2022年4月19日火曜日

第2996話 焦がしバターの舌平目 (その2)

落合南長崎の「エシャロット」。

舌平目は立派なサイズだった。

魚体の上にはカープル(ケイパー)と

パセポン(パセリのみじん切り)。

薄褐色のノワゼット・ソースをまとっている。

ノワゼット(ヘーゼルナッツ)に色が似ているため、

こう呼ばれるが俗に言う焦がしバターのことだ。

 

J.C.もたまに自宅でコレを作る。

でもサカナは常にエイ(カスベ)。

フランス本国ではエイが定番。

ソールに用いるのを初めて見た。

 

主菜は前菜以上にガルニテュール満載。

にんじん・ほうれん草・トマトは

ブイヨンで温めた感じ。

加えてマッシュドポテトに南瓜のフリット。

 

生ビールをお替わりし、

フォークを刺したレモンを搾る。

こんがりと火の通ったところに

焦がしバターが絡み、まことにけっこう。

久方ぶりのソール・ムニエルである。

 

ちなみにムニエールは粉職人の意。

素材に小麦粉をはたいて

焼くからこそのネーミングにつき、

素焼きの場合はムニエルと呼ばない。

 

魚料理にナイフを使わぬ主義ながら

骨付きの舌平目ではそうもいかない。

作法通りに骨を外し、キレイに平らげた。

 

皿下げに来たマダムに通したデセールは

クレーム・ブリュレ&エスプレッソ。

リムーザン地方の銘菓・クラフティ、

それも王道のサクランボ(米国産)が

リストにあったけど

タルト生地付きタイプだと持て余すので敬遠。

 

あらためて店内を俯瞰する。

5人組1、2人組2、9人すべて中高年の女性。

ハイソな奥様といった雰囲気などなく、

近所のオバちゃんたちの普段使いだ。

目視可能な限りではシュークルートと

ブッフ・ブルギニヨンが人気を二分していた。

 

すると、独りの若い女性が来店。

今夜の予約のためだが、あいにく満席。

レベルの高い料理に控えめな価格設定だから

地元の支持を得ているのもうなづける。

大通りが交差して落ち着かない町ながら

落合南長崎の住人はシアワセといえましょう。

 

「エシャロット」

 東京都新宿区西落合1-14-14

 03-3953-9986