2016年12月30日金曜日

第1526話 わさび愛しや (その1)

ここ数日、東京の街をあちらこちらと歩き回っている。
勝手気ままに足の向くエリアを訪れている。
浅草・上野・谷中・本郷・日本橋・銀座・有楽町・
神楽坂・門前仲町・向島・柴又と、
まあ、そんなところだ。

皇居を東京の真ん中に位置づければ、
行く先はイーストサイドに偏っている。
ウエストサイドは神楽坂くらいなものだ。
下町が好きだから、さもありなん。

その日は上野広小路を皮切りに中央通りを南下。
秋葉原・神田・日本橋・京橋・銀座を経て
有楽町にやって来た。
先頃、終了したNHKの大河ドラマ「真田丸」にも登場した、
織田信長の末弟、織田有楽斎の屋敷が
数寄屋橋辺りにあったことが町名の由来とされるが
異説もあって定かでない。

J.C.にとって有楽町は思い出深い場所である。
記憶をたどれば、中学一年生のとき、
今は無き日劇のいしだあゆみショーが最初。
翌年には日比谷スカラ座で
「太陽がいっぱい」のリバイバル・ロードショーを観た。
日比谷公園の東側にはかつて
映画街があったが地番は有楽町二丁目である。

1975年、ロンドンから帰国し、
初めての会社勤めも有楽町の免税店だった。
その頃、ひんぱんに利用した店で
現在も営業を続けているのは
食堂「いわさき」と居酒屋「八起」くらいのものだ。

職場では月に一度か二度、土曜出勤日があり、
その際はこれまた今は無きそごうデパートの地下で
昼めしの弁当を買い求めていた。
現在はその場所にビッグカメラが進出している。
そごうデパートの名前が出ると、
第一に思い起こすのはこの曲である。

  ♪      あなたを待てば 雨が降る
     濡れて来ぬかと 気にかかる
     ああ ビルのほとりのティー・ルーム
     雨も愛しや 唄ってる
     甘いブルース
     あなたと私の合言葉
     「有楽町で逢いましょう」  ♪

        (作詞:佐伯孝夫)

フランク永井の歌声が
有楽町に流れたのは1957年のことであった。

=つづく=

2016年12月29日木曜日

第1525話 期待通りの焼きとん屋 (その7)

上野店で味をしめた「おとんば」。
満を持してというわけでもないが
江戸四宿の一つ、北千住に乗り込んだ。

イカマヨ・サラダのお通しは取るに足らないものながら
つまみ類が整うまでの間、ビールの友とする。
最初に運ばれたのは
おまかせ四点盛りと称する豚もつの盛合せである。
メニューには三点盛りとあったが皿には四点盛られていた。

陣容はかくの如し。
上タン刺し、はつ漬け刺し、自家製はつハム、肝スモーク。
どれも悪くないけれど、焼きとんに勝るとはいえない。
ただ、スタートの一皿としてはなかなかに気が利いている。
必注とまっではいかなくとも推奨に値しよう。

焼きとんは基本のレバとシロ。
もちろんタレである。
上野店と変わらぬ仕上がりに安心する。
スタッフに訊ねると、ここを本店とは言わぬらしい。
上野同様に北千住店なのだそうだ。

ほかの料理を試してみたいので
焼きとんは基本の2種で止めた。
当方はあまりつまみを必要としないから
選択は相方に任せる。

選ばれたのは
明太チーズスティックとお好み焼き風ネギ玉子。
ふ~ん、昔ながらの焼きとん屋では
けっして見ることのできぬ2品だネ。
スタッフも若けりゃ客層も若いから
こういうものが好まれるのであろうヨ。

そもそも明太子なんていつ頃から食べられ始めたのかな?
調べてみたら朝鮮半島では18世紀に食べられていたそうな。
原料の唐辛子は朝鮮通信使が日本から持ち帰ったものだから
辛子明太子の誕生は当然、それ以後になる。

日本で商品化されたのは1907年。
しかし、一般の食卓に上るようになったのは1980年代のようだ。
われわれが子どもの頃にはなかったものネ。
以前にもこのブログで綴ったが
たらこ好きにもかかわらず、明太子はまず口にしないわが身である。

お好み焼き風ネギ玉子は
粉モノをあまり”お好みにならない”J.C.のこと、
二切れほどつまんで箸を置く。

上野店訪問の際みたいな高得点は与えられぬが
期待を裏切ることもない千住店ではあった。
ただ一つ、やや気に入らないのが焼きとんのタレ。
濃く甘く、せっかくの豚もつの持ち味に影響を及ぼす。

=おしまい=

「おとんば 北千住店」
 東京都足立区千住3-48
 03-3870-0108

2016年12月28日水曜日

第1524話 期待通りの焼きとん屋 (その6)

地番は上野ながら最寄りは御徒町の「おとんば上野店」。
豚の小腸付近の脂身をキクと名乗るクシを頼んだところ。
ふむ、コイツはシロ(小腸)とは異なる、
食感と風味を持っておるぞヨ。
空腹時であったなら間違いなくもう1本いっていたネ。

「味の笛」でW炭水化物を食したために
ガツ(胃袋)のキャパがいっぱいイッパイ。
もう打ち止めにしておこう。
ただし、酒は別腹。
燗酒に移行の巻である。

銘柄は灘の富久娘。
亀戸天神のおた福にちなんで命名された酒だそうだ。
先刻飲んできた北雪とは比べるべくもないが
ほどよい燗の付け方もあっておいしい。

その日の独り酒はこれにておしまい、帰宅した。
夜も更けてTVのスポーツニュースを観ていると、
やって来たのはおだやかな空腹感。
ベッドに入るにはまだまだ早い。

冷蔵庫にはハムもチーズもあるし、
野菜庫にはレタスがある。
サンドイッチでも作るべえ・・・そう思ったのもつかの間、
なんだかメンド臭くなってしまう。

キッチンの食品棚には荻窪の人気店のレトルトカレー。
ふむ、カレーねェ。
その隣りに見とめたのが日清のチキンラーメンである。
少年時代が懐かしくて年に1~2度食べたくなる袋麺だ。
湯を沸かして3分待つだけだからサンドイッチよりずっと手軽。
夜更けの即席ラーメンと相成った。

その数週間後、J.C.の姿を
足立区・北千住の街に見ることができた。
何となれば、焼きとん「おとんば」の本店が
北千住にあることを知ったからである。

宿場町通りに本店はあった。
煮込みで有名な「大はし」のちょっと先、
同じ並びで界隈には似たような焼きとん屋がほかに2軒。
気がつかなかったが
北千住はちょいとした焼きとんタウンである。

のみとものMサンと二人で訪問。
まずはくだんの赤星ラガーで乾杯となる。
イカをマヨネーズで和えたサラダ風がお通し。
あれ? 上野店ではお通しが出なかったんだが・・・。

=つづく=

「もつ焼き おとんば 上野店」
 東京都台東区上野6-7-13
 03-6803-0291

2016年12月27日火曜日

第1523話 期待通りの焼きとん屋 (その5)

台東区・上野の焼きとん屋にいる。
カウンターはほぼいっぱいだったが
一番奥の端の席を何とか空けてくれた。

着席してみてちょいと懸念が湧いた。
スタッフが若いからである。
加えて上野店を名乗るからにはほかにも出店しているわけで
今はやりのチェーン店だろうという思惑。
それでもこの目で確かめた品書きは
それなりの店であることを証明しており、
そこに信頼感が生まれるのである。

ビールはサッポロ・ラガー、いわゆる赤星だった。
昔を偲ぶよすがとして注文することもあるが
2本並べて飲み比べたら黒ラベルのほうが旨かった。
そりゃそうだろうヨ、もしも赤星が上だったら
サッポロの主力商品は”黒”じゃなく、”赤”のハズだ。

うれしいことに串は1本から注文可能。
単身客にはありがたいものである。
まずはレバを2本にシロ(小腸)を1本。
この2種類は焼きとん界の基本中の基本なのだ。

レバを2本所望したのは
舌を歓ばせるのもさることながら
肝臓を労わる狙いがあってだ。
どちらもタレでお願いした。

焼きとん屋のベーシックな部位は上記2種に
タン(舌)・ハツ(心臓)・ナンコツ(喉仏)を加えた5種。
J.C.はこの3種を塩で頼む。
人間に例えると、
ヘソから上の部位には塩、下にはタレがよく合う。

レバが実に旨い。
ミディアムレア感じの火の通しがまことにけっこう。
素材の鮮度も申し分ない。
「こりゃ当たったゾ!」―自然に頬がゆるんだ。

下茹でして処理したシロもレバほどではないにせよ、
軽く合格点をクリアしている。
中には噛んでも噛んでも噛み切れないシロがあるが
アゴの丈夫な若いうちはよくとも
還暦過ぎたらモロに”年寄りの冷や水”と化す。
いい歳こいて無鉄砲な冷や水を”鉄砲水”と称する。

調子に乗ってキクというのを注文する。
卓上のメニューには小腸付近の脂とあった。
となると、シロコロホルモンみたいなモンかしら?
聞きなれない部位だからこそ、
一食の価値を見出せるというものだ。

=つづく=

2016年12月26日月曜日

第1522話 期待通りの焼きとん屋 (その4)

ニューヨークの「NOBU」に比べたら
「味の笛」の北雪はタダとは言わずとも
ほとんどそれに近い。

さて、北雪の純米大吟醸。
切れ味鋭く舌の味蕾を襲ったあと、
爽快な香りが鼻腔を抜けてゆく。
わが舌にとって新潟の酒では
麒麟山とともに双璧である。

もはやつまみは必要としなかったが
新香の盛合せを所望する。
内容は赤かぶ、野沢菜、きゅうりぬか漬け。
なかなかのバランス感覚である。

店内は立て込んできた。
人気店だけに滞在時間は2時間までである。
まだ1時間も経っていないが
長居をしては店にも客にも迷惑がかかる。
新香を少々食べ残したまま、夜の街に出た。

外はもう真っ暗、目の前の「吉池」で
刺身でも見つくろい、家飲みにするかなァ・・・。
いや、何となく面倒だ、近場でもう1軒としよう。
ガードをくぐって線路の東側を徘徊し始める。

春日通りを横断すればアメ横に続く飲み屋街(上野6丁目)。
「大統領」か「カドクラ」か「タキオカ」か・・・
候補店はどこも混んでいそうだ。
アメ横方面には足を向けず、
むしろ人影の少ない5丁目を物色する。
いっそのこと昭和通りを横切って
レトロ感あふれる佐竹商店街にでも出向くか?
居酒屋「ますみ」ならカウンターに座れそうだし・・・。

進路を東にとった。
すると昭和通りにぶつかるちょいと手前、
右手に間口の狭い飲み屋あり。
焼きとんがメインの「おとんば 上野店」である。

店先の品書きに目を通すと、稀少部位も含めて
豚の臓物がズラリと揃っていた。
そういやあ、ここしばらく好物の焼きとんを食ってない。
毎晩、晩酌をする身にとって肝臓のケアは大事だ。
ウコンの錠剤は欠かさず飲んでいるが
鶏や豚のレバーの摂取も必要である。

迷うことなく入店に及んだ。
働く男女のスタッフがみな若い。
接客係はともかくも焼き手まで若い。
本当はオッさんやジイさんの焼くもつが好きなんだけどなァ。

=つづく=

「味の笛 本店」
 東京都台東区上野5-20-10
 03-3837-5828

2016年12月23日金曜日

第1521話 期待通りの焼きとん屋 (その3)

JR御徒町駅のガード下、「味の笛」の2階にいる。
工場直送の生ビールを心ゆくまで愛でている。
前話を目にした読者の方からメールをいただいた。

杉並区在住のM宮サン曰く、

ビールがそんなにおいしいなんて幸せですね。
でも日本酒やワインと比べてそんなにおいしいものでしょうか?
J.C.さん、ちょっと不幸な気もします

はあ、そう来ましたか。
おっしゃる意味はよおく判ります。
日本酒、焼酎、ワイン、ブランデー、
それぞれそれなりに好きですヨ。
でもネ、飲みもの、食べものを問わず、
この世で一番好きな飲食物は断然ビールなんですわ。

以前、有名な漫画家、東海林さだおサンにお会いしたとき、
御大が真顔で語ってくれました。

仕事しててもね。
夕方になると、早くビールが飲みたくって
ソワソワしてくるんだよ。
それも生ビールがいいな。

実にわが意を得たりでありました。
「丸かじり」シリーズを始めとして
あれだけ飲食に造詣の深い方が
そうおっしゃるんだから、判っていただけますよネ、
M宮サン?

2杯目のプラコがカラになった。
マカサラと焼きそばのおかげでお腹もくちくなった。
ここからは日本酒であろう。
殊に「味の笛」の品揃えは新潟県産を中心として
銘酒が多彩をきわめている。

中でも気に入りは佐渡の北雪。
お願いしたのは1杯500円の北雪純米大吟醸である。
この酒を初めて飲んだのはかれこれ20年以上も前。
ニューヨークはトライベッカの「NOBU」だった。
ロバート・デ・ニーロが出資する、あの有名店である。

砕いた氷を敷き詰めた木桶の中に
竹筒に満たされた北雪が射しこまれていたのであった。
ずいぶんと手の込んだマネをしてくれたものだが
手数(てかず)のぶんも込まれていたのか
べらぼうに高かったネ。
目ン玉飛び出たもん。

=つづく=

2016年12月22日木曜日

第1520話 期待通りの焼きとん屋 (その2)

湯島で下りて駅の階段を上がると、
天神下の交差点である。
北は行けば不忍池、西は本郷、南は明神下、
東は上野広小路である。

もっとも繁華な広小路方向に歩を進める。
ほどなく左手に「赤提灯」の赤提灯が見えてきた。
ここでチラリ脳裏をかすめたのは1軒の酒場であった。
J.C.御用達のサカナのデパート、
「吉池」が直営する「味の笛」のことだ。

元々はJR御徒町駅北口のガード下にあったが
耐震補強工事のため、しばらくの間、
南口改札脇に移動し、そこも今年の春先に閉めて、
秋には元の場所で再営業するとのことだった。
さすれば、もう再開しているハズ。
「大利根無情」の平手造酒ではないが
「行かねばならぬ!」であった。

広小路の交差点を過ぎて御徒町にやって来た。
「おう、おう、開いてる、開いてる」―
一抹の懐かしさがこみ上げた。
昔通りに1階は立ち飲み、2階は座り飲みである。

酒屋の角打ちが好きだから
けっして立ち飲みは嫌いじゃないが
ここでは2階に上がるのが常、今回もそうした。
おや、改装後はらせん階段になってるヨ。

1杯目はアサヒの工場から直送される生ビールだ。
ビールは新鮮なら新鮮なほどよい。
容量は300ml くらいか?
プラスチックのコップに満たされて、これが250円。
しょっちゅう通る谷中ぎんざの酒屋は350円だから
格安といえよう。
しかもこちらのほうが断然旨い。

つまみはいつも通りにマカロニサラダ。
昼めしを抜いていたのを思い出し、焼きそばも取った。
炭水化物のWテイキング、だけどネ、
これが生ビールに合うんですわ。

ビールは早や2杯目。
秋深しといえども冷たい液体がノドに快感を呼び起こす。
世にこんなに旨いモンがほかにあるだろうか。
ないネ、絶対にないヨ。
自分にとっては生きてゆくために必要不可欠、
最愛の伴侶なのである。

=つづく=




 

2016年12月21日水曜日

第1519話 期待通りの焼きとん屋 (その1)

その日は2ヶ月に1度の渋谷参り。
そう、髪を理するため、若者の街に出没の巻であった。
東京メトロ千代田線・明治神宮前で下車し、
国立代々木競技場の脇を通って
渋谷の中心街に到達する。

髪の切り手はK子チャン。
もう十数年もの長きに渡って
首から上は任せっきりなのだ。
まだハタチそこそこだった彼女も
去年結婚して主婦になった。

ダンナはワインバー、だったかな?
いや、居酒屋かもしれないが
とにかく恵比寿の店で知り合ったコリアンである。
職業柄、帰宅が遅くなる彼女だが
それでも毎晩、夫婦仲良く晩酌に勤しむ由、
ご同慶の至りというほかはない。

へアカットの帰り道。
同じ道を原宿方面に戻るのはつまらないし、
かといって人混みすさまじい渋谷駅周辺には
目当ての飲み屋でもない限り、近づきたくない。
よってNHKの手前の坂を下り、
小田急線・代々木八幡駅方面に向かう。

この近辺は近年、奥シブなどと称されて
ちょっとした賑わいを見せ始めた。
小ジャレた飲食店が軒を連ね、
洋モノだけでなく、和モノの佳店にも事欠くことはない。

奥シブで一杯のつもりだったが
一本道を真っ直ぐ、代々木八幡の手前の
千代田線・代々木公園駅に到着。
そのまま電車に乗り込んでしまった。

となると、目的地は沿線の湯島、千駄木、町屋、
北千住あたりに絞られよう。
表参道で目の前のシートが空き、
普段はめったに座らないわが身ながら
腰を下ろして目をつむる。
42
湯島なら「池之端藪」か「赤提灯」。
千駄木は「にしきや」か「くりや」。
町屋は「亀田」、「小林」、はたまた「ときわ食堂」。
北千住まで行き着くと、「永見」、「葵」、「大はし」か―。
そんなこんなを黙想していた。

「湯島、ゆしまぁ~」―車内アナウンスに促され、
無意識のうちに下車したのであった。

=つづく=

2016年12月20日火曜日

第1518話 予期せぬ合コン (その3)

ハナシを郷ひろみに戻しましょう。
1516話に戻ると、PCを立ち上げて
やっちまっただヨ・・・であった。
そう、ご想像の通り、
Wブッキングの不始末をやらかしていた。

はて、どっちを優先するかの?
とにかく片方をリスケしなければならない。
順序からすると、美女軍団に権利が生ずる。
そう思いTクンにめールを送るため、
携帯電話を手にしたのだった。

いや、ちょっと待て!
ひらめいたのは両者の合体案である。
こう見えても少々多忙な身、
殊に土曜日は貴重なのだ。

合体は自然に合コンに通ずる。
男女ともにけっこう歓ぶんじゃなかろうか?
さすれば一石二鳥の効果も生まれる。
さっそく両者に打診すると、二つ返事でOKときた。

TクンとAクンは埼玉県・大宮方面の在だが
Tは新潟県・長岡市に単身赴任している。
せっかくの休みだから遅くならないうちに
家族の元へ返さなけりゃならない。
よって会場は帰宅に便利な、
北区の赤羽・王子あたりがよろしかろう。

結局、男女6人冬物語の舞台となったのは
王子のランドマーク的大衆酒場、「山田屋」だった。
かつて知人の坂崎重盛翁が
体育館で飲んでるみたいな酒場と称した店である。

Tチャンと連れだって定時に現れると、
初対面のハズのTクン、
Hチャン&Wチャンがすでに始めておった。
一応、J.C.の名前で予約は入れてあったが
彼らに予約のことは伝えていない。
やはり呑ん兵衛同士は相通ずるものがあるんだネ。
ほどなくAクンも到着し、6人全員が揃ったわけだ。
ちなみに独身者はHとWとJ.C.の3名である。

生ビールのメガジョッキから
清酒・八重壽(やえす)の上燗に移行し、
しこたま飲んだJ.C.、久しぶりに酩酊の巻。
つまみにしたって、芹のおひたし、まぐろブツ、
ハムカツあたりまでは覚えているものの、
あと数品はまったく記憶に無い。

よって予期せぬ合コンの場で
どんな会話が交わされたのか
みな忘却の彼方なのである。
一つだけハッキリしているのは
”禁じられた恋”は生まれなかったことであります。

=おしまい=

「山田屋」
 東京都北区王子1-19-6
 03-3911-2652

2016年12月19日月曜日

第1517話 予期せぬ合コン (その2)

  ♪  禁じられても 逢いたいの
     見えない糸に ひかれるの
     恋はいのちと同じ ただ一つのもの
     だれも二人の愛を こわせないのよ
     あなたに逢いに 夜を越えて
     駆けてゆきたい 私なのよ  ♪
          (作詞:山上路夫)

森山良子の「禁じられた恋」は1969年3月のリリース。
高校三年生を目前に控えたJ.C.は
そろそろ大学受験に備えて勉強でも始めるかな・・・
そんな心境でありました。

「禁じられた恋」でイメチェンを図った良子サン、
試みが成功してヒットにつながり、
この年初めての紅白出場をはたす。
歌ったのはもちろん当該曲である。

おいおい、何だって
いきなり郷ひろみから森山良子へぶっ飛ぶの?
ってか?
言われてみると、おっしゃる通りだけど、
まっ、先をお読みくだされ。

振り返れば、今年は不倫に始まり、
不倫に終わってゆく感強し。
ゲス男とベッキーで明け、
テレアナ同士で暮れた、ってか?

そもそも不倫なんてものは
世の中にあふれ返っていて珍しくも何ともないが
しょっちゅうテレビに顔を出している有名人は
もうちょっと気をつけなきゃネ。

自覚が足りないってゆ~かァ、
まったく無防備なんだよなァ。
自分たちの恋が「禁じられた恋」であることを
まず認識してからコトにのぞまねば―。

昔の男女は道に外れた恋に落ちた場合、
それをひた隠しに隠した。
いわゆる秘められた恋っていうヤツですな。
秘めるとよけいに燃え上がるんだが
何とかコントロールして隠し通す。

そのがまんができないんだねェ、
昨今の若者は―。
今年を象徴する漢字一文字は
”金”じゃなくって”倫”じゃないの?

=つづく=

2016年12月16日金曜日

第1516話 予期せぬ合コン (その1)

11月半ばのとある土曜の夜のことだった。
その夜は一月以上も前からすでに予定を入れていた。
年に数回、不定期に集う、
妙齢の美女たちとの飲み会であった。
例によって店選びはJ.C.のつとめ、
漠然と文京区・春日のロシア料理にするつもりだった。

当夜の二週間ほど前、
会社勤めの頃の部下、Tクンから連絡あり。
これまた部下のAクンを交えて
一献、酌み交わしましょうとのお誘いである。
三者のスケジュールを突き合わせ、
やはりある土曜の夜に決定した次第だ。

その日の帰宅後、
PCを立ち上げたついでに予定表を開くと、
ややっ、やっちまっただヨ。

  ♪      愛してはいけない
     二番目が嫌なら
     綱渡りみたいな
     許されぬ関係

     みつめ合う瞳に
     情熱の炎は
     メラメラと燃え上がり
     モラルじゃ消せやしない

     不倫したい 君とならば
     ”愛してる” そのことに嘘はない
     今夜君と いたいのさ
     すべてを忘れて2人

     裏切りたい 君とならば
     ”愛してる” そのことに嘘はない
     今夜君と いたいのさ
     罪だとわかっていても・・・

          (作詞:秋元康)

郷ひろみの「Wブッキング―LA CHICA DE CUBA」は
1990年5月のリリース。
サブタイトルにあるようにラテンナンバーのカバーである。
しばらくヒットに恵まれなかった郷クンだが
この曲で息を吹き返し、晴れて紅白に復帰している。

そういえばこの年、ニューヨーク在住中のJ.C.は
たまたまセントラルパーク内のレストラン、
「Tavern on the Green」に設けられた特設ステージで
彼のライヴを観る機会があった。
当該曲もしっかり歌われたのでありました。

=つづく=

2016年12月15日木曜日

第1515話 サヨナラをする前に (その5)

22時を回っても若い女性でいっぱいの「FOUGAU」。
彼女たちにとって夜はまだまだ浅いということか―。
ほとんどが女子会の態をようして
気兼ねなく飲んで食べて、おしゃべりに勤 !しんでいる。
明日の仕事なんてクソ食らえ!
とまでは思わずとも I don't care !ではありますな。

さて、われわれ。
みなそれぞれ集結する前に軽食を取ってきた身、
重いモノは受けつけないのでパス。
しかしながら気になる料理はいくつもあった。

例えば、イカと水ダコのソテー・焦がしエシャロットソース。
食材よりもソースに惹かれる。
エシャレットではなく、本物のエシャロット。
よく居酒屋で見掛けるのはエシャレット、
いわゆるラッキョウである。
ラッキョウじゃ売れないし、おしゃれでもないから
業界が勝手に命名した由。
したがってフランスにもベルギーにも
エシャレットは存在しない。

ガリシア豚のロースト・パスティスソース。
パスティスはペルノーやリカールなど、
アニスの香り豊かなリキュールである。
そう言えば、前述した「WIMPY」の同僚・プラシドは
北スペインのガリシアはコルーニャの出身だったな。

カウアイ島海老とモッツァレッラのラヴィオリ、
国産牛ホホ肉のビール煮込み、
USビーフ・ハラミ肉のグリル(200g)、
なかなかに印象的な料理が並んでいる。

<京都 中勢以さんの厳選熟成肉を使って>
そう銘打ったコーナーが設けられ、
二、三紹介すると、
但馬牛100%のメンチカツ
熟成肉の煮込みハンバーグ
熟成豚のカイエット
フム、ふむ、興味深いものがある。

ちなみにカイエットというのは
フォワグラ、ピエ・ド・コション(豚足)、
エピナール(ほうれん草)と一緒に煮込んだ、
フランスの郷土料理であり、家庭料理である。
もともとは牛の第四胃(ギアラ)のことだが
一般的にはハンバーグを指すことが多い。

ユニークな料理の数々にスペインの赤ワイン、
マルケス・デ・リスカルのグラスを傾けながら
近々ウラを返さねば・・・そう思ったことである。

年明けに気の合ったのみともと再訪しよう。
その際にあらためて紹介したい。
このシリーズは本道より脇道ばかり走ってしまって
ごめんネ、ごめんネ。

=おしまい=

「FOUGAU」
 東京都文京区春日1-15-9
 03-3830-0525

2016年12月14日水曜日

第1514話 サヨナラをする前に (その4)

引き続き脇道を往きます。

振り返ればロンドンの「WIMPY」は楽しい職場だった。
ウェイター、コーヒーボーイ、シェフ、ディッシュウォッシャー、
みな他国から来た若者や中高年でまことに国際色が豊か。
スペイン人はプラシドにホセ、イタリア人のニコル、
トルコからはアリ、バングラディッシュのセディックもいた。
今でも顔と名前が一致して目に浮かぶ。

殊に印象的だったのは
ポルトガル領マデイラ諸島から来たマルチン小父さん。
何たってこの人、駅前広場にたむろしているドバト、
その中の幼いのばかり狙って捕まえちゃうのである。
哀れ小鳩はライスと一緒に炊き込まれ、
小父さんの週末の豪華なランチに変身する悲劇。
われわれ日本人スタッフは
ピジョン・キラー・マルチンと呼んで怖れておったネ。

もう一人、マデイラに近い、
スペイン領カナリア諸島出身のミゲル。
彼とは気が合って仲良くしていた。
ミゲル・ロドリゲス・ゴンザレスなんて
たいそう立派なフルネームの持ち主だった。

当時、「WIMPY」では
スタッフが適当に持ち寄ったカセットテープをBGMとして
終日、店内に流していた。
J.C.が持ち込んだカセットの中に
ビリーバンバンの「さよならをするために」が収録されており、
この曲にくだんのミゲルが痛く感動したのである。

よくせがまれて、かけようとしたが
CDと違ってテープの頭出しは面倒至極、
店が忙しい時間帯はずいぶん苦労した。
そんなことも今はなつかしい思い出、
わが青春の一コマである。

脇道走行はたいがいにして
そろそろメイン・ストリートに戻ろう。
テーマは「サヨナラをする前に」であった。

地下鉄の春日、あるいは後楽園から
至近の「FOUGAU」にいる。
選んだ小皿は
パテ・ド・カンパーニュ、小海老とマッシュルームのアヒージョ、
ニース風サラダ、それにフレンチフライドポテト。

パテが出色の出来映えで
これが1皿500円とはにわかに信じがたいほどだ。
ポストシアターのちょい飲みに打ってつけながら
メインディッシュも充実している。
あらためてメニューに目を通す。

=つづく=

2016年12月13日火曜日

第1511話 サヨナラをする前に (その3)

いつものクセで脇道にそれている。
「サヨナラをする前に」から
いつの間にか、
「さよならをするために」へ車線変更している。
読者のあきれ顔が目に浮かばぬでもないが
それかかった脇、しばしおつき合いのほどを―。

俳優・鶴田浩二の、もとい、石坂浩二の作詞による、
「さよならをするために」は思い出深い曲である。
リリースされた1972年は日々、
もっぱらアルバイトに明け暮れていた。
過激派の学生に大学が占拠(ロックアウト)され、
授業がないのをこれ幸い、
海外渡航のための資金稼ぎに専念していたのだ。

念願かなって翌’73年8月には
エジプト→スーダン→エチオピア→
ケニア→ウガンダ→タンザニア
とめぐって
ケニアの首都ナイロビからロンドンに飛んだのだった。

大英帝国に到着はしたものの、
ホンの数週間で有り金が底をつき、
必要に迫られてバイト探しを始める。
当時、スウェーデンなど、
北欧諸国は外国人に門戸を開いており、
学生に限り、それも夏季に限って働くことができた。

ところが東アフリカや西インド諸島からの移民・難民が
少なくないイギリスでは
そう簡単に労働許可証を得ることができない。
学生といえども無許可で就業するのは不法であった。

まっ、日本人の若者が官憲にとっ捕まって
強制送還されたハナシは聞かなかったから
まずダイジョウブだろうとタカをくくって働くつもりでいた。

ロンドンの街をあちこちと職探しに歩きだして
二日目だったかな?
WLAT(ウエス・トロンドン・エアターミナル)、
東京なら箱崎のTCATみたいなもんだが
そのサブウェイ最寄り駅、グロウスター・ロードにある、
「WIMPY」(ハンバーガー・レストラン)で働くことになった。

ハンバーガーといっても今の世のマックやモスとは違い、
一応、ナイフ&フォークがセットされるレストランのはしくれ、
デッカいガラス張りの一画に日本語で
”アルバイト募集”のポスターが貼られていたのには驚いた。
日本料理店ならいざ知らず、
日本語の広告に意表を衝かれつつも、
九死に一生を得た感があったのだ。

=つづく=

2016年12月12日月曜日

第1510話 サヨナラをする前に (その2)

  ♪    過ぎた日の 微笑みを
     みんな 君にあげる
     ゆうべ 枯れてた花が
     今は 咲いているよ

     過ぎた日の 悲しみも
     みんな 君にあげる
     あの日 知らない人が
     今は そばに眠る

     温かな 昼下がり
     通りすぎる 雨に
     濡れることを 夢に見るよ
     風に吹かれて
     胸に残る 思い出と
     さよならを するために  ♪

       (作詞:石坂浩二)

ビリーバンバンの「さよならをするために」は
1972年2月のリリース。
春先からじわじわとヒットし始め、
街に流れ出だしたから何となく耳にしていたが
曲をはっきりと自覚しつつ聴いたのは8月だった。

今でもその日曜の朝はよく覚えている。
千葉県・市川市の田んぼの中の一軒家は
GFの住まいであった。

ラジオはニッポン放送の「不二家歌謡ベストテン」で紹介され、
確か、その週の1位だったと記憶している。
司会は東京下町生まれのトルコ人、ロイ・ジェームス。
俳優業から転身した外タレのハシリ的存在だった。
それにしても
お菓子屋が歌謡番組のスポンサーだったんだねェ。

「不二家歌謡ベストテン」は
毎週欠かさず聴いてたわけではないが
そのときそのとき、その場その場で
機会に恵まれること多く、耳になじんだ番組ではあった。

ちょうどその2年前の1970年8月。
やはり同番組で流れたのが名曲「手紙」。
高校時代の友人たちと
伊豆諸島の三宅島へキャンプに行ったときのこと。
「今週の第一位、由紀さおりの『手紙』!」―
ロイの声が三宅島特有の黒い砂浜に響いたものだった。

’70年の「手紙」、’72年の「さよならをするために」、
その真ん中の’71年の同じ8月に
同名映画の主題歌として世に出たのが
井上陽水夫人、石川セリが歌う、
「八月の濡れた砂」であった。

あゝ、帰り来ぬ’70年代の夏よ!

=つづく=

2016年12月9日金曜日

第1509話 サヨナラをする前に (その1)

「改ざん!! フィガロの結婚」がハネたのは21時半。
ここでサヨナラをして帰路に着くのも芸がないから
軽く a drink or two が好ましい。
開演時間が気になってせわしいプリシアターより、
終演後のポストシアターはリラックスできる。

おっと、ニューヨークと違い、東京はそうもいかない。
この街では最終電車を気にしなけりゃならないからネ。
その点、ビッグアップルのサブウェイは
24時間走っているため、余計な気遣いが不要だ。

店を選ぶのはJ.C.のほぼ恒久的なミッションにつき、
あらかじめ選定しておいた。
文京シビックセンターから徒歩1分のワインバーである。
その名を「bar a vins FOUGAU」という。
バー・ア・ヴァン フーゴーはワインバー・フーゴーという意味。

ニューヨーカーはもとより、
ロンドナー・パリジャンと異なり、
ポストシアターの習慣に疎遠な東京都民、
コンサート会場周辺の飲食店が特段、
混み合う懸念とてなく、余裕でバーに向かった。

意外にも店内は9割の入り。
熱気ムンムンというのではけっしてないが
かなりの立て混みようである。
それでもなんとか席を確保できた。

周りを見回すと・・・東京の女子はスゴいネ。
9割の入りの、そのまた9割をレディースが占めている。
テーブルはことごとく料理の皿がひしめき、
彼女たちが手にするグラスは泡・白・赤、
いずれかの液体で満たされているのであった。

プレミアムモルツかカールスバーグ、
各自好みの生ビールで乾杯。
ひとしきりステージの感想に耳を傾けながら
適当なつまみをパッパッと注文せねば―。

フードメニューを開くと、
プティット・アシエットと称する小皿が
10種類以上も並んでおり、500円均一。
軽くつまむにお誂え向きではあるが
多彩な品揃えに迷ってしまう。

塩鱈のリエット、ポロ葱とエリンギのベニエ、
かぼちゃのムースとコンソメゼリー、
鳥砂肝のコンフィ、キャベツのアンチョビガーリック。
フム、ど・れ・に、し・よ・う・か・な?

=つづく=

2016年12月8日木曜日

第1508話 改ざんされた「フィガロの結婚」 (その2)

一夜の文京シビックセンター小ホールである。
「改ざん!フィガロの結婚」である。
パンフレットにあった主宰者・宝概サンのお言葉。

当演目「改ざん!フィガロの結婚」は8年前に
ここシビックホールで、あるいは河合塾で
受験生対象に公演した作品に手を加えたものです。

河合塾では生徒に大変好評でした。
公演後のアンケートを回収して読むと、
「こんなにオぺラが面白いものだとは思いませんでした。
 受験が終わったら本当のオペラを見に行きたいと思います」
という回答が多かった。

こら、これこそ「本当のオペラ」だって。

ハハハ、宝概サン、ホントだネ。
しかし、8年間で3回だけの公演ってのは
ちと少なすぎるんじゃないの?

もっともこちとらだって
こんなユニークなパイオニアの存在を
まったく知らなかったんだから
誰かが世に知らしめない限り、
将来の発展も隆盛も望み薄になる。

とにかく入場料が入場料だけに予算は限られている。
演者はホウツキミヨコ声学教室に通う生徒と
客演2名で構成されており、
伴奏はオーケストラの代わりに女性ピアニストが独りのみ。
ただし、パンフレットには
”オーケストラのようなピアノを弾く人”とあった。
事実、彼女の活躍は目覚ましいものがあったのだ。

主役のフィガロと許嫁(いいなづけ)のスザンナ、
領主のアルマヴィーヴァ伯爵の歌い処は
ちゃんとカバーされてはいるものの、
気に入りの「バルバリーナのアリア」がカットされていた。

バルバリーナは伯爵邸お抱えの庭師の娘。
彼女のアリアは小品ながら哀切に満ちて心に響く。
「改ざん!!」ではバルバリーナが劇回し役に転じてしまい、
結果、アリアが削られることとなった由。

それでも全体的によくまとめられており、
楽しい一夜を味わうことができた。
ホウツキカゲキ団には「フィガロ」に限らず、
ほかの作品にもぜひチャレンジしてもらいたい。

あまり悲劇的なのは似合わないが
「セビリアの理髪師」、「愛の妙薬」、「こうもり」あたりは
ピッタリなんじゃないかしら?
ヴェルディの代表作「リゴレット」もじゅうぶん可能でしょう。
 

2016年12月7日水曜日

第1507話 改ざんされた「フィガロの結婚」 (その1)

その日のランチは新宿区・四谷荒木町のとんかつ屋。
厚目のロースカツは別段、特筆するところナシ。
よって詳細はパスする。

かつての花街を昼下がりに歩いても
頭上から三味の音(ね)降り注ぐでもなく、
どこか、うらぶれ感がつきまとう。
もっとも夜の帳(とばり)が降りるとこの街、
水を得た魚の如く生き返るのだ。

荒木町から曙橋、市ヶ谷から神楽坂下、
水道橋から後楽園、ヒマに任せてテクテク歩いた。
目の前にそびえ建つのは文京シビックセンターである。
手っ取り早くいえば、文京区役所である。

館内のホールで「リゴレット」だったかな?
いや、「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」かもしれない。
とにかく上野のお山にある、
東京文化会館の10分の1程度のチケット代で
オペラを観たのは早や10年以上前のこと。
コストパフォーマンスなんて言葉は使いたくないが
存分に楽しめたのだった。

二匹目のどじょうを狙う意図もなく2階に上がった。
ラックに満載のチラシを物色していて
そのうちの1枚に目が釘付け。
”スポホウ 改ざん!! フィガロの結婚”とあった。
8年ぶり再演決定!! であるらしい。

モーツァルトのオペラはそんなに観ていない。
それでも当該作のほかに
「魔笛」、「ドン・ジョヴァンニ」、「コシ・ファン・トゥッテ」、
「後宮からの逃走(誘拐とも)」、「イドメネオ」、
なあんだ、けっこう観てるじゃないか。

とにかく初めて見聞する、
ホウツキカゲキ団の公演に惹かれたのであった。
一夜限り、それも入場料が千円ポッキリというのにより惹かれた。

音楽好きの友人に打診すると、さすがに知っておったネ。
そいでもって彼女の友人たちまでジョインして
言わば、お誘い合わせの上、集結したわけでありました。

すっかりアレンジされ、いや、主宰者曰く改ざんだったな。
2時間に短縮されてはいるものの、
こういうのは”絶対アリ!” 強くそう思ったことである。
公演のパンフレットには
主宰者・宝概美代子サンの言葉でこうあった。
おっと、仔細は次話で―。

=つづく=

2016年12月6日火曜日

第1506話 日本列島性欲地図 (その2)

J-WAVE の放送から、今度は性欲の薄い県である。

<第5位> 愛媛県
美味しいものがいっぱいあるからネ。
もっぱら主婦は閨房よりも厨房で忙しい、ってか?

<第4位> 神奈川県
ここも海の幸の宝庫。
食べる歓びは睦む歓びに勝れり。
さもありなん。

<第3位> 兵庫県
海の鯛・蛸・穴子、陸の神戸牛、またもや旨いもの処。
ただし、北は日本海に面している。

<第2位> 広島県
牡蠣・蝦蛄・ままかり、ままかりは飯(まんま)借りにして
隣りの家のママ借りに非ず。
おっと、ままかりは隣りの岡山でした。

ではこのままベストワンにまいりましょう。

<第1位> 山口県
本州最西端県は広島の隣県にして性欲大なる九州への玄関口。
意外な位置取りながら、ここにも河豚・雲丹など海の幸。
兵庫同様、瀬戸内海と日本海を併せ持つ。

こう見てくると、やはり気候風土との関連が大きく浮かび上がる。
性欲の薄い県はいずれも瀬戸内や湘南など、
穏やかな陽光に恵まれ、風光明媚な土地柄である。
厳しい風雪とは無縁の地なのだ。
しゃかりきにヤらなくとも、ほかにやることがいっぱいある。

もっとも性欲ありありの熊本だって
天草や阿蘇など、観光名所が満載だし、
東北の秋田にしたって松尾芭蕉が
 象潟や 雨に西施(せいし)が ねぶの花
と詠んだ、景勝地・象潟を擁している。

さあ、お待たせしました。
日本列島・47都道府県、性欲の最も強い県はどこでしょう?

<第1位> 佐賀県
やっぱり九州でありました。
佐賀、佐賀?佐賀・・・、
失礼ながら、一般的関東人にはイメージしづらいかも?

磁器の伊万里焼、サッカーのサガン鳥栖、呼子の活いか刺し。
かくいうJ.C.も大した知識を持ち合わせていない。
唐津は訪れたことがあっても
県庁所在地の佐賀市には行ったことがない。
九州7県、7県庁所在地にあって佐賀は唯一、未訪の地である。

でもネ、佐賀が第1位ってのにはじゅうぶん得心がいった。
何でだ! ってか?
だって、佐賀は性(さが)に通ずるじゃん。
お粗末!

2016年12月5日月曜日

第1505話 日本列島性欲地図 (その1)

最近、ときどきラジオを聴くことがあって
ついこの間も FM の J-WAVE を流していたら
ナビのピストン西澤が

 日本で性欲が強い県 ベストファイブ!

いきなり叫んだのであった。
どこのどいつがどんな調査をしたのか、
あるいはどんなアンケートを取ったのか、
つまびらかではなかったものの、
世の中にはいろんなことに興味を持って
インヴェストゲートする個人や機関があるものだ。

”性欲が強い県”、
要するにセックスの回数が多い県民性ということだろうが
こういうものって
気候風土と関連性があるのだろうか?
漠然と、しかし直感的に”関連性あり”、
そう思ったことだった。

近くにメモ用紙がなかったため
聴きながら即暗記した。
読者の中には興味津々の方も多々ございましょう。
下ネタ嫌いのJ.C.Nあがら
コレは下ネタのカテゴリー外、
むしろ生命科学の分野に属すること。
ご期待に応えて発表いたします。

<第5位> 熊本県
被災地ではいろいろ不都合が生ずることでしょう。
お察しします。

<第4位> 宮崎県
これまた九州から。
九州のイメージには”たくましさ”があるものネ。

<第3位> 福井県
いきなり北陸に飛んだ。
福井は控えめでおとなしい印象だがなァ。

<第2位> 秋田県
福井同様に日本海側。
このまま北上すると、1位は青森か北海道かしら?

そして日本最強の性欲保持県は―。
その前に西澤サンは
反対の性欲が少ない県というのも発表していたので
そちらの方を紹介してみたい。

=つづく=

2016年12月2日金曜日

第1504話 流行り歌においてけぼり (その5)

そう、すでにお判りですネ。
MICOはミコにしてミエコ、弘田三枝子のことであります。

半世紀以上前、東京五輪の頃。
田辺製薬のCMが懐かしい。
「アスパラの目で目ぱちくり」―
お顔をイジる前で少々ブチャイクながら
健康美にはあふれていた。

当時のポップスシンガーはオリジナルではなく、
英米仏伊の曲を訳詞で歌うのが常。
したがってミコのヒットナンバーで思い出すのは
コニー・フランシスの「ヴァケイション」や
フランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」、
あるいはミーナの「砂に消えた涙」などである。

「MICO」はオマージュ・フロム・ケイスケ・トゥー・ミエコ。
日本のダイアナ・ロスというのはどうかと思うけど、
確かに迫力のある歌い方ではあった。
とにかく素敵な曲なのでぜひ、ご視聴を。

メールをくれた福島のS森サンご指摘の通り、
J.C.はサザンのスローバラードはあまり好きではない。
マイ・ベストテンをみても
バラード系は3位の「さよならベイビー」と
10位の「夏をあきらめて」くらいだ。

彼らの最大のヒット曲(レコードの売上で)、
「TSUNAMI」にしたって、その良さがイマイチ伝わってこない。
あのレイ・チャールズがカバーした「いとしのエリー」しかり。
「真夏の果実」、「涙のキッス」、やっぱりピンとこないんだ。

折も折、先週、桑田佳祐の新曲がリリースされた。
「君への手紙」はTVCMが盛んに流れているから
すでにお聴きになった読者も多いことでありましょう。

J.C.の印象は「なんか昔のヒットの焼き直しだヨ」というもの。
年齢を重ねてやや控えめながら新鮮味はまったくない。
進歩ナシと決めつけたらファンには叱られるかもネ。
それにしても歌詞の”調子こいて”ってのは
桑田らしくもあるけど、古い人間にはどうにも馴染めない。
背中にしょった鷲だろうか、
猛禽類のデッカい翼なんぞ、不気味にして悪趣味だ。

10年以上前、当時のGFに
「サザンのユア・ベストは?」―訊ねると、
「『希望の轍』かな」―意外な答えが返ってきた。
こちらは「勝手にシンドバッド」だもの、
好みってずいぶん違うもんだなや。

それでもたまには一緒に
誰かのコンサートにでも行くかということになり、
検討を進めた結果、
先方の主張はSMAP、当方は伊東ゆかりでありました。
これじゃ合うワケないじゃんか!。
ただの一度もコンサートには行かず、
しばらくして二人は別れましたとサ。

=おしまい=

2016年12月1日木曜日

第1503話 流行り歌においてけぼり (その4)

お待たせしました!
サザン(桑田ソロを含む)のベストテンであります。

① 勝手にシンドバッド
② BLUE~こんな夜には踊れない
③ さよならベイビー
④ 私はピアノ
⑤ メリケン情緒は涙のカラー
⑥ My Foreplay Music
⑦ 匂艶 THE NIGHT CLUB
⑧ MICO
⑨ HOTEL PACIFIC
⑩ 夏をあきらめて
 次点:星降る夜のHARLOT

「勝手にシンドバッド」は
この曲があったからこそ、その後のサザン。
彼らの運命を切り開いた名曲にして迷曲に
リスペクトの思いをこめて第一位に。

「BLUE」は前話で紹介した歌詞に加え、
曲調も洗練されており、完成度が高い。

「さよならベイビー」はニューヨーク赴任時に
行きつけたカラオケ・バーで
一世を風靡していた佳祐、もとい、佳曲。
個人的な想い出が詰まったナンバーなのである。

ここで「メリケン情緒は涙のカラー」とは違った意味で
ユニークな1曲を紹介してみたい。
8位の「MICO」である。

  ♪    Ha! あれは20年前の事
     ミエコという名でデビュー
     ふりしぼるような歌声で
     かなり振る舞いも派手な女(ひと)
     人形の家に住まう前は
     Japanese Diana Ross
     Oh ライ、ライ、ライ、
     shy なライ、ライ、ライ shy なミコ
     I、I、I Love Ya I、I、I Love Ya ミコ
     時の流れに負けるほど
     そんな通り相場の女なんかじゃない
     お前がいなけりゃ俺
     今さら歌などない
     綺麗になって Soul を捨てた
     たしなみばかりが歌じゃない
     もう一度だけ叫んどくれ
     俺のために           ♪
         (作詞:桑田佳祐)

さて、このMICOとはいったい誰でしょう?

=つづく=