2024年11月20日水曜日

第3671話 地蔵通りの金目鯛 (その1)

かつての花街・神楽坂の北側に
地蔵通りなる商店街が走っている。
”地蔵物語”と記したペナントが
文京区・関口から新宿区・水道町にかけて
ズラ~ッと続いている。

本日の昼めしは地蔵通りの和食「魚谷」。
12時半に到着すると
店先に順番待ちが1人、5分で入店できた。
店主夫婦だろうか? 
2人だけの切盛りが客をさばいてゆく。

基本、ランチは2種類のみ。
その日は、金目鯛煮付け、
鮭と鯖の塩焼きだった。

鮭と鯖を一緒盛りにするのは珍しい。
両者の仲が別段、好いわけでもなさそうだが
敵対関係にはなさそうだ。
呉越同舟ということもあるしネ。

どちらも940円と比較的お手頃。
周りを見ると人気はキッチリ二分されていた。
カウンターは6席ほど、
入れ込みの板の間が4人掛け4卓。
靴を脱いで奥の4人掛けに独り着く。

OL・リーマンともに
若者と中年が入り混じっている。
女性の比率がちょいと高いかな?
みんな近くの会社勤めらしく、
近隣の住民はほとんど見当たらない。

金目鯛とドライ中瓶を所望する。
ビールをトクトクしていたら
アッという間に配膳された。
おっそろしく速い。

キャパがあまりないのに
客がどんどん入って来るから
迅速にこなすがための二者択一なんだ。

金目・鮭・鯖、サカナ嫌いはどないする?
そんなお客はハナから来ない。
何たって「谷」だもの。

大きい切り身の金目1切れに
出汁巻き玉子も1切れ。
切り干し大根に白菜漬けと
野菜たっぷりの味噌汁は
豚小間らしきが散見され、豚汁かな?
ごはんの盛りは大目だった。

いただきまっす!

=つづく=

2024年11月19日火曜日

第3670話 毅郎サンを偲ぶ、もとい、励ます会

当夜はTBSラジオ主催のパーティー。
「森本毅郎・スタンバイ!」
放送9000回記念・感謝の夕べ
であります。

放送が始まったのは1990年4月。
よくもまあ、長きに渡って続くものよのぉ。
1万回は固いな、ギネスブックかい?
番組も長生きだが御本人も長生き。
この人は簡単にみまがるタイプではない。

その1年後にスタートしたのが
「ウォールストリート情報」なるコーナー。
J.C.は毎水曜日にNYから電話出演し、
NYの株&為替とトピックスをリポートした。

今でも担当曜日違いのメンバーと
年に2度ほどNYリユニオンを開催し、
その模様を当コラムで紹介している。
パーティーにはメンバー全員が揃った。

会場は六本木五丁目の国際文化会館。
メトロなら六本木より麻布十番が近い。
登ると心臓バクバクの麻布鳥居坂にある。
此処は三菱財閥四代目総帥、
岩崎小弥太(弥太郎の甥)の邸宅跡。
ホテルにはない落ち着きが好もしい。

参加者は200名ほどで
ドレスコードはスマートカジュアル。
TBSのお偉いサンや来賓の挨拶が
ちょいと長かったが祝宴スタート。
十数年ぶりなのに毅郎サンは
覚えてくれていて固いハンドシェイク。
しばし談笑を楽しんだ。

うれしかったのはJ.C.の担当だったAD、
M沢A子女史との再会。
彼女には実によくお世話になった。
こちらは熱いハグ。
五十路も中ほどになったそうだが
お元気で何よりである。

こういう席では元来、飲むけど食べない。
殊に山口瞳著「礼儀作法入門」を読んでから
以前にも増して料理に手をつけなくなった。

パーティーのあと、
リユニオンメンバーのTBSスタッフ2名は
残務整理やOB会で来れなかったが
麻布十番の居酒屋「たぬ吉」で二次会。
2匹の信楽焼たぬきに迎えられる。

各自好きな物を飲み、好きな物をつまむ。
J.C.はドライのエクストラコールド2杯と
ばくらい(ホヤ&コノワタ塩辛)を
飲みかつ、つまみんで
お開きは22時を回っておりました。

「国際文化会館」
 東京都港区六本木5-11-16
 03-3470-4611

「たぬ吉」
 東京都港区麻布十番1-5-26
 03-3423-4434

2024年11月18日月曜日

第3669話 盟友と 忘年会の フライング (その2)

一丁目の「三州屋 銀座店」が閉じたあと、
唯一銀座に残った「三州屋本店」で
深酒に及んでいる。
料理は他に何か注文したかも知れないが
記憶が曖昧模糊として
われながら困ったものよのぉ。

3時間近く過ごしたろうか?
お勘定は2人で1万円とちょっとだった。
さんざっぱら飲んだのに
ここで帰宅するわれわれではない。

あらかじめ決めてあった2軒目は有楽町駅前、
交通会館地下の「徳田酒店」だ。
大阪に本拠を構える当店は
当欄で何度も紹介しているが常に単身での訪問。
友人と来るのは初めてである。

2人連れでもカウンターが好きなので
酔っぱらった2羽の夕雀は
暖簾をくぐって目の前の止まり木に止まる。
こちらはドライの大瓶アゲイン。
あちらは日本酒を継続の巻である。

品書きに好物の鯛わた塩辛を探すと
なぜか見つからない。
接客の娘に訊ねても
「鯛の塩辛はありませんよぉ」とつれない。
「いや、いや、何度も食べてるんだヨ」
「私は見たことありません」
「厨房に訊いてみてくれる?」

カウンターはほとんど厨房の前なので
板さんが直接叫んでくれた。
「すみませ~ん、今はお出ししてないんです」
「何でまたァ?」
「人気あり過ぎで生産が追いつかないんです」
「そんなことあんの? ハハハ!」
てな、こってした。

忘れもしない初訪問時、その鯛塩辛に鯛刺身、
そして鯛皮ポン酢と真鯛三昧を満喫した。
それを思い出し、鯛皮ポン酢を所望する。
大根おろしもたっぷりと
うむ、ウム、まいう~! である。

そのあとまた日本酒に移行したらしいが
記憶が飛んじまってる。
何せ、帰宅ルートすら思い出せない。
JR山手線で有楽町から日暮里?
メトロ千代田線で二重橋前から千駄木?
いまだに判明しないんですわ。

そろそろ始まる忘年会シーズン。
読者の皆さまに置かれましても
飲み過ぎにはご注意あそばせ。

「三州屋本店」
 東京都中央区銀座2-3-4
 03-3564-2758

「徳田酒店 有楽町店」
 東京都千代田区有楽町2-10-8
 東京交通会館 B1
 090-3483-6999

2024年11月15日金曜日

第3668話 盟友と 忘年会の フライング (その1)

この日は13時半に銀座にいた。
盟友・N田クンと早くも忘年会の一発目。
ハハ、フライングもいいところだネ。
銀座二丁目「三州屋本店」に赴く。

14時の待ち合わせだが15分前には入店。
前話で偲んだ半チャンと
最後に飲んだのも此処で
あの夜は無茶な飲み方をしたっけ・・・。

さて、先乗りした昼下がり。
さっそく通したドライ大瓶に
突き出しはマグロの煮たの。
血合いも入ってかなりのサイズだ。

赤貝酢をお願いすると、
こちらもバカデカいのが3個。
ぶっといヒモも3本ある。

時間通りにやって来た相方と
半年ぶりに麦酒のグラスを合わせた。
品書きを手渡すと西京漬けがいいと云う。
オネバに
「今日の西京漬けは何かな?」
「ええ~っ、私、ちょっと判らない」
「ん? 判んないときは訊いて来るのっ!」
ったく、しょうがないコだなァ。
好い店だがスタッフの教育はイマイチ。

別のオネバが
「目抜けですっ!」
「おう、ありがとさん」
目抜けはまたの名を赤穂鯛(アコウダイ)。
とても美味しいサカナで
コレがあるのに食わないヤツは間抜け。

当店に来れば必食のかにサラダを追加した。
大皿にずわい蟹の脚肉がたっぷり。
きゅうりもみとレタスもいっぱい。
自家製マヨドレが掛かっている。

大瓶4本がカラになり清酒に移行。
「三州屋」はどの店も酒は白鶴。
二合徳利を常温でお願いした。

N田と一緒だと、いつもピッチが上がる。
2人で徳利5本、
計1升は飲んだんじゃないかな。
日本酒の深酒は極力避ける今日この頃。
にも関わらず、痛飲に及んじまった。

=つづく=

2024年11月14日木曜日

第3667話 のみとも偲ぶ 銀座の夜

先月のことである。
かけがえのないのみとも、
馬主の半チャンに死なれてしまった。
知らせてくれたのは銀座のY子サン。
半チャンと何度か訪れたラウンジ、
「グリーングラス」のママである。

この春にはカレーのO野チャンに先立たれ、
今年はヒドい厄年になってしまった。
O野チャンとは何人かで
卓を囲むことが多かったが
半チャンとはほとんどサシ。
とにかく痛烈に痛い、そして哀しい。

Y子ママと馬主を偲びつつ、
飲むことになった。
20時開店のところ17時に開けてもらい、
サシ飲みと相成る。
店との関係はこうだった。

彼の知り合いがある日、
「銀座に『グリーングラス』って
 バーがあるんですが、まさか半サンが
 経営してるんじゃないでしょうネ?」
「何だって!知らないヨ、そんな店あるの?」
聞き及んで乗り込んだそうだ。

「グリーングラス」の先代オーナーが
菊花賞馬・グリーングラスの大ファンで
店名に拝借したとのこと。
何を隠そう、グリーングラスは
半チャンの父君の持ち馬だったのだ。

テンポイント、トウショウボーイと並び、
TTGと称されて一世を風靡した。
緑の刺客の異名を取った黒鹿毛(くろかげ)の
立派な体躯は今も目に灼きついている。

彼と最後に飲んだのも銀座。
「三州屋本店」、「スターバー」、
「グリーングラス」の流れでとことん飲んだ。

こんなこともあった。
第3651話 スチュワーデスやら遊女やら(その2)。
そこでチラリとふれた田原町のスナック「B」。
今は亡きママと3人でカラオケ大会状態にー。

午前3時にならんとする頃、
「キリがないからそろそろお開きにしよう。
 それじゃ最後に半チャン、前川清の
 『そして神戸』『東京沙漠』『噂の女』を
 3曲続けてお願い!」
奴さん、我が意を得たりと歌い上げたネ。

睡眠不足の翌日、彼は椿山荘へ出掛ける。
結婚披露宴に出席するためにー。
すると隣りに前川清夫妻がいたんだとサ。
互いの持ち馬の調教師が同じ人で
花嫁は調教師の娘さんと来たもんだ。

式では「そして神戸」と「東京沙漠」を
本人が披露し、大いに盛り上がったそうだ。
さすがに披露宴で「噂の女」は不味いわな。
単なる偶然とは思えない半チャンは
夢見心地で聴いていたそうな。

そのうちオネバのHるが出勤して来て
歌好きだった故人を偲び、
ママと3人でカラオケ三昧となりました。

「グリーングラス」
 東京都中央区銀座8-7-5 昌栄ビルB1
 03-3572-3110

2024年11月13日水曜日

第3666話 文化さば 食べて流転の 王妃かな

この日はまた神保町シアター。
チケットをゲットしたら腹ごしらえだ。
赴いたのは駿河台下「さいまや」。
以前、「とんかつ駿河」のあった場所で
’11年10月以来だから13年も前になる。

実は3週前にも訪れ、
銀ひらす西京漬け定食をいただいた。
そうして山崎豊子原作の「不毛地帯」を
観たのであった。

前回同様にドライ中瓶と
さば文化干し定食を通した。
当店は干物と豆腐が二本柱。
定食類は一律千円でしまほっけだけ1400円。
ごはん&鬼おろしはお替わり自由と太っ腹だ。

半身の文化干しに鬼おろし。
他には、小さな冷や奴(絹だが旨い)。
スルメイカの代わりに
切り干し大根使用の松前漬け風。
つぼ漬けたくあんに緑のキューちゃん風。
大根&その葉っぱとわかめの味噌汁。
盛りがかなり多い白飯。
満腹&満足をもたらした。

今日の「流転の王妃」(1960 大映)は
女優・田中絹代が監督。
満州国皇帝・溥儀の実弟、
溥傑に嫁いだ愛新覚羅浩の自伝が原作。
浩役(映画では竜子)は
存在感抜群の京マチ子。
溥傑(溥哲)がハマリ役の船越英二。

旧満洲の首都・新京(現長春)で
戦時中ながら平和な日々を送る一家は
ソ連参戦により悲惨な運命に見舞われる。
実話に基づいてはいるものの、
原作と異なる部分も少なくない。

悲劇はさらに続く。
浩と溥傑の長女・慧生(英生)が
恋人の学習院大同期生と天城山中で
自死(実際は無理心中)してしまう。
絹代監督は慧生の遺体を撮すものの、
多くは語ろうとしない。

この9日に始まったばかりの特集、
「映画に生きるー田中絹代」だが
「流転の王妃」の上映はあと3回のみ。
今日(水)12時  明日(木)14時15分 
明後日(金)19時15分
映画としてとても良くできており、
読者にも鑑賞をおすすめしたい。

「さいまや」
 東京都千代田区神田小川町3-14-11
 03-5244-5597

2024年11月12日火曜日

第3665話 乗り越しの おかげで昔を 思い出し (その3)

ジイさんのチャーシューメン着卓。
どんぶりを抱えたはいいが
歯もなけりゃ、入れ歯もないようで
フンガ、フンガと歯茎で噛んでいる。

外国人の青年が来店して
われわれの間に割って入った。
スマホでオバちゃんにシューマイを発注。
どうやら下調べをしてきたらしい。
何も付けずにパクリとやったが
そのうち醤油を使い出した。

お節介なJ.C.、ここで見るに見かねて
英語で話しかけた。
「ストレンジ・フード、ダヨネ?」
「エッ? イエ、美味シイデス」
「ドッカラ来タノ?」
「ポーランド、クラクフデス」
クラクフは彼の国の古都。
言わば奈良か京都みたいな存在だ。

「旅行カナ?」
「日本ニ友人ガ・・・」
「ガールフレンド?」
「イイエ」
「ジャ、ボーイフレンド?」
「オー・ノー! ともだち、ともだち」
LGBTの仲間でないことを主張するが如く、
色を成して否定されたが、ともだちは日本語。

初めての欧州旅行の帰途、
ウィーンからモスクワ行き列車に乗った際、
チェコのプラハとポーランドのワルシャワを
トランジットしたことや、ロンドン滞在時に
フラットのランドレディ(大家)が
クラクフ出身だったことなど語った。

「お勘定お願いします」
「こちらもお願いします」
立ち上がった彼の肩をポンとたたき、
「Have a nice trip !]
「アリガト、ゴザイマス」

かっぱ橋本通りを上野に向かって戻る。
ちょいと来ない間に通りの「キッチン城山」も
「ときわ食堂」も閉業していた。
心に淋しさだけが降り積もる。

先日「昔のパン屋で買ってます」(3635話)
紹介した東上野の「シミズパン」を通りすがる。
せっかくだから何か買っていこう。

大好きな野菜パンはすでに売切れ。
代わりに野菜サンド(ポテサラ&きゅうり)と
一つだけ残っていた三色パンを購入。
三色はこしあん・チョコレート・あんずジャム。

袋をブラ下げて歩きながら思い当たった。
「来集軒」も昭和25年創業なら
「シミズパン」も同じ年じゃないか!
こんな奇遇は世田谷や杉並など
山の手じゃ絶対にあり得ない。
上野・浅草ならではなのだ。
単なる偶然とは思えぬ男が一人、
かっぱ橋本通りに立ち尽くしておりました。

=おしまい=

「来集軒」
 東京都台東区西浅草2-26-3
 03-3844-7409

「シミズパン」
 東京都台東区東上野6-27-7
 03-3841-1862