2020年8月31日月曜日

第2470話 フォワグラ溶けてウナギに転ずる (その1)

2週間もの長きに渡ってご迷惑をお掛けした、
読みづらい画面の修復がようやく整いました。
何のことはない新しいインターフェイスの片隅に
”以前の Blogger に戻す”の文字を発見したのであります。

本当に小さく、しかも極めて色合いが薄い文字。
こんなん気づくワケないやろっ!
怒鳴りつけたくなりました。

まったくグーグルの馬鹿めがっ!
これからはググる代わりにナグるゾ!
おっと、いけない、セールスウーマンの言うように
目をつけられて意地悪されると困るから
以前同様に今後もググるヨ。
とにかく気分爽快、上機嫌で筆を進めてまいります。

お世話になった友人に倍返し、
じゃなかった恩返しでのため、
粋筋の街、神楽坂のシャレオツなフランス料理店へ。
「bisous 神楽坂」は本多横丁の西側、
風情ある石段の下に建つ瀟洒なビルの2階にあった。

予約時にカウンターを指定したが
目の前の仕切りが高く視線が遮られ、居心地が悪そう。
開店まもない18時過ぎの先客は1カップルのみ。
親切な接客担当が
「お好きなお席にどうぞ!」と言ってくれ、
一番奥の窓際に移動、特等席だネ、このテーブルは―。

冷たいビールでノドの渇きを鎮めたいところなれど、
あいにくプレミアムモルツのみ。
それならこっちがマシと
フレンチハイボール(700円)を所望した。
ブランデーの炭酸割りにカットレモンが浮き沈みしている。
相方は山形県の高畠ワイナリーによるロゼワイン(900円)。

グラスを合わせてメニューの吟味に入った。
コース料理が嫌いな二人は当然、アラカルトを選択。
前菜・主菜を各2皿づつ取り、シェアすることに―。
献立はかくの如し。

スペシャリテ盛合せ(1980円)
長崎産穴子のグラタン仕立て(1870円)
仔羊もも肉の低温ロゼ色ロースト(2980円)
黒毛和牛煮込みとうなぎ蒲焼きのパイ包み仕立て(3480円)
自家製パン(150円×2)

8%サービス&10%タックスが加算される。
料理はすべて2皿に取り分けられて運ばれる由。

当方がハイボールのお替わりをする頃、
最初の1品、スペシャリテがサーヴされる。
これがまた、凝りに凝った球形の容器で登場した。

=つづく=

2020年8月28日金曜日

第2469話 花の鴨 美味は上野か 浅草か (その2)

ラーメンフリーク・Sチャンによれば、
令和のラーメンの花形は鴨なんだと―。
鶏白湯を推奨しておいて
その舌の根が乾かぬうちに路線変更。
よくもまあと、あきれながらも
ダック・ハンティングに勤しんでいる。
 
鴨出汁ラーメン、その第二弾は浅草だ。
「中華ソバ  ビリケン」は大川に架かる駒形橋の西詰、
「喜多方ラーメン 坂内」の隣りにあった。
こりゃまたずいぶん大胆な場所を択んだもんだねェ。
 
ポチッとやったのは
スーパードライの生(500円)と中華そば(850円)。
変形2段カウンターは「鴨 to 葱」より居心地がよい。
もっともあちらはアメ横ガード下、
店賃(たなちん)もかなり高いハズ。
 
どんぶりには
鴨チャーシュー3枚、シナチク、小松菜、貝割れ、ねぎ。
日暮里の鶏白湯「ぶらり」の白髪ねぎもそうだったが
当店のそぎ切りねぎもヤケに硬い。
一皮剥くだけで問題は解決するのに
そこまで気が回らないんだネ。
 
スープは脂の層が気になるが悪くない。
濃い口・薄口から択べるものの、
指定しないと濃い口がサーヴされる。
後日、裏を返して薄口にトライするも
それほどの違いを我が舌は感知できなかった。
 
トッピングの貝割れが
ブロッコリ・スプラウトに代わっているのは
お運びさんの目印のためだろうな。
これなら取り間違えは起こるまい。
 
細めのストレート麺は半ばでノビ始め、
終盤はほとんどヘタッてしまった。
厚めにスライスされた主役の鴨は
旨みじゅうぶんなれど、「鴨 to 葱」に及ばない。
肉質が硬く、歯に反抗するのだ。
 
どんぶりの中身だけで判断すれば、花形対決は上野の快勝。
ただ、店内の雰囲気は浅草に軍配である。
その証拠に上野ではまず見掛けない単身女性の姿を
当店ではひんぱんに見ることができる。
 
この現象は女性スタッフによるところ、大だろう。
あっちは狭い空間に野郎ばっかしだもんねェ。
加えて、鉄路の真下と川のほとり、
この違いは泥と雲ほどの差があるのでしょう。

「中華ソバ ビリケン」
 東京都台東区雷門2-4-1
 03-3845-6577

2020年8月27日木曜日

第2468話 花の鴨 美味は上野か 浅草か (その1)

 のみとも・Sチャンに紹介された鴨出汁ラーメン。
1軒目は上野アメ横のガード下にある、その名も「鴨 to 葱」。
此処はしょっちゅう通る道筋につき、存在は認知していた。
いつも5~10人ほどの行列ができているから目立つ。
コロナのせいで列は短くなったがそのぶん、
席数を制限しているため、回転率は落ちる。

夜に出向き、店先の券売機で鴨らーめん(820円)と
ハートランドの生(550円)を購入後、それほど待たずに入店。
トッピングのねぎは3種のうち、2種択べるシステム。
通常のきざみねぎ、焼きねぎ甘煮、アーリィレッドから
焼きとアーリィを選択した。

どんぶりを飾る主役の鴨胸肉は2枚。
このうち1枚をビールの友とするが
ノビないうちに麺を食べるので晩酌は後回しだ。

スープが滋味深く、鴨の旨みじゅうぶん。
鴨肉本体もしっとりと仕上がって上々。
日本そば屋の鴨南蛮も真っ青だろう。

だが、この夜、一番驚いたのは麺である。
中細ストレートは歯に快感を与える粉々感。
いや、実にすばらしい。
世の中が令和に突入して早や16ヶ月、
この間に食したラーメン数あれど、
断トツのナンバーワンが目の前にあった。

券売機に鴨コンフィらーめん(1100円)とあったのを
思い出して翌週に再訪。
チャーシューメンなる別称が与えられていたが
はたしてコンフィでも案でもなく、
鴨が6~7枚に増量されているだけ。
チャーシューメンの意味をこのときようやく理解したが
”コンフィ”の文字は余計だ。
消費者に誤解を与えることはなはだしい。

そこのところを差し引いても「鴨 to 葱」はクリーンヒット。
上野・御徒町・湯島あたりで飲んだら締めに立ち寄りたいが
あいにくと夜更けにラーメンを食べる習慣がない。
近くにある、サカナのデパート「吉池」に通っているから
遅い昼めしで利用することになろう。

でも、ここに来て次第に行列の長さが元に戻りつつある。
炎天下に並ぶのは御免こうむりたい。
とにかくアメ横界隈は
真っ昼間からドンチャン騒ぎが横行しており、
コロナなんか屁のカッパ。
浅草や新橋の衰退を尻目に
今や東京きっての盛り場にのし上がった上野である。

「らーめん 鴨 to 葱」
 東京都台東区上野6-4-15
 電話ナシ

2020年8月26日水曜日

第2467話 近頃は 鶏白湯が 流行りとて (その2)

てなわけで降り立った日暮里駅。
というのは真っ赤な、とは言わないまでもピンクの嘘。
実際は自宅から近いので歩いて来た。
「麺酒処 ぶらり」は人気の店で地元にとどまらず、
都内どころか都外からも客が寄せて来る。
さすがにこのご時世、店先に行列は見られない。

前回は鶏そばを食べて 感心しなかった。
まろやかなスープはまずまず。
ただし、鶏ガラを使わないのか、馴れ親しんだ味と異なる。

中太ちぢれ麺はごくフツーながら、具材が気に入らなかった。
鶏もも肉使用のチャーシューはともかく、
白髪ねぎが硬いし、糸唐辛子も非効果的。
山くらげは何を意味するのか、まったく不明だ。
店主の発案だろうが、策士、策に溺れた感否めず、
これならシナチクのほうが十倍マシだ。

改めて訪れた今回は当然、
鶏白湯ラーメン(820円)をポチッ。
接客のアンちゃんに山くらげ・ねぎ抜きで通した。
唐辛子には言及しなかったが、これも抜きで来た。
いえ、構いませんがネ。

スープを一口すすって・・・う~ん、何だかなァ。
鶏そばに比べると、
まろやかさにコク味が加わっているのは判る。
でもねェ、何かもの足りなさが残るんだ。

食べ終えて不完全燃焼はなはだしい。
人気の秘訣が謎のままである。
そして何よりも気に障ったのは
”麺酒処”を謳っておきながら
アルコール類は1杯500円の生ビールがあるだけ。
晩酌目当ての客はケツをまくること必至だネ。

後日、Sチャンに報告すると、
奴さん、悪びれもせず、
「ああ、そうだったんだ、気に入らなかったんだ。
 でもネ、オカちゃん、鶏白湯はもう終わってるヨ。
 今は何たって鴨出汁、鴨ヨ、カモ、カモ!」
何てこったい! 人、バカにして―。

そいでもって、またもやご推奨の2軒を教えてくれた。
ラーメンはもう、しばらくけっこう。
そう思いつつも鶏の仇を鴨で討つか―。
なんてつもりにもなったバカなアタシ。

「麺酒処 ぶらり」
 東京都荒川区東日暮里5-52-5
 03-3805-9766

2020年8月25日火曜日

第2466話 近頃は 鶏白湯が 流行りとて (その1)

梅雨が明けて連日アチチ、アチチの或る日。
インバウンド・ツーリストが絶えて久しい、
浅草新仲見世を歩いていると、
向こうから見知った顔が歩いて来る。
観音裏の飲み屋で何度か顔を合わせたSチャンだ。
ヨォ~ッとなって、ちょいと飲むことに―。
いや、互いに裸顔(らがん)だからよかったけど、
マスクしてたら判らんかったヨ。

ラーメン好きのSチャンはいつもラーメンの話ばかり。
カラオケですら、
こまどり姉妹の「ラーメン渡り鳥」を歌っちゃう。
彼曰く、近頃は鶏白湯がブームとのこと。
支那そば・中華そばが好きなJ.C.だが白湯はいいネ。
魚粉なんかよりずっといい。

推奨店を訊いたら 御徒町「案山子」と日暮里「ぶらり」の2軒。
なあんだ、どちらも行ってるけど、鶏白湯は食べてないや。
翌週、これもアッチイ日に御徒町へ。
「案山子」は二度も訪れている。
鶏清湯の塩と醤油を食べて
しょっぱいスープに苦労したが塩のほうは気に染まった。
券売機の前に立ち、鶏白湯の塩(850円)をポチッ。
縁(ふち)の手前が低く、向こうの高い、
傾斜のついたどんぶりが相変わらずオサレだ。

具材は各麺ほとんど一緒で
チャーシューは脂の少ない肩ロースと鶏胸肉。
きざみ玉ねぎ、炙り姫竹、蓮根、貝割れ。
青味だけが異なって
鶏清湯塩が水菜、鶏清湯醤油は三つ葉だった。

浅草「開化楼」に特注した麺は太さが択べる。
一番人気は全粒粉入りの細麺(140g)だが
男性客に限っては増量同値の中麺(180g)の由。
J.C.は当然、細麺だけれど、後客5人もすべてが細だ。
ストレートの麺はかなりの硬茹で強烈なコシ。
パスタのアルデンテより激しく歯を押し返す。
最後までノビることがなかった。

スープはサラリとした清湯に対し、 白湯はヌルリ。
心なしか清湯に比べて塩気が薄い。
卓上の七味・酢・黒胡椒で味変を試み、
完飲したが ペッパーミルの目が粗く、もっと細かいほうがよい。
それに此処のラーメンには黒胡椒ではなく、白が合う。

3タイプいただいて、しょっぱいけれど清湯塩が好み。
レモンの香りのお冷やを飲みながら、そう思った次第なり。
さて、次は日暮里である。

=つづく=

「案山子」  
 東京都台東区上野6-2-11  
 03-5826-4066

2020年8月24日月曜日

第2465話 しばらくは これでご容赦 願います

読者の方々にはご迷惑をおかけしております。
改行が上手くいかず、
相変わらずのキッツキツ状態だったのですが
いろいろ試してみたら、今度は行間が空き過ぎました。
いや、マイッちゃうなァ。
それでもキッツキツよりは多少マシなので
当面はこれでイカせてください。
修復なりまして通常通りに戻しました

実は先々週だったかな?
グーグルブログの作成画面が突如としてリニューアルされ、
以来、多くの不都合が生じています。
文章作成のスピードが大幅にダウンしたのもその一つ。
PCを購入した秋葉原の店舗に本体を持ち込めば
解決する可能性が高まるでしょうが
まずはその前に友人のツテに頼ってみました。

つい先日、神奈川県・辻堂にて酌交に及んだ、
家電のセールスウーマンに連絡して
PC売り場に走ってもらいました。
ちょうど銭形平次が配下の八五郎を動かすように―。
「八丁堀の松殺しの下手人が挙がったってぇじゃねえかい。
 八っ、ひとっ走り、走りねえ!」
てなもんや三度笠であります。

ところが返って来たメールがチンプンカンプン。
エンターキーは判るけど、<br>入力だとか
サムネイル、HTMLコードっていったい何のことやら・・・。
以前、ツイッターでもキツキツ事件が発生したそうな。
挙句は
「生きよろ」は収益ないから
グーグルに嫌がらせされてんじゃない?」
ときたもんだ。
トドメが
「J.C.には解決できないネ」
だとサ。

トラブルに見舞われたのが先週の月曜日。
あいにくその週は多忙を極めており、
週末になってようやくトラブル・シュートを始めた次第です。
HTMLビューと作成ビューの違いも
何となく判ったような気がします。

キッツキツからユッルユルへ、まったくもって極端から極端。
わずらわしいでしょうが、しばらくの間、ご容赦ください。

2020年8月21日金曜日

第2464話 鶯谷の坂の下 (その2)

鶯谷駅南口前の坂は東京23区の地図で見ると、
新坂なのだが「とん平」の箸袋には
”鶯谷坂下”と記されていたことを思い出した。
そりゃ、新坂よりも鶯谷坂のほうが雰囲気があるよネ。

梅雨の明けた八月初旬。
「とん平」に電話をすると、
すでに営業を再開しているとのこと。
数日後に訪れた。

はたしてヒレカツライスは・・・ 小さく丸っこいのが3個。
それぞれ3つ切りにされて計9片。
切り口はほろ酔い女の しどけない柔肌にも似てほんのり桃色。
真梨子ファンじゃなくとも思わず吐息をもらす。

初っ端の1片は両面ピンクの真ん中部分。
これに粗塩をパラリ振りかけてパクリ。
前回感じたコロモのガシガシとてなく、
豚肉とパン粉が羽衣をまとう天女のごとくに
やさしく口内を浮遊して デリカシーの極みだネ、これはー。
ロースとの違いが歴然。
いやはや裏を返してよかったヨ。

今回はこのクソ暑いのにとん汁を所望した。
赤身肉と玉ねぎ主体の具だくさんにして
三つ葉が浮かび、柚子の香りもうっすらと
とても上品な仕上がりだ。

店主と客のやりとりを聞いて判明したのは
四月からふた月ほど休んだとのこと。
子どもの保育園の関係で カミさん休ませるよりはと、
店を閉める決断に至った由。
食べ手にやさしいヒレカツを揚げる店主は
人柄もやさしいんだネ。

熱いお茶より冷たい水を好むJ.C.には
冷蔵庫からよく冷えたのを容器ごと出してくれた。
ちなみに店主は三代目。
創業者の初代が父親で母親が二代目。
変わらぬ味を守り続ける姿勢が見てとれた。

メニューは、海老フライ、季節のかきフライ、
生姜肉焼き、テッパン肉焼き、肉天と多くはないし、
つまみも、もずく、わかめ酢、おひたし、くさやと限定的。
しかし、このヒレカツさえあれば飯でも酒でもOKだ。

とんかつは嫌いじゃないけど、
お肉はそんなに食べられないし、脂っこいのは苦手。
そんな女性にはまさに打ってつけ、強く推したい。
Try it, you will like it !

「とん平」  
 東京都台東区根岸1-2-20  
 03-3873-5834

2020年8月20日木曜日

第2463話 鶯谷の坂の下 (その1)

高輪ゲートウェイが加わって全30駅となったJR山手線。
その中で最も乗降客数が少ないのが鶯谷だ。
しかし、此処は都内有数のラブホ激戦区につき、
人々は電車を乗り降りせず、ベッドを乗り降りしている。

二つある改札口は谷の底に北口、谷の上に南口。
ラブホ街に近いからか、北口のほうがにぎやかで
小さなロータリーを擁する南は寂しい。
それでもタクシー乗り場があるため、利用客が降りてくる。
行く先の大半は吉原だろう。
そう、鶯谷は吉原に一番近い山手線の駅なのだ。

ロータリーの一画、
かつて日本そば屋「童心舎」があった場所は
JR傘下のコンビニに変わってしまった。
新坂なる名称の坂を左にゆくと跨線橋。
なおも下れば、立ち食い焼きとんの「ささのや」。
陽が落ちる頃には串を焼く煙がモウモウと立ち込める。

その数軒先にとんかつ「とん平」が暖簾を掲げている。
戦後まもなくの開業というから七十有余年になるが
正確なことは現三代目にも判らないそうだ。

まだコロナ禍に見舞われる前の二月。
昼過ぎにロースカツライス(1400円)をいただいた。
そのときの印象。

三十代と思しき店主一人の切盛り。
ほどなく肉を揚げる音がピチピチとー。
脂身の少ないロースはやや熱の通し過ぎ。
ガシガシ感の残るコロモも気になる。
シャキシャキのキャベツよく、ちょっぴり添えられた、
玉ねぎ&きゅうりのマヨ和えがナイス・アクセント。
ライスと大根&きゅうりの浅漬けにも手抜かりナシ。
別売りの味噌椀はとん汁(300円)、
わかめ(200円)と割高感否めず。

L字形カウンターは6・3の9席。
L字の角は90度より広めで100度か―。
端っ子に今も使われているピンク電話があって
その脇に小さな手洗い用蛇口だが
手は洗えても電話機がジャマで顔は洗えず
ザッとそんな感じであった。

不完全燃焼だったため、
裏を返してヒレカツライスをと目論んだ。
再訪したのはコロナ禍渦中の四月。
案の定、自粛休業中で目論みは外れた。

そりゃ、事前に電話を入れりゃ済むことなれど、
実地検分しなけりゃ、把握できないこともある。
そうこうするうち、シツッコかった梅雨も明けた。

=つづく=

2020年8月19日水曜日

第2462話 目黒新橋のたもとで

不動前のワイン角打ちをあとにして
山手通りを真っ直ぐに北上し、
大鳥神社で目黒通りと交差する十文字に到達。
左に曲がれば金比羅坂だが
右折して権之助坂方面へ向かう。

目黒川に架かる目黒新橋のたもとに
百日紅(さるすべり)の落花狼藉。
人形町にある老舗江戸前鮨屋「K」、
厠(かわや)にあった貼り紙を思い出す。

散らすなよ 吉野の花も 散れば汚し

橋のたもとに二匹目のドジョウがいた。
「ワインマン ストア」同様、
「もつ焼き ひろや」も初訪である。
通りすがりに見つけたのは数ヶ月前だから
わりと新しい店舗であろう。

カウンターとテーブルの配置が変わった造作。
週末とはいえ、16時前なのに、けっこうな客入りだ。
席は9割方埋まっている。
かなりの”密”ながら、焼き手の正面に落ち着いた。

ビールは生も瓶もキリン。
一番搾りの中瓶は通したが
接客の手が回らずに串の注文を取ってもらえない。
焼き手に直接、オーダーするわけにもいかず、しばし待つ。

ようやく発注かなって
塩・タレの指定に及んだら 味付けはおまかせとのこと。
先日の辻堂「酒場ふりだし」もそうだった。
最近はこの手の焼きとん屋が幅を利かせているらしい。

最初にシロが焼き上がった。
ややっ、何だこれは!
見覚えのある赤茶けた物体は紅生姜味噌じゃないか―。
おう、おう、これまた「ふりだし」と同じだヨ。
こんな偶然はあるハズもなく、出どころは一緒だろう。
「秋元屋」系かな? 

いずれにしろ、ヘンなものが流行りだしたもんだ。
眺めていると、この味噌をつまみとして
舐め舐めする客が少なくない。
まっ、人それぞれの好き好きだかんネ、こういうものは―。

軽くタレをくぐらせたシロ自体は悪くない。
いや、旨い。
ラガーの中ジョッキを追加し、
2本目のハラミに挑んだら薄塩がよい。

お次のレバはタレで食べたかったが強めの塩がなかなかだ。
締めは春夏限定の谷中だんご。
谷中生姜につくねを巻いたものはタレで来て
これは着想、仕上がりともにグッド。

昔ながらの焼きとんが好きだが
進化するニュー・ウェーヴも捨てたもんじゃない。
次回の理髪後に再び「ワインマン」から流れる予感あり。

ひろや」  
 東京都目黒区目黒2-8-7  
 03-6417-9151

2020年8月18日火曜日

第2461話 ワインの角打ち

キッツキツ、いまだ解消せず。
文字たちの状態たるや 三密どころではございませぬ。
読者におかれましては
谷崎潤一郎の文庫本読んでるようで
耐え難いでしょうが、よろしくおたの申します。

行きつけのサロンでは
汗の引くのを待ってカット&シャンプー。
冷たいおしぼりで首筋を拭い、生き返った。

時刻は15時。 早めの晩酌に出撃である。
この日は他所に移動せず、近場で2軒やっつけるつもり。
どちらもこんな時間から飲ませる店で
オッサンが昼間っから飲んだくれてる、
新橋や上野ならともかくも
ちょいと気取った品川・目黒両区では稀少だ。

サロンを出て徒歩30秒。
ワインの立ち飲みスタンド「ワインマン ストア」に滑り込む。
正しく表現すれば此処はワイン商が営む、ワイン角打ちだ。
初めて訪れた店内は狭い。
カウンター3、スタンディングテーブル4ほどのスペース。
あえて”密”に挑めば、10人はいけるだろう。

店を一人で取り仕切る、
バーテンダレスに案内されてまずはビール選び。
スッキリごのみを伝えたらイタリアのフォルストを奨められた。
トレンティーノ=アルト・アディジェ州の産だ。

北にスイス、オーストリアと国境を接する自治州は
かつてオーストリア=ハンガリー帝国の傘下にあったため、
今もドイツ系住民が多い。
彼らの造るビールに間違いはない。
もっともJ.C.はモレッティにせよ、ペローニにせよ、
ビッラ・イタリアーノはみんな好きなんだけどネ。

小瓶は瞬時にカラとなり、グラスワインの説明を受ける。
知識に裏打ちされた彼女のワインに対する情熱が伝わってくる。
白・赤3種づつのすべてイタリア産。
それもピエモンテが幅を利かせている。

優秀な作り手、
ロッケ・デイ・マンゾーニのランゲ・クアトロ・ナスを所望した。
珍しくもネッビオーロに
メルロー&カベソーがブレンドされているが
口元に運ぶと、やはりネッビがかぐわしい。
舌ざわり、のど越しもネッビの主張が通っている。
これが1グラス700円+はお値打ちだ。

ガラス張りの冷凍庫にあった、
北海道・余市産のトリオ・オブ・ヅケに惹かれる。
平目・ぶり・甘海老の3種をまとめ買いすると、
2500円が2100円に割引かれてお得だが
冷凍食品をぶら下げての飲み歩きは差し控えたい。
7週間後の再開を約して店をあとにした。

「ワインマン ストア」  
 東京都品川区西五反田4-30-10  
 080-7373-4141

2020年8月17日月曜日

第2460話 文士の村の焼き鳥丼

本日の当ブログ、
なぜか行間が詰まりに詰まって文字がビッシリ。
いろいろやってみたものの、
今のところ修正不可能であります。
 読みにくいでしょうが
しばし我慢のほど、よろしくお願いします。

ずいぶん昔のことではあるけれど、
大田区・馬込界隈は文壇で活躍した、
何人もの文士たちが好んで棲んだ場所。
J.C.は馬込、田端、阿佐ヶ谷を合わせて
東京三大文化村と勝手に呼んでいる。 

その後、馬込は村から町に変貌を遂げた挙句、
現在の都営浅草線・馬込駅前交差点なんざ、
第二国道と環七がクロスして その殺風景なこと、
極まるところを知らない。

7週間に1度の不動前参り。
例によってまずは腹ごしらえである。
馬込駅A3出口の階段を上がってゆくと
地上に出る前に「天野屋」の袖看板が見えてきた。
本日のターゲットはこの焼き鳥店なのだ。 

ランチメニューは
焼き鳥重 親子丼 ささみづけ丼 生姜焼き定食
以上、4種が一律1000円の大盛りは150円増し。
サッポロの中ジョッキとともに焼き鳥重をお願いした。 

所用時間は10分。
重箱だけでなく、お膳が運ばれ来た。
いろんなものが所狭しと並んでいる。
くきわかめ佃煮風、ささみ・わかめ・きゅうりの和えもの、
茶碗蒸し(鳥・ぎんなん・かまぼこ)、キャベツきゅうりもみ。
茶碗蒸し以外はみなチョコチョコッとー。
 
肝心のお重はというと
もも肉5切れ、うずら玉子2個、 長ねぎ、
しし唐、エリンギ、紅生姜、もみ海苔。
うず玉はともかくも脇役の野菜が多過ぎる。
 ハツでもレバーでも団子でも、何かもう1種、
鳥の部位を入れてくれたらなァと思うことしきり。
食べ進むうちに飽きてきたのだ。

 味噌椀はしじみ。 結果としてこれが一番美味しかった。
その間にもテイクアウトの客が何人も現れる。
村の、もとい、町の人気店ではあるようだ。 

食べ終えてぼんやりと、夜のおすすめボードを眺めた。
つまみは500円の水茄子から900円の鯨ベーコンまで
庶民の手が届く価格帯に収まっている。
ほかには 真鯛昆布〆、いか酒盗和え、いちぢく生ハム巻きなども。

 髪を理するまで時間の余裕があった。
よせばいいのに、中延、戸越銀座を経て
不動前まで歩き通してしまった。
それも炎天下を―。
おかげで牛丼屋のつゆだくみたいに身体が汗だくだヨ。
美容室より銭湯に飛び込みたい気分でありました。

「天野屋」  
 東京都大田区北馬込2-29-15  
 03-3776-6990

2020年8月14日金曜日

第2459話 ふらり毎日通り飲食店街 (その2)

北千住は宿場町通りからちょいと脇に入った、
毎日通り飲食店街の「こうめい}で
石川さゆりの歌声と谷中生姜をアテに生ビールを飲んでいる。
今、かかっているのは加藤登紀子の「ひとり寝の子守唄」。

酒をテキーラサワー(450円)に切り替えた。
焼酎の代わりに竜舌蘭(リュウゼツラン)を原料とする、
テキーラを使ったサワーである。
アロエにも似た竜舌蘭の葉はなるほど竜の舌に見えなくもない。
肝心の味わいはモロにテキーラ。
クセのない甲類焼酎やウォッカと違い、
ジンやテキーラは個性がガツンと伝わってくる。

さゆりのCDは「郷愁」というアルバム。
曲目が「南国土佐をあとにして」に替わったところで
「こうめい」をあとにした。
ショップカードを貰ったらオーナーが孔明サン。
あの諸葛孔明と同じであった。

店の隣りはロティサリーチキンの「ROTI 千住」。
以前、テイクアウトで利用したことがある。
焼きとんとミニカレーは食べたけど、
これではあとで腹が空くこと必至。
半ば衝動的にチキンを半羽、持ち帰る気になった。

整うまでハートランドの生中を飲みながら待つ。
此処も(中)が(小)に近いサイズ。
これでこの日は3軒続けて
”中小ジョッキ”を飲む破目に陥った。
二度あることは三度あるんだネ。
三度目の正直なんてないんだネ。

ローストチキンを半羽ぶら下げて北千住駅に到着。
「信濃屋マルイ店」は何度も利用しているが
購入するのは常にピエモンテの赤。
この日は比較的新しい造り手による、
バルバレスコ ジェンマ ’15(3302円)に
白羽の矢を立てた。

クリント・イーストウッドの背中を追うようにして
マカロニ・ウエスタンのスターとなった、
ジュリアーノ・ジェンマと同名のネッビオーロは
値段のわりに飲み応えじゅうぶん。
あと追いでローズマリーをたっぷり散らした、
プーレ・ロティ(ローストチキン)との相性もばっちり。

チキンにかぶりついたとき、
耳の奥で「太陽がいっぱい」の美しいメロディーが―。
同時に映画の中でアラン・ドロンが
自分で焼いたチキンを頬張るシーンも目に浮かんだ。
ジェンマ亡きあと、3歳年長で
今年85になるドロンは今も元気でいるらしい。

「こうめい」
 東京都足立区千住3-58
 03-3881-3120

「信濃屋 北千住マルイ店」
 東京都足立区千住3-92
 03-5813-0937

2020年8月13日木曜日

第2458話 ふらり毎日通り飲食店街 (その1)

♪   パールカラーの街あかり
  この胸に うけとめて
  甘い風に さそわれて
  泣きながら 歩きましょう

  ふたり 
  揺れて揺られて 流れ流れて
  あなたとなら どこまで
  揺れて揺られて 流れ流れて
  知らない港に 着きたい  ♪

    (作詞:千家和也)

山口百恵の「パールカラーにゆれて」は
1976年9月のリリース。
この頃、日本全国津々浦々、
列島を席巻していたのは「およげたいやきくん」だった。

「パールカラーにゆれて」は
百恵ナンバー中、J.C.のセカンドベスト。
この3ヶ月前には
ベストの「横須賀ストーリー」が世に出ている。

それはそれとして、亀有からの帰途だった。
気持ちは揺れて電車に揺られて
たどり着いたのは知らない港じゃなくって
知ってる巷でありました。

此処は北千住の毎日通り飲食店街。
スナックやバーを中心にコンパクトな店々が
肩を寄せ合いながら共存しており、
女・子どもはドン引きしそうな雰囲気が漂っている。

その片方の入口にある「こうめい」にふらりと入った。
席数10席に満たない、ほとんど立ち飲みみたいな酒場だ。
先客の中高年カップルが入れ替わりに出て行って
店内は単身の男が二人となった。

スーパードライのグラスは(中)と(小)の中間あたり。
つまみメニューから1品、客がお通しとして択ぶシステムだ。

かぶ浅漬け めかぶ納豆 ベーコンポテト だし巻き玉子 
めざし こまい一夜干し ハムカツ 豚生姜焼き ちまき

など、200~350円がほとんどである。
谷中生姜(200円)をチョイスした。
空腹を感じないときにこういう小物はありがたい。

BGMは石川さゆりだろう。
なぜかフランク永井の「君恋し」を歌っている。
と思ったら「雪のふるまちを」に変わった。

=つづく=

2020年8月12日水曜日

第2457話 こち亀タウンでオッパイを

こち亀タウン・亀有へ。
狙いは居酒屋「ハッピー」だったが、あいにくの定休日。
「やきとん よし田」に切り替えた。
週末は15時から飲めると聞いて
15時過ぎに仕掛けると開店時間は16時に変更されていた。

何だよぉ、どうすんだよぉ、
商店街をほっつき歩くのが好きだからまだいいけど、
徒歩はマックス5分なんて向きは
タイム・キリングに苦労するだろうな。

そうして戻った1時間後。
夫婦かどうかは判らぬが店主と女将サンとしておこうか―。
女将が注いでくれた黒ラベルの中ジョッキ。
あれ、あれ、いくらなんでも泡が多いヨ。
内容量は他店の小ジョッキくらい。
いや、量はともかく大量の泡は厄介だ。

看板に”やきとん”を謳いながら”やきとり”も揃う当店、
まずは鳥からと、白レバーでスタート。
しばらく本物の白レバーに出逢っていない。
やはり此処も例外に非ずして満足度は低かった。
品書きに5種ほどあった稀少部位はさえずり以外全滅。
大好きな背肝にまたフラれた。
いったい鶏の腎臓は何処へ消えたのか、
ここんとこ、まったく見掛けんぜ。

生のお替わりとメインの焼きとんを。
カシラ・ハツモト・オッパイを塩、
シロをタレでお願いすると、女将さん曰く、
「カシラは味噌、オッパイはタレがオススメですが・・・」
「うん、そうして」
うなずきながら、ん? オッパイにタレ?
何だ、それじゃ垂れた乳房じゃないか―。
まっ、いいか。

アドバイスの通り、タレたオッパイが美味い。
別にオッパイ・フェチじゃないけれど、
この日の一番はコレだった。

鹿児島の芋焼酎・富乃宝山のロックに移行して
品書きの再点検に及ぶ。
ちょいカレー(100円)がいいな。
胃袋のキャパが小さい身にはこんな小物がありがたい。

ところが、小鉢ではあるものの、
カレーはけっこうな盛りである。
バラやモツがたっぷり入ってソースの味もよろしい。
100円はあまりに安く適正価格は250円だろう。
食べ進んで驚いた。
小鉢の下半分がごはんだヨ。
つまみカレーじゃなくてミニカレーライスだったのだ。

勘定は2500円でオツリがきた。
1時間もさまよったため、こち亀タウンはちと飽きた。
お次は綾瀬か北千住か?
常磐線の各駅停車に揺られながら
気持ちも揺れておりました。

「やきとん よし田」
 東京都葛飾区亀有3-30-13
 03-6662-7301

2020年8月11日火曜日

第2456話 これ、東華軒、お主もなかなかの・・・

国府津駅前の「東華軒」で購入した、
炙り金目と小鰺の押寿司は辻堂から帰った夜遅く、
緑茶は淹れず、ビールを抜いて味わった。
素晴らしくはなくともなかなかである。

有名な大船の「大船軒」よりマッチベター。
あちらはすでにJR東日本の傘下に入ってしまった。
”鉄道(アシ)”と”駅弁(アゴ)”が癒着すると、
利用者にとってロクなことはない。

金目と小鰺は食べ切れないので
残りを翌日に回したが
こういう弁当、もとい、芸当が出来るのも酢めしさまさま。

国府津発祥「東華軒」のロングセラーは鯛めしである。
ごはんの上に鯛のおぼろ(でんぶ)を敷き詰めたものだが
お婆ちゃんと孫たちの食べものみたいで
大の男の食指はまったく動かない。

ところが、あれはいつだったろう?
上野駅中央改札前の「THE GRDEN」でミニサイズを発見。
酔った勢いを借りて買ったことがあった。
コレクションというのでもないが家で食べた駅弁の掛け紙は
どこかの抽斗(ひきだし)に放り込んであるハズ。
探してみたら、あった、あった

ミニ駅弁 鯛めし(440円)の原材料をチェックすると
おぼろ
(オキサワラ、クロカジキ、アブラガレイ、砂糖、マダイ)
いろんなサカナを使ってるんだねェ。

オキサワラとクロカジキは大型の肉食魚。
クロカジキなんざ、カツオも捕食するらしい。
先日、紹介したアブラガレイまで名を連ねている。
「東華軒」きってのユニーク駅弁はアブラボウズ伝説だから
カレイとボウズのアブラ・ブラザースを使い分けていやがる。
たいしたもんだヨ、蛙のしょんべん。

気になったのは原料のサカナ3種が続き、
砂糖をはさんで本命のマダイが表記されていること。
おそらく原価の高い真鯛の含有率が低いものと思われる。
これ、東華軒、お主もなかなかのワルよのぉ。

数日前、上野の「THE GARDEN」に立ち寄った。
ミニ鯛めしは健在だったが、脇の釜飯に目が留まる。
その名も天城峠の釜飯ときたもんだ。
耳朶には三浦洸一の「踊子」が鳴り始めた。

♪   天城峠で 会(お)うた日は
  絵のように あでやかな  ♪

でも、ほとんどの読者が連想するのは
群馬県は横川の「おぎのや」による峠の釜めしであろうヨ。

ものは試しと買ってみたら本家にクリソツ。
違いは杏子(あんず)の不在と
わさび味噌がわさび漬けに取って変わったくらい。
まあ、悪知恵というよりギャグの一種と捉えておくか―。
フッフッフ、これ、東華軒、
お主もなかなかのひょうきん者よのぉ。

「東華軒 国府津店」
 神奈川県小田原市国府津4-2
 0465-47-5286

「THE GARDEN 上野店」
 東京都台東区上野7-1-1
 03-5826-5843