2025年5月8日木曜日

第3792話 松戸と尾久がつながった (その1)

あれはひと月前のこと。
都電荒川線の小台から
今はさびれ果てた目抜き通り、
小台銀座を南下していた。

道筋を通り抜けたところで
1軒の町中華に目が釘付け。
餃子ハウス「北珍」だった。

ん? 「北珍」とな?
連想されたのはかつて棲んだ、
千葉県松戸市・上本郷に
今もある「大八北珍」だ。

その日の昼食は済んでおり、
数日後に舞い戻った。
店は年配の店主独りの切盛り。
70歳はラクに超えているだろう。

カウンター3席にテーブルが3卓。
先客は一人だけだった。
空いていた卓に着き、
キリンラガー中瓶を通すと
きゅうりの浅漬けが付いて来た。

まずは ”餃子ハウス” に敬意を表して
焼き餃子を発注してみた。
うん、なかなか。
続いてラーメンを麺半分でお願いすると
「難しい注文をするなァ」ー店主が一言。
(そうかなァ)ー言葉を飲み込む。

「やったことないけど、味はどう?」
「うん、美味しいヨ」
会計時に訊ねた。
「松戸の先の上本郷に『大八北珍』って
 あるんだけど、関係ありますか?」
「うん、あるヨ」
「そうか、やっぱりねェ」

店主によると彼の先代(亡父)が
「北珍」を開いたのは吉原の見返り柳そば。
そこの弟子がのれん分けして三ノ輪に開店。
松戸はそのまた弟子の店だった。

あとで判ったことだが
「北珍」は油そばの元祖という説がある。
J.C.には油そばを食べる習慣がない。
生涯で試したのはただ一度きり。
本郷三丁目の「とんちん亭」で
確か西暦二千年前後だったと思う。

これも何かの因縁だと、後日再訪。
食べてはみたものの、やっぱ合わないや。
最後に追いスープなんぞもいただいたが
ニンニクが強烈過ぎて
さしものニンニク好きもマイッたのでした。

「北珍」
 東京都荒川区西尾久4-1-11
 03-3893-2820