2022年7月29日金曜日

第3069話 白山上のとんかつイマイチ

文京区・白山。
西暦948年、加賀・一宮の白山神社が
この地に分祀されたのが地名の由来だ。
白山上から白山下までけっこうな勾配で
薬師坂が貫いている。

白山上に「とんかつ まるに」がオープンしたのは
3年ほど前だったろうかー。
以前、其処には町中華が
暖簾を掲げていた記憶がある。

初めて入店。
カウンター5席、四人掛け2卓の
小ぢんまりとした店内。
若い店主とその母親と思しき女性のツー・オペだ。

おや? クセのある匂いの元は何だろう?
おそらく揚げ油だな。
苦手な家系ラーメンのゲンコツにも似た臭み。
気になるネ。

品書きはシンプル極まりない。
余計なものをすべてそぎ落とした気配。
ロース定食 800円  ヒレ定食 1000円
お新香 150円  ビール小瓶・ウーロンハイ 400円
ほかには
サービス 大ロースカツ定食 限定5人前 950円 

迷わずロースをー。
都内のとんかつ屋は屋号のアタマに
まる、丸を冠する店が少なくない。
名店に恵まれて当たりが多い。
「まるに」にも期待した。

ドライの小瓶はすぐに底をついたが追加はせずに
おっつけ整ったロースカツに箸先を延ばした。
キャベツの大盛りはサービスだが、並でじゅうぶん。
卓上にはキャベツ用のクリーミーなドレッシング。
あとは練り辛子と1種のみのソースは中農。

大きめ5切れにカットされたカツをパクッとやった。
ウグッ! ん? 何か食べにくいな。
コロモがはがれやすいんだ。
とんかつ自体は悪くないんだけどネ。

ライスはまずまず。
なめこ&とうふの味噌椀はいい味を出している。
やはり問題はクセのある揚げ油と
はがれやすいコロモ。
イマイチ感の原因となっている。

この2点を克服してくれたら
店名通り、マルニなりますヨ。

「とんかつ まるに」
 東京都文京区白山5-33-19
 03-3830-0133

2022年7月28日木曜日

第3068話 富士見台でお買い物

満足の昼食後、
まずやらなきゃいけないのは
ラブ注入、じゃなかった、ガス注入。
腹はいっぱいなのでサクッと飲める店探しだ。

ところが、こんな場末の田舎町に
いや、もとい、もとい、失礼、失礼、
こんな瀟洒な郊外のおしゃれタウンに
オッサンがとぐろ巻く下世話でダサい、
飲み屋なんぞあるハズもない。

「源烹輪」の近くに「日高屋」があった。
数年前の暑いさなか、
葛飾は金町の「日高屋」で餃子すら取らず、
中ジョッキを2杯飲んだが
東東京の庶民タウンだからこそできたこと。
おしゃれタウンではさすがにやりにくい。

あきらめて昼から飲める練馬か池袋に移動しよう。
その前にもうちょいと富士見台の探索。
「焼肉問屋 牛蔵」の前を通りかかった。
店頭の総菜コーナーで女性スタッフが
「いらっしゃいませ~!」

あれは昨年2月。
この町の和食店「大貫」にて熊本産馬刺し、
越前蟹のクリームコロッケで飲んだあと。
「牛蔵」の繁盛ぶりを目にした。
主婦たちの人気の的なのだ。

今日は誘われるようにコロッケ・牛メンチ・
豚メンチを1個づづ購入(計371円)。
では町を離れるとしよう。
西武池袋線改札の向かいに京王ストア系列の
「キッチン コート」があり、のぞきたくなった。

鮮魚売り場で遭遇したのが鯧(まながつお)だ。
主に関西で珍重される高級魚は
西京漬けにされることが多い。
8切れの平目と6切れの鯧の刺身パックが
同値(754円)だから、その高級ぶりが判る。

めったに見かけぬ希少な珍魚。
扁平な身体に愛嬌のある表情。
ピラニアに似ていなくもないが
白身魚の魅力にあふれる食味のすばらしさ。
無条件でイン・マイ・バスケット。
こうなりゃ寄り道せずに直帰だ。

その日の晩酌はよかった。
コロッケはじゃが芋&玉ねぎの、
メンチは挽き肉&キャベツのバランスに優れ、
鯧には生わさびに加え、
鉢植えの木の芽(山椒)を数葉摘み取った。
よくぞ日本に生まれけり。

「焼肉問屋 牛蔵」
 東京都練馬区貫井3-10-2
 03-3970-2686

「キッチンコート 富士見台店」
 東京都練馬区貫井3-7-5
 03-3577-9951

2022年7月27日水曜日

第3067話 カニカニそばを食ったんだガニ (その2)

そして3ヶ月後。
再び重厚な木製ドアを引いた。
時に12時半。
店内の立ち待ち客は1組3人。
彼らはほどなく着卓。

J.C.が一番奥の二人掛けに
案内されたのは12時40分。
心に決めていた日替わり定食(二日毎)を通した。
この日の献立は
鶏もも肉となすの中国甘味噌炒め

麻婆茄子や麻婆豆腐はまず注文しない。
大勢の会食なら
料理の一翼を担わせることもあるが
大勢の会食自体、トンとご無沙汰だもんネ。

今週、NY時代の友人と
計5名の食事会が予定されている。
(それが今夜なんだガニ)
この面子と顔を合わせるのは6年ぶり、楽しみだ。
天竜川の天然鮎コースとあっちゃ、なおさらだ。

13時05分に運ばれた定食は秀逸だった。
再訪して良かった。
鶏もも、なすに千本しめじも参加した甜面醤炒め。
鶏としめじを外し、ピーマンを加えれば、
かつての我が家の常備菜、鉄華味噌となる。
もっとも甜面醤と信州味噌の違いはあるけどネ。

副菜は煮びたしの肉団子1粒。
大根と芯付きとうもろこしのスープ。
ザーサイ辣油和え。
ごはんの盛り多めながら
主菜の味付け濃く油分強めで
相応の白飯が必要、おかげでお腹いっぱい。

壁のボードに =今週の魚=
黒ムツ(長崎)5千円 
真鯛(愛媛)5千円
黄ハタ(長崎)8千円
  =半尾半額=

店主は有名店や横浜中華街で
修業を積んだというだけあって本格的だ。

13時半に退店してのお代は1320円也。
遠方から出掛けても失望させない佳店である。
ただし、カニカニそばだけは
避けといたほうが無難だガニ。

「源烹輪」
 東京都中野区上鷺宮4-16-10
 03-5987-3507

2022年7月26日火曜日

第3066話 カニカニそばを食ったんだガニ (その1)

西武池袋線を練馬区・富士見台で降りた。
本日、狙いを定めたのは
本格中華に創作性を加味した「源烹輪」。
駅前のふじみ銀座にありながら
地番は中野区・上鷺宮だ。

上鷺宮は面白い町で中野区が練馬区に
くさびのように打ち込まれたロケーション。
東京23区の区分けのアルゴリズムは存ぜぬが
ユニーク極まりないネ。

さて、この中国料理店。
実は3ヶ月前にも訪れている。
最初にそのときのハナシをー。

コンパクトなわりにドッシリとした印象の店内。
厨房を取り仕切る店主にフロアは奥方だろうか?
それぞれにアチラ系女性の補助が一人づつついており、
連携プレーはスムースだ。

菜譜を念入りにチェックする。
おっと、カニ好きは看過能わぬものがあった。
たらばガニと上海カニミソのとろみ麺(1520円)
北の海と南の湖が合体する景色。
とろみのある麺は苦手なれど
コイツはイカにゃあイカんでしょ。
即オーダー。

ビールの銘柄を訊ねると、
瓶はなくキリンの生だけとのこと。
ほかに飲んでる客もいないし、
即スルー。

カニカニそばが整う間、レイアウトを一望。
2X1 4X3 6X1
合わせて20席、これ以上多いと、
少なくとも厨房にもう一人必要だ。

Wカニ麺着卓。
懸念が現実のものとなる。
ドロ~リドロドロ。
多少汁気の多いカルボナーラみたなのが来た。

たらばは散見されてもカニミソは見当たらない。
何より困っちゃったのは大量の小松菜だ。
これではカニ風味青菜麺が正しいネーミング。
ほ~ら、山本リンもが歌い出した。

♪ 小松っちゃうな 小松菜おお過ぎて
  どうしよう まだまだ食えるかしら ♪

周りを見ると麺類もよく出ているが
日替わり定食が一番人気のようだ。
不完全燃焼を引きずって
練馬春日町方面に向かう食後の散歩。
こりゃ近いうちに再訪せねばならんな。

=つづく=

2022年7月25日月曜日

第3065話 何とも平和な土用丑の日

陽射しの強い午後、近所で軽いランチでもと
不忍通りを団子坂から根津神社方面に
サンダル履きで歩いていた。

途中、当欄でも幾たびか紹介した、
「鳥安」に差し掛かる。
あゝ、今日は土用丑の日かー。
丑の日のうなぎはもう20年も食べていない。
そうだ、うな重弁当をビールの友として
大相撲を観るとしようか。
ちょいとした桟敷席気分だネ。

店頭も店内もガラガラである。
うなぎ弁当は1人前1650円。
以前、店内で食べたが値段のわりに満足できた。
調整に10~15分かかるというので
「20分後にピックアップします」
「ハイ、ご用意しておきますネ」

この暑いのにボーッと待ってるわけにもいかず、
真向かいの「青山餃子房」へ。
涼みがてらビールを飲んで過ごすつもりだ。
ところが当店、瓶も生も一番苦手な銘柄オンリー。
これじゃダメじゃん。
小姐に事情を説明してそのまま出て来た。

数十米先の「蓬莱春飯店」に入る。
本店は横浜市・鶴見にある。
ドライの中瓶、野菜スープを通す。
数時間後にうなぎ弁当が控えているため、
麺・飯類はムリだからネ。

すると、このスープがバカデカい。
3人で分け合ってちょうどいいくらい。
野菜はタップリ取れたけど、
半分までたどり着けずにギヴ。

弁当をブラ下げ、来た道を戻る。
国の内外で血生臭い惨劇が続発する昨今、
千駄木の町はのどかにして平和だ。
此処に牛の1頭や2頭歩いていたら
より平和な丑の日となる。

中入り後からTVの前。
うな弁には新香が付いてきたが
温泉玉子と味噌椀はナシ。
このコンビには昨年末、ヒドい目にあわされた。
ドボンと飛び込んだ温玉のせいで
ザブンと飛び出た味噌汁が傍らのマスクにー。
いや、マイッたんだ(第2913話参照)

うん、うなぎもさることながら
きゅうり・かぶ・大根・
大根とその葉と大葉の塩もみ、
この新香盛りが最高だ。

観戦した大相撲は優勝を争うトリオが
雁首揃えて討ち死にの巻。
おかげで千秋楽をより楽しめるんだけど・・・。
結末はご存じの通りです。

「蓬莱春飯店 千駄木店」
 東京都文京区2-44-1
 03-3822-3871

「鳥安」
 東京都文京区千駄木2-13-1
 03-3821-1301

2022年7月22日金曜日

第3064話 美女軍団と囲む焼肉 (その2)

最寄りはJR山手線・駒込なれど
地番は北区・西ヶ原の「炭火焼肉 きたむら」。
もっともメトロ南北線・西ヶ原もそう遠くない。

美女軍団との食事会は
いや、飲んだり唄ったりも重要な要素なんだが
いつの頃から始まったのかというと、6年前。
浅草は観音裏のもんじゃ(水焼き)でスタートした。
以来、いろんなところへ行ったなァ。

さて、さて、キムチを分け合い、肉焼き用意ドン!。
最初は女子の大好物、タン塩である。
J.C.はコイツを食べる習慣がない。
よって注文は1人前にとどめた。
いえ、1切れだけつまんだけどネ。

お次のハラミがとてもよい。
柔かさもさることながら
シットリとした質感に加え、
歯をささやかに押し返す弾力性。

そう言やあ、近頃、
昔の定番・ロースをあまり食べなくなった。
まあ、焼肉店を訪れる頻度が激減してるからネ。
若い頃は好きであんなに食べた焼肉なのにー。

続いてカルビ。
これは少々歯応えがあった。
ハラミのように噛めば噛むほど肉汁あふれる、
という塩梅にはいかない。
ハラミを”優”とすれば、
カルビは”良”といったところかー。

そして本日の主役、つぼ漬けサガリをー。
予約の電話の際、スタッフに
入荷のアルやナシやを問い合わせると
その日によってまちまちらしい。

先刻のオーダー時に接客のオネエさんは
二人前アルかナイかだと言う。
即刻、そいつを抑えたのだ。
サガリはハラミとほぼ同義ながら
ハラミの下部に当たる。
下にあるから下がり。

サイコロ状にカットされ、
口元に運び、咀嚼に及べば、
口内は肉汁いっぱい、よだれもいっぱい。
コイツはまごうことなき”特優”でありました。

若い二人はスペインの赤。
ロートル二人は知多のハイボールにスイッチ。
肉の追加はレバーX2、ツラミ(頬肉)
これらもなかなかである。
軍団はまだ食いたいとヌカす。
冷麺(ネンミョン)とクッパを通したヨ。

当方は二次会の下準備のため、締めの食事はパス。
彼女らを残して一足先に谷中のよみせ通りへ。
勘定は任せてあと精算。
何のこたあない、
スイカによるせっかくの両替は無駄でした。
ポケットいっぱいの千円札。
これもまた或るシアワセのカタチと言えましょう。

「炭火焼肉 きたむら」
 東京都北区西ヶ原1-3-7ピアサクシードとも2F
 050-5593-4885

2022年7月21日木曜日

第3063話 美女軍団と囲む焼肉 (その1)

豊島区・巣鴨の庚申塚。
先に来た三ノ輪橋行きに乗りました。
北区・王子で王子様は降臨しました。

だけどシトシト降るなか歩いても面白くない。
目的地の駒込に先乗りしてしまおう。
京浜東北&山手線を乗り継いで到着。
まだ16時じゃ1時間もあるぜ。

何度か利用した立ち飲み「ひろし」に行ったら
ちょうどオープンしたところ。
ひろしサン(けっこういいお歳だけど)に
ドライの中瓶をお願いした。

何か軽いつまみを・・・品書きとにらめっこ。
青唐醤油漬けがバッチリだが
実は数日前に自宅で仕込んだばかり。
食べ比べするかな・・・やっぱパス。
結局は薬局、柿ピーにしちまった。
「量は半分くらいでいいですからー」と。

今宵の面子は美女軍団三人組。
一昨年末にチーズフォンデュを囲んで以来だ。
此度、連中は焼肉を欲しおった。
これは三人のリーダー格、
いわゆるお局の差し金に違いない。

「ひろし」を出ても、まだ時間あり。
会食の会計時には豊富な千円札が必要になるため、
駒込駅に舞い戻る。
万札を挿入してスイカに千円だけインプット。
これをもう一度繰り返し、
オツリをポケットにねじ込んで万全。

すると背中をチョンと突つく輩がいた。
一瞬、昔NYで流行った、
背中突っつきスリかと思い、
振り向くと、くだんのおツボネじゃないかー。
店にたどり着けず、駅にUターンしたらしい。

そうしてこうして再会を果たした四人組。
プレモル生のグラスを掲げる美女たちと
ドライのコップをカチンカチン。
一任された注文は下記の通り。

キムチ盛合わせ・サンチュX2・タン塩・
ハラミX2・カルビX2・つぼ漬けサガリX2

あとはジンファンデルの黒ワインを1ボトル。
軍団は清潔な店内と
焼肉店とは思えぬモダンな雰囲気に
期待を高める気配でありました。

=つづく=

2022年7月20日水曜日

第3062話 ビールの友はメンチ南蛮

この日の夜は久々の四人会食。
17時スタートだが
それまでボーッとしていられやしない。
間違いなくチコちゃんに叱られる。

小雨がパラつくなか、
現れたのはお婆ちゃんの原宿こと、
巣鴨とげぬき地蔵通りだ。
此処へ来るといつも
「巣鴨ときわ食堂 本店」に立ち寄ってしまう。
通し営業だから使い勝手がとてもよい。

時刻は14時を回ったところ。
それではおジャマいたしましょう。
と言いつつ、店先を素通りしてなおもスタスタ。
今日はちょいと趣向をこらそう。
と言っても結局は薬局、
「ときわ」なんだけどネ。

ただしこの日暖簾をくぐったのは
「巣鴨ときわ食堂 庚申塚店」だ。
本店に君臨するのは大女将。
こちらは倅が取り仕切る。

ドライの大瓶をトクトクやって
ミニ盛りメニューに視線を移しながら
グググイ~ッっと。
巣鴨の「ときわ」はこのミニ盛りがありがたい。
とりわけ少食派には救いの神となる。

まずミニ冷奴(140円)。
そしてメンチカツ(310円)を1個だけ。
ちゃんとキャベツとレモンと辛子が添えてある。
ここで忘れてならないのが
自家製タルタルソース(80円)。

壁のポスターにもこうあった。
フライ全般のお供に
エビフライやアジフライなど
タルタルは魚貝のフライにピッタンコ。
しかしながら世の中にチキン南蛮なる、
新種の食べものが出現して以来、
肉類にもOKなんだと認識を改めた次第なり。

さすがにとんかつやビーフカツには使わぬものの、
コロッケ・メンチ・ハムカツあたりなら
けっこうイケちゃう。
よって本日のビールの友はメンチ南蛮であった。

本店もそうだが当店のスタッフの、
接客ぶりを見ているとすがすがしい気分になる。
お冷や、お茶の注ぎ足しの小まめさは本店以上。
賞賛に値する。

雨はやみかかってきたが、まだ時間はたっぷり。
都電荒川線の庚申塚停留所に来た。
どちらの方向が来ても先発に乗るつもり。
車中の人となってから行く先を考えよう。

「巣鴨ときわ食堂 庚申塚店」
 東京都豊島区巣鴨4-33-2
 03-3576-2269

2022年7月19日火曜日

第3061話 雨宿り あんかけ焼きそば 神保町 (その2)

神田神保町はすずらん通りの出口そば。
「三幸園」の2階でビールを飲んでいる。
天井の空調が強烈で涼しいのはありがたいが
けっこうな風力だ。

待つあいだ、壁の短冊を遠望する。
豚肉キムチ炒め、冷やしジャージャ麺、
ニラそばがこの季節の推奨料理らしい。

あんかけ焼きそばが運ばれ来た。
一見してちょいとヤな予感。
皿のてっぺんに三種の神器よろしく、
小海老・モンゴイカ・うず玉。
見るからにアト乗せであんかけに馴染んでいない。

よく海老炒飯や蟹炒飯で海老・蟹を一緒に炒めず、
最後にチョコンと乗せるタイプがあるが
あれはいただけない。
素材は火を通されて初めて香り立つものなのだ。

ぬるかったら、いや、冷たかったら
目も当てられないヨと思いつつ、
飾り包丁の入ったモンゴをパクリとやると
それなりに温かかった。

具材はほかに豚肉薄切り、ピーマン、キャベツ、
ニンジン、長ねぎ、竹の子、キクラゲ。
脇にたっぷりの練り辛子。
やや太めの麺はところどころに
焦げ目が欲しいところではあった。

ありゃ、空調の風で伝票がヒラヒラ飛んで床に着地。
たまたま通りかかった、くだんの陽気なオバちゃん。
拾い上げてくれ、曰く
「こういうのはどっかに飛ばしちゃえばいいのよネ」
「そうだネ、何ならあっちのテーブルに置いといて」
「エッ、あっち? そりゃ可哀そうだヨ」
「ハハ、そりゃ、そうだ」

空調のせいで焼きそばがどんどん冷めてゆく。
熱々スープの湯麺ならまだしも
汁っ気に乏しい炒麺は冷え足が速い。
最後のほうはぬるいというより冷たくなってた。

そうだよなァ。
房総や瀬戸内は暖かいけど、
モンゴルみたいな奥地は寒いからねェ。
海洋性気候は温暖 内陸性は寒冷。 
まさか中華料理屋で地理のおさらいとは
思いもよらぬことでした。

「三幸園」
 東京都千代田区神田神保町1-13
 03-3291-8186

2022年7月18日月曜日

第3060話 雨宿り あんかけ焼きそば 神保町 (その1)

その日の予報は終日曇り。
家を出たときにポツポツきたものの、
これなら雨傘不要と手ぶらで出発。
13時を回ったので遠くへ行く余裕がなかった。

メトロ半蔵門線・神保町。
閉館が決まった岩波ホールのある、
岩波ビルの出口から地上に。
ありゃりゃ、けっこうな降りじゃないかー。
これは傘が必要だ。

近くにコンビニは? 
白山通りの向かいに「三幸園」が見えた。
信号を渡ればすぐそこだ。
傘なんか買わずに
昼メシを兼ねた昼飲みといこうじゃないかー。
ついでに雨宿りも兼ねてネ。

看板には”中華・餃子の店”とあるから
餃子に自信があるようだ。
もう10年も来てないので覚えちゃいないし、
今日は餃子の気分じゃなく、焼きそばの気分。

入口に突っ立って席待ちする女性客が
客の出入りの妨げなれど、本人はどこ吹く風。
もうちょい端に寄るとか。風を読もうヨ。

1階は満卓。
「喫煙席でもだいじょうぶですか?」
キャッシャーのオニイさんに問われ、
「ええ、はい」
女性が階段を上ってゆく。
2階は喫煙可なんだネ。

同じ質問を受けたJ.C.もうなづいて
上りかかると下りて来た女性とすれ違う。
「やっば、やめとくわ」
おい、おい、そんなに煙いんか? マイッたな。
あまりタバコの匂いはしないけどー。

2階も8割がた埋まっている。
しかし、有煙タボコを吸ってる輩は皆無。
無煙だってホンの2~3人だ。
これならどうってことない。
なんちゃあ、心配することないきにネ。

お運びの陽気なオバちゃんにドライの大瓶を通し、
卓上のメニューを手に取ると、焼きそばが実に多彩。
プレーン、五目、キムチ、あんかけ、
青椒肉糸、カタ、五目カタ
あんかけ焼きそば(900円)を選択する。

昼の定食は
Aー肉野菜みそ炒め(850円)
Bーラーメン+半チャーハン(850円)
Cー餃子定食(750円)
様子をうかがっていたら
圧倒的にAランチが人気だった。

=つづく=

2022年7月15日金曜日

第3059話 88年 キラキラひとすじ (その2)

下町人情キラキラ通りの「五福家」。
具服屋みたいな名前のそば屋にいる。
店内の様子や調度が歳月を物語る。

そばの品揃えはしっかりしており、
中華モノも数点、チャンポンまであった。
日本そば屋の中華そばは当たりが多く、好きだ。

たこブツ、さば味噌煮、イカ焼き、浜松ぎょうざ、
つまみはほとんど350円と安価。
冷奴の350円は割高だが
それでも居酒屋プライスとしてはフツー。

ラーメン着卓。
厚めの肩ロースチャーシュー1枚。
シナチク、ナルト、ほうれん草。
ポパイじゃないけど、ほうれん草がいいなァ。
昭和の支那そばはこうでなくっちゃ。
これが小松菜ではちょっとガッカリ。
ワカメになったら大きく落胆。

スープどころか麺もいい感じ。
相当にレベルの高いラーメンだった。
帰り際、亭主は店先でフライを買う、
近所のオバさんを接客中。
背後から
「ホントにスープがうまかった」ー声掛けしたら
振り向いてうなづきニッコリ笑った。

日本そば屋で日本そばを食べないのはなァ。
気になって二日後に再訪。
引き戸を引いたら、うわっ!
満卓どころかほぼ満席。
喫煙者が多いから煙モクモクと来たもんだ。

近所の町内会みたいでグループの貸し切り状態。
店主も仲間に入って打ち解けていたが
席を立ってその席に促された。
この人はいつもJ.C.のために席を温めてくれている。

昭和そのもののもりそばだった。
甘みの勝ったつゆにやや太めのそば。
そばがあまり旨くないところまで昭和そのもの。
当店は日本そばより中華そばがオススメだネ。
でも、ちゃんとそば湯を湯桶で出してくれた。

会計時、亭主に訊ねる。
「お店はもう長いんでしょう?」
「昭和10年だからあしかけ88年」
「親父さんは何代目?」
「二代目です」
息子の三代目が出前から戻って来た。

スゴいねェ、昭和10年生まれとなると
大江健三郎に芦川いづみ。
海外ならエルヴィス・プレスリーにアラン・ドロン。

その時、東京では高田浩吉の「大江戸出世小唄」、 
NYにはガーシュインの「サマータイム」が
海を隔てて流れていたハズである。
両国が戦火を交える前の平和な時代、今いずこ。

「五福家」
 東京都墨田区京島3-52-1
 03-3611-3698

2022年7月14日木曜日

第3058話 88年 キラキラひとすじ (その1)

クソ暑い午後、日暮里の銀行に寄って、そのあと。
夏は好きだから苦手な人よりはまだ楽だが
最近はそうもいかなくなった。

以前なら炎天下の長距離散歩なんか屁のカッパ。
好んで日向を歩いたのに、ここ数年はダメだ。
日陰を択ぶようになっちまった。
寄る年波には勝てませんわ。

こう暑くちゃ、そうめんでも
ツルッとやるしかないかな?
そうめんって、内で茹でたことはあるけど
外で注文したことは一度もないネ。
やっぱりもりそばにしとこう。

バスが発着する駅前ロータリー。
此処から出るのは主に錦糸町行きと亀戸行き。
終点はJR総武線の隣り駅同士ながら
ルートはずいぶん異なる。
浅草・押上を経由する前者は近道。
三ノ輪・向島を通って行く後者は遠回り。

ともに本数は多いほうだが、それでも待ちたくない。
どちらもOKの二面(リャンメン)待ち。
先発の亀戸行きに乗り込んだ。
そうしておいて降りる先を考える。

隅田の大川を白髭橋で渡り、
百花園から東向島広小路。
ふと思いつき、橘通りで下車した。
此処は下町人情キラキラ商店街入口である。

気に入りの道筋を歩いてしばらく、
目当ての日本そば屋に到着。
店頭で海老やアジやイカのフライを
販売しており、何度か見かけているが
入るのは初めて。
「五福家」なる屋号も知らなかったくらいだ。

年季の入った引き戸を引くと、
TVの前に座っている店主が立ち上がり、
先客もいないのにその席を促され、
本人はオモテに出て行ったヨ。

女将サンにドライの中瓶をお願いし、
もりそばと決めているものの、一応品札を見回す。
これは将棋最終盤における形作りと同じだ。 
そしたら2枚の短冊に目がとまった。

チャーシューの美味しい チャーシューメン 800円
スープのうまい ラーメン 600円

もりと決めていたのに思わずラーメンを発注していた。
冷たいビールが暑気を払ってくれたんだネ、きっと。

=つづく=

2022年7月13日水曜日

第3057話 志村のカツカレー だいじょうぶだぁ

都営三田線で板橋区・志村坂上へ。
本日のターゲットは駅入口のすぐ裏手、
とんかつ店「桐半」だ。
とんかつをはじめ、
揚げもの主体の品揃えのほか、
焼き魚のラインナップも充実している。

その中で断トツの一番人気がカツカレー。
数日前の理髪のあと、芝大門は増上寺近くの、
カツカレー専門店を目指したものの、
ハート&マインドにストマックがついてこれず、
断念した、その名残りがあったようだ。

トンカツ、チキンカツ、コロッケに
アジ、イカのフライが乗ったカレーはすべて600円。
カツが大きくなる特選カツカレー、
海老、ホタテ、季節のカキフライがみな800円。
どうしてこんなに安いんかな?

ロースカツ定食(1180円)、
アジフライ定食(890円)に比して
カレーが極端に安すぎる。
おそらく揚げもののサイズが
定食より小さいためだろうが
かえって不安になるヨ。
だいじょうぶかァ?

半ライスのカツカレーとともに
黒ラベル中瓶を通したら
切り昆布&さつま揚げの煮たのが
大きめの小鉢で出た。
続いて枝豆が来たが、これも多い。
ほとんど一品料理だネ。

店主のワンオペと聞いていたが
パートらしきオバちゃんが
買い物から帰って来た。
ビールを飲みながら調理中の店主に
カレーのルウも半分でお願いする。

整ったプレートには
そこそこの厚さと大きさのトンカツ。
少ないルウはカツ全体にかかっている。
あとはキャベツ繊切り、
そしてたっぷりの大根に
豚小間とにんじんが散見される豚汁。

会計は1350円。
逆算すると、つまみは2品で200円。
いや、みんな美味しかった。
少しばかり不安になったけど、
志村のカツカレーはだいじょうぶだぁ!

「桐半」
 東京都板橋区志村1-6-11
 03-3969-5284

2022年7月12日火曜日

第3056話 つくばエクスプレスに乗って

♪   知らない街を 歩いてみたい
  どこか遠くへ 行きたい ♪
   (作詞:永六輔)

朝、目覚めて歯を磨いていたら
ジェリー藤尾の「遠くへ行きたい」が聴こえてきた。
そうだ、今日は知らない街に行こう。
あまり遠くへは行きたくないけど。

向かったのは足立区・六町(ろくちょう)。
つくばエクスプレス(TX)で北千住の2駅先だ。
六町は名前の通り、街とは呼べない小さな町。
畑の中をバスしか走っていないところに
TXが開通したのは平成17年、奇しくも17年前。

下調べして候補を日本そば屋と食堂に絞った。
どっちにしようかな? 
取り合えず駅近の「川船」に立ち寄ると本日休業。
10分歩き、「三岩食堂」にやって来た。
白地の暖簾に”三岩食堂 登録商標”の黒文字。

思い出すなァ。
今は無き浅草すし屋横丁の「三岩」。
あすこの穴子天ぷらはバツのグンだった。

老夫婦お二人の切盛りのようだ、
腰の曲がったオバアちゃんが接客してくれる。
ドライの大瓶をお願いし、壁の品札を見上げた。
焼めし(690円)とピリ辛焼めし(730円)に注目。
焼めしかァ・・・。
昭和の庶民の味方も今じゃ絶滅危惧種、
食堂の品書きにその姿を見ることがなくなった。

ピリ辛なんて昭和にはその言葉さえなかったので
フツーの焼めしをオバアちゃんにお願い。
あらためてオジイちゃんを見たら
髪の毛は失われてもずいぶん若い。
こりゃつれ合いじゃないネ、息子だネ。

若いカップルが入店して来てオトコのほうが
「魚フライ定食を注文したら何が出るんすか?」
店主応えて
「今日はイワシだけだけど・・・」
「いいッスヨ」

「何にする?」
「ワタシ、刺身定食にする」
「あと刺身定食で!」
「今日はマグロだけなんだけど・・・」
彼女、コクリとうなづき
「それでいいッス」
二人の注文は無事通った。

他人のことより自分の焼めし。
具材は脂身の全くない豚小間切れ、
玉ねぎと玉子、仕上げに青海苔パラパラ。
あとは豆腐の味噌汁、
きゅうりぬか漬け&たくあん2切れづつ。
フツーに美味しくいただいた。

お勘定は1390円。
駅前に戻ってしばし散策するが何もない。
TXで浅草か新御徒町に戻ろうか?
いや、綾瀬行きのバスを待つことにしました。

「三岩食堂」
 東京都足立区一ツ家3-23-6
 03-3859-1927

2022年7月11日月曜日

第3055話 すだちと知多とかつお刺し

髪もすっきりと、かむろ坂を降った。
山手通りを横断し、
右前方に進めば五反田、左なら目黒だ。
右手に取って裕やんだんだんへ。
映画(嵐を呼ぶ男)ではああだった、こうだったと
しばし辺りにたたずむのは毎度のこと。

予定としては漠然と、芝大門でカツカレー。
都営浅草線に乗ってはみたが
昼の玉子サンドがまだ消化しきれていない。
こりゃ、ライス半分でもムリだわ。

大門で降りたものの、
改札を出ずに大江戸線に乗り換えた。
門仲か森下の酒場が妥当だろう。
軽くつまめて飲めればいいや。

門前仲町下車。
しばらくぶりの立ち飲み「ますらお」へ。
時刻は17時、客でいっぱいのカウンターに
スペースを作ってもらい、どうにか滑り込む。

当店の生はプレモル、瓶は一番搾り。
よって最初の1杯は生搾りすだちサワー。
頭上のメニューを見上げた。
金目鯛炙り刺し、かつお刺しが1番目と2番目に。
「ますらお」に来れば頼むのかつお刺しを。

炙り金目のにぎりのところに
=ニンニク醤油で= 
一筆を目ざとく見つけ、そいつをお願いした。 
かつおには何てたってニンニクだもんネ。

両サイドの独り飲みもかつおを突ついていた。
狭い場所にかつおが3皿並んじまった。
メニューには刺しとあったが
実際は皮目を炙ったたたきである。

美しい6切れの脇には
おろし生姜、きざみ小ねぎ、貝割れ大根。
いやはや、実に美味い。
お隣りさんを含め、3皿すべてが背身。
腹身は仕入れていないんだ。
当店のかつおはいつも当たり、まず外さない。
店主の目利きの賜物と言うほかはない。

サントリー知多のソーダ割りに切り替えた。
このグレンウイスキーは好きで
生ものとの相性もよろしい。
さらに何か1品と思ったが
かつおが良すぎてほかに食指が動かない。
1皿6切れで満足だから
とてもじゃないがカツカレーは無理だよネ。

知多ハイをお替わりし、お勘定は2400円也。
帰りしな御徒町のブレイクルームに立ち寄り、
プラコップの生を2杯いただいて帰ります。

「ますらお」
 東京都江東区富岡1-5-15伊藤ビル2F
 03-5809-8256

2022年7月8日金曜日

第3054話 緑ヶ丘でもハイネケン

この日は理髪日。
昼めしは東急目黒線の先のほうまで行って
食後、不動前に戻るつもり。
目黒線は目黒ー日吉間を走るが
田園調布より先は東横線の複々線となるため、
正式には目黒ー田園調布間である。

多摩川を越えたくはなく、
大岡山で乗り換え、大井町線・緑が丘下車。
長いこと来ていない、15年は来ていない。
でも町並みに見覚えがあった。

「扇鮨」が健在。
確かこの店は親方自身がいくつか鮨種を
釣るんじゃなかったかな?
おおやっぱり、桃色の暖簾に白く、
”釣魚鮨”と染め抜かれていた。

コンパクトな町につき、店舗の数は限られる。
3軒ほど候補を選んであり、
そのうちの「ハル&ハル」に入店した。
フレンチトーストが大人気というが
そういうものを食べる習慣はなく玉子サンドをー。

飲みものはアイスレモンティーにでもするかな?
おおっと、ハイネケンがあるじゃないですか!
ひと月前に根津の「オトメ」で飲んだヤツ。
小瓶だから2本はいっちゃうネ。
普段、あまり出入りしないタイプの店に
好みのビールがあると、地獄で仏の感あり。

玉子サンドはゆで玉子をつぶすタイプでなく、
メルティングチーズがたっぷり入ったオムレツ。
鶏卵2個使用で食べ応えがあった。
サニーレタスもどっさり。
山型イギリスパンの片焼きトーストサンドだ。
フタのないケースで焼くために山ができる。

ん? この甘みは何だろう?
ピーナッツバターだな、これは。
パンがデカいのとレタスが多いのとで
どちらもけっこう残しちまった。
大阪の小姑には食べものを残すと
バチが当たると言われ続けてるが
食べきれないものは致し方なし。

壁にOHTANI meter が設置され、
17を指していた。
この数時間後には18になるんだがネ。
1900円を支払い、狭い町を15分ほど散策。

暑いから早いとこ電車に乗りたいが
隣りの大岡山まで歩く。
緑ヶ丘と大岡山は東工大の町だ。
北口商店街を往ったり来たりして
不動前に向かいました。

「ハル&ハル」
 東京都目黒区緑ヶ丘3-1-6
 03-3718-2188

2022年7月7日木曜日

第3053話 角打ちで飲む前に~蔵前篇~ (その2)

蔵前「フタバ」近くのライトミール・スボット。
1軒目はちんどん屋、じゃなかった、てんどん屋。
天丼はちっともライトじゃないけど、
飯半分だからだいじょうぶ。

明治22年創業、吉原大門「土手の伊勢屋」を
本家とする「蔵前いせや」。
ほかに「千束いせや」もあり、
先代の息子3人がそれぞれの暖簾を守っている。
長男・土手、次男・千束、三男・蔵前と、
台東区内を南下する毎に店主が若くなってゆく。

ランチサービスがお値打ち。
海老3本丼 穴子1本丼 キス2尾丼
海老とホタテかき揚げ丼 スルメイカかき揚げ丼
フグ丼(限定5食)
以上が800円均一。

安いなァ、うれしいねェ。
何たって軽いのがいい。
飯半分にしてさらに軽くしてもらう。

穴子をお願いすると、
そこそこサイズがカリッとした揚げ上がり。
ししとう1本、ナス1片も―。
「伊勢屋」伝統の江戸前天丼はコロモがサクサクだ。
キャベツもみは添えられるが
味噌椀は別売りの200円。

間を置かずにキス2尾丼。
これまたけっこうながら
「いせや」のスタイルにしっくりくるのは穴子だネ。

問題は相当にしょっぱい丼つゆ。
J.C.の知る限り、東京で最も辛いそばつゆは
雷門の「並木藪蕎麦」。
丼つゆなら「蔵前いせや」となる。
つゆ少なめを申告するのが賢明だ。

続いて田原町の有名パン店、
「ペリカン」直営の、その名も「ペリカンカフェ」。
「いせや」は「フタバ」まで徒歩1分につき、
ビールを飲まないが、こちらは5分ほどの距離。
ハムエッグのトーストを食べながら
がまんできずに1本お願い、小瓶だけどネ。

女性に人気でいつも数人並んでいるそうだが
その日はすんなり通された。
だけどもオトコはわれ一人。
女湯に浸かってメシを食ってる心持ちだ。
とは言え、角打ち前にもってこいだから
次回はクロク・ムッシュでもいってみよう。

吾妻橋より多少行きやすい蔵前。
「フタバ」の頻度が増しつつある、
今日この頃であります。

「蔵前いせや」
 東京都台東区蔵前4-37-9
 03-3866-5870

「ペリカンカフェ」
 東京都台東区寿3-9-11
 03-6231-7636

2022年7月6日水曜日

第3052話 角打ちで飲む前に~蔵前篇~ (その1)

舞台は変わって台東区・蔵前。
都営浅草線で本所吾妻橋の2駅都心寄りだ。
NYから帰国後、蔵前の南に隣接する町、
柳橋に棲んだのでこの界隈は奥庭といった感じ。

古くは幕府の米蔵が建ち並び、
米問屋や札差しが軒を連ねて栄華を極め、
近世は2代目両国国技館が落成するまで
蔵前国技館にて大相撲の興行が成された。

そして現代。
理解不能なのに高視聴率だったTVドラマ、
「あなたの番です」の舞台となったマンション、
キエンクラ蔵前により、
三たび名を馳せることとなる。

角打ち開始後、10年近くになるという、
新堀通りの「カクウチカフェ フタバ」。
かつての住まいは徒歩10分の距離だが
オープンしたのは引っ越し後。
前からあったら入り浸りの可能性大である。

5月末、散歩していて見つけた。
以来、たびたび訪れている。
角打ちといえども実際は座り飲み。
常に空いていて、のんびり落ち着ける。

開けっ放しの入り口の外を行き交う、
通行人をボーッと眺めながらグラスを傾けるが
いつものパターンはドライの大瓶1本。
そしてサントリー知多のソーダ割り1杯。
100~300円のつまみ類が揃うものの、
滅多に口にすることはない。

カクウチカフェだから軽い食事も可能。
早めに出かけると、OLサンが数人、
ランチプレートやパスタを食べていた。
たまに近所のオバちゃんの茶話会が
開かれたりもして
そのときは姦(かしま)しいのなんのっ。

角打ちよりカフェ利用が多そうだが
深い時間に行ってないからまだ判らない。
独りでの夜の出歩きがめっきり減った今日この頃。
だんだん人と飲む機会が増えてくると、
またそのクセがつきそうだけど。
いつまで優等生でいられるのかな?

さて「フタバ」の前の軽い食事、そのめし処。
界隈をつぶさにめぐって択んだ。
吾妻橋同様、蔵前も2軒紹介しよう。

=つづく=

「カクウチカフェ フタバ」
 東京都台東区蔵前4-37-4
 03-3861-1138

2022年7月5日火曜日

第3051話 角打ちで飲む前に~吾妻橋篇~

最近はもっぱら角打ちにハマっている。
明るいうちから気兼ねなくサクッと飲めるし、
フードの注文を強制されもせず、
静かに酒と向き合え、しかも格安と来たもんだ。 

コロ助のせいで夜遊びを控えるクセがつき、
いまだに踏襲してるから、さらに都合がよい。 
今、ひんぱんに利用する二箇所を紹介したい。 
その際、角打ち前に軽いランチが取れる、
近隣の食べ処がとても大切。 
そちらの披露から始めたい。

初めに都営浅草線・本所吾妻橋駅前の「高政家」。
中細の中華そばと中太の塩そばが
二枚看板でともに605円の下町価格。

ももチャーシュー、シナチク、半味玉、焼きのり、
貝割れに、塩は白ごまが加わる。
控えめな量がオッサンには打ってつけ。
甲乙つけ難いものの、
モンゴル塩使用の塩そばに軍配かな?
細打ち麺が好みなののネ。

業平橋西詰に近い「下総屋」の名物は焼肉ラーメン。
普段はスルーするアイテムながら
名物ゆえにトライすると
やや厚めの豚生姜焼きが3枚、
どんぶりを覆っていた。

こりゃ他店のチャーシューメンより肉々しいゾ。
醤油スープと相まり、いい味を出すが何せ量が多い。
ラーメンかタンメンがちょうどいい。 
若者ならライスを付ければ食べ応えじゅうぶん。
極端な野菜不足に見舞われるがネ。

不思議なのはこの店の値付け。
タンメンも五目そばも700円。
しかもタンメンは野菜がヤケに少ない。
例えばひいきにしている鶯谷駅前「大弘軒」。
その3分の1程度しかないのだ。

五目そばは試してないから判らんが
タンメンと五目が同値の町中華をほかに知らない。
そのくせ肉モリモリの焼肉ラーメンは650円。
何を基準とするのか、理解に苦しむヨ、ジッサイ。

そうして乗り込む明治16年創業のの「明治屋」だが
以前、詳しく紹介したのて此度は多くを語らない。
ただ、直近の報告を。
「高政家」の塩そばのあとに訪れ、
ドライ大瓶と生まれて初めての陶々酒。

浅草名物・電氣ブランや
ハンガリア・リキュール、ウニクムの代役だ。
第一感は桂皮の主張する。
うん、悪くないな。
たまさか再注がございますかも。

「高政家」
 東京都墨田区吾妻橋2-4-13
 03-3622-0734

「下総屋」
 東京都墨田区吾妻橋3-2-9
 03-3622-5355

「明治屋酒店」
 東京都墨田区吾妻橋3-7-12
 03-3622-1592

2022年7月4日月曜日

第3050話 目白台 ウズラやヒツジの 舞踊り (その2)

日本女子大、通称ポン女がある文京区・目白台。
”仔猪亭”で夕食中だが
メニューにウズラや鹿や仔羊はあっても
うりぼうはいなかった。

ここでハタと思い当たる。
今、目の前にいる旧いのみとも、
ほとんどクサレ縁とは1年前のうなぎのあと、
半年前にも湯島の天ぷら屋で飲んでいる。
ホントによく東京に出てくるヤツだ。

前菜のキッシュからは
ズワイガニの風味が立ち上り、味も花マル。
一方、相方が択んだホタテのテリーヌは
硬いプリンのような食感がイマイチ。
まっ、みんながみんな上手くいくとは限らん。

互いにグラスを重ねつつ主菜へ。
ウズラのローストは
キノコ類のファルシ(詰め物)入り。
数年ぶりのウズラは大好物ながら
かなりのボリュームだ。

相方の仔羊もさほどトマトチックでなく、
上々の仕上がり。
赤ワインがほしくとも
どうせ1軒で終わらぬ今宵。
すんなりとデセールに移る。

以前はほとんど口にしなかったデセールを
近年は受け入れるようになった。
桃のタルトとカラメルのグラッセを分け合い、
エスプレッソを楽しむ。
久しぶりの深煎りカフェだ。

ディジェスティフ(食後酒)はアルマニャック。
フランス南西部、ガスコーニュ地方が産する、
ブランデーで原料は白ぶどう、これも久々。
何たって夜のフレンチはトンとご無沙汰だもの。

相方が近くの千登世橋を見たいと言い出した。
いいでしょう、ご案内しましょう。
西島三重子の「千登勢橋」の舞台である。
そういやあ、「仔猪」のそばには
東京カテドラル聖マリア大聖堂があるんだった。
ほうら、彼女の歌声が聴こえてきたヨ。

♪   胸の想い 言い出せなくて 
  遠くで カテドラルの鐘
  思わずこぼした 涙を拭いて 
  無理に笑った 風の中で  ♪
   (作詞:門谷憲二)

「千登勢橋」の一節に鳴り出すこの鐘は
あの鐘である。
さて、飲み直し。
目白の駅に向かい、千登世橋を渡って行きました。

「ル・マルカッサン」
 東京都文京区目白台2-13-5
 03-3946-7177

2022年7月1日金曜日

第3049話 目白台 ウズラやヒツジの 舞踊り(その1)

北九州のウルサ形がまた上京。
1年前に築地でうなぎを食べて以来だが
来るたんび注文をつけるので厄介至極なり。

でもって What do you want to have ?
すると Je veux de la cuisine française.
だとヨ、けっ!

まあ、たまのことだから合わせるがネ。
仏料理の晩餐はいつ以来だろう?
とっさには浮かばず、
調べたら一昨年の夏が最後だった。

BMしといた店に電話を入れたら
その夜は満席。
5日も逗留するってんで日にちをズラす。
そうして出かけた「ル・マルカッサン」。
店名は仔猪、いわゆるうりぼうだ。

護国寺門前で待ち合わせ。
習わぬ経を読みはせず、不忍通りを西へ歩いた。
目白台の坂を上り、18時開店の10分過ぎに到着。

ギュウギュウには詰めないけれど、
われわれで早くも満卓と来たもんだ。
予備知識はなくとも地域の人気店であることに
疑いの余地はない。

ドライの中瓶を注ぎ合い、グラスをカチン。
リエットを塗り込めた、
薄切りバゲットがアミューズ。
相方はフランスのシャルドネ。
当方はパスティスの水割りに切り替えた。

パスティスはアブサンの流れを汲む、
マルセイユ発祥のリキュール。
銘柄を訊くと今はリカールのみ。
水はカラフェで登場し、
お好きなように割ってくださいとのこと。
このとき気づいたがスタッフは男性独り。
シェフ兼パティシエ兼ギャルソン兼皿洗いだヨ。

客は10人、コレをワンオペでさばくんだ。
スゴいを超えて、ものスゲェな。
感心しながら氷入りリカールに真水を注ぐ。
直ちに黄濁していった

ギリシャのウゾ、トルコのラクは
無色透明につき、白濁。
薄い黄色のリカールやペルノーは黄濁し、
アブサンに至っては緑濁するのだ。

これはアルコール度数の高い酒に溶け込んだ、
アニス由来の精油成分が水でバランスを失い、
膜を作って光を乱反射させるため。

酒は酒として料理。
相方はホタテのテリーヌと仔羊のトマト煮込み。
当方はズワイガニのキッシュとウズラのファルシ。
それほど待たずにオードヴルが供された。
いっただきま~す!

=つづく=