 仙台の夕べ (その1)

所用を兼ねて仙台への旅。
杜の都に到着したのは17時過ぎだった。
仙台駅構内のスーパー、S-PALの鮮魚売場で
地場のサカナの取り揃えをチェックしてから夕暮れの街に出た。

雪がチラチラ舞っている。
けして大雪ではないけれど、傘を要する降りっぷりである。
駅からわりと近場に目星をつけた酒場があったが
地図もなければデータもない。
ぶらぶら探せば店に当たると軽い気持ちでいた。
でも、この雪の中を歩き回る気には到底なれない。

ケータイは電話とメール以外に使わない主義。
よってネット検索はしない。
仕方ないから市内随一の繁華街、国分町へでも赴くか・・・。
いや、2軒目に行く予定の酒場に直行してしまおう。
そこなら大体の見当はつく。
確か、三越デパートの裏手あたりのハズ。

地下鉄の仙台駅は地下でつながっているものの、
JRのセントラル・ステーションからけっこう歩く。
切符を買う段になって思った。
多少途切れはしても目的地までアーケードが続いているから
ほとんど雪に見舞われることがない、よって歩くことにする。

立ち飲み「ぼんてん酒場」はすぐに見つかった。
仙台で立ち飲むのは初めてのこと・・・楽しいな。
ところがドリンク・リストを手にしてガックシ。
ビールがプレモルしかないじゃんか!
新幹線の中ではつとめてがまんしたのに何てこったい。

ホッピーでもないしなァ。
まっ、雪も降ってることだし、いきなり熱燗でいこう。
銘柄は松竹梅の豪快ってヤツ。
これが小さな銚子で300円。
というか、この店は酒もつまみも一律300円なのだ。

リストをザッと紹介してみよう。

★ドリンク
 ホッピー 焼酎(麦・芋・米・黒糖) 泡盛 マッコリ
 日本酒(冷酒・燗酒・常温) 紹興酒 梅酒
 ハイボール 酎ハイ サワー ワイン(白・赤・赤玉)

たいした品揃えだこと。
イタリア産リキュールのアペロールまであるぜ。
日替わり地酒だけは例外的に1杯600円。
ハハ、<これだけすみません>とあった。
正直でよろしおすな。

フードについてはまた明日。

=つづく=

2014年3月18日火曜日

第796話 「岸辺のアルバム」を観たけれど・・・ (その3)

とにもかくにも観始めた「岸辺のアルバム」である。
TSUTAYAのDVD取り寄せ便は月に8枚の契約。
これが一度に2枚づつ送られてくる。
1枚に2話収録されており、全15話観るのに7回の配送だ。
最後の13・14・15話はサービスで1枚に3話。
結局、観終わるのに丸1ヶ月を要した。
途中、何度も途中下車しかかったが、何とか観了した次第。

そういえば、2年ほど前だったかな?
1975年放映の「悪魔のようなあいつ」。
阿久悠原作、沢田研二主演のTVドラマで
主題歌もジュリーの「時の過ぎゆくままに」。
これは見事に途中で挫折した。

若山富三郎・荒木一郎・安田道代(現・大楠)と
すべて好きな役者が出ていたにもかかわらず、ダメだった。
途中でやめちゃったから記憶にないが、あとで調べたら
ディック・ミネ・尾崎紀代彦・岸辺修三(現・一徳)と
やたら歌手の出演が目立つ。
ゴールデン・カップスのデイブ平尾まで出ていやがった。

ほかにも篠ヒロコ・悠木千帆(現・樹木希林)・浦辺粂子の女優陣。
藤竜也・伊藤四朗・金田龍之介・細川俊之の男優陣。
かなりの個性派揃いにしてて豪華なメンバーだ。
こんなキャスティングは現代ではもう不可能であろうヨ。
こんなことなら我慢して最後まで観とけばよかった。
ヒマが出来たら奮起して再挑戦してみようかしら・・・。

おっと、「悪魔の~」じゃない、「岸辺の~」だった。
岸辺と言えば、岸辺一徳。
数日前にNHKのBSプレミアムで
昨年末のタイガース東京ドーム公演を観る機会に恵まれたが
この人のベースはスゴいネ、世界的ベーシストじゃなかろうか。
あっ、また脇道にそれちゃった。
タイガース公演についてはまたあらためて取り上げたい。

そうしてこうして観終えた「岸辺のアルバム」。
観了したのだから面白くなかったワケではない。
でも、期待ほどではなかった。
期待が大きすぎたせいもあるのだろう。
ただ、1970年代後半の匂いが画面からかぐわしく放たれて
懐かしさに胸が熱くなったシーンがいくつか・・・。

ぶっといネクタイにだだっぴろい背広のラペル。
刺激されて「岸辺のアルバム」ならぬ、自分のアルバムを開いたら
映ってましたヨ、そんな格好の自分の姿がバッチリと―。
ハハ、髪の毛なんかスパイダーズみたいな長髪だもんネ。
いや、自分の姿に笑えた、笑えた。

そして劇中、国広冨之と風吹ジュンが飲む缶ビールだ。
何と今は無きサントリー純生のロング缶ときたヨ。
あの時代にロング缶があったんだねェ、いや、驚いた。
若かりし頃、愛飲した純生に出会えただけでも
「岸辺のアルバム」を観たカイがあったというものでした。

=おしまい=

2014年3月17日月曜日

第795話 「岸辺のアルバム」を観たけれど・・・ (その2)

1977年夏、お盆の時期に伊豆七島は神津島にいた。
のみとも兼ポン友の仲間が4人揃っての気まぐれ旅だ。
その最中の8月16日朝、
民宿で朝めしを食べているときに
エルヴィスの訃報をラジオで知ったのだった。

四方を海に囲まれた島を訪れているのに
海水浴なんかそっちのけ。
酒を飲み、卓を囲み、そして難破、もとい、
ナンパにいそしんだのである。
いやまったく、飲む・打つ・買うのフルコースだヨ。
さすがに金銭のやりとりはないから
”買う”というのは当たらないけど、
みな若くエネルギーに満ちみちていた。

当時、流行っていたピンク・レディーの「渚のシンドバッド」を
地で行こうと目論んだナンパ旅だったが
飲む・打つほどに、最後の一つは簡単じゃなかった。
それでもそこそこの成果を挙げたんじゃなかったかな?

ダダ話はいいかげんして本題に戻す。
TVドラマ「岸辺のアルバム」だった。
TV史上最高とほまれ高いベストアルバム、
もとい、ベストドラマなのに
当時、夜な夜な遊びまくっていたJ.C.はただの1話も観ていない。

最近、その名声を耳にするたび、観たいと思ってはいた。
たまたまDVD化されているのを知り、
例によってTSUTAYAの取り寄せ便を手配したわけだ。

初回を観た感想・・・あまりピンとこなかった。
ジャニス・イアンが歌う主題歌の「ウィル・ユー・ダンス」も
ビゼーのオペラ、「カルメン」の「ハバネラ」に似ており、
ちょっと違和感があった。

八千草薫が演ずる、いかにも貞淑そうな主婦が
これから不倫に走るという筋書きになじめない、
というか、想像しにくいものがあった。
不倫相手の竹脇無我にしても
どこか唐突な現れ方に口説き方。
加えて煮え切らなさが鼻について
アバンチュールになびく必然性が伝わってこない。

八千草の夫役、杉浦直樹は好きな俳優につき、
ひいき目もあって無難に役柄をこなしたという印象。
娘役の中田喜子は不良外人にレイプされた挙句、
妊娠・堕胎と若いみそらでご苦労なこったが、
この2年前に放映されたNHK朝の連続テレビ小説、
「おはようさん」のイメージが強すぎ、
観るもののジャマをする。

息子の国広富之は「岸辺のアルバム」がデビュー作。
ちょいとウルサすぎるきらいはあるけれど、
新人のわりに伸びのびと演じていた。
国広の恋人みたいな相手役の風吹ジュンは好演。
あの個性は稀少にして貴重だと思う。

とにかく乗りかかった船、
途中で下船するわけにはいかなくなってしまった。

=つづく=

2014年3月14日金曜日

第794話 「岸辺のアルバム」を観たけれど・・・ (その1)

雑誌やTVなど、メディアの特集で
TVドラマの歴代ベストが取りざたされると
必ずといってよいくらいTop3をはずさないのが
TBS制作の「岸辺のアルバム」。

1977年6月末から9月末まで
およそ3ヶ月に渡って全15回が放映された。
短期間の番組にも関わらず、
視聴者に大きなインパクトを与えた名作なのだ。

ハナシは脇にそれるが
1977年とはどんな時代だったろう。
歌は世につれ世は歌につれ、
ヒット曲で往時を振り返ってみよう。

その年のレコ大受賞曲は沢田研二の「勝手にしやがれ」。
下積んでいた石川さゆりは「津軽海峡・冬景色」で大ブレーク。
「北国の春」(千昌夫)、「昔の名前で出ています」(小林旭)も
東京の街中を流れに流れまくっていた。
前年にデビューしたピンク・レディーは「カルメン'77」、
「渚のシンドバッド」、「ウォンテッド」、「UFO」と、
まさにヒットのオンパレード、全盛期を迎えていた。
思い起こせば古き良き時代であった。

そこで’77年のマイ・ベスト5。

① 雨の物語(イルカ)
② 能登半島(石川さゆり)
③ 迷い道(渡辺真知子)
④ 秋桜(山口百恵)
⑤ あずさ2号(狩人)
 次点:九月の雨(太田裕美)

映画では「幸せの黄色いハンカチ」、「八甲田山」が観客を集めた。
ともに邦画の歴史を彩る佳作である。

その他のTV番組では
香山美子・林隆三・中尾彬の三角関係を描いた「愛の嵐」。
山口百恵主演の”赤いシリーズ”で
最高視聴率を誇る「赤い激流」(第5作)が放映されている。

「赤い激流」の放映期間は
ほとんど「岸辺のアルバム」と重なっているから
TVドラマ史に残る名作も
こと視聴率においては当時の百恵人気にはかなわなかったのだ。

「赤い~」、「岸辺の~」の両番組がオン・エアの真っ只中、
8月16日にエルヴィス・プレスリーが突然死した。
のちにニューヨークでジョン・レノンが射殺されたときと同じくらいに
衝撃を受けた記憶がある。

この日のことはよく覚えている。
学生時代にバイト先で知り合った仲間と
それぞれが就職したあとも交流が続いており、
たまたま4人、徒党を組んで伊豆七島の神津島に渡っていた。

=つづく=

2014年3月13日木曜日

第793話 ガーリック from からつ (その2)

JAからつの手になるジャンボにんにく”たまがった”。
もっとも実際に作っているのは契約農家であろうがの。
エッ、デカい、デカいとホザいちゃいるが
どんだけデカいのか、想像がつかないってか?
そりゃ、ごもっとも、ではこちらをご覧ください。
ソムリエナイフと較べてちょ
どうです、前代未聞でしょ?
にんにく大好き人間J.C.のこと、
世界各地でいろんなヤツを賞味してきたが
こんなのは空前絶後でありました。

ネットに4個入っていたので
友人2人に1個づつおすそ分け。
手元に残った2つのうち、
やっと1つを10日も掛けて使い切った。

お味のほうはいかがだったか? ってか?
そのご心配、手に取るように判りやんす。
薹(とう)の立ったご婦人、
もとい、蕗(ふき)の薹は箸にも棒にもかからない。
独活(うど)の大木という例もあることだし、
デカいばかりが能ではない。

今は昔、作曲家の山本直純先生が
指揮棒振り回すテレビCMがあった。
そう、森永エール・チョコレート。
エールは、エールを送るのエール。
キャッチコピーは「大きいことはいいことだ!」。
大は小を兼ねるのことわざもある。
ところがギッチョン、こと食べものに関しては
小よく大を制することが多いのだ。

でもって、この”たまがった”である。
いや、正直言って気に入りましたネ。
単なるでくの坊ではなかった。
何と表現したらよいだろう。
食感はにんにくと慈姑(くわい)の中間感じ。
慈姑といっても判らんよねェ?
果実のようなにんにくと言ったら判っていただけるだろうか。
シャッキリ感を備えたフルーティーなにんにくなのである。

先日、とあるスーパーで
値段のわりに良質の本まぐろを見初めた。
見たところ、部位は赤身であった。
これが5切れで500円は割安感が強い。

帰宅後、冷酒の友にしようと思ったが
わが冷蔵庫には”飼育”している本わさびが種切れ。
「あちゃ~!」―やっちまっただヨ。
数日前に使い切ったんだ。
添えつけのニセわさびじゃ、せっかくのまぐろが台無しだヨ。

そこで一案、くだんの”たまがった”を薄くスライスして
トルコ産の養殖まぐろと合わせてみると、
いや、グンバツの旨さでござった。
鮪にゃ山葵、鰹にゃ大蒜(にんにく)が鉄則ながら
ジャンボ野郎は鮪ともガッチリ手を組んだのでした。
めでたきかな。

「JAからつ 唐津中央営業センター」
 佐賀県唐津市山本古川788-1
 0955-78-0621

2014年3月12日水曜日

第792話 ガーリック from からつ (その1)

このところいただきモノが多い。
まことにありがたいことである。
友人・知人がヤモメの独り暮らしを哀れんで
恵み与えてくれているのかもしれない。
ご厚情に感謝の念やみがたし。

此度は九州・佐賀から宅配便で到着した。
送り主は東北の友人だが
出張で北九州を一めぐりしたらしい。

来客のないわが家のことだから
玄関でピンポ~ン!と鳴れば、ほとんどの場合が宅配便。
ウチのバカ猫はこの音を聞くと、
まっしぐらにどこぞへ姿を隠す。

まだ1歳か、2歳の頃、
エアコンの取り付けに来た電気屋のアンちゃん二人が
ピンポ~ンの音とともに登場し、ずいぶんと長居していった。
それに嫌気が差し、トラウマになったようだ。
わが愛猫ながら、哀れなヤツよのォ。

とにかく届いたパッケージを開けたら
イカ・イワシ・トビウオと一夜干しが勢揃い。
ほかに大きなスルメが1枚あった。
もちろんスルメイカ(真イカ)を干したもので
通常のスルメよりもソフトに仕上がっている。
高級品の剣先イカのそれを思わせる。

イカの活造りで名高い佐賀県・呼子港。
サカナたちはそこの朝市で調達したものだった。
朝めしのおかずに晩酌のつまみに楽しむこと数日。
いや、旨かったのなんのって!

それはそれとしてダンボール箱には
海産物に混じり、見慣れぬ物体が一つ。
ちょっと見ではその正体がつかめなかった。
ご覧くだされ。
コイツは芋か?玉ねぎか?
赤い紙片を読んでやっと判った。
これは同じく佐賀県は唐津の名物、
ジャンボにんにくで、その名も”たまがった”。
”たまがった”とは九州や四国の方言。
びっくりする、肝をつぶす、という意味は
標準語の”たまげた”でござんした。

ラベルには
”肥沃な唐津の大地でジャンボに育てました”
とあった。
造り手は「JAからつ」である。
しっかし、こんなデッカいにんにく、見たことないぜ。

=つづく=

2014年3月11日火曜日

第791話 びっくり仰天 2本のバローロ

ニューヨークから里帰りして来た、
のみとも・K美子と浅草ではしご酒を楽しんだが
実は彼女、みやげを持ってきてくれていた。
毎回、何か携えて帰国してくれる。
貰い手のイタリアワイン好きを熟知しており、
バローロやバルバレスコであることが多い。
今回はバローロであった。

その包みを開けてびっくり仰天、有頂天。
何となれば、ついひと月前に飲んだのと
同じカッペラーノだったからだ。
正しくは

 カッペラーノ・バローロ 2007
 オッティン・フィオリン ピエ・ルペストリス・ネビオリ

ずいぶん長ったらしくもご立派な名前じゃないか。

ひと月前のは、みちのくののみとも・R子が持参してくれ、
ヴィンテージは2006年、東京で買い求めたのだという。
今回のはニューヨークのリカーショップで買ったそうだ。

稀少な造り手による高価なワイン。
二人にカッペラーノの話など一度もしたことがないのに
よくぞ選んでくれたものよのォ。
そしてよくもこんな偶然が起こるものよのォ。
まさしく奇遇中の奇遇と言わねばならない。
確率的にほぼ不可能な現象なのだ。

J.C.にとって二人はともに大切なのみとも。
あいや、単なる酒友にとどまらない。
もしもどちらか黄泉の客に招かれでもしたら
悲嘆の涙にくれること、確実であろうヨ。
ん? 鬼の目にも涙ってか? 
ほっとけや!
ハハ、もっとも先立つのは間違いなくこっちのほうだから
そんな愁嘆場はまずないがネ。

彼女たちと個別に飲むとき、
会話の中に双方の名前が出てくるので
それぞれに存在を認識してはいるけれど、
互いに会ったこともなければ、話すらしたこともない。
いわゆる赤の他人同士ということになる。
だのに選んだワインがまったく一緒。
しかも極上のバローロときたもんだ。

二人の選択眼には、
いや、もはや審美眼の域に達しているが
ほとほと感服してしまった。
そしてその厚情には心から感謝しなければならない。

ともかく百聞は一見に如かず、まずはご覧くだされ。
2007年 from ニューヨーク
2006年 from ミチノ~ク
実のところ、百見は一飲に如かずなんですが
画面から飲んでいただくわけには、まいりませんもの―。

2014年3月10日月曜日

第790話 ウーマン・シェフの里帰り (その3)

昭和2年開業の和食居酒屋「三岩」をあとにして
すし屋横丁からフラワーロードを抜け、ホッピー・ストリートへ。
「三岩」では瓶ビールで始め、デンキブラン、そして燗酒という流れ。
すでに冷たい生ビールが飲みたくなっていた。

そこで向かったのが「正ちゃん」だ。
ところがギッチョン、満席で身の置きどころがないときた。
すまなそうに眉を8時20分にした店主・正ちゃんに見送られ、
結局は薬局、浅草1丁目1番地1号の「神谷バー」に落ち着く。

浅草のランドマークで飲むスーパードライの中ジョッキ。
ただし、ここの中ジョッキは他店の大ジョッキに近い。
ここは浅草固有の酒、デンキブラン発祥の店でもある。
つまみなどなくともよかったが、
小皿も食卓のにぎわいと、ジャーマンポテトを所望する。
じゃが芋ばかりが主張する小皿は
ベーコンや玉ねぎの影薄く、味付けはウスターソース主体だ。

ジョッキ片手に語るのはもっぱら二十数年前ののニューヨーク物語。
その頃日本ではバブルが弾け、邦銀の凋落が始まりつつあった。
そういやあ、あの頃だったっけ、
田村正和主演の「ニューヨーク恋物語」と
その「パートⅡ」が放映されたのはー。

 ♪   誰も知らない  夜明けが明けたとき
   町の角から  ステキなバスが出る
   若い二人は  夢中になれるから
   狭いシートに  隠れて旅に出る  ♪
          (作詞:井上陽水)

岸本加代子、桜田淳子、夏桂子。
それにその後の消息がつかめない五十嵐いづみと韓国女優の李恵淑。
一方の男優陣は峰岸徹、真田広之、柳葉敏郎と
なかなかの顔ぶれだったが、なぜか女優のほうが印象深い。
そして陽水が歌った「リバーサイドホテル」が心に響く主題歌だった。

ひとしきり思い出話のあと、河岸を替えることにする。
足が向くのはどうしても気に入り店だ。
訪れたのは魚介が自慢の「志ぶや」。
ここは元鮮魚店、先代はなくなったがサカナの目利きは
息子たちにしっかりと引き継がれている。

生ビールは飲んできたから芋焼酎の和助をロックで。
初っ端のつまみはまぐろのブツである。
相方はいわしの塩焼きが食べたいという。
そうだよねェ、ニューヨークに新鮮な魚介は数あれど、
メインディッシュに成り得ないいわしの上モノは市場に出回らない。
ヤンキーはいわしなんざ、
缶詰か肥料の材料くらいにしか考えちゃいないんだから―。

明日は名古屋に帰郷する相方のためにそろそろお開きとするかの。
と、ここでひらめいたのが小肌酢だった。
「志ぶや」に来て小肌を食べなきゃ意味がない。
この夜の1軒目に独りで立ち寄った「大瀧商店」では
トンデモないのにガツンとやられちまった。
その仇を同じ小肌で取らねばなるまい。
はたして「志ぶや」の小肌は期待通りにとびっきりの極上品。
小肌に始まり小肌に終わった、春まだ浅き浅草の夜であった。

「神谷バー」
 京都台東区浅草1-1-1
 03-3841-5400

「志ぶや」
 東京都台東区浅草1-1-6
 03-3841-5612

2014年3月7日金曜日

第789話 ウーマン・シェフの里帰り (その2)

不デキな小肌の生臭みを生ビールで流し去り、
20年来ののみともと浅草ビューホテルのルームで合体、
もとい、ロビーで合流したのだった。

向かったのは、すし屋横丁の「三岩」。
庶民的な酒場には天ぷらもあれば寿司もある。
典型的な古き良き浅草の飲み処兼食べ処なのだ。

この街に”三”と名のつく店はいくつかあって
天ぷらの「三定」、ふぐの「三角」、同じくふぐの「三浦屋」、
お好み焼きの「三島屋」といった面々。
まっ、極めつきは”三社祭”なんですけどネ。

さて、あらためて「三岩」。
店の前をゆきすぎても
この店の歴史や伝統をつかみとることはできない。
それなりの店構えに立派な暖簾が出てるんだけれどなァ。

瓶ビールで乾杯し、つまみはにしん酢とキス天ぷら。
このにしん酢が他店では見掛けぬ逸品だ。

 ♪  あれからニシンは どこへ行ったやら
   オタモイ岬の ニシン御殿も
   今じゃさびれて オンボロロ
   オンボロボロロー
   かわらぬものは 古代文字
   わたしゃ涙で 娘ざかりの 夢を見る ♪
           (作詞:なかにし礼)

北原ミレイの「石狩挽歌」。
この歌を初めてパチンコ屋で聴いたときは度肝を抜かれたが
往時は豊漁のにしんで御殿が建ったんだねェ。

そのにしんの酢の物は
先刻の小肌とは似ても似つかぬ良品計画にて文句ナシ。
ふっくら揚がったキス天にも及第点を進呈。

冷え込む夜につき、身体を温めるものがほしい。
さすれば鍋だが、たらちり、かき鍋、鳥鍋と並ぶなか、
K美子のリクエストはかきであった。
「三岩」のかき鍋は土手仕立てだ。
それも八丁味噌に甘みを加えたヤツ。

八丁味噌は三州・岡崎が本場の豆味噌。
岡崎・名古屋間は50キロと離れていないから
ご幼少のみぎりにK美子もお世話になったことだろう。
嫌いであるハズがない。

ニューヨークでは口にできぬものとして
さらしくじら・しそ白魚・数の子おかかなどの小品を追加する。
店がヒマだったせいもあり、
店主と女将を交えた会話に花が咲く。
この人情味があるからこそ
”浅草飲み”がヤミツキになっちゃうんだヨ、きっとネ。

=つづく=

「三岩」
 東京都台東区浅草1-8-4
 03-3844-8632

2014年3月6日木曜日

第788話 ウーマン・シェフの里帰り (その1)

ニューヨークはマンハッタン、
ラファイエット・ストリートの仏料理店で
スー・シェフを任されているK美子が里帰りしてきた。
前回は一昨年の秋だったから、
年々帰国のインターバルが縮まっているようだ。

彼女の行動パターンとして名古屋の実家に戻る前に必ず、
東京に1、2泊するのが習わしで
その際にJ.C.と一夜をともにするのもまた習わしなのだ。
ハハ、一夜といっても酒盃を交わすだけだがネ。

名古屋出身ながら学生時代を吉祥寺で過ごしており、
武蔵野エリアには愛着があると語る。
ところが前回、浅草を連れ回したところ、
すっかりエンコの街に魅せられてしまい、
此度の逢瀬も浅草を指定してきた。

驚いたことに、ご丁寧にも宿を浅草にとった由。
しかも前回はしご酒の最後の止まり木とした、
居酒屋「正ちゃん」のすぐ隣りのホテルときたもんだ。

 ♪  流れ女の  さいごの止まり木に  
    あなたが止まって  くれるの待つわ  
   昔の名前で出ています  ♪  
       (作詞:星野哲郎)

小林旭のカン高い歌声が頭の中を回り始めたぜ。

べつに意識してホテルを選んだわけでなく、
単なる偶然だったのだが
結果的に止まり木の隣りに陣を構えるとは、
浅草で飲む意気込みが天に伝わったとしか思えない。

さて、J.C.が浅草に着いたのは
待合わせ時間より30分も早かった。
たとえ30分にせよ、おろそかにはできない。
よって向かったのは角打ちの「大瀧酒店」だ。
裏通りの酒店だがエンコには貴重な角打ち。
並びには立ち飲み酒場「安兵衛」がある。

時間もあまりないことだし、
1杯400円のサッポロ生中と、
1皿たった100円の小肌をお願いした。
生ビールには何の問題もない。
あきれ果てたのは小肌のほう。
たかだか100円の皿にイチャモンつけても仕方ないが
その生臭やたるや、マンマ・ミーア!
どうすることもかなわなかった。

それはそれとしてコレを書きながら
チラチラ観てるTVではザックJAPANが
何ともお粗末なゲームを繰り広げておる。
ハァ~、やれ、やれ。

=つづく=

「大瀧商店」
 東京都台東区浅草-11-11
 03-3844-6665 

2014年3月5日水曜日

第787話 やきとり弁当 はるばると (その3)

 ♪ はるばるきたぜ 函館へ 
   さかまく波を のりこえて 
   あとは追うなと 言いながら 
   うしろ姿で 泣いてた君を
    おもいだすたび 逢いたくて 
   とても我慢が できなかったよ ♪
         (作詞:星野哲郎)

北島サブちゃんの「函館の女」は
さかまく波を乗り越えて来たのだから青函連絡船だネ。
それとは対照的に
このやきとり弁当は函館空港を飛び立ち、
雲を乗り越えて羽田に降り立ったわけだ。

期待を上回る弁当に
棄てたはずの箱ブタを回収し、撮った写真がコレ。
ブタくんがのんきに微笑んでいる
のんきなトウさんならぬ、のんきなトンさん。
”秘伝のかくし味 はこだてワイン”とあるが
意想外の美味しさはこのあたりがミソであろうヨ。

後日、運び屋に訊いたところ、
調製元の「ハセガワストア」は
市内のあちこちにチェーン展開してるんだと―。
ふ~ん、人気なんだねェ。
購入価格はワンコインでオツリがきたんだと―。
良心的な値付けも人気に拍車をかけてるんだろうなァ。

多少ごはんを残したものの、
ほぼ完食しちまった函館のやきとり弁当。
東京へのみやげにピッタリとは言えないまでも
駅弁代わり、旅の友とするには打ってつけだ。

食べ掛けの写真を撮っていてデジャヴュ感に見舞われた。
つい最近、似たような光景に出くわしたような・・・。
はて、どこで何を撮ったんだっけかな?

すぐに思い出した。
PC内のアルバムをチェックして発見したのがコレ。
昨日の写真にそっくりでしょ?

焼き鳥よりも焼きとんが好きだということは何度も述べたから
読者のみなさんはすでにご承知のハズ。
だけれども、焼きとんで好きなのはモツであって
ロースやバラ、いわゆる筋肉や脂身ではないのだ。

それが上の写真はどうみてもバラ。
実はコレ、ブタではなくてイノシシなんざんす。
上野はアメ横そばの大箱居酒屋「大統領」には
天城産イノシシの串焼きがあり、2本付けで400円。
食べてみて豚と猪、ルーツは一緒だと、あらためて感じ入りました。

=おしまい=

「ハセガワストア」
 北海道函館市中道2-17-16
 01-3854-5731

「大統領」
 東京都台東区上野6-13-2
 03-3834-2655

2014年3月4日火曜日

第786話 やきとり弁当 はるばると (その2)

夜更けに・・・と言っても真夜中ではないが
目の前に北海道みやげのやきとり弁当が置かれている。
実のところ、あんまり嬉しくない。
正直言って、たら子や筋子のほうがありがたかった。

そう、そう、北海道といってもいささか広うござんした。
何でも酒友が行った先は函館とのこと。
どうして函館みやげがやきとり弁当になるのっ?

しかもフタを開けたら、焼き鳥じゃなくて焼きとんだぜ、これは!
豚のバラ肉がネギマ状態で3本、
その下には海苔が敷かれていわゆる海苔弁スタイルだ。
埼玉県・東松山市では豚のカシラをやきとりと称するし、
確か、同じ北海道の室蘭でも焼きとんをやきとりと呼ぶハズ。
函館と室蘭はそう遠くもないし、まっ、いいか。

とにかく明日に持ち越すのは気がすすまない。
こういうものはオーバーナイトさせると格段に味がオチる。
バッテラや鱒寿司など、酢めしモノはいいんだけどネ。
たまたま当夜はあまり食物を摂取していなかったし、
とりあえず串だけでもつまみにビールでも飲もうか。

てなこって、余計な晩酌と相成った。
いや、晩酌なんてもんじゃない、深夜だから深酌かァ。
酒友にゃ、そこんとこ斟酌(しんしゃく)してほしかったなァ。

あいにく弁当は冷え切っているので
1分ほどわが家の名コック、陳サンの、
もとい、チンさんのお世話になる。
チ~ン! ハハハ。

一串口元に運び、しばし咀嚼(そしゃく)した。
ややっ、何じゃこりゃ! かなりいい味出してんじゃん!
ビールをグビ~ッと飲って、試しにごはんも一口。
ややっ、メシも悪くないぜ。
生半可な駅弁のレベルを軽く超えちゃってるヨ。
駅弁はハズレが多いからねェ。

とにかく旨いんだ。
アッサリめのタレがなかなか上品なんだ。
あらためてやきとり弁当殿に最敬礼ッ!
でもって、あわててカメラに収めやした。
食べ掛けにつき、残りは2本
テヘッ、われながらこういうショットも珍しい。

あいや、ちょっと待て―。
弁当箱もしっかり写さにゃならんゾ。
割り箸を置いてキッチンに戻り、夜更けのゴミ袋漁りときたもんだ。
いや、”漁る”というのは言葉のハズミ。
発泡スチロールのフタは、袋の一番上に鎮座ましましておりました。

=つづく=

2014年3月3日月曜日

第785話 やきとり弁当 はるばると (その1)

 ♪ 月の沙漠を はるばると 
   旅の駱駝が 行きました
   金と銀との 鞍置いて 
   二つならんで 行きました ♪
      (作詞:加藤まさを)

好きなんだなァ、「月の沙漠」。
子どもの頃からずっと好きだ。

5歳まで長野市は善光寺の裏手に棲んでいた。
音楽というか、まあ、流行歌好きのマセたガキだった。
往時のマイ・ベスト5ナンバーは

 ・月の沙漠
 ・雪の降るまちを
 ・あゝそれなのに
 ・仲良し小道
 ・お富さん

順位なんかない。
と言うより、神童(?)といえども、そこは子ども、
ちゃんと順位をつけられなかったんだネ。

ただ、おかしなことに次点だけは決まっていて
それが恥ずかしながら軍歌の麦と兵隊

 ♪ 徐州 徐州と 人馬は進む ♪

ってネ。
何となれば、酔ったオヤジが歌う唯一の曲だったから―。
機嫌のいい親というものは子どもにとっても心なしかうれしく、
こっちまでウキウキしてきたものだ。

さて、名曲「月の沙漠」を引っ張り出したのにはワケがある。
北海道へ視察旅行に行ってた酒友からメールがとどき、
夜の浅い時間に羽田に着くから
大森か品川あたりで一杯つき合えとの要請あり。
(そんなとこまで行ってられるかヨ)
とも思ったけれど、
「みやげ買ったからさァ!」―
やれ、やれ、エサで釣ろうとしているぜ。

当夜の当方は京橋にて小宴の予定。
羽田だと、京浜急行と都営浅草線が直通で連絡している。
京橋のすぐそばの宝町まで呼び出すことにした。
近場の居酒屋に入ったものの、
互いに下地が出来ており、2時間足らずでお開きにする。

問題は北海道みやげであった。
あえて中身を訊ねなかったが
まず海産物に間違いはあるまい。
そう、タカをくくったJ.C.であった。

帰宅後、もらった包みを開いてみると、びっくりしたなもォ!
そう、サブタイトルにあるように
現れ出でたのは、やきとり弁当ときたもんだ。
わざわざこんなもん、はるばると飛行機で運び込むかい?
どうなってんだい、まったく! ええっ、お立会い!

=つづく=