2022年2月28日月曜日

第2960話 山海の幸 フロム 北海道

週末の銀ブラ。

1~4丁目の北銀座より馴染みの深い、

5~8丁目の南銀座をテクテク&スタスタ。

この日はフレッシュ・ライムを搾った、

ジュースを飲んだだけで朝食はナシ。

14時を過ぎてさすがに空腹感を覚えた。

 

毎度のことだが米飯よりも

麦酒がいのちのタウンドリンカー。

ビヤホールもいいけれど

一匹狼が昼からサクッと飲める店が

この街にはなかなかないんだ。

ましてやまん延防止令下である。

 

ハタと思い当ったのは昨夏に二度訪れた、

「北の家族」系列の「きたぎん!」。

「北の家族」は一度も利用したことがないのに

ここは気に染まった。

 

確か土日祝は通し営業のハズ。

電話なんかするより行っちゃったほうが早い。

開いてておくれヨ、と祈りつつ、

やって来たらば、バッチ・グー!

入口近くのカウンターに案内された。

 

即刻、黒ラベルの泡ナシ生をノドに流し込む。

お通しはいつも通りのネギトロいくらごはん。

ホンの一口で仏前に供えるごはんより少量だ。

よって前回もお願いした、山わさび涙巻きを通す。

山わさびはローストビーフでお馴染みの

ホースラディッシュのこと。

1本の細巻きは少食派の昼めしにちょうどよい。

 

そうしておいてつまみはこれぞ北海道の八角刺し。

八角といっても中華の香辛料、

いわゆるスターアニスではなく北海の海の幸だ。

食味に優れた白身魚の別名は特鰭(トクビレ)。

涙こそしなかったが山わさびは辛味じゅうぶん。

八角を乗せて食べてもイケる。

ビールが進んで進んでどうにも止まらない。

 

こんな調子でロシア軍はウクライナに進むんだ。

このコロ助下に戦争もないもんだが

軍事大国・中国なんかも応援してるしな。

あんな二カ国が常任理事国に居座ってるんじゃ

国際連合なんか無いほうがマシだヨ、けっ!

 

3杯目のジョッキとラムレバー炙り刺しを追加。

薬味はスライスにんにく、おろし生姜、刻みねぎ。

これまた美味にして量もたっぷり。

いや、朝・昼を抜いてよかった。

生4杯・お通し・つまみ3品で勘定は3300円。

 

J.C.20代前半でリーマン生活を始めたのも

すぐ近くの同じ有楽町2丁目。

あの頃は焼きとん&煮込みばかりだった。

今は同じガード下で、しかもこの値段で

北海道の山海の幸を満喫できる。

まったくもって“ここに幸あり”であります。

 

「きたぎん!」

 東京都千代田区有楽町2-1-7

 03-6205-8887

2022年2月25日金曜日

第2959話 昼飲みOK 居酒屋ランチ

文京区役所で用を済ませて昼ごはん。

所員食堂がチラリ脳裏をかすめたが

即打ち消して表へ。

春日・後楽園界隈より

店の選択肢が拡がる水道橋へ歩く。

 

今まで食べたことも見たことすらもない、

上海鶏飯を出す、アチラ系中華に遭遇する。

ハイナネーズ(海南)のパクリだろうが

ものは試しと入店し、

小姐に手指の消毒を促されつつ、

ビールの可・不可を訊ねたら、あえなく不可。

すごすごと退店の巻である。

 

しばらくウロウロして

見つけたのは居酒屋「多喜乃や」。

13時から酒類の提供が始まり、

14時半にラストオーダー、15時に昼営業の終了。

まだ14時前だから余裕だ。

 

おおっ、数人の先客がみんな飲んでるヨ。

ワタシも仲間に入れてよネ、ご同輩!

てなもんや三度笠とばかりに

ドライの中ジョッキを所望した。

 

グイッと飲りながら、あらためて周囲を見渡す。

あれれ、誰も飲んじゃいなかった。

お冷やをAsahiのロゴ入りジョッキで

出してるんだ、紛らわしいなァ。

 

ぶ厚いハムカツ&チキン南蛮

特製ソースのトンテキ

コチジャン風もつ煮&アジフライ

濃い味!豚味噌漬け丼

など、定食の中から豚丼(850円)を注文した。

鶏飯のつもりが豚丼になっちゃったヨ。

禍を転じて福と為す、故事に倣い、

ニワトリを転じてブタと為したワケだ。

 

バラ肉味噌漬けの下の白飯にも味噌ダレ。

焼き麩&わかめの味噌汁、きゅうりしば漬け、

キャベツ&水菜のサラダが並んだが

豚肉は濃い味というほどでなく、

むしろサラダの胡麻ドレが濃かった。

 

後客の注文を聞いていると豚丼が一番人気。

みなさん近隣のリーマン&OLだから

J.C.の選択は正解だったんだろう。

ジョッキをお替わりをして1930円の支払い。

豚丼に特筆すべき点なけれど

冷えた生ビールで本懐を遂げ申した。

 

「水道橋酒場 多喜乃や」

 東京都千代田区神田三崎町2-12-10

 03-5213-4986

2022年2月24日木曜日

第2958話 中杉通りを ひとすじに

春色の天せいろを楽しみ、さて何処へ参ろう。

とてもじゃないが小瓶1本では身体が持たない。

単純明快なのは中村橋の隣り、

練馬駅界隈なら昼飲み可能店が雨後の竹の子。

 

しかし去年11月、練馬では二度飲んだ。

いくら練馬区のタイトルロールでも

練馬ばかりに集中しては他の町々に礼を失する。

取りあえず目と鼻の先の中杉通りを南下し、

区界を越えて中野区・鷺ノ宮を目指そう。

 

のんびりした商店街を抜け、鷺ノ宮到達。

だけど適当な酒場が見当たらない。

八幡橋から妙正寺川のか細い水流を

見下ろしながら思案していた。

 

川が殺風景な町並みにうるおいを与えている。

下流の駅、沼袋、中井周辺も同様だ。

西武新宿線沿いを付いたり離れたりして流れる。

妙正寺川と似たタイプの善福寺川は対照的。

JR中央線の線路に近づこうとしない。

水のない景色は味気ない。

 

橋の上に立ち、選択肢は二つ。

西武線沿いに2駅東の同区・野方か

中杉通りを直進して杉並区・阿佐ヶ谷。

真っ直ぐな性格のJ.C.は直進を択んだ。

 

15分歩いて早稲田通りにぶつかった。

ここから先は道幅が拡がり、

美しいけやき並木が終点の青梅街道まで続く。

落ち葉が厄介なプラタナスは

どんどん伐採されて消えゆくが

今のところ、けやきは安泰である。

 

阿佐ヶ谷着は15時。

南口に回って情緒漂う、

いちょう小路に来は来たが時間的にまだ早い。

北へ戻り「立呑風太くん」へ。

店のロゴはレッサーパンダの、あの風太くん。

本家は今も千葉市動物園に健在。

この7月には19歳を迎え、人間なら90歳超え。

もう立てないらしいから立呑みはムリだろうな。

 

当店は生がプレモル、瓶は一番搾りかラガー。

一番をもらい、焼き鳥はハツとタンドゥーリ。

それぞれ水準に達するも下町のレベルには及ばず。

黒ホッピーに切り替え、

中をお替わりして早々に退散。

女子カーリング準決勝を観るため、直帰した。

 

ゲームは4得点の第5エンドもさることながら

第9エンドを1失点でしのいだのがすべて。

逆転勝ちを確信し、笑いの出始めた、

スイスチームの笑顔が消し飛んだもの。

 

ん? 決勝戦? アレはしっかたなかんべサ。

敗軍のファン多くを語らず、である。

おめでと、銀メダル! 

ありがと、ロコ・ソラーレ!

 

「立呑風太くん」

 東京都杉並区阿佐谷北2-12-5

 03-3337-0370

2022年2月23日水曜日

第2957話 春色の天せいろ (その2)

練馬区・中村は「玄蕎麦 野中」。

わさびを当たっていると春色の膳が整った。

せいろは陶器の皿盛りながら、下に竹すだれ。

中太打ちは玄蕎麦というほど黒くはなかった。

 

天ぷらはボリューム満点。

ただ、品書きにあった、こごみの姿なく、

代わりにうるいが3本と結構な量だ。

1片のきのこは何だろう?

椎茸のようでいて、さにあらず。

おそらく大黒しめじだな、これは―。

 

簡単にはノビそうにもない、

そばを置いといて天ぷらをつまむ。

卓上の雪塩(ゆきじお)は

宮古島の海水から作る、きめ細やかな粉塩。

胡麻油たっぷりの江戸前天ぷらには合わないが

揚げ上がり軽やかなタイプにはもってこいだ。

 

小瓶はすぐカラとなるも

いえ、塩じゃなくてビールのネ。

今日はお上品にいってみよう。

お替わりを思いとどまった。

 

そばのコシは相当に強い。

これなら温系でもたやすくヘタるまい。

つゆには品のよい甘みがあり、

町そば屋の下世話な甘さとは一線を画す。

もっともJ.C.は、あの下世話さも愛するがネ。

薬味は大根おろし&さらしねぎだ。

 

卓上には雪塩のほか、黒七味と八味唐辛子。

なかなかにこだわるが

ぜいたくに使える本わさびが手元にある以上、

ほとんど出番がない。

かけそば系となれば、持ち味を存分に発揮しよう。

のちほど、そば湯に振ってみようか―。

 

天ぷらは車海老にさすがの滋味あり。

歯を押し戻す弾力が他のプロウンズとは異なる。

山菜では、ふきのとうの存在感が際立ち、

春の訪れを実感させる。

でもまだ2月半ばだぜ。

 

株価が景気を先取りするように

山菜たちもまた、季節を先取りするのだろう。

そんな健気(けなげ)な自然の恵みを

摘み取り、揚げて、食っちまうんだから

世に人間ほど罪深き生きものはいないネ。

オマエがよく言うヨ、ってか?

ハイ、仰せの通りデス。

 

北風が冷たいものの、陽射しはそこそこ。

冷える午後 日なたを歩けば 寒くない

どっかで聞いたセリフだな。

 

「玄蕎麦 野中」

 東京都練馬区中村2-5-11

 03-3577-6767

2022年2月22日火曜日

第2956話 春色の天せいろ (その1)

本日の出没先は西武池袋線・中村橋。

駅から10分ほど歩き、

「玄蕎麦 野中」に到着すると。

ここは住宅街に“ポツンと一軒店”だった。

 

テーブル席は二人掛けが四卓。

靴を脱いで上がる座敷には畳の代わりにカーペット。

こちらもテーブル&椅子だが中を見渡せない。

二人掛けの一卓に落ち着いた。

 

玄関先にそば粉の産地が明記されており、

鹿児島吹上町産のさちいずみという品種。

といっても素人に道産や信州産との違いが

判るはずもなく、そういうことは玄人に任せろ、

と言わんばかりの「玄蕎麦 野中」かな?

 

黒豆茶を運んでくれたオニイさんに

ビールの可・不可を訊ねたら

OKでドライの小瓶とのこと。

いいでしょう、もちろんいただきますとも。

 

品書きを繰る。

穴子天せいろ(1650円)に決めかけて逡巡。

第一頁の写真を見返す。

“春色”と称する、

魚介と山菜の天せいろ(1980円)に惹かれた。

 

陣容は、車海老・キス・たらの芽・こごみ・

わらび・ふきのとう。

特段、山菜を好むのではないが

鼻先と口元に春の香りと味覚を届けよう、

という気になった。

 

最初の1杯をトクトクするところへ

本わさびと当たりがねが運ばれた。

当たりがねとはわさびを摺(す)る摺りがねのこと。

摺るは博打で持ち金を擦(す)ることに通じ、

縁起が悪い。

 

よって和食の世界では

“摺り”を真逆の“当たり”に置き換えて

こう呼ぶ習わしである。

スルメをアタリメというのも同じ理屈だ。

 

さっそく、わさびを摺り始め、

じゃなかった、当たり始めた。

ただし、当店の当たりがねは

あまりに目が細かく、なかなか卸せない。

 

それもそうだヨ、目を大きくしたら

高価な本わさびをじゃんじゃん卸され、

店はたまったもんじゃないもんネ。

 

=つづく=

2022年2月21日月曜日

第2955話 とんかつ VS ポークソテー (その4)

1軒の話題を(その4)まで引っ張ってしまった。

いい加減に仕上げろヨ!ってか?

読者の声が聞こえてきそうだ。

 

5切れの上ロースを藻塩と生醤油で1切れづつ。

残りは練り辛子とソース。

卓上に1種のみのソースは中濃だった。

 

三回目はスタッフの入れ替えがあったようで

お運びのオネエさんは初めての人。

平日限定のロースカツ定食の注文はこんなやり取り。

 

「ライスとキャベツは半分で。

 豚汁の具は出来ればナシが有難いけど

多少入っても構わないからネ」

「ハイ、かしこまりました」

「あとは料理と一緒にビールお願いします」

「アアッ、今は酒類の提供ができないんですけど」

この日はまん延防止令施行の初日だった。

 

「エエッ~、そうか、そうだったんだネ。

 ビールが飲みたくて来たから

 解除になったらまた来るネ」

「ハイ、すみません、お待ちしてます」

 

いつになったら飲めるようになるのか判らんので

のんびり待っていられやしない。

週明けに出向いた。

あらかじめ自宅でビールを飲んでからネ。

 

上記のように発注したが

迷惑になるから豚汁の具ナシを指定しなかった。

並ロースは上ロースとの違いがないくらい。

これならあえて(上)にしなくともいいが

(上)にはハーフポーションがあるからネ。

ささやかな不満は脂身の削り過ぎだ。

良質な豚の脂身はロースカツの肝である。

 

そして四回目もウチで1杯飲って出陣。

平日限定ポソテ定食をデミグラスで通した。

デミはごく標準的につき、少々退屈。

そしてにんじん&ほうれん草が

鉄板に触れる底の部分はいいけれど

表面がぬるい、いや、むしろ冷たかった。

客が自分で温めろ、ってか?

 

何よりもこの日のポソテは熱が通り過ぎていた。

パサつくまではいかないまでも

せっかくの桃豚クンが実にもったいない。

ソテーには常にこのリスクがつきまとう。

よって、とんかつVSポソテの一番はとんかつに軍配。

 

とは言え、住まいの近所に

優良なとんかつ&ポソテ専門店の誕生は歓ばしい。

近いうち、豚肉をつまみに

晩酌を楽しむ宵が訪れることだろう。

 

=おしまい=

 

「とんかつ三矢」

 東京都文京区千駄木2-43-3

 03-5842-1191

2022年2月18日金曜日

第2954話 とんかつ VS ポークソテー (その3)

「とんかつ三矢」のポークソテーは美味しい。

焼き加減がとてもよろしい。

うっすらピンクのミディアムレア。

はす向かいに位置する「鳥安」のから揚げを

上回る出来映えかもしれない。

あちらはあちらでけっこうだけど―。

 

ただし、ポソテには難点が一つ。

ジンジャーソース自体はいいけれど

桃豚の上にべったりとおろし生姜が乗っていた。

生姜は仏語でジャンジャンブル。

だけど、こんなにジャンジャン乗っけなくとも―。

 

会計時、スタッフの女性に訊ねると、

当店は単なる東京進出ではなかった。

蒲田で居酒屋やそば屋を手掛ける、

中堅外食企業とのコラボだった。

なるほどネ。

 

しかし、俗人街・蒲田を基点とするグループが

何だって文京区・千駄木を択んだのだろう?

夜の深い蒲田と真ギャクに夜の浅い千駄木じゃ、

日々の売り上げはそんなに望めないハズだが―。

 

その翌日に即刻、ウラを返した。

二回目は上ロースである。

全メニュー中、上ロースとリブロースは

ハーフポーションでの注文が可能。

当然のようにハーフを発注した。

 

5切れのとんかつは金網に乗って登場。

皿の向こうに繊切りキャベツとカットレモン。

ライス半分、豚汁は多過ぎる具が

有難迷惑だったので具抜きをお願いしてある。

 

にんじん・ごぼう・白菜に加え、

豚の端切れ肉までがどっさり。

何だか鍋物を食べてる感じで重々しく、

ポークソテーに集中できなかったからネ。

過ぎたるは及ばざるが如し。

 

「豚汁がんばりました」―オネエさんの言葉に

「済まなかったネ、ありがとう」―謝辞で応ずる。

具外しがけっこう面倒みたいだ。

 

主役のとんかつは上ロースだけに上々の揚げ上がり。

ソテー同様、中心部がうっすらピンク、

いわゆる薄紅色である。

すると耳の奥で突然、裕次郎が

 

♪   杏の花が 薄紅色だよ

  丁度 去年の別れの頃のよに ♪

 

「涙は俺がふく」の3番を歌い出した。

 

=つづく=