2022年4月29日金曜日

第3004話 銀座一丁目の振る舞い酒(その1)

この日も銀座。
高速下の角打ち酒屋はいっぱいで入れず、
一丁目の「三州屋銀座店」に変更した。
二丁目に本店があり、そちらは昨秋二度訪れた。

おや? ロス・プリモスのメインヴォーカル、
森聖二の歌声が流れてきたゾ。

♪   ふたりだけのところを 
  だれかにみられ
  うわさの花が 咲く銀座
  一丁目の柳が ためいきついて
  二丁目の柳が ささやいた
  あなたの愛が 目をさます
  銀座...銀座... たそがれの銀座 ♪
     (作詞:古木花江)

「たそがれの銀座」は1968年5月のリリース。
J.C.はこの年、銀座に通い始めた。
狙いは、みゆき通りに在った、
メンズ・ファッションのJUN。
あの頃は飯や酒より服だったのだ。

それはそれとして「三州屋」。
腰を落ち着け、黒ラベルを発注。
そうしておいて壁の品書きを遠望する。

お通しは真鯛の南蛮漬け。
長ねぎがたっぷり入り、
これぞまことの南蛮漬けである。

どういうことかというと
例えば、鴨南蛮やカレー南蛮の南蛮は
長ねぎを指すからだ。
唐辛子の意味もあり、別名が南蛮辛子。

チキン南蛮の名称の由来も揚げたチキンを
南蛮酢(唐辛子入り酢)にくぐらせるため。
ちなみに発祥の地、宮崎県・延岡市では
タルタルソースを添えようが添えまいが
れっきとしたチキン南蛮とみなされる。

真鯛の南蛮漬けで大瓶1本は
ラクに飲めるが、そうもいかない。
来れば頼むのカニサラダを所望したら
何と売切れ。
っていうか、ずっと高値が続くカニは
ハナから仕入れていないな。

しからば、皮はぎ刺しをお願い。
すると今度は正真正銘の売切れ。
2球続けて空振った。
バットに球がまったく当たらん。
あんだよぉ! 
この店は佐々木朗希かよぉ!

=つづく=  

2022年4月28日木曜日

第3003話 「こうもり」に誘われて

昨秋、アパレル関係の友人に紹介された、
S田サンよりお誘いあり。
銀座ブロッサムでの喜歌劇「こうもり」上映会。
快諾に及んだ。

ワルツ王、ヨハン・シュトラウス2世の
代表作「こうもり」の映画版は
監督オットー・シェンク。
彼が演出したオペラはNYのメトで何本も観た。
指揮はカール・ベーム、演奏がウィーン・フィル。
1972年の作品である。

実はこの「こうもり」。
1986年にカルロス・クライバーが振った、
バイエルン国立歌劇場の実況版に魅了された。
序曲がすばらしい。

あれほど華麗な指揮者ぶりはほかに知らない。
オペラの童貞をシャブ漬けにしたのは
「吉野家」ならぬ、カルロスだった。
YouTubeで試聴できるのでご覧いただきたい。

映画も楽しめた。
偉大な指揮者・ベームには申し訳ないが
どうしてもクライバーと比較してしまう。

主役・アイゼンシュタインは映画も実況版も
ともにハマリ役のエバハルト・ヴェヒター。
演出もともにシェンク。
今日の映画では彼が刑務所の看守役。
大いにに笑わせてくれた。

終映は15時半。
中途半端な時間につき、選択肢は狭まる。
洋食or居酒屋でお伺いを立てると
意外にも酒場を選択された。
普段行く機会に恵まれないのがその理由。

有楽町の「きたぎん!」へ。
サッポロ黒ラベルのジョッキを合わせ、
いつもの山わさび涙巻きを2本通した。
注文は任せると言われ、
ホッケ刺し、蟹焼売、ひこま豚もつ煮込み。
道産のオンパレードだ。

生ビから樽生スパークリングに移行する。
珍しいホッケ刺しは水っぽいかなと
思った通りに水っぽかった。
脂のノリがほど良く食味はいいんだけどネ。

男山の本醸造をもらい、生醤油で割って
即席漬けにしてみた。
すると徐々に水分が抜け、うま味が凝縮してきた。
「ずいぶん美味しくなるものなんですネ」ー
S田サンがつぶやく。

そうですとも。
だんだんよくなるホッケの刺身、ってネ。
おあとがよろしいようでー。

「道産酒場 きたぎん!」
 東京都千代田区有楽町2-1-7
 03-6205-8887

2022年4月27日水曜日

第3002話 再び出逢った生ホタル

千葉県・市川市の本八幡駅。
せっかく遠出したんだから都心には戻らず、
どこかもう一箇所立ち寄るのが妥当なり。

降りたのは都営新宿線・住吉駅。
行く先は車中で決めてある。
駅そばの「山城屋酒場」だ。
去年の今頃、沖縄から里帰りした、
元部下のA子と此処で飲んだのは10年も前になる。

そのとき連れて来たのが
レミーという名の女ともだち。
彼女の名前の由来が笑えた。
レミーの父親の一番好きな酒が
レミー・マルタンなんだとー。
そんなの娘に付けるかネ。
とんでもねェ親父サンだな。

それはそれとして今宵の「山城屋」。
ビールは生も瓶もキリン一色だ。
瓶なんざ、ラガー、クララガ、一番と
三役揃い踏みと来たもんだ。
仕方ないから中でも飲みやすい一番搾りをー。

当店の名物・とんから(豚の唐揚げ)は
あとでいただくとして、その前に・・・
おっ、生ホタルイカの刺身があるヨ。
数日前に北千住の「大はし」で見初めたものの、
昼に真アジと舌平目を食べていたため、
見送ったが今宵は即注に及んだ。

突き出しの春うどキンピラが実にさわやか。
老舗酒場の本領発揮以外の何物でもない。
チェーン酒場の愚にもつかない代物とは
雲泥の差があった。

高清水辛口生貯に切り替え、
7尾の生ホタルを愛でる。
好物の赤貝刺しも追加した。
生貝は、赤貝・かき・はまぐりがマイ・ベスト3。
この国で生はまぐりは滅多に口に入らんけどネ。

そうしておいて、とんからを所望。
オネエさんにお時間くださいと言われたが
それほど待たされずに登場。
ん? こんな感じだったかな?
醤油ベースの下味がパッとしないうえ、
熱も通り過ぎている。

さりとて葛飾区→市川市→江東区のはしご酒。
本日も独り飲みの楽しさを満喫した。
3軒目の勘定は3050円也でした。

「山城屋酒場」
 東京都江東区住吉2-7-14
 03-3631-1216

2022年4月26日火曜日

第3001話 ガリ酎 思い出し出し (その2)

市川市・本八幡の大衆酒場「馬越」。
ガリ酎を思い出しながらも
好みに合わない酎ハイにつき、
サッポロ赤星の大瓶を飲んでいる。

つまみは炙り〆さば。
つま大根の代わりに生わかめと
ここにもガリが添えてあった。

カウンターで接客にあたるニイさんは
キビキビとした仕事ぶり。
殊にクリーンナップが得意で
グラスや皿はもとより、
おしぼりの袋まで即座に片づける。
性格なんだネ。

壁に張り出されたドリンクリストに
アカ、そしてキイロというのがあった。
何のこっちゃろ? しばしの思案。
判らないので訊ねると
アカは赤ワイン入り。
キイロは天羽の梅入り。
酎ハイのことだった。

ここにシロが加われば
咲き並ぶチューリップの完成版。
♪ あか しろ きいろ
  どのはな みても きれいだな ♪
ってネ。

何となく流れでキイロをお願い。
さっき高砂で飲んだばかりなのに。
今日はヤケに天の羽が舞い降りてくるな。

つまみをもう1品。
赤ウインナーを追加した。
家で食べる気にはならないが
居酒屋だと、たまに欲しくなる、
不思議な魅力の赤ウインナー。
1人前5本付けで
うち1本はタコの八ちゃんカットだ。

店がだんだん立て込んで来た。
若いカップルも現れた。
これを潮にお勘定は1470円也。

そうだ、4年前に流れた「わさび」に寄ろう。
彼女は常連だったから
何か消息がつかめるかもしれない。
すると、そば居酒屋「わさび」は閉業した様子。
おそらくコロ助に討ち取られたのだろう、無念。

さすれば、もうこの街に用はない。
今度は京成八幡ではなく、
JRと都営新宿線が乗り入れる、
本八幡駅にやって来た。
さて、どちらにしようかな?

「馬越」
 千葉県市川市南八幡3-2-7
 047-379-0320

2022年4月25日月曜日

第3000話 ガリ酎 思い出し出し (その1)

高砂から何処に行こうかー。
第一感は寅さんの柴又だが
2019年の暮れに二度訪れた。
2年余りの月日が流れているので
行ってみようか・・・なんて思いつつ、
京成成田行きの快速電車に乗っていた。

降りたのは京成八幡。
向かったのは大衆酒場「馬越」。
暖簾をくぐると時間が早いから
人気店でも客はまばらだ。

あれは4年前。
カウンターはほぼ満員ながら
空いていた1席に滑り込むと
右隣りに女性が独り飲んでいた。
あのときのブログを再現してみたい。

彼女が世にもキテレツなドリンクを注文。
うわっ、何だよコレ!
酎ハイの
ジョッキの中に漬けしょうみたいなのが
これでもかとばかりに投入されている。
鮨屋でおなじみの漬けしょうが、
いわゆるガリだが、J.C.はガリなる呼び方を嫌う。

考える間もあらばこそ、つい口が先に出てしまった。
「いったい何ですか、ソレ?」
隣りに座ったオッサンにいきなり肥を掛けられ、
もとい、声を掛けられ、振り向いた女性。
驚かせちまったかなとも思ったが
意外な言葉が返ってきた。

「飲んでみます?」
「えっ! いいんですか?」
「どうぞ」
「んじゃ、一口だけ」

ん? やっぱり漬けしょうがだヨ。
だけど、けっして旨いもんんじゃないネ。
訊けばガリ酎というんだそうだ。
しっかし、見ず知らずのオッサンに
よく味見させてくれたもんだな。

コロ助が襲来してたらこうはいくまいが
これをきっかけに会話が始まった。
訊けば長野県出身の上田市生まれ。
同郷のよしみもあって意気投合し、
2軒目へと流れたのだった。

現在の「馬越」にガリ酎は健在。
今でこそあちこちで見かけるが
この奇妙なドリンクに
初めて逢ったのは此処である。

=つづく=

2022年4月22日金曜日

第2999話 焼きそば食べない 焼きそば屋

谷中銀座の夕焼けだんだんを上り、
御殿坂を下って日暮里駅に来た。
乗る路線は三択。
この時間は京浜東北が停車しないので
山手・京成・舎人ライナーだ。

アテもなく京成を選択し、高砂駅下車。
此処は柴又を通過する金町線、
いわゆる盲腸線の起点である。
改札を出てほどなく立ち飲み酒場に遭遇。
「やきそば 和」なる店だった。

ビールはドライのレギュラー缶(300円)。。
やさしくグラスに注いでイッキ飲み。
壁の品書きをながめると、
立ち飲みにしてはつまみが豊富である。

しばらく見ているうちに理由が判った。
焼きそば用の鉄板が
ミニお好み焼き、ベーコンエッグ、
肉野菜炒めなどに活用されるからだ。

店の名物、ぼっかけ(300円)を通す。
牛すじとコンニャクの煮込みだが
ヒタヒタの煮汁にどちらも賽の目切り。
よってティースプーンが添えられる。
焼きそばのトッピングにもなる、
ぼっかけは軽食を好む呑み助にピッタリだ。

缶ビールのお替わりに野菜炒め(300円)をー。
すると、これが町中華の一品料理並みで
味はけっこうなれど、少々持て余し気味。
焼きそば屋に来といて、焼きそばはやめとく。
これからあと2軒は回るからネ。

カウンターに下町酎ハイの風味付けに
使用される天羽の梅が3種類並んでる。
梅、ぶどう、もう1種は何だったけかな?
酎ハイをお願いし、すべて試したが
やはりポピュラーな梅がよかった。

常連とみられるオニジさんが来店し、
J.C.の右隣りにポジションをとった。
オニジさんはオニイさんとオジさんの中間。
ちなみに女性形はオネバさん。

ホッピーを飲みながら店主と談笑している。
これを潮にお勘定は1500円也。
飲みもの3杯につまみが2品。
単価は揃って300円だ。

「ごちそうさま」
「ありがとうございました」
「お疲れさまです」
最後の一言はオニジさんである。

「あっ、どうも、お先にー」
言葉を返したが
もっと早く声掛けしてくれれば
会話を楽しみながら
あと1~2杯は飲んだのにー。

「やきそば 和」
 東京都葛飾区高砂5-36-10
 080-2037-2698

2022年4月21日木曜日

第2998話 大橋渡らず「大はし」に来た

さて、西新井からいずこへ。
界隈の繁華街となれば北千住。
スカイツリー線の階段を上る前に
ロータリーを一周する。

本数の少ない北千住行きが停車中。
発車まであと数分だ。
エリアのユニーク・タウン、
関原地区をすり抜けるので
電車をやめてバスにした。

荒川を西新井橋で渡り、北千住。
思いをめぐらせ、狙いを定めたのは
街のランドマーク的存在「大はし」。
煮込みの名店として世に名高い店だ。

まん延防止令下はずっと閉じていたが無事に復活。
行列もなく、すんなり入店できた。
2014年の夏以来になる。
壁の貼り紙。

名物にうまいものあり北千住
牛のにこみでわたる大橋

千住大橋を渡らず「大はし」に来たんだけどネ。
一番搾りの中ジョッキを通すと
突き出しは甘辛く煮付けた、かつおの落とし身。

品書きを入念にチェックする。
ボラのたたきが珍しい。
みる貝刺し、いわし酢もいいな。
おっ、生のホタルイカがあるゾ。

しかし、昼に真アジと舌平目を食べたから
サカナたちには食指が動かない。
最後まで生ホタルと迷った末、
すじこのおろし合えに決めた。

小鉢を確認すると、
おろし合えじゃなく、おろし添え。
混ざり合うことなく別々だった。
山形正宗の冷たいのに切り替える。
ずいぶん徳利が小さいなァ。
3本も飲んじまったヨ。

キンミヤをボトルキープする常連が両サイド。
ともに煮込みの豆腐のみを注文している。
彼らに倣って発注すると
切り餅サイズの木綿豆腐が2個付け。
ちょいとつまむに打ってつけだ。

それにしてもご亭主が歳をとられた。
そのぶん息子は元気いっぱい。
グラスやボトルの扱いがガチャンガチャンと
これほど音を出すバーテンダーはほかにおらん。

J・ウェインもC・イーストウッドも
「ヘイ、テイキッ・イージー!」ー
たまらず言い放つだろうと思われた。

「大はし」
 東京都足立区千住3-46
 03-3881-6050

2022年4月20日水曜日

第2997話 ゆらりゆられて路線バス

ビストロ「エシャロット」を出て
ふと思いついたのは
20年8月に閉園した、としまえん。
わりと近くだし、様子を見に行ってみよう
再び都営大江戸線の豊島園駅下車。
およそ20年ぶりだけど、町はずいぶん寂れた。
短い商店街は消滅の危機にさらされている。
ハリー・ポッターのテーマパークに
生まれ変わるらしいが
柵越しに見る限り、始動の気配はなかった。

たまたま来た赤羽駅西口行きのバスに乗る。
平和台、志村三丁目の駅前を通るため、
どちらかで途中下車するつもりが
終点まで行ってしまった。

赤羽はひと月前に飲んだばかり。
東口ロータリーに回ると
西新井行きのバスが停まっている。
渡りに舟ならぬ、ロータリーにバス。
これ幸いと乗り込んだ。

発車してすぐ、バスは新荒川大橋を渡り始める。
おい、おい、向こう岸は埼玉県・川口市だぜ。
こんな路線があるんだ、知らなかったなァ。
か細い流れの芝川添いをしばらく走り、
都内に戻って足立区・鹿浜、そして西新井着。

時刻は16時。
ちょいと早いがどこか開いているだろう。
駅前に「やきとりの扇屋」があった。
炭火焼きだし、ビールの銘柄もバッチリ。
「お一人様、ご案な~い!」

11時半~18時はハッピーアワー。
大ジョッキが368円で
2杯は飲むからありがたい。
焼き鳥は上ハツともも皮を1本づつ。
ドイツの岩塩に惹かれ、塩で通した。

すると、上ハツは看板に偽りあり。
むしろ並にも届かぬ下(げ)だネ。
焼き過ぎてパサパサのカラカラ。
もも皮は多少マシながら
それでも水準に達していない。
感じの好いお運びサンに救われたけどネ。

帰宅後、調べてみたら「扇屋」は
かなりの数の店舗を全国展開しており、
新宿区・早稲田に本拠を構える、
ヴィア・ホールディングスの経営だった。

そうと知ったからには、あえて物申す。
この焼き方じゃ、せっかくの炭火が無意味だ。
スタッフ研修をやり直しましょうや。

「やきとりの扇屋 西新井駅前店」
 東京都足立区西新井栄町2-7-2
 03-5845-5532

2022年4月19日火曜日

第2996話 焦がしバターの舌平目 (その2)

落合南長崎の「エシャロット」。

舌平目は立派なサイズだった。

魚体の上にはカープル(ケイパー)と

パセポン(パセリのみじん切り)。

薄褐色のノワゼット・ソースをまとっている。

ノワゼット(ヘーゼルナッツ)に色が似ているため、

こう呼ばれるが俗に言う焦がしバターのことだ。

 

J.C.もたまに自宅でコレを作る。

でもサカナは常にエイ(カスベ)。

フランス本国ではエイが定番。

ソールに用いるのを初めて見た。

 

主菜は前菜以上にガルニテュール満載。

にんじん・ほうれん草・トマトは

ブイヨンで温めた感じ。

加えてマッシュドポテトに南瓜のフリット。

 

生ビールをお替わりし、

フォークを刺したレモンを搾る。

こんがりと火の通ったところに

焦がしバターが絡み、まことにけっこう。

久方ぶりのソール・ムニエルである。

 

ちなみにムニエールは粉職人の意。

素材に小麦粉をはたいて

焼くからこそのネーミングにつき、

素焼きの場合はムニエルと呼ばない。

 

魚料理にナイフを使わぬ主義ながら

骨付きの舌平目ではそうもいかない。

作法通りに骨を外し、キレイに平らげた。

 

皿下げに来たマダムに通したデセールは

クレーム・ブリュレ&エスプレッソ。

リムーザン地方の銘菓・クラフティ、

それも王道のサクランボ(米国産)が

リストにあったけど

タルト生地付きタイプだと持て余すので敬遠。

 

あらためて店内を俯瞰する。

5人組1、2人組2、9人すべて中高年の女性。

ハイソな奥様といった雰囲気などなく、

近所のオバちゃんたちの普段使いだ。

目視可能な限りではシュークルートと

ブッフ・ブルギニヨンが人気を二分していた。

 

すると、独りの若い女性が来店。

今夜の予約のためだが、あいにく満席。

レベルの高い料理に控えめな価格設定だから

地元の支持を得ているのもうなづける。

大通りが交差して落ち着かない町ながら

落合南長崎の住人はシアワセといえましょう。

 

「エシャロット」

 東京都新宿区西落合1-14-14

 03-3953-9986

2022年4月18日月曜日

第2995話 焦がしバターの舌平目 (その1)

今日のデジュネはフレンチ・ビストロ。

都営大江戸線・落合南長崎に出向いた。

初めて降りた駅は

新宿区・西落合&豊島区・南長崎の

区界(くざかい)上にある。

いや、地下鉄だから区界下が正しいかな。

 

都内ではこのように町名合体の駅が散見される。

世田谷区・池尻&目黒区・大橋の

東急田園都市線・池尻大橋。

どちらも世田谷区の小田急線・祖師ヶ谷大蔵。

比べてみると、落合南長崎の駅名はちょいと長い。

納まりが悪いというか、あまりカッコよくない。

 

その点、北区・浮間&板橋区・舟渡の

JR埼京線・浮間舟渡は理想的だ。

浮島の間を舟が渡ってゆく水景が目に浮かぶ。

見事なまでの美しさ。

 

とにもかくにも此処に来てしまった。

店名の「エシャロット」は仏料理で

ひんぱんに使われる小玉ねぎの1種。

ペコロスを縦長にしたカタチだ。

一方、居酒屋の定番、

エシャレットは若いラッキョウだから

エシャロットとメニューに載せるのは誤り。

 

もっとも命名した青果商は

本物をじゅうぶんに意識しており、

ラッキョウじゃダサくて売れまいと考えた由。

 

さて、予約を取らずに来訪したが

一番奥の二人掛けに案内された。

ランチメニューは

アントレ・プラ・デセールの3皿コース(1950円)。

 

表の立て看板に舌平目のムニエルを見たので

マダムに確認すると

「店の看板料理ですけど

本日のランチはコチラになります」

平目の記載無きメニューを手渡された。

 

ふ~む、仕方ないなァ、納得しつつ、

真あじのマリネ、若鶏もも肉のロースト、

そしてドライの生を通した。

デセール&カフェorテは食後の注文となる。

 

ビールを運んで来たマダムが

「舌平目は500円の追加でご用意できます」

「ああ、それならお願いします」

泡がしぼむまで待ってクイッ。

 

真アジは3枚おろしの2枚で丸1尾ぶんだ。

ヴィネグレットの浅いマリネに付合わせが多彩。

アーリーレッド・ルッコラ・ブロッコリー・菜の花・

新ジャガ、そしてタプナード風の黒オリーブだが

ニンニクやアンチョヴィは使われていない。

 

バゲット&カンパーニュ、

2種のパンと美味しくいただいた。

バターがほしいが、おそらく舌平目は

溶かしバターたっぷりのハズ、よってパス。

ほどなくソール・ムニエルが登場した。

 

=つづく=

2022年4月15日金曜日

第2994話 またオッサンが やって来た

この1月に三重県・桑名市から出張で上京した、

のみとも・Nチャンがまたやって来た。

湯島の「岩手屋本店」にて

手づかみでくさやを食った、あのオッサンだ。

 

まん延防止令が解けたあとも諸般の事情により

努めて酌交を避けているJ.C.だが

短時間で切り上げるからと懇願され、

つき合うことに―。

 

早めに仕掛けたが

この日のアメ横界隈は何処もいっぱい。

御徒町に移動し、どうにか滑り込んだのは

「蔵元居酒屋 清龍 上野二号店」。

埼玉県・蓮田市にある清龍酒造の直営店だ。

 

実はJ.C.、池袋本店には

学生時代からお世話になっている。

フトコロがあったかいときは

「銀座ライオン 池袋東口店」。

そうでないと「清龍本店」。

貧乏学生の強い味方でありました。

 

新しいせいか、小ぎれいな店内。

カウンターに並んで

黒ラベルの中ジョッキをガッチンコ。

この音を聞くのは実に久しぶりだ。

 

相方が要望した、

北寄貝バター醤油焼き。

当方の択んだ、

花わさびおひたし。

それぞれ二人前を通すと両方とも花マル。

オッサンなんざ、北寄をお替わりしやがんの。

 

蔵元居酒屋につき、

清龍純米酒の冷たいのに切り替えて

とんぺい焼きとナスの一本漬けを追加する。

口当たりのよい冷酒は

スイスイとノドを滑り落ちてゆく。

 

互いの近況といっても、たかだか3カ月ぶり。

別段、変わりはあるまいと思ったが

近々、胃カメラの世話になるそうだ。

お互い若くはないから気をつけなきゃネ。

 

約束通りダラダラせずに

カッキリ二時間で切り上げた。

ほろ酔いのオッサンは

御徒町の改札口に消えてゆく。

検査の結果がよけりゃ、何よりだけどネ。

 

「蔵元居酒屋 清龍 上野二号店」

 台東区上野5-25-8

 03-5812-4205