この朝はわりと早起きして出立。
列車は県庁所在地の大分を通り過ぎ、
臼杵へと走ってゆく。
駅前からバスに乗って臼杵郊外へ。
ご当地の名所、60体あまりの石仏群は
国宝に指定されており、
さほど興味は湧かないが
そこは旅先のこと、訪れてみた。
岩壁に刻まれた石仏は
磨崖仏(まがいぶつ)という。
多くの仏さまに頭を下げた。
昼食は石仏観光センターの「郷膳 うさ味」。
名物の臼杵たち重を所望する。
太刀魚の蒲焼き重のことで
臼杵は国内有数の太刀魚の産地なのだ。
ビールは嬉しいことにドライの大瓶。
重箱には柚子こしょうが添えられ、
ほかに大根たまり漬けと
しめじ・豆腐・油揚げの味噌椀。
見た目は鰻重そっくりなれど
味わいはずっと軽やか。
物足りなさを感じる向きもあろう。
レギュラー缶を追加し、お代は2830円。
スタッフに車を呼んで貰って町中に戻る。
二王座歴史の道の入口で降り、
武家屋敷や寺院の建ち並ぶ道筋を往く。
でもネ、なんだか綺麗にまとまり過ぎて
時代を感じさせてくれない。
早い話が小樽の運河沿いみたいなんだ。
臼杵城跡にやって来た。
往時は三方を海に囲まれた天然の要塞。
ふと見ると足元に石碑が一つ。
♪ 春は名のみの 風の寒さや
谷のうぐいす 歌は思えど
時にあらずと 声も立てず
時にあらずと 声も立てず ♪
日本人なら誰しも一度は
耳にしたことのある「早春賦」。
作詞した吉丸一昌の記念歌碑である。
42歳で早世した彼は臼杵の出身。
”賦”とは漢詩を歌うことを意味し、
舞台は信州・安曇野とされている。
ちなみに作曲は中田章。
臼杵駅へと歩き、
別府行きの列車に乗って大分へ。
チェックインを済ませたら晩酌どき。
夕まぐれの街に飛び出した。
=つづく=
「郷膳 うさ味」
大分県臼杵市大字深田833-5
0972-65-3333