2022年3月31日木曜日

第2983話 歓ぶだろうぜ ポパイなら

カレー好きの友人が推奨するカレーショップへ。

「ヨゴロウ」はメトロ銀座線・外苑前と

都営大江戸線・国立競技場の中間あたり。

ちょいと考えて都営に乗った。

国立競技場駅で降りるのは初めてだ。

 

13時半過ぎで半地下の店先には5名の列。

これくらいならと余裕だったが入店は14時。

キャパ13名の小体な店舗に

4席あるカウンターの一番奥に座った。

 

目の前にイタリアトマトのデッカい缶詰が並び、

数えてみたら17個もあったヨ。

モンテベッロ社のソレは1缶2550g

「ヨゴロウ」のカレーは

チキン・ポーク・ビーフ・キーマが揃うが、

それぞれトマトor ほうれん草のベースを択ぶ。

 

第一候補のポークがすでに売切れにつき、

チキンをほうれん草で通した。

ビールは販売停止中。

サーヴされたサニーレタスだけのサラダは

サウザンアイランド風ドレッシング。

やっつけのおざなり感否めず。

 

ソース&ライスが別盛りで登場。

黄色いライスは上等なサフランではなく、

風味に乏しいターメリック。

深緑のソースに鶏肉が6片、浮き沈みしている。

ん? なんだか煮込まれた感じがしないな。

それもそのハズ、こいつは炙りチキンだヨ。

スパイスの香りが薄いソースも残念。

 

食べ進むうちに飽きてきた。

ほうれん草がドロリとして好みに遠い。

しかもこんなにたくさん食べ切れんヨ。

ポパイ・ザ・セーラーマンなら

大歓びするだろうなァ。

 

まったくもって食べつけないものを

注文するもんじゃないネ。

トマトにすりゃよかったかな。

とにかくカレーを食べてる気がしないんだ。

結果、ソースもライスも

目立たぬ程度に少しづつ残しちまった。

 

友人に駄目出しメールを送り、

会計は千円札1枚。

神宮外苑のいちょう並木を行きながら思った。

もっとカレーらしいカレーが食べたい。

そうだ、明日は湯島の気に入り店に出向こう。

今年のカレー初(ぞ)めを敢行した、

あの店である。

 

「ヨゴロウ」

 東京都渋谷区神宮前2-20-10

 03-3746-9914

2022年3月30日水曜日

第2982話 角打ちうれしや吾妻橋 (その3)

1泊のみのブラティスラバでは

オペラを観る余裕がなく、

翌日には列車で1時間少々の隣国、

オーストリアの首都・ウイーンへ。

 

国立劇場で初めてグルベローヴァを観た。

演目はベッリーニ「清教徒(イ・プリターニ)」。

いや、シビれましたネ。

 

その後はチェコのプラハで

プッチーニ「ラ・ボエーム」。

ドイツのベルリンでは

再びベッリーニ「海賊(イル・ピラータ)」。

 

「海賊」はコンサート形式だったが

カラスの再来と異名をとった、

ルチア・アリベルティのベルカントを堪能。

彼女はベッリーニと同郷、シチリアの出身なのだ。

翌晩もドイッチェ・オーパーで

ヴェルディ「アイーダ」を―。

 

あんなに気ままで楽しい一人旅は

もう出来ないかもしれないな、たぶん。

J.C.は長いこと棲んだ米国より欧州派だから

ローマとパリにはまた出掛けるだろうがネ。

 

さて、現実に引き戻されて「明治屋」。

近いうちにウラを返し、

その際はビール&ウニクムといこう。

そう決めて、いなり寿司を買いに行くと

「味吟」は15時に閉店。

ケータイを見たら時刻は1515分、残念。

 

3日後、吾妻橋に舞い戻った。

店内に客が5人居たため、外で飲む。

ドライの大瓶とウニクムをお願いすると

店主のオジさん、ん?何だいそれは? てな感じ。

「あのほら、あそこのポスターの・・・」

「あ~、ハイ、ハイ、ちょっと待って下さい」

 

外でビールを飲んでたらオジさん登場。

手にするのはウニクムの可愛いミニチュア瓶。

いや、瓶じゃなくてプラスティック容器。

赤地に金色の十文字は赤十字みたいだ。

 

氷をお願いしてロックをクイッ。

思い出すなァ、懐かしいねェ。

甘みの勝った薬草酒はシチリアのリキュール、

アマロアヴェルナによく似ている。

 

最後にドライ黒のレギュラー缶をいただき、

スーと飲んでスーと帰るスタイルを実践。

その足で「味吟」に回ると今度は定休日でやんの。

いなりがなかなか買えません。

 

「明治屋酒店」

 東京都墨田区本所吾妻橋3-7-12

 03-3622-1592

2022年3月29日火曜日

第2981話 角打ちうれしや吾妻橋 (その2)

墨田区・本所吾妻橋は角打ち「明治屋酒店」。

ウニクムのポスターの下でブダペストを偲び、

ちょいとばかりセンチになった。

そう、あれはセンチメンタル・ジャーニー。

でもなかったが、そこはハナシの流れだ。

 

ここで鳴り出したのは松本伊代でなく、

あおい輝彦の「センチメタル・カーニバル」。

 

♪   小さな肩先を ふるわせながら

  月夜に流れ込む 君がいる

  明日帰るよ あの街へ

  想い出 抱きしめて

 

  愛して 許されるものなら

  死ぬまで 話さないだろう

  涙にぬれてる ドレスがまぶしい

  センチメンタル カーニバル  ♪

 

    (作詞*阿部敏郎)

 

この名曲は1977年6月のリリース。

もっとヒットしてしかるべきと思うが

それほどでもなかった。

とはいえ、あおい輝彦はまだまだ健在だ。

菊は栄える 葵は枯れる

西郷死すとも あおいは生きる

いえ、輝彦サンのハナシです。

 

それはそれとして吾妻橋「明治屋酒店」。

おっと、その前にハンガリーの想い出だった。

彼の国を訪れたのは1994年初夏。

中欧・東欧をめぐる、

オペラ三昧一人旅とシャレのめした。

 

NYからブダペストに飛び、街中を歩きに歩く。

その夜はレストラン&バーのはしごに溺れた。

このとき飲んだのがウニクムと

エグリ・ビィカベール(雄牛の血)なる赤ワイン。

 

翌日の昼は市内のバスツアー。

夜は建て替え前のエルケル劇場で

ヴェルディの「リゴレット」。

その後、日本料理店「Japan」で遅い晩酌。

 

職人さんとの会話が面白かった。

当時ブダペスト在住の邦人は350人。

食材の仕入れ先が多岐に渡り、

帆立―豪州 まぐろ―トルコ 数の子―ロンドン

穴子&うなぎ―日本

何品かいただいたが期待以上に良質なものあり。

 

ハンガリーを出国して

スロバキアのブラティスラバへ。

この街は昨秋亡くなった希代のソプラノ歌手、

エディタ・グルベローヴァの生誕地である。

 

=つづく=

2022年3月28日月曜日

第2980話 角打ちうれしや 吾妻橋 (その1)

浅草に出たついでに

隅田の大川を吾妻橋で渡り、

黄金のオブジェを尻目に本所吾妻橋へ。

スカイツリーのふもとの「味吟」で

いなり&のり巻きを買おうと思い、

浅草通りを東に歩いていた。

 

都営浅草線・本所吾妻橋駅。

その入口付近で足が止まった。

いつの間にか「明治屋酒店」が

角打ちを始めてるじゃないか。

これはちっとも気づかなかった。

 

さっそく、おジャマしまッス。

一瞬、南州太郎の声が聞こえたような・・・。

と言っても判る人はほとんどおらんやろネ。

興味のある方はググッてつかあさい。

 

この時世だから店内のスペースは6名限定。

店先でも3名は立ち飲め、

横に回って自販機脇に2名席。

先客は誰も居なかった。

 

ドライの生大(500ml)がサービス価格の550円。

もちろんいただきますとも。

川のあっちの「神谷バー」に倣って

電氣ブランもいただきましょう。

 

30度? 40度にします?」―オバちゃんが問う。

「う~ん、40度で」―そう訊かれちゃ、こう応える。

「チェイサー要ります?」―親切なお伺いを

「ビールがチェイサー代わり」―オサレに受け止める。

 

電氣は30度が150円、40度は200円。

本家「神谷バー」よりずっと安く、さすが角打ち。

つまみにはシューマイを2個(220円)お願い。

 

壁の貼り紙。

“当店は角打ちのため、

トイレの貸出しはしておりません

スーと飲んでスーと帰るスタイル

ハハハ、なるほど、でも 近い”輩は困るだろうネ。

壁にレトロな大日本麦酒のポスター。

大日本はアサヒ&サッポロの前身である。

このポスターで初めて知ったが

大阪の吹田村で発足した当時、

アサヒは朝日じゃなくて旭だったんだ。

これには小林旭もびっくりぽん。

「くら寿司」ならばビッくらポン!

 

後客が2人現れ、奥の方へズレた。

すると今度は頭上にウニクムのポスター。

ウニクムは東欧・ハンガリーのリキュール。

ハンガリーかァ・・・懐かしいなァ。

ブダペストを流れるドナウ川のさざ波が

まぶたに浮かび上がった。

 

=つづく=

2022年3月25日金曜日

第2979話 ムーミン柄のビニール傘

理髪を済ませ、さて、何処に行こう。

東急目黒線・不動前駅に向かわず、

山手通りに出て大井町行きバスに乗り込む。

反対方面の渋谷行きより先に来たからネ。

京急・新馬場駅前で下車。

 

北馬場参道を抜け、旧東海道を北上するも、

開いてる飲み屋はナシ。

これは織り込み済みでまだ16時半。

次回からヘアサロンの予約を30分ずらすかな?

 

品川駅東口、中央食肉市場の北側に

奇跡のごとく残ったラビリンス(迷宮)に到達。

案じた通り、小雨がパラパラ降り始める。

何度か利用した小料理屋「T」で

女将相手に飲もうかな?

ところが、まん延防止令の解けるまで休業中。

そうこうするうち、雨が本降りとなった。

 

こいつはたまらん、とある居酒屋の軒先で雨宿り。

すると背中のガラス戸がガラッと開いて

「お一人様、どうぞぉ!」

「いや、そうじゃないんだ・・・まっ、いいか」

「いざよい」の二人掛けに着卓した。

 

ビールは生も瓶も苦手なプレモル。

瀬戸内レモンの生サワーにし、

自分でスクイーズしてゴクゴクゴク。

うん、たまに飲むと美味いネ。

お通し(390円)はまたもや妙ちきりん。

胡瓜&玉ねぎの中華風に砂肝が2片。

昼同様、一箸で打っちゃる。

 

博多の野菜巻きがウリでミニトマト&うず玉を―。

豚バラで巻いた串焼きは別段、旨いもんじゃない。

黒ホッピーに切り替え、中をお替わりして

クリームチーズ醤油漬けを追加。

早く河岸を代えたいが雨はやむ気配すらない。

あきらめて会計時(2788円)に

「近所にコンビニあるかな?」

「すぐ隣りです」

 

こいつはラッキー、雨の中を駆け込んだ。

雨傘は2本だけ売れ残っていた。

ずいぶん派手なビニール傘だ。

よく見りゃ、模様はムーミンじゃないか―。

しかも1980円と来たもんだ、たっけェ!

 

横なぐりの雨の中、品川駅にまっしぐら。

取りあえず駅ナカのアトレに入館すると

入口に見慣れない装置あり。

“傘をバサバサ振ってしずくを落として下さい”

 

何だコレ? 思いつつもバサバサバサ。

あら不思議、傘が良いのか、しずくは完全落ち。

ビニール傘をビニールで包むやつより断然いい。

知らぬ間に便利なモンが出来るもんだ。

高級品のムーミン傘、大事に使うとしましょう。

 

「いざよい」

 東京都港区港南2-2-5

 03-6433-0049

2022年3月24日木曜日

第2978話 ダラダラ降りた権之助坂

この日は理髪日。

目黒駅から権之助坂をダラダラ降りていた。

元禄時代の名主、菅沼権之助にちなむ坂である。

農民のため、幕府に働きかけて処罰されたとか

強盗を働いて処刑されたとか、

諸説ある人物だが極悪人説は極めて疑わしい。

 

坂の途中で、おやっ?

こんなところに焼き鳥屋があったかな?

14時半なのに、まだ営業中だった。

中をのぞくとカウンターの奥に先客が一人。

少々時間があるので1杯いっとこう。

夫婦者かな? 若い二人の切盛りである。

 

壁のポスターによれば、

「炭焼 いっしょう」は昨年12月の新規オープン。

ランチにも力を入れており、

牛ハラミステーキが千円以下で食べられる。

 

ドライ中瓶のお通しが妙ちきりん。

鍋料理の底をさらったかのような

白菜とにんじんの残滓に小さな鳥つくねが2個。

箸をつけたものの、すぐに止まった。

 

これを箸休めとは呼べない。

強いて言えば箸休止だ。

会計後、逆算してみたらチャージは450円。

それはないぜ、セニョーラ!

 

焼き鳥はボンジリ(120円)と

ハツモト(200円)を塩で―。

2本にとどめたが上々の炭火焼き。

しかしねェ、焼き鳥2本が320円で

愚にもつかないお通しが450円とはなァ。

 

年の始めの上野アメ屋横丁、

「のんちゃん」がよみがえる。

近頃、こういう商法が流行りなのかネ。

古き良き下町の心ある店主は

こんなマネをまずしない。

 

奥に居た先客は常連サン。

スタッフの女性と言葉を交わしている。

チラリ目に入ったが

鍋をつついているじゃないか―。

一人鍋かい?

何でも当店は炭火焼き鳥と

モツ鍋が二枚看板なんだそうだ。

 

さらに権之助坂を降り、

目黒新橋で目黒川を渡り、

大鳥神社を左折したところで

急に暗くなった空の下を歩いて行きました。

 

「炭焼 いっしょう」

 東京都目黒区下目黒1-5-20

 03-3493-9119

2022年3月23日水曜日

第2977話 中延の 行列絶えた 人気店 (その2)

大井町線と都営浅草線が交差する中延。

キリンラガーをアサヒのコップで飲んでいる。

3席開けた斜め向こうで

店主とのやりとりを聞いていた、

常連サンが声を掛けてきた。

30代後半と思しき妙齢の女性だ。

しばし言葉を交わす。

 

レバーとチレ(脾臓)をタレで通した。

当店は大串につき、常連もみな1本づつの注文。

うわっ、デカいな。

レバーはともかく、チレがデカ過ぎる。

 

もともと独特の噛み応えのある部位だが

噛むのに一苦労、いや、二苦労。

これにはマイッた。

なんか拷問されてるみたい。

 

どうにか飲み込んだけれど

以前と比べて串はより大きく、

モツはより固くなってるな。

 

店の名物、カクテルに切り替えた。

妙齢サンはずっとそれを飲んでいる。

係のアンちゃんが作るところを見ていた。

 

まず大きめのグラスに氷を投入。

焼酎を注いで、正体不明のシロップを少々。

そうしておいてウイルキンソンの

辛口ジンジャーエールで満たす。

焼酎版モスコーミュールだネ。

 

会計を終えた妙齢サンが会釈してゆくので

こちらも頭を下げる。

週に何度か来店するそうだ。

 

2杯目のカクテルと煮込みをお願い。

柔らかく煮込まれた塩味ベースに

レバーやテッポウまで散見された。

 

店主によればコロ助襲来後、

ヒマな日が続いているとのこと。

現在のまん防令下またしかり。

入店困難だった人気店ですらこの有り様だ。

 

3杯目を傾けながら

あらためて壁の品札を見上げる。

ありゃあ、部位の最後のほうに

コブクロ(子宮) わっば(膣) どて(性器)

この三連発がすさましい。

 

何か一串貰おうと思ってはみたものの、

チレみたいなのが来たら往生するのでパス。

3040円也を支払い、夜の町に出た。

今日はおとなしく、このまま帰ろう。

 

♪ 帰ろうよ 灯りも消えた

飲めるじゃないか また明日 ♪

 

裕次郎も歌い出す。

 

「忠弥」

 東京都品川区東中延2-10-9

 03-3783-2257