2021年10月29日金曜日

第2774話 銀座の酒場のカニサラダ

地下鉄なのにプラットフォームが頭上にそびえる、

都営三田線・新高島平から電車に乗って板橋本町下車。

落合う先は銀座2丁目の「三州屋 銀座店」。

直行したら時間が余るので旧板橋宿を散策した。

 

のみとも・半チャンと合流したものの、

箸を手に取ることなく、生の黒ラベルをガブガブ。

5丁目のオーセンティック・バーに寄ったあと

8丁目の隠れ家に潜ったが禁が解けたため、

大手を振って堂々と階段を降りていった。

いえ、狭いので大手は振れませんでした。

 

その数日後である。

再び「三州屋」にJ.C.の姿を見ることができた。

何も食べずにただ飲んだだけで

悪いような気がしたのと、品書きに

カニサラダ(940円)を見とめていたからネ。

 

今は無き「三州屋 神田駅前店」。

都内に点在する「三州屋」のなか、

一番愛した店で何度もいただいたカニサラダ。

さっそく黒ラベルの大瓶とともに通す。

突き出しは絹かつぎ。

 

おや? 蟹はいっぱい使われてるがズワイだ。

神田ではタラバだったけどなァ。

野菜はレタス・トマト・キュウリ・オニオン・パセリ。

2枚の厚いレモンスライスに

ドレッシングはサウザンアイランド。

食味は悪くないが、やはりタラバの方が上だ。

 

アクリル板を隔てて相席していた、

初老カップルのオジさんがこちらの皿を見て

右へ倣えとばかりにカニサラダを注文。

お互い顔を見合わせ、笑顔で会釈し合った。

ところが店のオバちゃんと呼吸が合わず、

フツーのサラダ(ここでは生野菜)が通ってしまう。

 

しばらくして、つっけんどんなお運び娘が

「ハイ、生野菜!」―J.C.の前に皿を置きやんの。

「違うヨ、お隣り、お隣り」

「あっ、あちら?」

「いくら何でも二皿は食べらんないでしょ」

「だから私もヘンだなと・・・

 野菜ばっかり食べるなァと思って」

隣りのオジさん、すかさず、

「ヴェジタリアンだ!」

ここで一同、アハハのハ。

 

みんな昼から飲めるようになり、

銀座の酒場にも平和な日常が戻ったのでした。

 

「三州屋 銀座店」

 東京都中央区銀座2-3-4

 03-3564-2758

2021年10月28日木曜日

第2773話 団地の街に巨大飯店

板橋区北部の団地の街、

高島平にユニークな昼食を提供する、

四川料理店あり、との情報を得た。

 

赴いてみると、その豪華にしてド派手、

巨大な姿にびっくり。

かつて芝・御成門にあった「留園」を連想させる。

双子のデュオ、リンリン・ランランのCMが懐かしい。

 

隣りには中央卸売市場板橋市場が拡がり、

その向こうにはこれも巨大なトラックターミナル。

団地の街はなんでんかんでんデッカいなァ。

 

広いダイニングの窓際に案内された。

三つのジャンルから

それぞれ一品づつチョイスするシステムは

トライアングル・ランチと呼ばれ、

何をどう頼もうが一律1100円。

 

A―

1タンタン 2海鮮湯 3ザジャメン

4カキと葱のうま煮のせソバ 5上海きソバ

 

B―飯類

1ルハン 2マハン 3豚ヒレ天

東式あんかけチャハン 5広東風エビチリハン

 

C―デザ

1薄皮餃子 2生春 3杏仁豆腐

4ス焼売 5点心二道

 

択んだのは青字の3品。

Cはデザートとあるが杏仁豆腐以外はすべて点心。

二道は“リャンタオ”と音ずる。

二品盛りのことで内訳は春巻&ニラまんじゅう。

なぜかここにはカレー風味の挽き肉、

いわゆるキーマが添えられる。

 

ランチサービスのグラスビールは黒ラベル。

小ジョッキくらいでザーサイとともに供される。

小さいから3杯も飲んでしまったヨ。

 

麺と飯があるため、サイズ控えめと思いきや、

まったくそうではない。

麺はドンブリに八分目。

片栗粉をはたいて揚げたカキが5個も入ってる。

エビチリが乗った飯はほとんどフルポーションだ。

 

トライアングルはみなフツーの美味しさ。

四川料理屋なのに広東風も目立つ。

突出したものなくとも水準はクリアしている。

さすがに飯は半分近く残したが、いや、マイッたな。

 

実は今夕、シカゴから帰国した酌友と会う予定。

会計(1925円)を済ませたのが14時で

落合うのは2時間後、何も食えないだろうが

酒は別腹につき、まっ、いいか。

 

「剣閣」

 東京都板橋区高島平7-32-5

 03-3939-6750

2021年10月27日水曜日

第2772話 日暮里の ブレイクルームで あわびそば

ここひと月ほど、禁が解けて

前夜に飲み過ぎるせいか

スープそば(湯麺)のランチが増えた

豚そば@広尾、しいたけそば@中野坂上、

トリソバ@青葉台、こんな具合だ

 

都内巡回の流れを汲み、此度は地元に近い、

日暮れの里のマイ・ブレイクルーム、

「又一順」にてあわびそばを賞味した。

 

今回もまた食材の名を冠して

その特性が前面に打ち出された、

チャイニーズ・ヌードルだ。

 

あわびそばは去年の暮れに一度試した。

トロみのついたスープに最初は おや?

と思ったものの、食べ進むうち

麺の下の清湯といい感じで混じり合い、

美味しさに拍車がかかった。

 

大きめのドンブリが着卓。

目立つのは一に竹の子、二にマッシュルーム。

どちらも水煮の再調理だ。

肝腎のあわびは見え隠れして目立たない。

 

この時点で凡人は

「あらァ、やっちまったヨ」―

後悔の淵に沈むのだが心配は無用。

前回数えたら小さめのスライスが8枚あった。

 

かく言うJ.C.も凡人の一人。

半ば後悔しながら数えていたのだ。

いちま~い、にま~い、って

あたしゃ番町皿屋敷のお菊かい?

 

酒類禁止の間は「又一順」に寄りつかなかった。

ビールが飲めないブレイクルームは意味をなさない。

久しぶりに訪れ、念願の中瓶と意中のそばを通す。

 

いつものように真っ先に運ばれたのは

銀杏入り杏仁豆腐。

サービス品なのにけっこうな量だ。

ありがたいけど、もっとあとに出してほしいネ。

 

ビールと一緒の味付けザーサイは毎度のお通し。

5分少々で見覚えのあるドンブリが着卓する。

うん、やっぱり当店のあわびそばは花マル。

これが1320円とは価格破壊もいいところだ。

 

使用されるあわびはおそらく

缶詰の水煮で豪州産と思われる。

横浜の中華街でも都内の料理店でも

長いことポピュラーな食材がコレ。

あわびは煮たり蒸したりするのが一番。

鮨屋でも刺身より蒸しあわびに魅力を感じる。

 

近所だし、月に一度は逢いに来よう。

いい歳こいて磯のあわびに

♪ だって 私は 恋しているんだもん ♪

 

「又一順」

 東京都荒川区西日暮里2-18-3

 03-3801-8520

2021年10月26日火曜日

第2771話 シチリア人はイワシ好き (その2)

銀座は「カンティーナ シチリアーナ」の午後。

2皿のパスタと2尾の小イワシが同着の写真判定。

いや、何も勝敗を決めるこたあないやネ。

とにかく同時に着卓した。

ベッカフィーコは姿、味わいともに申し分なし。

レモンではなく、オレンジ果汁を搾るのが習わし。

 

カザレッチェ・コン・サルデもシチリア料理の定番。

“わが家のパスタ”を意味するカザレッチェは

断面がS字型の巻き込みマカロニ。

穴はないけど溝があり、

割れ目にソースが絡んで味が染みこむ。

 

サルデはイワシ、シチリア人は本当に好きだよネ。

このパスタとはとても相性がよい。

定番は穴開きロングパスタのブカトーニだが

近年、シチリアではカザレッチェも人気上昇。

いずれにしろフィノッキオ(ういきょう)が

イワシの匂いをやわらげ、青背の魅力を引き出す。

 

フェットチーネは生パスタのモチモチ感が特徴。

ほぐしたズワイ、小粒のムールが使われ、

トマトクリーム仕立て。

コン・サルデほどではないにせよ、これまた美味。

 

実はメニューにあった、もう1品。

ペンネ・アッラ・ノルマに惹かれていた。

オペラ作曲家・ベッリーニの代表作、

「ノルマ」にちなむ料理は

ナス・トマト・バジル・リコッタで作られ、

肉っ気、魚っ気とは無縁のシンプルなパスタ。

 

シチリア生まれの彼が何につけても

最高傑作に出会うたび、

「ノルマ!」と叫んだことから名付けられた。

 

歌劇「ノルマ」となれば、第一感はマリア・カラス。

彼女の「清らかな女神(カスタ・ディーヴァ)」は

永遠不滅のものながら、先頃亡くなった、

エディータ・グルベローヴァもすばらしい。

 

彼女みたさにNYからウイーンへ飛んだのは

四半世紀も前のこと。

シュターツ・オーパー(国立歌劇場)の演目はやはり

ベッリーニの「清教徒(イ・プリターニ)」だった。

 

あの美しい笑顔を思い浮かべながら

ほろ苦いエスプレッソを飲み干した。

 

「カンティーナ シチリアーナ 銀座6丁目」

 東京都中央区銀座6-2-6

 03-6228-5567

2021年10月25日月曜日

第2770話 シチリア人はイワシ好き (その1)

本日のランチの相方は

この春、コリアンタウン・三河島で

本場の朝鮮焼肉をご一緒したM代サン。

帝国ホテルのロビーで待合せたがホテルは素通り。

泰明小学校前の裏道のシチリアンに赴いた。

 

「カンティーナ シチリアーナ」は

東銀座にも姉妹店がある。

カンティーナは穴倉のこと。

奥のテーブル席に促されたが

あえてカウンターをお願いした。

 

ハッピー・アワー(11301800)で

飲みものがオール500円。

泡・白・赤に加え、

生ビール、ハイボール、サングリアもある。

二人とも生ビール、銘柄はスーパードライ。

 

もっとも手軽なVコース(1300円)を選択した。

サラダ―フォカッチャ―パスタ―カフェ

という流れだ。

 

パスタは6種から択び、

イワシとウイキョウのカザレッチェ、

ズワイ蟹とムール貝のフェットチーネを。

 

サラダは大量のケールに

キャロット・ラ・ペのイタリア風が添えられる。

青汁の原料にもなるケールは

歯応えがあり過ぎるほどあり、

何もこんなに盛らなくてもいいんじゃないの。

アゴがくたびれちゃうヨ。

 

アラカルトに対応できるというので

ビールのお替わりをしながら

イワシのベッカフィーコ(1尾770円)を

2尾追加した。

 

このシチリア名物は開いた小イワシに

パン粉・レーズン・松の実などを詰めたら

クルッと丸めて尾をピンと立たせ、グリルする。

姿がベッカフィーコなる小鳥に似てるのが由来。

イチジクを突っつく鳥を意味する。

 

イタリアの大女優、

ソフィア・ローレンの大好物がこの料理だ。

J.C.の好きなイタリアの映画監督に

ピエトロ・ジェルミがいる。

代表作は「鉄道員」でテーマ曲がヒットした。

そして「刑事」はアリダ・ケッリの歌った、

主題歌「死ぬほど愛して」がさらなる大ヒット。

 

ジェルミの作品にシチリアの古く悪しき風習を

痛烈に風刺した「誘惑されて棄てられて」がある。

娘の許嫁(いいなずけ)を夕食に誘う父親が

「今夜はベッカフィーコだぜい!」―

自慢気に叫ぶシーンが印象的だった。

 

上記3本の映画音楽はアリダの父、

カルロ・ルスティケッリの作曲。

彼はジェルミの盟友でもあった。

 

=つづく=

2021年10月22日金曜日

第2769話 一刻者 運ぶはココロの お母さん

不動前のヘアサロン「W」 。

座るとただちにロックアイス入りのグラスが運ばれた。

松たか子のレモサワをトクトク、アイスをカラコロ。

クイーッと飲ってカットのスタート。

 

いきなりK子チャンが

「オカザワさん、三宿の香港麺って知ってます?

先週ママともと行ったんですけど・・・」

「ああ、知ってるヨ、『新記』でしょ。

こないだ、ここの帰りに行ったばっかり」   

「エエ~ッ! 奇遇ですネ~」 

 

女房によるカットが終わり、亭主のシャンプー。

「最近は毎晩、ナニ飲んでるの?」

「焼酎のビール割りッス」

「チャミスルかい? 強そうだな、酔っ払わない?」

「ハイ、でも美味しいッス」

まあ、考えてみりゃホッピーみたいなモンだネ

 

シャンプーのあとは女房再びのブロー。

「今日はこれから何処で飲むんですか?」

「たぶん五反田」

「あら、珍しいですネ」

「うん、五反田の『ごたん田』って店。

 前々回、ここで切ったあと寄って気に入り、

実は先週も行ったんだ」

「エエ~ッ! 知ってます。

そのお店、子どもが出来る前

よく二人で飲んだんですヨ、奇遇~ッ」

「何だ、こっちもか! 怖ろしい偶然だねェ」

 

てなこって開店まもない「酒蔵 ごたん田」アゲイン。

いつものココロのお母さんが

エクストラ・コールドを

出せるようになったというんでお願いすると

泡2mmのグラスがやって来た。

お通しのキンピラにサービスの小鉢は

白身魚つみれのおろし和え。

 

エクストラを即刻お替わりして

つまみは小品でじゅうぶんなれど、吟味に入る。

初回のように、とん平焼きとも思ったが

あまりに芸がないから穴子の柳川風を通した。

 

冷たいビールのあとは何にしよう。

芋焼酎・一刻者紫の超冷ハイボールに惹かれたが

お母さんに一刻者と一刻者紫の飲み比べを

すすめられ、素直に従った。

 

かたや紫芋、こなた黄金千貫、ロックで味わう。

さわやかにフルーティーな紫。

ガッシリとした骨格際立つ黄金。

お母さんが戻って来て

「いかがでした?」

「いや、どっちも美味いけど、

 これは女性向き、こっちはオッサン」

「アハ、アハハハ!」

 

ビールに戻り、生のドライと黒の小瓶をH&Hにして

穴子の柳川風をいただくと、

SBの山椒ミルが大活躍、こいつはいいや。

今夕もココロにしみる晩酌と成りました。

 

「酒蔵 ごたん田」

 東京都品川区西五反田1-4-2

秀和五反田駅前レジデンス2F

 03-3490-9233