2025年6月16日月曜日

第3819話 旅の始めは 小倉から

旅に出た。
東京駅でのぞみに乗り込み、
向かったのは北九州・小倉。
♪ 小倉生まれで 玄海育ち ♪
無法松のふるさと、小倉は大好きな街だ。

ところが小倉の沖は響灘。
玄界灘は博多の沖である。
したがって松五郎は小倉生まれの博多育ち、
ということになろうか?

それはさて沖、もとい、さておき、
荷物をホテルに置き、真っすぐ旦過市場へ。
大正9年創業「小倉かまぼこ」で
カナッペと半熟たまご天を購入した。

カナッペはすり身に玉ねぎ・にんじんを混ぜ、
薄い食パンを巻いて油で揚げたもの。
市場の名物にもなっている。
これらは翌日の朝食にしよう。

袋をぶら下げ、繁華な魚町を歩く。
見覚えのある酒場は「酒房 武蔵」だ。
この店も古く昭和28年の開業。
12年前には元カノと
河豚刺し、鰯じんだ煮、串カツで
ビールと日本酒を飲んだ。

懐かしさの一歩手前で
こみ上げる苦い思い出に
言葉がとても見つからない、けど入店。
あいつは今頃どうしているのやら?
まりやチャン、歌詞をパクッてごめんヨ。

カウンターでドライ中瓶を発注。
スタッフはみな若い娘ばかり。
老舗っぽさには欠けるものの、
オジさんたちが歓んでるから
まっ、いいか。

鯛の昆布締めがとても好い塩梅。
たこ焼きを通してみたが
こちらは感心しなかった。
懐かしの串カツは、おう、これ、コレ。
豚肉がちょいと薄めで
しゃぶしゃぶと生姜焼きの中間くらいだ。
大阪は心斎橋の「明治軒」のそれに
似てないこともない。

地酒の天心はすっきり感に乏しく、
重みがあってしつっこい。
やはり九州では焼酎ということか?
お勘定は3200円也。

小倉に来ると北九州モノレールが走る、
平和通りの西側で飲むことが多い。
今宵は東側の鍛冶町・紺屋町を徘徊する。
いろいろ品定めをして
ビルの上のスナック「Tこ」のドアを引く。

「ウチは女の子いないけど、いいですか?」
「いいとも、女の子みたいなもんじゃん」
「あらァ!」
五十路に差し掛からんとする、
小柄なママ一人の切盛りである。

酒は久々のサントリー・リザーブ。
炭酸で割ってもらう。
客がまったく来ないので二人で歌い出す。
「裕次郎が好きなんですけど・・・」
「好きな曲は?」
「『赤いハンカチ』と『ブランデーグラス』」
「じゃ、2曲まとめて入れとくれ」
小倉生まれの彼女と楽しい2時間でした。

「小倉かまぼこ 旦過店」
 福岡県北九州市小倉北区魚町4-2-19
 093-531-5747

「酒房 武蔵」
 福岡県北九州市小倉北区魚町1-2-20
 093-531-0634