藪がどんどん消えてゆく。
といってもご隠居の住まいの裏にある、
竹藪じゃございやせんぜ。
「砂場」「更科」と並び、
日本のそば文化の一翼を担う、
あの「藪」のことであります。
数年前「池之端藪蕎麦」が暖簾を下ろし、
この春には「浜町藪そば」が続いた。
実は J.C.、そばは色黒の藪系よりも
色白の砂場系、更科系を好むが
けして藪が嫌いなわけじゃなし、
古く良かりし老舗の閉業を
耳にするたびに心がチクリと痛み申す。
上野で所用を済ませ、さァ昼めし。
ビールがあれば、めしは要らないので
馴染みの立ち飲みに向かうと、
珍しくも隣りの「上野藪そば」に
いつもならあるはずの行列がない。
しばらく来てないな。
これも何かのお導き、入ろう。
帰宅後、調べたら最後の訪問は
2008年1月だった。
当店はそば屋には珍しく、
打ち場を囲むようにカウンターが
設えてあり、その隅に着いた。
ビールの銘柄が変わっている。
そりゃ、17年半も来なきゃ変わるわ。
瓶が最も苦手なエビス。
生は同じサッポロ系の白穂乃香。
白濁を伴う白穂乃香は好みじゃないが
なんぼか飲み易いので通した。
品書きにせいろうよりも
割安のさくらせいろうがあり、
お運びさんに訊ねた。
「さくらせいろうって
桜切りじゃないですよネ?」
「おそばが少な目になってます」
何でそれがさくらなのか判らんけど
そういうことかー。
白穂乃香のお替わりとともに
わさびいもを通すと大量に来た。
どんぶりではないが中鉢にたっぷり。
砕いた海苔の上に本わさびもたっぷり。
大和芋使用なのにかなり滑らかで
「池之端藪」のすいとろを偲ばせる。
さくらせいろうは分量がジャスト。
他店にも見倣ってほしいくらいだ。
菊正の樽酒をシャーベット状にした、
みぞれ酒を1杯いただき、
お勘定は4500円也。
満足度の高い午後のひとときを
過ごすことができました。
「上野藪そば」
東京都台東区上野6-9-16
03-3831-4728