2018年1月31日水曜日

第1799話 忘れ得ぬ March (その1)

毎週楽しみにしている新聞記事に
be on Saturday」の”もういちど流行歌”がある。
朝日新聞土曜版の一コラムで
過去のとある”月”に焦点を当て
読者のベスト15を選出するものだ。

先週の土曜(27日)の記事は1971年3月にスポットライト。
紙面に調査の方法が明記されているので
そのまま全文を書き写す。

朝日新聞デジタルの会員登録者を対象に昨年12月下旬、
アンケートを実施した。
回答者は1170人。
調査会社オリコンが1971年3月に調べた
シングル売上げランキングの上位20曲から
「好きな曲」「思い出深い曲」を選んでもらった。
曲は同月発売とは限らず、
また何カ月にもわたってランク入りする場合もある。
アーティスト名の表記は当時のもの。

そう、1971年3月。
若き日のJ.C.にとって人生の転機となったのが
この年、この月であった。
それは後述するとして結果を見てみたい。

まず、まな板に載せられた当時のオリコントップ10から。

① 知床慕情  加藤登紀子
② 花嫁  はしだのりひことクライマックス
③ 望郷  森進一
④ ナオミの夢  ヘドバとダビデ
⑤ 雪が降る  アダモ
⑥ マイ・スウィート・ロード  ジョージ・ハリスン
⑦ 空に太陽がある限り  にしきのあきら
⑧ 女の意地  西田佐知子
⑨ 京都慕情  渚ゆう子
⑩ さいはての女  藤圭子

続いて読者のベスト15だが短縮してベスト10を。

① 知床慕情
② 花嫁
③ 雪が降る
④ 空に太陽がある限り
⑤ 京都慕情
⑥ しれとこ旅情  森繁久彌
⑦ 雨がやんだら  朝丘雪路
⑧ ナオミの夢  
⑨ この胸のときめきを  エルヴィス・プレスリー
⑩ ざんげの値打ちもない  北原ミレイ

名曲揃いだねェ、懐かしいなァ。
心が騒いじゃうヨ。

=つづく=

2018年1月30日火曜日

第1798話 ラーメン転じて焼き鳥丼 (その3)

 東京十社に名を連ねる根津権現のすぐ隣り、
「鶏はな」にて焼き鳥丼を注文したところ。
待つこと7分。
どんぶりの上には
串を抜かれた4本の焼き鳥が並んでいた。

ささみ&団子は塩、正肉&ねぎまはタレである。
ささみにはニセわさび。
正肉&ねぎまは同じモモ肉で
長ねぎがアル・ナシの違いだ。

ささみ以外はいずれも水準以上。
炭火焼きの効果てきめんである。
3種の薬味は粉山椒・白胡椒・黒七味。
モモ肉に山椒のみを振りかけた。

脇役の小サラダ、鳥スープ、青菜漬けはそれなり。
サラダは普通、スープに滋味あり、青菜はおざなり。
メニューに1000円以下のものがないのは
フツーのリーマン&OLをターゲットにしていない証し。
普段は根津神社の参詣客もさほどではなかろうし、
夜を重視の営業形態なのだろう。

夜の品書きでは愛知産うずらの丸焼き(1080円)と
龍馬鍋(1800円)が気になった。
同鍋は坂本龍馬が好んだ、
にんにく入りの軍鶏すき焼きだという。

食後は散歩の継続。
森鷗外旧居の観潮楼跡へと続く藪下通りを往こう。
鷗外を師と仰いだ永井荷風がたびたび行き来した道だ。
ところが日医大つつじ通りを歩きながら
1本手前を右折してしまった。
すぐ気がついたが面倒臭くなってそのまま直進。
ほどなく1匹の黒猫に遭遇した。

手招きすると足元に寄ってくる。
頭をなでてやったら猫科動物特有のゴロゴロ音を発する。
赤い首輪をしているから飼猫であることは明白。
どうりで人懐っこいわけだ。

立ち去り掛けると、背後で立ち話をしていたオバさんが
「〇〇チャン、よかったネ」―
猫に声を掛けた。
〇〇チャンがミーチャンだったか、ピーチャンだったか
聞き取れなかったがタマチャンじゃないことは確か。
きっと、ご近所の人気者なのだろう。

道を間違えたおかげで黒猫に出会えたわけで
人の日常は何が幸いするか知れたものではない。
団子坂に出て白山下から桜の名所・播磨坂。
この寒いのにまったくよく歩くヨ、オッサンがヨ。

=おしまい=

「鶏はな」
 東京都文京区根津1-27-1
 03-5834-8079

2018年1月29日月曜日

第1797話 ラーメン転じて焼き鳥丼 (その2)

目当てのラーメンにフラれ、
見つけたラーメンは意に染まず、
島倉千代子のデビュー曲が頭の中を回り始めた。

  ♪    想う人には 嫁がれず
     想わぬ人の 言うまま気まま
     悲しさこらえ 笑顔を見せて
     散るもいじらし 初恋の花  ♪

        (作詞:西條八十)

1955年にリリースされた「この世の花」の2番である。
すでにかような日本女性は絶滅してしまい、
日本列島、どこを探しても生存してはおるまい。
嘆くべし!

なあんて書いてると、
「アナクロ男がまた寝言いっちょるワ」―
世の女性たちに一蹴されるのが関の山。
あゝ、昭和は遠くなりにけり。

想わぬラーメンに妥協せず、
思いついたのは根津神社の隣りに位置する1軒。
「鶏はな」という名の東京軍鶏専門店だ。
ランチタイムに数種類の親子丼を提供している。
ここは以前、「山本」なるとんかつ屋だった。

2階に上がると数組の先客はご婦人ばかり。
どんぶりの中身まで目に入らぬが
一様に親子丼を召し上がられている様子。
昨今、土曜の昼下がりにおける、
余裕のランチは女性の特権となった模様だ。

ランチメニューを紹介してみよう。

 水郷赤鶏親子丼―1080円
 東京軍鶏そぼろ親子丼―1290円
 東京軍鶏親子丼―1490円
 東京軍鶏とフォワグラ親子丼―1900円
 焼き鳥丼―1130円
 鶏ひつまぶし―1080円

親子丼をいただくつもりが
ふと、気に迷いが生じた。
もともとそれほど好きではない親子丼、
惹かれたのは焼き鳥丼であった。

お運びのオネエさんに
「焼き鳥は水郷赤鶏? それとも東京軍鶏?」―
訊ねると
「軍鶏です!」―
まさに当意を得たりの回答であった。

=つづく= 

2018年1月26日金曜日

第1796話 ラーメン転じて焼き鳥丼 (その1)

このところヤケに谷中づいている。
好天の午後、町歩きのスタートはJR山手線・駒込駅。
アザレア通りから田端銀座を経て動坂下から道灌山下、
またまた、よみせ通りにやって来ちゃったヨ。

音無しのラーメンを余儀なくされた、
「麺や ひだまり」を左手に見ながらそのまま直進する。
リベンジの再訪など毛頭ないからネ。
縁がなかったものと見限ったのだ。

よみせ通りを突き抜けてへび道の入口に位置する、
紅い暖簾の町中華、「砺波」の前に到着した。
しかし、この日の目当ては当店の野菜そばではない。
ラーメンはラーメンでも狙いを定めた1杯があったのだ。

先日、北上したへび道を此度は南下する。
台東区と文京区のボーダーライン上をクネるへび道。
行く手の左側の地番はずっと谷中。
右手の地番が千駄木から根津に替わる頃、
青森は津軽の郷土料理店「みぢゃけど」が見えてきた。

夜は本格的な料理を供するが
ランチタイムには津軽そばと津軽ラーメンが食べられる。
前回、店の前を通りすがったとき、
津軽ラーメンに強く惹かれたものの、
折悪しく昼食後、あきらめざるを得なかったのだ。

ところが、何の因果か店はクローズド。
ネットで調べてみたら、土・日・祝休とあった。
おかしいな、前回も今回も土曜日だゾ。
不思議がっていても始まらない。
打開策を講じなければ―。

日本そばやうどんなら
近くに「鷹匠」、「よし房 凛」、「根の津」など、
名店・佳店が目白押しなれど、
中華そばとなると、まったく思い浮かばない。

ノーアイデアのまま、不忍通りに出た。
根津方面でなく、千駄木のほうに向かう。
北に戻る感じだ。
すると日医大つつじ通りの入口手前に新店を発見。
どうやら背油チャッチャのラーメンらしい。
背油と聞くと第一感は「京都銀閣寺 ますたにラーメン」。
ふ~む、背油ねェ・・・けっして嫌いじゃないけど、
入店する気にはなれなかった。

このときピカリとひらめいた。
そうだ!
近所にマークしていた店舗が1軒あったじゃないか!
いや、ラーメン屋じゃないんだけどネ。

=つづく=

2018年1月25日木曜日

第1795話 私を谷中に連れてって (その6)

谷中は初音小路の「C'est Qui?」。
詳細が判らぬままににんじんサラダを注文した。
すぐに運ばれたソレはゆでたにんじんに
スパイスのクミン・シードを散らしただけのもの。
まあ、ヴィネグレットを使うキャロット・ラペよりは
赤ワインとの相性がいいから文句はない。

キャロットにクミン、この組合わせは
パリの三ツ星、「ランブロワジー」のシェフ、
ベルナール・パコーが発案した。
主菜に成り得るべくもなく、
単なるガルニチュール(付合わせ)的存在だ。

1995年の夏、訪れて味わったものの、
誰でも作れるシンプル極まりない料理。
別段、印象には残らなかった。
アイデア自体はユニークといえばユニークだけど―。

ワインを飲み切っての会計は7千円ほど。
高くはないが安くもない。
ただ、白ならともかく、赤を美味しく飲ませるには
惣菜にもう一工夫ほしいところだ。

オッサンたちの夜はまだ終わらない。
とうとう5軒目である。
よみせ通りに戻って焼き鳥居酒屋の「ひょうたん池」。
いただいたのは信州・諏訪の銘酒、真澄の樽酒だ。
飲み口はよいけれど、
普段口にしている菊正宗の樽のほうが舌に合う。

料理に惹かれるものはない。
おしなべて凡庸である。
鳥団子が名物らしく、
薬味を使い分けて5種類の品揃えを誇っている。

べつに食指は動かなかったが
2種を2本づつお願いしてみた。
ゆず胡椒とあとは何だったっけ?
山椒か七味だったかな?
もうこの頃になると、
酔いが回って記憶は曖昧模糊。
まことにお恥ずかしい限り。

豪州産ビールに始まり、アサヒの瓶ビール、
浙江省の紹興酒、トスカーナのキャンティ、
アサヒの生ビールを経て、ロワールのサンセール、
仕上げは信州の樽酒ときたもんだ。

いや、飲みも飲んだり。
相方をメトロの千駄木駅まで送り、
年寄りの冷や水ならぬ、
暴飲は終止符を打ったのでありました。

=おしまい=

「C'est Qui?」
 東京都台東区谷中7-18-13
 電話ナシ

「ひょうたん池」
 東京都文京区千駄木3-44-11
 03-3822-3534

2018年1月24日水曜日

第1794話 私を谷中に連れてって (その5)

いまだに谷中で飲んだくれている。
4軒目は初音小路の「C'est Qui ?」。
何度も店先を通過はしているけれど、
今回が正真正銘の初訪問だ。

すでに営業時間を記したボードを見ており、
「月曜定休」は把握していたものの、
それ以外の予備知識はまったくない。
ただ、どことなく嗅覚を刺激する何かが匂って
(ここはアタリ!だろう)
そんな予感はしていた。

(うわっ、何じゃこりゃあ! ほぼ満席じゃないの!)
10席ほどのカウンターはいっぱい、イッパイ!
半ばあきらめかけたところを
お客さん同士がどうにかスペースを作ってくれて
入口そばの、それも角カドに収容されたのだった。
とにもかくにも、ありがたや。

ビールはじゅうぶん過ぎるほどに飲んできた。
ここでは迷わずワイン。
相方は「necojitaya」でキャンティを
たっぷり召し上がったにもかかわらず、
さらに赤ワインで問題ないと言い放つ。
何度か酌交に及び、酒豪ぶりを目の当たりにしたが
あらためて再認識した次第なり。

品揃えはボルドー系が多い。
カベルネ・ソーヴィニヨンは得意としないから
ブルゴーニュを探したものの、見当たらない。
代わりにサンセールのピノ・ノワールだけがあり、
ほかに選択肢はない。

グラスを合わせると、
アミューズ・グール風の小皿が提供された。
自家製マヨネーズを添えたゆで玉子だ。
パクリ、モグモグ・・・フム、悪くないネ。

続いて野菜をふんだんに使用したスープが登場。
ルックスはちと野暮ったいが
いかにも田舎の家庭的な味わい。
まあ、プロがあまり作りたがらないタイプである。

本格的な料理はなく、
カジュアルなワイン・カフェといった感じの店だから
ボトル1本お願いすれば、それで事足りるのだけれど、
壁に貼られたメニューににんじんサラダを発見。

マダムに
「にんじんサラダってキャロット・ラペのこと?」―
問い掛けると、
「いいえ」―
ただそれだけで説明がない。
愛想ナシやなァ、もう!

=つづく=

2018年1月23日火曜日

第1793話 私を谷中に連れてって (その4)

七面坂の「necojitaya」。
日本語表記なら「猫舌家」であろうヨ。
カウンター内で客の相手をするのは二人の女性だ。
マダムと彼女の弟の嫁サンで
義理の姉妹ということになる。

キャンティのグラスを傾けながら
シスターズも交えて計4人、
とりとめのない世間話に小花を咲かせていた。
相方もアソビ人につき、
仕事の話題にならないのが何よりもいい。

会社や上司の悪口を言い合いながら飲むのは
サラリーマンの特権であり、同時に汚点でもある。
ああいう酒は美味いわけがなく、
ポケットマネーの無駄遣いもいいところだろう。

何だかノドが渇いてきて
われのみ、生ビールに移行した。
銘柄は好みのスーパードライ。
われながらビール好きは半端じゃないネ。

グラスの容量は小ぶりの中ジョッキくらい。
とりとめのないハナシを肴に
コレを3杯も空けちまったヨ。
今宵はこの時点まで、まだトイレに一度もいっていない。
まったく、おのれのチンチン代謝、もとい、そして失礼ッ!
おのれの新陳代謝はどうなってんのかなァ。

1組のカップルと単身の青年が入店したのを潮目に
そろそろ河岸を変えようか―。
H谷サンは女性スタッフとの会話がよほど楽しい様子で
まだ居座る気らしいが、
こういう場所でスタッフ独占の長居は嫌われる。
重い腰を引っ張り上げるようにして
いざ、4軒目の巻であった。

坂を上り切ってしばらく、
谷中の穴場、初音小路にやって来た。
一見、怪しい店々が軒を連ねている。
一番奥の左側は各店共通の共同トイレ。
その真向かいに目当てのワインバーがあった。
右隣りは以前に何度か利用したことのある、
焼き鳥屋「鳥真」だ。

バーの名前は「C'est Qui ?」。
”セッキー?”と発音するが
その仏語の意味は
”それって、だ~れ?” である。

「necojitaya」
 東京都荒川区西日暮里3-14-7
 03-5834-7357

2018年1月22日月曜日

第1792話 私を谷中に連れてって (その3)

オーストラリアン・カフェ「CIBI」をあとにして
2軒目は徒歩2分の距離にある「一寸亭」。
2年ぶりの来訪である。
目の前には小体なタコ焼き屋が
昨夏だったか開業している。
東京の古い町にタコ焼きってのは何だかねェ。

小上がりの小卓に胡坐をかいてリラックス。
先刻飲んだペールエールの小瓶ではとても足りず、
スーパードライの大瓶をお願いした。
相方はビールがなくとも、
実生活にまったく支障を来たさないH谷サン。
いきなり紹興酒をオーダーしている。

突き出しはシナチクの炒め煮だ。
甘じょっぱい味付けはビールにも紹興酒にもピッタリ。
なかなかに気が利いている。
谷中界隈の町中華ではピカイチの「一寸亭」、
こんなところにもその実力がうかがえる。

注文品はちょっとひねってミミガーときゅうりのピリ辛。
そして定番中の定番ともいえるレバニラ炒め。
シナチク同様、ともに酒の合いの手には恰好で
食味のほうも水準をクリアしていた。

紹興酒に切り替え、焼き餃子を追加する。
薄皮タイプは好きだから箸先がスイスイと動く。
餃子か焼売かと問われれば、
本来は焼売派だけれど、
近頃は美味しい焼売にほとんど出会えない。
ってゆうか~、餃子が焼売を駆逐しちまったネ。
早いハナシ、北(満洲)が南(広東)を凌駕したのだ。

滞在時間は1時間に満たなかったろうか、
「一寸亭」を出て
夕焼けだんだんの1本南側に位置する七面坂へ。
3軒目は1ヵ月半ほど前に初見参した「necojitaya」だ。

ここでは前回と同じキャンティをグラスで。
造り手はポリッツァーノである。
チャームは2枚のクラッカー。
それぞれにチーズがチョコンと乗っている。
チェダーとゴルゴンゾーラだ。

H谷サンがベーコンとぶなしめじのアヒージョを注文する。
アヒージョにはバゲットが添えられてきた。
中華のあとはこういった軽いものがよろしい。
とは言え、小食のJ.C.はほとんど手をつけない。
相方は意に介さずパクパクとやっている。
健啖家なんだなァ。

=つづく=

「一寸亭」
 東京都台東区谷中3-11-7
 03-3823-7990

2018年1月19日金曜日

第1791話 私を谷中に連れてって (その2)

よみせ通りにオープン間もないカフェの店先、
女性スタッフに入店を促され、
「友人と待合わせてるから、あとでちょっと寄るネ」
「ええ、ぜひ!」

東京メトロ千代田線・千駄木駅でH谷サンをピックアップ。
そのままカフェ「CIBI」に舞い戻った。
くだんの彼女、再び笑顔でわれわれを引き入れる。
天井の高い店内は居心地がとてもよい。

アルコールは豪州産の瓶ビールと
同じく豪州産の白・赤ワインのみ。
「オーストラリアのビールって軽いタイプ?
 それとも重いの?」
「軽いビールですヨ」
それならよかったと、お願い。

運ばれたビールのラベルには
クーパーズ・ブリュワリー ペールエール
とあった。
あちゃ~、やっちまっただヨ。
ペールエールはけっこう重いんだよな。
彼女に罪はないが、ちと恨めしい。

ところがどっこい、飲んでみたら意外にさわやか。
英米のそれとは明らかに違う。
胸をなでおろし、さて、何かつまみを所望しようかの。
すると今度はまったく救われぬ状況に陥った。
何となれば、タルトやケーキの類い、
いわゆるスイーツしかないんでやんの。
ビールにレモンタルトじゃどうしようもないじゃん。

いくらなんでも彼女の横顔を愛でながら
君がさやけき目の色や君くれないの唇を
酒の肴とするにはムリがある。
よって375ml 入りの小瓶1本づつで退散を決め込んだ。

帰り際にビジネスカードをもらうと、
ヘッドクォーターは豪州のメルボルン。
はは~ん、どうりでネ。

2軒目は谷中ぎんざのメインストリートから
路地に入ってすぐの「一寸亭」。
これは「いっすん亭」ではなく「ちょっと亭」と訓ずる。
昔の林家こぶ平、
今の林家正蔵(9代目)師匠が気に入りの店で
もやしそばが一番の売れ筋だ。

当店は何度か訪れているが
それでも直近は丸2年前の12月。
確か、かにチャーハンをいただいた。
まずまずの仕上がりに
舌鼓を打つほどではなかったものの、
クラブミートはそこそこ入っていたのを覚えている。

=つづく=

「CIBI」
 東京都文京区千駄木3-37-11
 03-5834-8045

2018年1月18日木曜日

第1790話 私を谷中に連れてって (その1)

二ヶ月半ほど前に森下で飲み歩いた、
のみとも・H谷サン。
「私を下町の森下に連れてって!」―
そう、のたまわった御仁である。
此度は
「私を谷根千の谷中に連れてって!」―
との仰せである。

数日前に谷中よみせ通りの「麺や ひだまり」にて
和塩らぁ麺をすすっった、もとい、
音無しで食したばかりだから
(ええ~っ、また谷中かヨ)
胸の奥でつぶやいたものの、
人の好さでは人後に落ちないJ.C.のこと、
二つ返事で請け負ったのでありました。

当日は祝日の土曜日。
そう、天皇誕生日だった。
谷中といえば、都内有数の寺町だけど、
お寺めぐりをしても始まらないから
当然、飲み歩くエリアは
夕焼けだんだんから谷中ぎんざ、
そしてよみせ通り界隈になる。

しかしながら、それは観光客を含めた一般人のこと。
その土地を知り尽くしたわれわれクラスになると、
行動範囲はグ~ンと拡がるのだ。
エッ? 何だって?
上から目線はやめろっ! ってか?
ハイ、スンマソン。

この辺りの穴場といえば、
一に初音小路、二にすずらん通りでキマリ。
三四もなければ、五などない。
上記二箇所は昭和の匂い濃厚にして
レトロスペクティヴな小路なのである。

当然のことながら案内する側としては
訪れるべき店々を数軒、頭の中に描いていた。
ただし、土曜といえども祝日のこと、
店によっては休業日に当たる懸念がある。
よって、待合せの前に町をぶらつき、
営業の確認を怠らなかった。

その道すがら、
数ヶ月前にオープンしたばかりのカフェの店先で
メニューボードをながめていると、
中からうら若き女性スタッフが現れて
「よかったらいかがですか?」―
笑顔で声を掛けられた。

おっと!
目元さやけき美形は紛れもない、
好みのタイプじゃないですか!

=つづく=

2018年1月17日水曜日

第1789話 音無しのラーメン (その2)

谷中と千駄木の境界線上をのた打つ、
へび道を抜けて三崎坂(さんさきざか)に出た。
目の前には老夫婦が営む、
古く良かりし町の中華屋さん、「砺波」があった。
一度はここの野菜そばに惹かれたのだったが
ふと、他の一軒を思い出した。

このまま三崎坂を横切り、直進するとよみせ通り。
しばらく行って谷中ぎんざのT字路を越え、
なおも真っ直ぐ進めば、
左手に和風ラーメンの「麺や ひだまり」が見えるハズ。
未訪ながら以前から気になっていた店である。
そうだ、トライしてみよう。

てなこって「ひだまり」に到着すると、
順番待ちの客は二人ほど。
これならすぐ入れると思い、後尾につく。
結局はそれから10分後、やっと案内された。

入口の券売機で和塩らぁ麺(720円)のチケットを購入。
右手にカウンターが1本、奥へと続いている。
10席はあるだろうか?
真ん中に接客係のための出入り口が設けられ、
カウンターを二分している。
奥の端っこ、出入り口の隣りに落ち着いた。
店内はザワザワと騒がしい。

卓上のメニューに当店のスープの出汁は
大山鶏、伊吹いりこ、枕崎鰹節、知床羅臼昆布を
使用と明記されていた。
ふ~ん、四重奏の賜物ですか―。

和塩らぁ麺はなかなか届かない。
そうこうしているうちに
左側の客たちがいっせいに立ち上がった。
見れば四人組じゃないか、どうりで喧しいわけだヨ。

代わりに入店した来たのがこれもまた四人組。
それも外人3、邦人1の組合わせだ。
しゃべっているのは米語であった。
アメリカのオバちゃんがJ.C.の左隣りに座った。
あちゃ~、こいつは困ったことになったゾ。

ほどなく和塩らぁ麺が到着したものの、
マナー上、音を立ててすすることができないヨ。
ラーメンはすすらなきゃ、旨くもなんともない。
それどころか唇や舌がアチチのチ。
「大菩薩峠」の主人公、極悪非道の机竜之助よろしく、
音無しの構えを余儀なくされたのでありました。

エッ? 味はどうだったんだ! ってか?
そんなん判るワケないじゃん。

「麺や ひだまり」
 東京都文京区千駄木3-43-9
 03-3821-5211

2018年1月16日火曜日

第1788話 音無しのラーメン (その1)

風はあっても陽射しに恵まれた午後の散歩。
文京区・根津の交差点から千駄木方面に向かい、
チョイと奥へ入ってへび道を歩む。
へび道はそのまま台東区・谷中と
文京区・千駄木の境界線に当たり、
道の下には藍染川が暗渠として流れている。
川のクネクネをアスファルトでふさいだため、
道もまたクネクネの形状を示す。

  ♪    現在・過去・未来
     あの人に逢ったなら
     わたしはいつまでも
     待ってると誰か伝えて
     まるで喜劇じゃないの
     ひとりでいい気になって
     冷めかけたあの人に
     意地をはってたなんて
     ひとつ曲がり角
     ひとつ間違えて
     迷い道くねくね   ♪
       (作詞:渡辺真知子)

 シンガーソングライター、渡辺真知子の「迷い道」は
1977年11月のリリース。
当時、J.C.は日比谷の免税店に勤めていたが
その年の暮れには退社して
糊口をしのぐために芝のホテルで働き始めた。

翌年の夏、飛騨高山へ小さな旅を試みたとき、
町中を流れていたのは緋鯉が泳ぐ宮川と
この「迷い道」だった。
まだ J-POP なる造語が生まれる前だったが
モダンな流行歌と旅愁誘う古都との対比に
違和感とてなく、むしろ調和を覚えたのを思い出す。

それはそれとして、へび道足下の藍染川だ。
文豪・森鷗外の名作「雁」にはこうある。

藍染川のお歯黒のような水の流れ込む
不忍の池の北側を廻って上野の山をぶらつく

鷗外は千駄木・団子坂に棲んでいたから
近くを流れる藍染川を目にすることも
たびたびであったろう。
藍染とお歯黒とでは
落差が激しすぎる気もするが明治の頃はいざしらず、
暗渠化された大正末期には
すでにドブ川の如くだったという。

クネクネを抜けて三崎坂に出た。
右角には町の中華屋「砺波」が紅い暖簾を掲げている。
小腹も空いたし、久々に野菜そばと参ろう、
一度はそう思ったのだが・・・。

=つづく=

2018年1月15日月曜日

第1787話 一富士二貴三白鵬 (その6)

何だかんだでこのテーマも(その6)まで来ちまった。
思うに白鵬は、協会や横審はもとより、多くの相撲ファン、
ひいては日本人社会全体に問題を提起してるのだろう。
口には出せぬ不平不満をことあるごとに態度で示して
どこまで許容されるのか、
試しているフシさえうかがえる。

親方として角界に残るには日本国籍の取得が必須。
時代遅れの愚則というほかはなく、
即刻、改めるべきではないのか―。
横綱審議会、評議員会は
こういうところにも目を配ってもらいたい。

モンゴル力士たちに、おんぶに抱っこに肩車、
そんな相撲界にもかかわらず、感謝されるどころか
ときとして彼らを襲う、礼を失した冷たい仕打ち。
どうにかならないものかねェ。

殊に強すぎる白鵬には風当りも強い。
力が衰えたせいで汚い相撲を取るんなら引退せよだの、
貴乃花の実母にいたっては
”引き際というものをを知らない”ときたもんだ。
イチローやカズが聞いたらいったいどう思うかネ。

とか何とか言ってるあいだに初場所が始まった。
案の定、隔離されてる貴ノ岩は休場だ。
大阪場所では十両のドン尻で出場するのか、
それも危ぶまれる始末。
因果な親方を持ったものよのぉ。

最後の最後にこれだけは触れておきたい。
当事者の貴ノ岩が何も公にしない以上、
安易な憶測は避けて彼の行動のみ検証すると、
二つのことが浮上する。
ともに暴行を受けた晩の翌日の出来事である。

① 巡業で土俵に上がり、実力者の勢に勝利
  一番を観て、とても怪我人とは思えなかった。
  身体のどこをかばうでもなく、ケロッとしていた。

② 日馬富士のもとへ出向き、謝罪して握手
  後日、謝罪はしたが納得はしていないとコメント。
  面従腹背の典型例だネ。
  男と男が握手したらそれにて落着だろう。

幸いにして鶴竜、稀勢の里の両横綱は
初場所の出場を明言している。
大相撲ファンとしては
気を取り直して土俵に注目していきたい。

長々とダラダラと綴ってしまいやしたが
お読みいただき、ありがとさんにござんす。
では、ごめんなすって―。

=おしまい=

2018年1月12日金曜日

第1786話 一富士二貴三白鵬 (その5)

横綱・白鵬の張り差しである。
巷間、張り手、張り手と強調されるが
あれは正しくは張り差し。
かつての横綱・朝青龍のような、
バッチン、バッチンのモロ張り手では断じてない。

別段、見苦しくもないし、差し支えないんじゃないの?
立ち合いにおける一つの技術だろう。
白鵬は右手で張るから右脇が甘くなり、スキができる。
対戦相手にはそこをつく戦法も生まれるハズだ。

勝負が決まったあとのダメ押しにしたって
それほどアコギなものでもない。
何たって、のたり松太郎なんか、
気に入らない審判めがけて相手を投げつけててたもの。
いえ、冗談ですって―。
エッ? もっと真面目に書け! ってか?
ハイ、ごもっとも。

いずれにしろ、ダメ押しはほめられないけどネ。
むしろカチ上げのほうがよくないな。
本人は相手を傷めるつもりなどなくとも
サポーターをグルグル巻いたヒジを使うのはいけない。
当面、そこんところを改善してくれれば、
彼の土俵さばきに注文はない。

おっと、大事なことを忘れてた。
先場所、千秋楽の万歳三唱である。
TV解説者の北の富士サンが
「やり過ぎだヨ」―
吐き捨てるように苦言を呈したけれど、J.C.は擁護したい。

優勝力士インタビューのコメントにもあったが
とにかく白鵬は日馬富士と貴ノ岩を
とりわけ日馬富士を再び土俵に上げてやりたい一心。
そのためには世間のダメ押し、
もとい、あと押しが必要不可欠だから
ファン受けする奇策を用いたのだ。
その証拠に福岡の観客は大喜びで唱和していた。
場の雰囲気にちっとも違和感を与えないし、
白鵬! よくやってくれた、というのがJ.C.の素直な印象だ。

でき得れば時計の針を元に戻したい。
白鵬だけでなく日馬富士も貴ノ岩も
あの夜、同席した力士はみなそう思っているハズ。
夢がかなわぬ現実に臨んで
これぞベストのパフォーマンスと判断し、
あとの批判や叱責を承知のうえの確信犯だったのだ。
協会や横審や解説者が何と言おうと、白鵬は立派。
行動を起こしてこそ、革新が実現するわけで
口を閉ざしていて、いったい何が起こるというのだろう。

=つづく=

2018年1月11日木曜日

第1785話 一富士に貴三白鵬 (その4)

「日馬の悲劇」を皮切りに
書きたい放題を綴ってきたが野球界の暴力について―。
このテーマでは、とあるTV番組に注目していた。
TBSの「サンデーモーニング」だ。
あっぱれ!喝だ!で世に知られる、
スポーツコーナーの週刊御意見番である。

張本勲こと、通称・張サンが
今回の事件について何を語るのか―このことであった。
日頃から野球の両軍入り乱れる大乱闘に対し、
「こういうときは独りベンチに引きこもってちゃ駄目。
 出て行かないと、あとでつま弾きにされますヨ」―
まるで暴力を促進するかのよう。

ヤンキース時代の松井秀喜に
あの温厚な性格の松井秀喜にも
乱闘参加を促してたっけ。
さあ、張サン、
アンタいったいどんな発言をしてくれますのん?

はたして
「暴力はいけません!」ときたもんだ。
どうやら野球はいいけど、相撲は駄目らしい。
野球の場合は大衆の面前でっせ。
TVを通じて子どもたちも見てるんでっせ。
メジャーなんか、平手じゃなくて正真正銘のグーでっせ。
典型的なダブルスタンダードじゃござんせんか?
まっ、彼の気持ちも判らないじゃないが
相撲というのはつくづく因果なスポーツよのぉ。

そして白鵬。
彼の取組に関してかまびすしいのは例の張り差し。
見苦しい。
勝負にこだわり過ぎている。
横綱相撲とは言えない。
いろいろございましょうが
それなら張り手を禁じ手にするしかないんじゃないの。

例えば昨シーズンの日本シリーズ覇者、
ソフトバンク・ホークスに対して
オマエんとこはチャンピオンなんだから
堂々とした野球を目指すべし。
よって3回の攻撃までは
送りもセーフティもバントは自粛。
盗塁は各イニング、二死になるまで禁止。
隠し玉なんか言語道断で罰金を科す。
こんなルールが成立したら
真っ当なゲームとは言えないだろうヨ。

例えばボクシング。
通常のチャンピオンなら認めるが
WBAが認定するスーパー王者になった者は
チマチマしたジャブは前面禁止。
パンチはストレート、フック、アッパーに限り、
ズドンと一発で対戦相手を倒すべし。
これじゃ試合にならんよネ。

=つづく=

2018年1月10日水曜日

第1784話 一富士二貴三白鵬 (その3)

一連の騒動も今や主役は
土俵を降りた日馬富士ではなく、降ろさせた貴乃花。
人としてあるまじき行為だったのは
伊勢ケ浜親方と日馬富士が謝罪に訪れた際、
二人の面前から車で走り去ったこと。
しかも現役の横綱、日馬富士が正装の羽織袴を付けて
誠意と謝意を表しているにもかかわらずだ。
拒絶された二人の心中を察すると胸が痛む。

貴乃花に吹く世間の風は
フォローとアゲインストがほぼ半々の様子。
現役時代からの根強い人気が
多分に影響しているのだが
けして贔屓の引き倒しにならぬよう、
冷静にニュートラルな立場に立って判断したいものだ。

最後に横綱・白鵬について語りたい。
その前に横審の常套句、
”横綱の品格”とはそもそも何であろうか?
皆さん、さぞご立派な品格を備えた方々らしい。
朝日新聞の時事川柳にこういうのがあった。

 品格をそっくり返って語る人

言い得てズバリじゃないか!
とかく品格の無い者に限って
品格を語りたがるものなんだ。

そして横綱相撲とは何であろうか?
大鵬、北の湖、貴乃花(二代目)のように
体格と体力に恵まれた横綱と、
栃ノ海や若乃花(三代目)など、
小兵横綱を比べるのは土台無理があろう。
小兵が鷹揚に横綱相撲なんか取ってたら
一発で土俵の外に弾き飛ばされちまうヨ。

それでいて負けが込み出せば、
横綱の名にふさわしくない、無様だ、
だらしないと非難ごうごう。
はっきり言ってしまえば、横審なんかないほうがいいネ。

勝利と品格を同時に求められる横綱。
負け続けたら引退に追い込まれる横綱。
不祥事を起こせば一発退場で
復帰の望みを永遠に断ち切られる横綱。
他のスポーツには例を見ない重責に
身も心もボロボロになることだろう。

他のスポーツが出てきたのを機会に
他のスポーツの暴力に目を向けてみようか。
日本人に人気の野球はどうだろう。
日常茶飯事とは言わないまでも
グラウンドでの乱闘シーンなんか
しょっちゅう見掛けてるでしょ、えっ、皆の衆?

=つづく=

2018年1月9日火曜日

第1783話 一富士二貴三白鵬 (その2)

日馬富士の悲劇について、そのつづき。
今さら何を言っても何を問うても覆水盆に返らず。
そんなことは判っちゃいるけど、
何かしら救済措置がなかったものだろうか?

一般人に手を出したやんちゃ坊主の乱暴者、
朝青龍のケースとは事情も罪状も異なる。
日頃の所作、所業を見て感じるが
日馬富士はそれなりの人格者だと思う。

評議員会議長の池坊保子サンは
「貴乃花親方がすみやかに報告していたら
 八角理事長も対応のしようがあったと思う」―
かように悔しさをにじませている。

むろん、お咎めナシとは絶対にいくまいが
引退だけは避けられたのではないか―。
好角家として知られるデーモン閣下も
「辞めることはなかった」と語っているし、
日馬富士の大ファンを自認してやまない、
英国のウイリアム皇子は茫然としていることだろう。

極論すれば結果として
日馬富士は貴乃花に首を取られたカタチ。
にもかかわらず、
横綱引退表明後もかたくなに
危機管理委員会の聴取や
メディアの取材を拒み続けた貴乃花。
マスコミ関係はともかくとして
あまりにもしゃべらなすぎた。

要するにターゲットは日馬富士の首ではなかったのだ。
相撲協会か協会理事長、
あるいはひっくるめてその両方なのだろう。
それならなおさら口を開いてほしかった。
ん? 沈黙は金? すでに死語ですな。

そのわりに身内の宴席では「嘆きのメロディー」、
「勇者たち」を臆面もなく披露した貴乃花。
しゃべるほうより、歌うのが得意の様子だ。
歌に想いのすべてを託したようだが
「西部警察」の観すぎだヨ。
裕次郎も草葉の陰で苦笑しているに違いない。

前述の池坊サンが理事解任の理由の一つとして
礼を失した行動を挙げた。
昨日TVを観ていたらそこをつき、
”私情をはさんだコメント”として非難した司会者がいた。

ちょっと待ってヨ。
あれは私情じゃないだろう。
一連の行動は誰が見ても無礼だし、
品性を欠くものだった。
声高に角道を唱える姿に相反するのは明らかだ。

=つづく=

2018年1月8日月曜日

第1782話 一富士二貴三白鵬 (その1)

ここ数週間というもの、朝のモーニングショーも
の報道番組も(観るヒマないけど昼もまたしかりであろう)
日馬富士の暴行事件に端を発した一連の角界騒動一色。
それも二言目には「暴力は許されない!」
こればっかりの大合唱。
コメンテーターもゲスト識者もほかに言うことないのかネ。
合唱は歳末の「第九」だけでじゅうぶんだ。 

それに加えること、
加害者、被害者を紋切り型に二分して
加害者側の伊勢ヶ浜親方より
被害者側の貴乃花親方の処分が重すぎる云々。

そもそも貴乃花は被害者側だが被害者本人ではないし、
問責されているのは相撲協会理事、
並びに巡業部長としての責務を怠ったところにあり、
暴行事件と責務不履行を同じ土俵に上げるのは無理がある。 

「一番かわいそうなのは貴乃岩」―
これまたTV出演者の常套句だ。
はたしてそうだろうか?
J.C.はその意見に与しない。

それではだ~れ?
事件の加害者である日馬富士が最大の被災者だろう。
相撲取りとしては小さなあの身体で横綱に昇りつめるには
言葉に出来ないほどの辛苦があったハズ。
番付表といくらにらめっこしても
彼以上に精進してきたと思える力士は見当たらない。
強いて挙げれば白鵬と鶴竜くらいじゃないか―。

揃いも揃ってモンゴル出身力士で
この三横綱が日本の国技を支えてきたのは明白な事実。
稀勢の里なんかまだまだだ。
人気はあるけれど、その要因は日本人であるということだけ。
角界にあまり貢献していないし、大した功績も残していない。
相撲協会もメディアもファンも、
もっと彼らをリスペクトし、彼らに感謝すべきだろう。

日馬富士は自らの奮闘努力の賜物を
たった一夜で無にしてしまった。
被害者本人が雲隠れして、いや、雲隠れを余儀なくされて
今までの功績を爪の先ほども認められず、
築き上げた地位を失い、ただただ罪を糾弾されるのみ。
あまりにも不憫でならない。

結果的には辞任というカタチになったが
そこまで追い込んだ相撲協会、横綱審議会、
各種メディアはいったい何様なのかネ。
こんな仕打ちしかできない連中が同じ日本人かと思うと
悲しくて悲しくてとてもやりきれないヨ。

=つづく=

2018年1月5日金曜日

第1781話 都の西北から東北へ (その5)

夕暮れの北区は王子の町。
カラオケボックス「K」では
さんざ歌ったというより、さんざビールを飲んだ。
しょっぱい「メルシー」のラーメンスープのせいだろう。

暖簾をくぐった「宝泉」はまだ五分の入り。
ほとんどの客が左右二つあるカウンターの右側を占めている。
われわれもそちらに誘導された。
ちなみに右はオバちゃん、左はオバアちゃんの取仕切りだ。

ビールはじゅうぶんにつき、生ホッピーをお願いする。
もともとそのつもりでいた。
何となれば、生ホッピーにはまずお目に掛かれないからだ。
格別に旨いワケではないが気分のノリは格段によくなる。

T子サンはレモンサワーだったか、ハイボールだったか、
よく覚えちゃいないけど、炭酸モノであることは確かだ。
つまみはJ.C.がかきフライ、相方はポテトサラダである。
するとポテサラが売切れで
代わりにすすめられたカボチャサラダを素直に了承。
まっ、芋・蛸・南京は女子の三種の神器だもんネ。

生ホッピーをお替わりし、チョイ焼きたら子&ヤワリメ。
ヤワリメは柔らかいアタリメのことだ。
小ぶりのするめいかをあらかじめ漬け汁に浸して置き、
じゅうぶんに戻してから焼き上げる。
なかなかのアイデアじゃないか。
漬け汁は生醤油と日本酒、それに何かの出汁だろうか?

生ビールに切り替えてポテトフライを追加した。
町の肉屋にありがちなパン粉をまとったヤツを想像したが
あにはからんや、
マックのフライドポテトみたいのが運ばれる。

仕上がりもそれなりだ。
マックより上ながらモスと同等といった感じ。
べつに悪くないけど、ケチャップじゃなく、
アイオリ(にんにくマヨ)がほしいかな。

夜の町へ。
恐るべきことにT子サンもまた、
スナッキー(スナック女子)であった。
かつての呑ん兵衛横丁、その名もさくら新道に赴くと、
廃れに廃れた通りには営業を続けている店が
スナックと小料理屋(?)の2軒のみ。
一者択一でスナック「M」に入店をはたす。

独りで切盛りするママは八十路に差し掛かっている。
それを常連の女性たちが内に外にサポートする景色だ。
何気なしに見とめた片隅のスナップ写真に瞠目した。
おやまァ、何と可愛らしい。
二十歳の頃のママのお姿。
供されたチャームを打っちゃって
ポートレートを肴に飲み始めた次第なり。
あゝ、飛鳥山のふもとにも夜の帳が降りてゆく。

=おしまい=

「宝泉」
 東京都北区王子1-19-10
 03-3914-2726

2018年1月4日木曜日

第1780話 都の西北から東北へ (その4)

都営荒川線の車中の人となり、千登世橋をくぐったところ。
しかし、三重子チャンはなぜ「千登勢橋」としたのだろうか?
それなら代表曲の「池上線」も「池神線」にしたらいいじゃないか!
当時、小林千登勢という名の中堅女優がいて
彼女の名前を拝借したのかもしれない。

とかく若い女性の心理は理解しがたいものですな。
若いと言っても月日は流れ、彼女もこの8月で68歳。
ちなみに出身は川村短期大学である。
千登世橋を東に下れば日本女子大学、
西に上れば川村学園、
そしてたもとにあるのが学習院大学だ。

したがって秋篠宮と紀子さまの逢瀬はこの界隈が主な舞台。
逢瀬とはまた古めかしい言い回しだが
インペリアル・ファミリーに対して
デートじゃあまりにもカジュアルに過ぎる。
何事も失礼のないように―。

紀子さまといえば先頃、
引退を表明したフィギュア・スケーターの村上佳菜子。
彼女を初めて見たのは2010年の世界ジュニア選手権だった。
女子シングルで金メダルを獲得したときから
J.C.は彼女を氷上の紀子さまと呼び始めたのでありました。
笑顔の目鼻がソックリだもの。

まっ、そんなことにはおかまいなく、電車は王子に到着した。
今宵のターゲットは
コの字カウンターを二つ持つ酒場、「宝泉」と決めていた。
星の数ほどある東京の酒場で
ダブル・カウンターは3ヶ月前に訪れた、
自由が丘の「金田」しか、すぐには思い浮かばない。

開店までしばらく時間があるため、
時間つぶしというのじゃないけれど、
「M」なるカラオケボックスへ入った。
王子の町には最大手の「K」がないのだ。

初めて利用してみて思ったネ。
この「M」は居心地抜群。
高級カラオケの「P」ほどではないにせよ、
レイアウトがゆったりしているし、
スタッフの接客もテキパキと
「K」より断然いいんじゃなかろうか。

加えて「K」の生ビールはプレモルだが
「M」にはちゃんとスーパードライがある。
これだけでもアサヒファンにはありがたきシアワセ。
驕れる平家は久しからず、
そんな格言がふと脳裏をよぎったのでありました。

=つづく=

2018年1月3日水曜日

第1779話 都の西北から東北へ (その3)

都の西北、早稲田の森にいる。
荒川線に乗り込むつもりが
女子中学生の団体に機先を制されて方向転換の巻。
新目白通りの前方にリーガロイヤルホテルが見えた。
ここから上野松坂屋行きのバスが出ているハズだ。

取りあえずホテルでトイレを借りよう。
ロビーのカフェではレイト・ランチや
アフターヌーン・ティーを優雅に楽しむ人々多数。
平和な師走の光景が拡がっていた。

さて、行く先は終点の上野でもいいし、
途中の千駄木、あるいは根津あたりでもよかろう。
と思ったものの、待てヨ、
チンチン電車のガキンチョはすでに掃けたろう。
何も子どものせいで大人の予定を変更することもあるまい。

再び方向を元に戻して都営荒川線・早稲田駅。
都の西北から東北へ進路を取った。
東北といってもみちのくふたり旅の観光ではないヨ。
早稲田から見て王子は東北の方向なんだヨ。
まっ、正確には北北東ですがネ。

ん? 早稲田→王子?
早稲田の王子かァ、ハンカチ王子を思い出す。
ライバルのマーくんには大きく水を空けられたが
今年もクビがつながり、現役を貫く様子。
何とか一踏ん張りしてもらいたいものよのぉ。

電車は面影橋、学習院下を過ぎ、
千登世橋の下をくぐり抜けてゆく。

  ♪    駅に向かう学生たちと
     何度もすれ違いながら
     あなたと歩いた目白の街は
     今もあの日のたたずまい
     指を絡めいつもと違う
     あなたのやさしさに気付き
     もうすぐ二人の別れが来ると
     胸が震えて悲しかった


     電車と車が並んで走る
     それを見下ろす橋の上
     千登勢橋から落とした
     白いハンカチが
     ヒラヒラ風に舞って
     飛んで行ったのは
     あなたがそっとサヨナラを
     つぶやいたときでしたね   ♪

       (作詞:西島三重子)

シンガーソングライター、
西島三重子の「千登勢橋」は1979年のリリース。
なぜか彼女は千登世橋を「千登勢橋」と綴っている。
その訳は判りましぇん。

=つづく=

2018年1月2日火曜日

第1778話 都の西北から東北へ (その2)

早稲田の中華屋「メルシー」にて昼下がりのビール。
相席のキャリアウーマンが書類に目を通し始めたので
もうジャマはしないことにした。
ちなみに彼女の注文はタンメンであった。
だよねェ、野菜は美容に欠かせんもん。

われわれのオーダーはチャーシューメンとオムライス。
オムライスなんかまず頼まないが
女性はいくつになっても
たとえオバさん、オバアさんになってもコレが好きだよなァ。
いや、男でもファンは少なくないか―。

J.C.はどうせ食べるなら
オムレツとチキンライスを別々にしたい。
オムレツでビールを飲ってから
チキンライスを文字通りメシとするわけだ。
それが正しい男の道だと思うんだけんどねェ。

実はチャーシューメンもまず注文しない。
だけど「メルシー」のチャーシューはいいつまみになるんだ。
しかも当店のラーメンスープは無茶苦茶しょっぱいから
チャーシューの味付けに一役買ってくれるし、温めてもくれる。
冬場の冷めたチャーシューで
冷たいビールってのもなんだかなァ・・・なのである。

結論から言うと、オムライスは悪くなかった。
昭和の下世話ない匂いプンプンで懐旧の思いをくすぐる。
オムの上のケチャップはいらないくらいで
やっぱりチキンライスだけのほうがいいなァ、
なんて未練心につまづきながら
メニューボードを見上げると、ここにチキンライスはなかった。
代わりにポークライスがあった。

タンメンを食べ終えたキャリアウーマンが
別れの言葉と会釈を残して卓を離れる。
うん、なかなか良い女(ひと)であったな。
今どきの若いギャルとはだいぶ違うな。
考えることがどうにもジジむさいネ。

細い商店街を抜けて都営荒川線の早稲田駅。
北区・王子あたりで飲むつもりだった。
すると、何だ、なんだ!
到着ホームがガキンチョでごった返してるぜ。
ちょうど貸し切り電車が到着したところで
中学生が男ばっかり、黒山のごとくに吐き出されている。

一緒じゃなくて助かった。
出発ホームに並びかけると、
再び、何だ、なんだ!
今度は女子中学生が団体で後続に着いたじゃないの。
ピーチクパーチクかしましいことこのうえない。
こりゃあ、駄目だ、行く先変更!
チンチン電車をあきらめて
新目白通りを歩きだした二人でありました。

=つづく=

「メルシー」
 東京都新宿区馬場下町63
 03-3202-4980 

2018年1月1日月曜日

第1777話 都の西北から東北へ (その1)

明けましておめでとうございます。
今年も変わらぬご愛読をお願い申し上げます。

と、挨拶もほどほどにさっそくまいりましょう。
師走も半ばを過ぎた頃。
早稲田は大隈記念講堂前に
J.C.オカザワの姿を見ることができた。

  ♪   都の西北 早稲田の森に
    聳ゆる甍は われらが母校  ♪

っちゅうわけですな。
当日の相方はT子サン。
年内に一杯飲っとこう、てなこって待合せた。
何でも早稲田の町に来たことがないんだと―。
当然、大学の聳ゆる甍なんぞ、見たこともないんだと―。

それじゃあと、軽くキャンパスを案内して差し上げた。
そうして向かった先はウソかホントか定かでないが
あの吉永小百合サンも通ったという町の中華屋、
その名も「メルシー」。
メルシー・ボークー! のメルシーであろうヨ。

今まさに到着しようとするわれわれの目の前を
キャリアウーマン風、そう、スーツ姿の女性が歩いている。
歳の頃は30代半ばくらいだろうか?
いえ、うしろからじゃ判然としないがネ。
肩で風切るほどではないにせよ、颯爽と歩を進めていた。

あらまっ、彼女が「メルシー」に入店したヨ。
何という奇遇でありましょうや。
後塵を拝しちまったが3秒置いて我らも続く。
店内のざわめきがワッと押し寄せてきた。

昼のピークはとっくに過ぎてるのに満卓だ。
キャリアウーマンが最後の空卓に着席。
ほぼ同時に入ったから、お運びのオバちゃん、
錯覚を起こして3人一緒に案内しようとする。
「いや、こちらは2名です」―
そうは言ったが結局は薬局、相席の栄誉に輝いた次第なり。

オバちゃん、テーブルの隅に
お冷やのコップを3つ置いてくもんだから
奥に座った彼女は取れないでしょ。
ここで紳士のJ.C.が紳士的行動に及んだのをきっかけに
彼女と短い会話が交わされた。

注文したビールが運ばれたときに1杯すすめてみたが
「これから仕事がありますので・・・」
ですよねェ、明るいうちから昼飲みのオッサンに
つき合っちゃいられませんよねェ。

=つづく=