有楽町で若尾文子の映画を3本観た。
目下、ビックカメラ階上の8階、
角川シネマ有楽町にて
若尾文子映画祭が開催中。
製作はみな大映である。
「雪之丞変化」(市川崑 1963)は
長谷川一夫の出演300本記念映画。
当作は何度も繰り返し製作され、
東千代之介や大川橋蔵も
雪之丞を演じており、
興行上、好成績を収めている。
御大の記念映画とあって
市川雷蔵・勝新太郎ご両人が
さほど重要な役柄でもないのに
おつき合い出演していて微笑ましい。
文子もそれなりの熱演ながら
女優陣で際立つのは山本富士子。
彼女には珍しいオキャンで
蓮っ葉な役を見事にこなしている。
大映社長・永田雅一との確執で
映画界を去ったことが何とも残念だ。
「卍」(増村保造 '64)の原作は
谷崎潤一郎の耽美的な作品。
いわゆるレスビアンものだが
大女優のヌードを晒すわけにもいかず、
観る者にイライラ感を募らせる。
相手役の岸田今日子は
文子に美貌じゃ及ばぬものの、
個性的にして卓抜な演技が
強く印象に残った。
「刺青」(増村保造 '66)もまた、
谷崎潤一郎原作。
小説は「刺青(しせい)」だが
映画では「刺青(いれずみ)」と
ルビがふられている。
監督の増村保造は梶山季之原作、
田宮二郎主演の黒シリーズ、
そしてTVドラマ、
山口百恵主演の赤いシリーズが
代表作ながら若尾文子とのコンビでも
相当数の映画を撮り上げている。
お艶(文子)の背中に大きく彫られた、
女郎蜘蛛が物語の核を成し、
多くの人間が命を落としてゆく。
出来のよい作品とは云えぬが
「卍」よりは肌に合った。
映画祭はさらに一週間ほど続き、
以後、おすすめの作品は「赤線地帯」
「華岡青洲の妻」「清作の妻」であります。