2020年1月31日金曜日

第2319話 ミートソースはパンと一緒に

その「とんかつ山家 御徒町店」の道筋に
歴史を感じさせるゴージャスな喫茶店がある。
その名も「王城」、たいそうな名前だ。
ずいぶん昔、一度利用したが
その後、サテンと無縁の日々を生きてきたため無沙汰。 
あらためて店頭にたたずんだ昼めしどきだった。

スパゲッティ・ミートソースがドリンク付きで1000円。
老舗の喫茶店が大きくフェアウェイを外すとも思えない。
よおし、決めた!
単品は900円だが当然、コーヒーとのセットで―。

メニューを手にとると
ナポリタン、薬膳キーマカレーが同値で海老ピラフは900円。
喫茶店におけるランチセットの価格設定を把握した感あり。
ミートソースは酸味が勝ちながら
上手に仕上がってボリュームもじゅうぶん
具材は玉ねぎ、ピーマン、缶詰のマッシュルーム。
ハムは繊切りにせず、3センチ四方が4~5枚と
かりそめのリッチを装う。

ただし、ソースが多すぎて、いささかもて余す。
1片のパンが欲しいと思いつつ、食後のコーヒーを味わう。
深煎りタイプは砂糖&クリームを使ったほうが美味しい。
シュガーポット、ミルクピッチャー、
手入れの行き届いたシルバー類がピカピカだ。

後日、キーマカレーを試した。
上野駅前、漢方処方専門「天心堂診療所」監修とのことで
言われてみれば、そんな味もしてくる。
アキョウ・モッカ・甘草・陳皮・竜眼肉・蘇葉。
投入された生薬はチンプンカンプン。
あとで調べたらアキョウなんざ、
ロバの皮膚から取り出したニカワだとサ。
アキョウは漢字で阿膠、なるほど膠はニカワだ。

サテンのカレーライスとして不満はないけれど、
やはりソースが多く、ミートソース以上に余った。
ここでふと思い出す。
先日のミートにパンがあれば、もっと旨かろう。

数日後、「王城」の四人用ボックスを占有する、
J.C.の姿を見ることができた。
接客の女性に訊ねると、パンのゲットは
トーストかサンドイッチを注文するしかないと判明。
仕方ないなァ、あきらめるとするか―。

いや、待て、待て、ソロであれだけの代物に
パンが加勢したら旨さ倍増となるやもしれぬ。
イケるとこまでイッたろうやないかい。

結果、ドーンと来た厚焼きトーストを半分も食えない。
無理をさせたストマックが悲鳴を上げ出す始末。
深くこうべを垂れて反省する真摯な J.C.、
その姿はまさしくアホ晋三に見倣わせたいほどのもの。
いやはや「王城」だけに、往生しやしたぜ。

「王城」
 東京都台東区上野6-8-14
 03-3832-2863

2020年1月30日木曜日

第2318話 とんかつ発祥の地に新星 (その2)

数週間後、とんかつ好きのめしとも、
N原サンに声を掛けて上野店再訪。
好みではないキリンクラシックラガーを飲みながら
ひれかつ定食(970円)と
かきフライ定食(970円)を分け合う。
かきフライは好物なれど、
ひれかつを注文することはまずない。
こんなとき、頼れるのが友だちの情である。

すると、思いのほかにひれかつがよかった。
一方のかきフライは
島産にもかかわらず、想像を上回る美味しさだ。
かきは三重を別格とすれば、三陸や道東の産が好き。
同じ瀬戸内なら、岡山や兵庫がよい。
ふ~ん、大量生産される広島にも粒よりがあるんだねェ。
正直言って見直しやした。

その数日後、独りでまたまた上野店へ。
狙いはミックス定食(870円)。
串かつ・海老フライ・あじフライの内容で
以前、食したときはあじの鮮度落ちに往生した。
此度は問題なく、たまたまだったのだろう。
しかしながら此度のあじはデカくて大味。
海老も良質とは言えず、
ひれ肉使用の串かつは巨大だが、ほとんど玉ねぎ。
かきフライがよいからミックスは避けるのが無難だ。

新年を迎え、御徒町店で締めに及ぶ。
店頭の列は十数名。
大したことないとタカをくくるには早合点。
店内のベンチにも十数名が待機している。
結局、ゆうに四半刻も待たされた。

山家シリーズ最後の午餐は
気に入りの上ロースかつ定食(1200円)。
(並)のロースかつとは肉質がまったく異なる。
何処の産やら知らないけれど、コレは旨い豚クンだ。
半分を中瓶のアテとして、残りを飯の友とした。
もちろん、ごはんは真ッ平らでネ。

いやはや、実に大満足。
定食仕立てで1200円は驚きだ。
他のとんかつ屋なら2000円前後に匹敵しよう。
いや、それ以上かもしれない。
よって当店のオススメは
一に上ロースかつ、二にカキフライ、
三、四がなくて五にヒレかつ。

大食漢は上ロースにかきフライ(160円)を
二つ、三つトッピングしてごらんなさい。
夢の世界へ一足飛びを確約しましょうぞ。

「とんかつ山家 上野店」
 東京都台東区上野4-5-1
 03-5817-7045

「とんかつ山家 御徒町店」
 東京都台東区上野6-2-6
 03-5812-8076

2020年1月29日水曜日

第2317話 とんかつ発祥の地に新星 (その1)

上野は言わずと知れたわが国、とんかつ発祥の街。
かつては「ぽん多本家」、「蓬莱屋」、「双葉」が御三家。
そこに「井泉本店」を加えて四天王と呼んだかどうかは
存ぜぬが J.C.的にはさようにとらえていた。
「双葉」無き今、残り3軒が御三家だろうが
最近、そんなエピソードはとンと聞かなくなった。

上野と御徒町の間に「とんかつ山家(やまべ)御徒町店」が
オープンしたのは、およそ8年前。
新星とは言いがたくとも
明治創業の老舗が現存するほどだから
ニュースターとして何の問題もなかろう
カウンターのみの手軽な店は安く美味しく、意に染まった。
当時、連載コラムを持っていた雑誌、
「FRIDAY」で紹介したくらいだ。

ライターのS子チャンがデータを取材してくれ、
判明したことには大手とんかつチェーン、
「和幸」の傘下にあって、同じ「とんかつ山家 上野店」、
両国「とんかつ いちくら」ともども系列店。
かくも長き無沙汰を埋めるように此度は何回か続けて訪れ、
御徒町店、上野店合わせ、全メニューの制覇に果たした。

さっそく訪れたのは上野店。
入店時、BGMのラヂオから仏語の「枯葉」が流れていた。
ん? モンタンじゃないし・・・誰だろう?
まっ、いいや。

一番人気のロースかつ定食(770円)は
6切れにカットされたカツにこんもりのキャベツ。
久々に食べた印象はここの豚肉って
こんなに硬かったかな? というもの。

向かって左側はスジ切りも不十分だ。
うっすらピンクに火入れされたロースに豚本来の旨みなく、
値段が値段だけに国産豚ではあるまい。
右端の2切れはほどよい脂身がつき、
ようやくとんかつの魅力を実感。
日本語の変遷は甘味が旨味につながったというが
当店のロースかつは脂身が旨味に直結している。

大きな茶碗に山盛りのごはん。
硬めの炊き上がりがありがたい。
多過ぎると思う客は「ごはん平らで―」とリクエストする。
味噌碗はタピオカパールと見まごうほどに小さなしじみ。
これでは出汁が足りないのか、煮干しの風味も重なった。

銀杏切り大根の浅漬は柚子風味。
別途、お新香(50円)を発注すると、
同じものが5倍に増え、わさび昆布も少々添えられた。
塩・醤油・ソースが卓上に配備されている。
とんかつにとって重要なソースは
ブルドッグ製の粘度を目安にすれば、中濃あたりだ。

最近は2店ともほとんどの時間を通じて長蛇の列。
2階にテーブル席を備える上野店の回転が若干速いか―。
しばらく来ないうち、
すっかり人気店の仲間入りを果たした「山家」である。

=つづく=

2020年1月28日火曜日

第2316話 ラウンド回して中華の晩餐

新中野の鍋屋横丁をあとにして
ネクストは千代田区・日比谷に出没。
飲食物以外はあまりショッピングをしないが
この日はアパレル系の
 ♪ お買物 お買物 ♪
しかし30分もすると飽きちゃって
コーヒーブレイクならぬ、ビヤブレイクがネセサリー!

東京ミッドタウン日比谷のフードホールに赴くと、
うわっ、洋の東西を問わず、
老若男女があふれ返って芋の子を洗うが如し。
ダメだこりゃ!

メトロ日比谷線に乗って到着したのは
この正月に開拓したばかりの三ノ輪「海月」。
時刻は15時ちょうど。
女・子どもにとっちゃ3時のおやつは文明堂でも
J.C.の3時のおやつはスーパードライ。

正月とは打って変わって先客はゼロ。
ママが抜栓してくれた中瓶を
立て続けに2本空けて3本目。
「まつや」でほうじ茶1杯だけじゃ、さもありなん。
何も食べたくないけれど、
お通しの玉こんにゃくを何とか2粒つまんだ。

時間に追われ大関横丁から西日暮里&巣鴨経由、
池袋駅東口行きのバスに乗った。
今宵の晩餐は文京区・千駄木の四川料理「天外天」。
定例の美女軍団に加え、
馬主の半チャンと彼の友人の吉チャン。
二人合わせて半吉コンビだが、おみくじにはないよネ。

さんざっぱら飲んだビールとはいえ、
生ビールがあったからそいつで乾杯。
ちまちました前菜盛合せのほかに
かきの一夜干しをアテにした。
昼に夜にこの日のこの客はよくかき食う客よのぉ。

メンバーが揃った時点で各自、
コレは外せないと思う料理を1品づつ択んだ。
同時に紹興酒の陳10年を所望する。
ついつい飲み過ぎて
記憶はほとんど忘却の彼方へと消え去り、
翌日、同席の友人に送ってもらったリストによると、

イカの四川風炒め  海老の豆鼓炒め
牛フィレ肉の薄餅包み  四川麻婆豆腐
蟹のXO醤炒め  海老湯麺  上海炒麺
マンゴープリン  杏仁豆腐

以上を食べたらしいが麺類を口にした覚えはないなァ。
とまれ、円卓のラウンドをグルグル回しながら
ワイワイやる晩餐は久しぶりで楽しいものがあった。

よみせ通りのカラオケ・スナックに移動し、
マイク・リレーに励んだ3カップルはプチ紅白歌合戦。
Romantic が止まらないやろっ? ってか?
ハハ、そんなシャレッ気、ハナからありやせんや。
だけど、みんなよく歌うよなァ、殊に白組のほうがヨ。

「居酒屋 海月」
 東京都荒川区南千住1-15-5
 090-1052-7459

「天外天」
 東京都文京区千駄木3-33-6
 03-3822-3333

2020年1月27日月曜日

第2315話 あの「まつや」が鍋屋横丁に

氷雨が雪まじりとなったのに、かまわず家を出た。
行く先は決めていない。
最寄り駅でメトロの電車を待つ間、
何となく考えがまとまってきた。

二度乗り換えた末、降車したのは丸ノ内線・新中野。
駅そばの鍋屋横丁を南に歩く。
一昨年秋に訪れた「かつ金」を左に見てほどなく、
横丁の反対側に位置する日本そば「まつや」に到着。
池波正太郎翁ご用達、神田「まつや」の分店は
2000年の創業と比較的新しい。

客入りは8割方、近隣の住人ばかりに見受けた。
壁の品書きにサッと目を通し、
サービスメニューのセットを注文する。
かき南ばんとミニづけ丼のコンビは1200円。
づけ丼をそば団子に代えることも可能だ。
かき南ばんはかきせいろでもOK。
かきが小海老天ぷらなら1000円、きのこだと900円。
神田の本家より割安感がある。

整ったどんぶりには大小おり混ぜてかきが5粒。
加えて南ばんねぎ、みつば、柚皮1片、さらしねぎ。
ミニづけ丼は茶碗に盛られていたが、そこそこの量。
まぐろぶつの薄切りを散らした姿は美しいとは言えない。

当店は100円出せば
おろし立ての本わさびを提供してくれる。
わさびフリークにはありがたく、
温かいつゆそばには不要ながら、づけ丼用に所望した。
これが功を奏して酢めしでなくとも楽しめた。

かき南蛮はそば自体がヤワいが
かきのエキスがつゆにしみ出してかき鍋を味わうが如し。
おっと、ここは鍋屋横丁でありました。
調子に乗って、つゆを完飲してしもうたヨ。

あえてビールをパスしたものの、
目はどうしてもつまみメニューを追いかける。

白子ポン酢(600円) 穴子天ぷら(850円)
まくろぶつ(600円) まぐろ山かけ(750円)
べったら漬け(400円) 鳥もつ煮(550円)
焼き鳥(650円) くじらベーコン(900円)

神田よりずっと品数多い。
次回は晩酌にうかがおう。

翌日の午後、ぼんやりTVを見てると、
「路線バスで寄り道の旅」が
鍋屋横丁を映しているじゃないか。
律子と雅美を引き連れた徳さんが寄り道しまくり。
横丁は不遇時代のマチャミにとってなじみの場所で
放送はかなりの時間をこの地に費やす始末。
もっともJ.C.が訪れた、
そば屋もとんかつ屋も登場しなかったがネ。

「まつや」
 東京都中野区本町4-38-26
 03-3381-2470

2020年1月24日金曜日

第2314話 ジャマイカの風に吹かれて

理髪を済ませ、一日のうちで最愛の時間帯、
ちと早いが晩酌タイムの到来である。
不動前から目黒駅まで一駅歩こうと、山手通りに出た。
折しも近づいて来たのは渋谷駅行きのバス。
アタマが作動する前に早くもアンヨは小走り。
乗り込んでから考えた。

このバスは中目黒駅前を通過するハズ。
ハイッ、本日のデスティネーションは中目で決まりっ!
同時に思い浮かんだのがカリー・カフェ「フォレスター」。
何も宵の口からライス&カリーを食べなくともいい。
当店なら軽く飲めるし、つまみもそこそこ揃っている。

駒沢通りを恵比寿方面、
鎗ヶ崎の交差点に向かい、上ってゆく。
即物的なビルの階段入口にメニューが貼り出されている。
2階へ上がって入店すると、テーブル席に案内された。
席数に限りのあるカウンターは常連専用らしい。

生ビールはカールスバーグ、北千住でおなじみのヤツだ。
中東では国境を越えて愛されるファラフェルと
ジャマイカの国民的料理、ジャークチキンで迷った挙句、
後者を選択する。
ジャマイカの首都・キングストンで食べたのは
四半世紀も以前のことだ。

いや、それにしてもビールが美味い。
ステム付きのグラスに泡薄目で注がれて文句ナシ。
せっかくのジャークチキンにつき、
ジャマイカのレッド・ストライプに
スイッチするつもりだったが
そのままカールスバーグをもう1杯。
いや、たまらんな。

チキンが焼き上がった。
コールスローとカット・ライムが添えられ、
バーベキューソースとケチャップも配された。
さっそく何もつけずにパクリ。
うん、うん、オールスパイスが主張しておるネ。

おもむろにライムを搾って食べ進める。
いろいろ試してみたが
ソースはよいアクセントになるものの、
ケチャップは合わない。
ケチャップ好きのお子チャマやアメリカ人は
歓ぶんだろうがJ.C.はそのどちらにも属さず。

しっかし、ジャマイカの風に吹かれながら飲む、
ドラフトビールの美味さよ。
冬場に飲んでこれだもの、
春を迎えれば・・・、さらに夏になったら
マイ・スロートは歓びに打ち震えること必至。
散歩の途中で中目黒を通過することあらば、
絶対に立ち寄る「フォレスター」となりました。
 
「フォレスター」
 東京都目黒区中目黒1-4-21 エグゼクティブ代官山 2F
 03-6303-4164

2020年1月23日木曜日

第2313話 こんなに出て来てワンコイン

いつものようにヘアカットへ赴く途中、
メトロを降りた千代田線・日比谷駅。
日比谷通りを新橋に向かい、南へ歩く。
歐陽菲菲のデビュー曲、
「雨の御堂筋」が脳裏をよぎるけれど、
大阪在住の五月蝿い小姑・らびちゃんに
またブウブウ言われるからやめとく。
もっとも舞台が大阪なら
大阪人は受け入れてくれるかもネ。

菲菲は、”あなたをたずねて”南へ歩いたが
J.C.は、”洋食屋をたずねて”南へ歩いている。
到着したのは西新橋の「キッチン 岡田」。
初老のシェフが独りきりで営む店だ。

先客はゼロ、長い逆L字形カウンターを独り占め状態。
ビールは控え、日替わり定食をライス半分でお願いした。
コンソメ風スープとキャベツ主体のサラダが供される。
醤油味のスープはコンソメとうどん出汁のブレンド風。
胡椒が主張するものの、洋食屋のイメージにはほど遠い。
拍子切りのにんじん1片と貝割れが散るサラダは
野菜よりもドレッシングが秀にして逸。
ニンニクと玉ねぎのパンチが効いている。

メインプレートとライスが運ばれた。
主役のチキンソテーはもも肉使用の生姜醤油味。
小さめながらカニコロッケ&ヒレカツが脇を固める。
繊切りキャベツと自家製マヨネーズが添えられる。

ドレッシングといい、マヨネーズといい、
町場の洋食屋のレベルを超えて
店主はホテル出身じゃなかろうか・・・。
あらためて風貌をうかがい見ると、
人品骨柄、卑しからぬものがあった。

おっと、ライスが白飯じゃないゾ。
玉子と玉ねぎの玉々ピラフだ。
ていねいに炒まって
バターの香りがうっすら立ち上る。

この定食がたったの500円とはビックリだが
単なるビックリではなく、もはや驚愕に近い。
そしてどうしても
ワンコイン・ランチの料理人とは思えない。
それなりの修業に裏打ちされた技量を感じる。

価格設定は考えに考えた末の結果だろう。
高利益は望めずとも、この値段なら客は必ず来る。
さらに人件費をかけなければ、つぶれる心配はない。
家賃は高くとも新橋と神田はあくまでもオヤジの街だ。
老若を問わず、近隣の勤め人には応援してほしい。

「キッチン 岡田」
 東京都港区西新橋2-6-1
 03-3508-7759

2020年1月22日水曜日

第2312話 塩豚タンと味噌串かつ

三ノ輪橋をあとにして
都内の幹線道路、明治通りに出ると、
都営バスが近づいて来た。
遠目にも行く先の池袋駅東口が読み取れ、
反射的に乗りこんでしまう。

このバスはわが家のそばに停まる。
ウチ飲みもよし、近場飲みもまたよし。
ガラガラの車内で揺られることしばし。
「次は新三河島駅前です」-
ん? 何だ、なんだ!
いったいこのバス、何処へ行くんだ。

路線図を確かめてナツのトク。
さっきのバスストップは
2ルートの池袋駅東口行きが通っていた。
いつも(あまりバスには乗らないが)
利用するのは西日暮里駅ルート。
乗っているのは王子駅経由だ。

王子は前日、チンチン電車で行ったばかり。
同じ轍は踏みたくないから
取りあえず、ネクストストップで降車した。
ここ新三河島には勝手知ったる冠新道があるしネ。

およそ1年前の年の瀬に新道の「熱海屋」で
一飲に及んだが、この日は正月休みの真っただ中。
代わりに並びの「とん國」が灯りを点していた。
名古屋風味噌とんかつの店だが
一度試したかっただけに、しめしめ。

ワンオペの店主は口が重く、先客の姿もない。
な~んか、暗~い雰囲気。
黒ラベルの大瓶と、
手軽な豚タン塩焼き(280円)を通し、
壁に一筆あった字を読んだ。

当店創業1973年6月
今年で47周年 
       店主 

 ずっとこの場所で続けてきたらしい。
キャベツを添えた豚タンは思いのほかよかった。
味噌かつ専門店におジャマして
名代をスルーするわけにはいくまい。
かといってロースカツのフルポーションはムリ。
よって1本の串かつ(280円)に行く末を託す。

三州岡崎の八丁味噌が主張するタレは
けして好みじゃないけれど、
たまに食べると舌先に変化をもたらし、いいもんだ。
カツやフライにはウスターソースが好きだが
名古屋の味噌ダレはとんかつソースより嗜好に合うかも?

フルの味噌とんかつを完食したのは
15年前の「矢場とん 銀座店」が最後。
近いうち、どこかで再挑戦する気持ちになりました。

「味噌かつ とん國」
 荒川区西日暮里6-33-8
 03-3800-4496

2020年1月21日火曜日

第2311話 連日の三ノ輪参り (その2)

私利私欲に走って汚辱にまみれた、
一権力者の無節操により、肥大化した桜を見る会。
おのれの意思を無条件放棄した茶坊主までが
「思い出すのもイヤ!」と泣き出す始末。
死ねとまでは言わないが一日も早く、
AASトリオには表舞台から退いてもらいたい。

だけどサ、よくよく考えりゃ、
あれだけの映像・画像が残ってるんだヨ。
全部持ち寄って克明に分析すれば、名簿なんかなくとも
かなりの数の出席者が特定されるんじゃないの。

とりわけ首相枠で招待された輩は
バカ殿の周りを蝿のように飛び回るから
目一杯カメラにおさめられているハズ。
さして難しい作業とも思えんがなァ。

それはそれとして
ジョイフル三ノ輪手前の「中華そば 光」。
店内はカウンター5席しかない。
本家筋が北区・東十条にあるそうで
晩酌セット(880円)はこうであった。

スーパードライ中瓶 桜エビ煮玉子
あぶりチャーシュー 鳥つくね 細先メンマ

割安感はじゅうぶん。
手酌でトクトクやって、そのままクィ~ッ!
小皿を見つめると、やはり目立つのは薄紅色の煮玉子。
断面はピンク・ホワイト・イエローのトリコロールで
海老特有の香りもうっすらと―。
ハハ~ン、こいつは中国かベトナム産の乾燥オキアミだな。

立ち食いそば屋のかき揚げに混じってるヤツは
着色料・赤色102号で染められており、
溶け出した色素が白い玉子を色づけたのだ。
駿河湾どころか、台湾沖のものですら
本物の桜海老なんか使える道理がない。

それぞれにそれなりのつまみを食べ終え、
他店に類を見ないカルピスバターを浮かべた、
塩ラーメンといきたいが
それでは本日のカロリー摂取がリミットに達する。
ストマックに余裕を残すため、
ハーフの水餃子(3個=240円)を追加。
これもまた水準には達していた。

まだ宵の口ながら、このまま帰ろうか―。
それともどこかで飲み直そうか―。
思いをめぐらせつつ、明治通りを南に横切った。

「中華そば 光」
 東京都荒川区南千住1-32
 電話:ナシ

2020年1月20日月曜日

第2310話 連日の三ノ輪参り (その1)

ジョイフル三ノ輪商店街の餃子に執着したんじゃないが
翌日も三ノ輪参りを決行した。
青年は荒野をめざすが、老年は餃子屋をめざす。
前日は徒(かち)を敢行したから
ちょいと楽してバスを利用することに―。

谷中と千駄木を分断する、よみせ通りにて
台東区のコミュニティバス、東西めぐりんに乗車。
ドライバーから乗換え券をもらい、
台東区役所で今度はぐる~りめぐりんに乗った。

ジョイフル商店街は花見に例えりゃ、まだ五分咲き。
2軒の餃子屋も片方だけ営業していた。
なるほど店先に細長いテーブルが無造作に出されている。
だけど、人通りの少ない通りに独りボーッと突っ立って
缶ビール片手に餃子なんか食ってられんぜ。

誰がどう見たって怪しいヨソ者。
通り過ぎる地元の婆ちゃんに
胡乱な目で振り向かれるに違いない。
吹き抜ける風も首筋をかすめてゆく。

あ~あ、今日もダメだったか・・・。
それでも表情に落胆の色浮かばぬのは
正月の成せるわざかいな?
まっ、今年ものんびり生きてくヨ。
人生なんて大体でいいんだ、大体で―。

アーケード入口に出戻ると一軒の町中華。
ここでビール&餃子にしようか―。
そのとき、傍らの小さな店に気づいた。
「中華そば 光」はちっとも光っておらず、
どちらかというと、くすんでいた。

前夜、王子でオマール海老ラーメンを食べたばかり。
ここでまた中華そばは多少の抵抗がつきまとう。
それでも心惹かれるポイントが3点も―。

その一、晩酌セットの用意があった。
その二、つまみに桜エビ煮玉子が含まれる。
その三、トッピングにカルピスバターあり。

いいじゃないの、渡りに舟の晩酌セット。
いいじゃないか、昨日オマール今日サクラ。
よって独り、桜を見る会の決行に及ぶ。

汚辱まみれのアホ首相、清廉潔白なアホJ.C.、
同じアホなら清いがいいに決まっとる。
IKKO もさおりも文珍もおらんけど、
連中だって今となりゃ、片棒を担いだことを憂い、
とまどいの日々を送っているのかもしれないネ。

=つづく=

2020年1月17日金曜日

第2309話 帰宅しないで 北区でラーメン

都営荒川線に揺られている。
そこそこ飲んだから町屋で千代田線に乗り換え、
帰宅してもよかったが、まだ浅い時間帯。
町屋から11駅も先の北区・王子まで行っちゃった。
この間、呑み助を吸収する繁華な町は一つもない。

王子には目当ての店が2軒あり、
ダメ元で向かったものの、やはりダメだった。
「山田屋」も「宝泉」も扉を閉ざしていた。
まだ正月の三日だものな。

荒川線だと、次に続く繁華街は巣鴨。
とげぬき地蔵を擁する巣鴨なら
参詣客狙いの店がいくらでも開いているだろう。
待て、待て、王子はプチ・ターミナル駅、
移動先の選択肢は広い。

そんなことを考えつつ、駅まで戻る道すがら
暗闇に点る灯りはラーメン店「八重桜」だ。
通常は看過するところ、品書きの一品に興味が湧いた。
その名もオマール海老ラーメン(1050円)。
酔いも手伝って、ああだこうだと
わずらうヒマもあらばこそ、即刻入店。
食券機に限定品とあり、スタッフに有無を訊ねると
まだ残ってると聞いて、ポチッ!

のちに判ったことながら店のルーツは足立区にあり、
海老出汁ラーメンが名物らしい。
これもあとで知ったが尾久から王子にかけて
界隈は富士丸だの、富士松だの、竹千代だの、
艶っぽい名前のラーメン屋が目白押しだ。
エリア全体が三業地の芸者置屋の如し。

王子では狙った店に肩透かしを食らい、
これも何かのお導きと判じ、アルコールを自重した。
推察した通り、オマール海老ラーメンに
オマール海老の姿はない。
代わりに甲殻類特有の香りが立ち上がる。
むせ返るというほどではないが濃厚な匂いだ。

2種類のチャーシューが1切れづつ。
ロースの薄切りに
バラの厚切りのほうは煮豚の炙り返し。
中太麺は粉々感強く、太いシナチクとともに歯応え強し。
こりゃ、入れ歯の爺さんはお手上げだろう。

特筆はクリーミーなスープだ。
仏料理のソース、アルモリケーヌに限りなく近い。
アメリケーヌと混同されるけれど、
実際はまったく同じソース。
J.C.はオマール海老の産地・ブルターニュの古名、
アルモリケーヌを意識して使用する。

願わくば、このラーメンの脇に焼き立てのバゲットと
少々のエシレ・バターがあったら最高。
入れ歯の爺さんとは違った意味で降参のお手上げざんす。

 「八重桜」
 東京都北区1-15-5
 03-3912-1988

2020年1月16日木曜日

第2308話 大陸から 半島から (その3)

都内に唯一残った都電荒川線の東の果て、
三ノ輪橋駅は荒川区にあり、地番は南千住。
一方のメトロ日比谷線・三ノ輪駅は台東区・三ノ輪。
「海月(みつき)」は南千住1丁目で
商店街、ジョイフル三ノ輪に同じくだ

ケチャップの出し方に感心した。
フツーはウインナーの傍らに添えるだろう。
こんなところにもデリカシーがにじむ。
いや、日本人以上だネ。

越乃寒梅の冷酒に切り替えた。
40年前、一世を風靡した越後の酒は好きだ。

「歌、唄いませんか?」と彼女に問われ、
「初めての店に来てシラフじゃ唄えないヨ」
「それじゃコレ飲み終わったら・・・」
「歌の代わりに玉子焼き食べようかな?」
「ハイ、甘くしますか、しませんか?」
「ん? そうだネ、砂糖入れてちょうだい」

玉子焼きの甘辛選択はよくあるケースながら
外国人に訊かれるとは思わなんだ。
しかるに、焼き上がった玉子焼きはあまり甘くなかった。

寒梅のあと、黒霧島のロックを1杯飲り、
グループ客の到来を潮にお願いした勘定は3千円。
商店街が開いていれば、足を踏み入れなかった店。
ここは当たりである。
でもネ、モクモクの煙草の煙、
ときとしてガナり散らすカラオケに耐えられる人に限る。

上野か浅草に廻るとするか?
日光街道に出たとき、通りの向こう側、
JR常磐線のガード下に居酒屋を発見。
当たりが続くワケはないと思いながらも引き戸を引いた。

「花りん」のカウンターにはきこしめした先客一人。
切盛りするのは女将独り。
壁の品書きにチャミスルなんかもあり、
女将は半島出身者と思われた。
ニ世、あるいは三世かもしれないがネ

「海月」といい、「花りん」といい、
正月早々、店を開けるママや女将はあちらの人ばかり。
アサヒの中瓶をもらうと、突き出しは韓国製かな?
派手な正月模様のかまぼこに
里芋とほうれん草を炊いたのが出てきた。
黒霧島のロックにスイッチする。

続々と客が詰めかけて、みな常連の様子だ。
カウンターが狭苦しくなってきたから新顔は退散。
三ノ輪橋駅の公衆トイレで用を足し、
そのまま早稲田行きのチンチン電車に乗り込んだ。
言っときますけどコレ、駄ジャレじゃないっすヨ。

=つづく=

「居酒屋 海月」
 東京都荒川区南千住1-15-5
 090-1052-7459

「花りん」
 東京都荒川区南千住2-1-1
 03-3801-0177