2026年9月2日水曜日

第4166話 西浅草で穴子三昧

今宵は蕎歩とも・Mきと一献。
舞台は互いに便利なエンコの街で
「川井(旧あな太朗)」は
穴子料理と地酒が自慢の店だが
17時に入ったら19時には出てけ!
とのキツいお達し。

そこは温厚な性格の J.C.、
噴き出す不満を抑え、
甘んじて受け入れた。
もっとも2時間ありゃじゅうぶん。
文句などないけどネ。

浅草ビューホテルのロビーで
待ち合わせた。
ふ~ん、水玉模様のワンピースが
可愛いじゃないかー。
馬子にも衣裳とはこのことだ。

開店時間の17時ちょうど。
カウンターに横並んで
ドライ中瓶を注ぎ合い、カチン。
相方の要望を踏まえながら
料理の品定めをしてゆく。

皮切りは何はともあれ穴子刺し。
長崎県・対馬の産である。
一時代前の東京で穴子の刺身は
まず食べることが出来なかった。

韓国あたりじゃ日本に先駆けて
各所で食べられたがネ。
殊に釜山の海岸沿いは
穴子刺しの宝庫。
これも対馬海域での漁獲だろう。

身肉の弾力がコリッコリ。
煮てよし、揚げてよし、
焼いてよし、生でさらによし。
穴子は実に美味しいサカナだ。
J.C.的には鰻を凌駕する。

魚沼の深雪なすと
青森のさくちゃんトマトが
いずれもみずみずしく、
口中に涼風をそよがせた。

ここで三重の銘酒、
而今の冷たいのに切り替える。
甘口ながら奥行きのある酒は
 ”じこん” と音ずる。

子持ち鮎有馬煮のアタマを
ガブリとやった。
骨が硬くて咀嚼するも
ノドを通すことが出来ない。
仕方なくティッシュに包み、
空いた皿の片隅に置く。

お次の穴子肝煮が白眉。
アッサリ煮上がり、滋味いっぱい。
夏野菜の冷やし鉢も好かった。
深雪に加え、枝豆、かぼちゃ、
さつま芋、新生姜が鉢に
ひんやりと盛り込まれていた。

麦焼酎発祥の地、
壱岐の放下著ロックに移行。
これは ”ほうげじゃく”と読む。
穴子と無花果の揚げ出し、
奄美大島産猪の金山寺味噌煮と
快調に食べ進んだ。

そして締めのにぎりは
大阪の金太郎いわし、千葉のコチ、
再び対馬の煮穴子。
地図上の隣り同士、
壱岐の焼酎と対馬の穴子が
仲良く目の前に並んだ。
はるか750年もの以前、
元寇に蹂躙された悲劇の島々です。

「浅草 川井(旧あな太朗)」
 東京都台東区西浅草2-26-1
 03-5828-3132

2026年9月1日火曜日

第4165話 銀座の片隅 BDディナー (その2)

銀座のはずれの「ビストロ シンバ」。
赤ワインがちっとも開いてくれない。
開いてもこの程度なのかな?
モレ・サン・ドニは
もっと香るハズだけどなァ。

長良川の鮎リゾットが調った。
カワウが一度呑み下した鮎だろう。
アタマまでカリッと揚げられ、
枝豆とゴーヤも散見され、
スダチの爽やかさが引き締める。
尾頭もきれいに平らげた。

続いては当店の名代、
ブイヤベースである。
この料理に必須のサフランを
使わないのが特徴の逸品は
スープ・ド・ポワソンで仕上げる。

皿に並んだ魚介は車海老に
サカナが真鯛・平目・ヒラスズキ。
ハハハ、これじゃ真っ平ヒラだヨ。
でも、煮込まれずに
炙られたサカナたちがイマイチ。
それをカバーするスープは
素晴らしく存分に飲み干した。

モレを何杯かお替わりしたが
相変わらず閉じたまま。
自閉症じゃあるまいし。
他の何かに切り替えようと
思ったほどだ。

BDディナーの締めくくりは
ブレス産鳩である。
フランス南部のブレスは
ジビエの宝庫として名高く、
淡水魚の漁獲量も多い。
いわゆる美食の都なのだ。

さすがでしたネ。
雉やほろほろ鳥の肉は色白だが
鳩や鴨は赤身で赤ワインと好相性。
ガルニテュールのじゃが芋が
とてつもなく甘い。
雪の下で一冬越したおかげである。

ピーマンのような
獅子唐のような緑の野菜が辛い。
ハハ~ンと思い、
ギャルソンに訊ねた。
「神楽南蛮です」
「やっぱりネ、ウチの冷蔵庫にも
 眠ってるんだヨ」
「エッ、ホントですか?」
新潟の友人からのいただき物だ。

ブレス鳩はさすがだったが
惜しむらくは今夜のモレが
完全に力負けしている。
とかくこの世はままならぬ。

われわれはデセールを好まない。
カフェも飲まずに
お勘定は金27400円也。
思ったより安く上がった。
でも、グラスにちょびっと
注がれたワインが1杯2千円は
いかがなものでありましょうや?
満足も中くらいなり真夏日の夜
でありました。

気を取り直しての飲み直しは
ホテルのラウンジにでも
昇ってみましょうかー。

「ビストロ シンバ」
 東京都中央区銀座1-27-8
 03-6264-4218

2026年8月31日月曜日

第4164話 銀座の片隅 BDディナー (その1)

今年も8月がやって来た。
8月の恒例行事に
バースデイ・ディナーがある。
J.C.よりは若いが
今もアパレル業界で
辣腕をふるうT子サン。
彼女の生まれ月が8月なのだ。

ここ数年の舞台は
浅草の「弁天山美家古寿司」に
固定されていたが協議の結果、
今夏はフレンチで行こうとなった。

待ち合わせたのは
メトロ銀座線・京橋駅改札。
向かったのは京橋公園を臨む、
「ビストロ シンバ」。
銀座一丁目の東端に位置し、
都心環状線の向こうは新富町。
銀座のはずれの片隅である。

黒ラベルの生を2杯。
「片方泡少なめだと嬉しいな」
「ハイ、ボクも少なめが好きです」
ギャルソン(男性給仕)は
ナイス・ガイだった。

択んだ料理はかくの如し。
山形産馬肉のタルタルw/丸茄子
長良川・天然鮎のリゾット
シンバ特製ブイヤベース
フランス・ブレス産鳩のロースト

最初にアミューズが運ばれる。
1片の生真鯵を大葉でくるみ、
口元に運ぶ。
鯵は良質ながら料理人が
奇をてらった感あり。

ワインに移行する。
当店にリストは無い。
くだんのギャルソンによる、
説明というか・・・、
彼と相談しながら決めてゆく。

カベ・ソーは苦手だから
ピノ・ノワールを指定すると
モレ・サン・ドニ '18 の提示。
オディフレなる造り手には
初めてお目に掛かった。

ん? グラスに注がれる絶対量が
少な過ぎじゃないかい?
取り合えず、カチン。
いえ、カチンと来たのではなく、
合わせたグラスの音です。
香り、舌ざわりともに
イマイチだった。

けっこうな量の馬肉タルタルは
実山椒のパンチが効いている。
なぜか、殻付きハマグリが1個。
セルヴーズ(女性給仕)に
この意味を質すと
馬肉はハマグリ出汁とのこと。

何だって馬に貝出汁なんだ?
まっ、不味くはないが
さほど効果を発揮してもいない。
それでも山形ホースの赤身は
なかなかの食味であった。

=つづく=

2026年8月29日土曜日

第4163話 歓びアーカイブ 第35回

11年前に何度か通った、
巣鴨駅そばのワインバー。
もっぱらランチでの利用だったが
当時は仕事をかかえており、
ビールを控えたのでした。

2015年12月23日水曜日

第1257話 グッと巣鴨がイカすなア (その2)

JR巣鴨駅から
徒歩2分の「プチ・ポワ」。
注文したコンフィが来る前に
野菜たっぷりの熱いスープが運ばれた。
暖冬とはいえ、この時期にありがたい。
スープはサラダとの二択だが
いつもスープを択ぶ。

サイドにはバゲットが
2片添えられている。
空腹だったこともあり、
スープとともに食べ終えた。
お替わり可能ですしネ。

いつものことながら
スープとメインの間隔が空く。
この時間が少々手持無沙汰で
時間の制約がある、
OLやサラリーマンには
使い勝手がよくない。
したがって、いつ訪れても
混雑していることがない。

鶏もものコンフィがようやく整った。
プックリ感が食欲をそそる
骨に沿ってナイフを入れ、
大き目の切り身をパクリ。
ウ、ウマい!
本格的なビストロの水準に達している。
バゲットをもう1片所望した。

食後のコーヒー・紅茶は
めったに取らないので
食べ終えたらすぐにお勘定。
次回は海南鶏飯を食べよう。

翌々日、再び「プチ・ポワ」に参上。
もちろん目当ては
ハイナネーズ・チキンライスだ。
注文の際、浮気心につまづいて
よほど本日のカレー、
ポーク・ヴィンダルーと思ったが
結局は薬局、初心貫徹の巻。

本場・シンガポールのそれとは
多少ルックスが異なるものの、
日本女性のデリカシーが皿に表れている。
香菜(パクチー)も添えられて
チリとダークソースは不在なれど、
しっかり楽しめるワンプレートだった。

フレンチ・ワインバーだから
ビストロ系の料理が主体でも
東南アジアやインドの風そよぐ
「プチ・ポワ」は
読者、殊に女性には自信を持って
オススメできる佳店であります。

=つづく=

「プチ・ポワ」
 東京都豊島区巣鴨1-1-16
 03-3944-8508

=本日追記=
店名の「プチ・ポワ」は
グリーンピースのこと。
現在はランチをやめて
夜の営業のみです。

2026年8月28日金曜日

第4162話 もりを手繰りに「まつや」再訪

翌週、「まつや」に舞い戻った。
池波正太郎翁は
「酒を飲まぬくらいなら
 蕎麦屋には入らぬ!」
とまで言い切ったが
入ればちゃあんと
そばを手繰っている。

先週の J.C.は酒を飲んだが
そばは食べなかった。
これでは翁の
「これ J.C.、そちもなかなかの
 阿呆よのぉ!」
そんな誹(そし)りが
耳元に届いて来そうだ。
くわばら、くわばら。

でもって今日は
いただきますとも。
よって再訪と相成った次第なり。

開店前の10時50分に到着すると
すでに8人待ち。
猛暑日になることは確定的。
あたる陽射しが半端ではない。
待ってるだけで一汗かいた。

そのせいもあって
ドライ大瓶に精一杯、
ノドを鳴らされた。
J.C.にとって世の中に
これ以上美味いものは皆無。
この瞬間のために日々、
生き抜いていると言っても
過言ではない。

瞬く間に2本目突入。
この時点でお通しのそば味噌は
まだ手付かずのまま。
2本目は残されたそば味噌と
今日もまた葉わさびで愉しむ。

続いて菊正常温と
やきとりを塩でお願い。
もも肉6片に白ねぎ4片。
脇には粗塩、練辛子、
レモンスライス、パセリ。
美味いねェ、嬉しいなァ。

菊正は1合にとどめ、
すみやかにもりを通した。
100円だか150円だかの
有料生本わさびもちゃんと
お願いしてネ。

しなやかなそばに
甘みを内包したつゆ。
かなりの人気を誇るそばゆえに
美味くないわけがない。
かといって特段に
舌を唸らせるのでもない。

最後に当店謹製のゆず七味を振り、
満足して湯桶のそば湯を注ぐ。
お勘定は津田梅子女史1枚で
小銭のおつりを頂戴した。

淡路町からメトロ丸の内線に乗る。
東京ビルTOKIAの地下に潜伏して
飲み直しと参りましょう。
どうして来る日も来る日も
こんなに飲むんでしょう。
肝硬変には気を付けないとネ。

「神田まつや 本店」
 東京都千代田区神田須田町1-13
 03-3251-1556

2026年8月27日木曜日

第4161話 独り蕎麦屋で 蕎麦も食わずに 

老舗の日本そばを食べたくなった。
そんな店が集中しているのは
東京広しといえども第一に
JR神田駅の北と南だろう。
神田須田町「やぶそば」「まつや」。
日本橋室町「砂場」が御三家だ。

この日は行列覚悟で「まつや」へ。
案の定、順番待ちが何人かー。
あまり大人数だと回避するが
11時45分に並び始め、
12時05分には着卓と相成った。
一応、上首尾と云えましょう。

ドライ大瓶にそば味噌のお通し。
品書きに目を通すと
好物の粒うにが消えている。
お運びのオネバさんに
「粒うにはもう無いんですか?」
「ええ、そうなんですのよ。
 業者さんが辞めてしまってー」
これは残念至極。
菊正との相性も好かったのになァ。

それではと、これまた好物、
葉わさび(550円)をお願い。
山葵の葉と茎のおひたしである。
あれば頼むのわが必注品だ。

大瓶は2本目に突入。
青大豆冷し豆腐(715円)を
追注に及ぶ。
さほど青々しくはないが
大豆の旨さはじゅうぶん。
あしらいのおろし生姜と
刻み茗荷のアクセントが冴え渡る。

菊正(990円)に切り替えた。
当店に冷酒の用意は無く、
常温かお燗の二択。
この暑さじゃ必然的に常温だ。

すぐに1合は底を尽き、お替わり。
何かもう1品つまみが欲しい。
今は昔、ワイン仲間の女性二人と
訪れた際、もりのあとで
親子丼を分け合ったことがあった。
当時から当店の親子は女性に
絶大なる人気を誇っていたのだ。

それを思い出して
親子煮(1430円)を発注。
菊正ともども存分に
楽しんだはいいが
哀れ、J.C.のストマック、
そばを食べる余裕が失われていた。

敬愛する池波正太郎翁は
「酒を飲まぬくらいなら
 蕎麦屋には入らぬ!」
とまで断言された。
翁は手酌酒のあと、
むろんのことに
蕎麦を手繰られたであろう。

蕎麦屋酒における不肖の弟子は
蕎麦屋に入って蕎麦も食わずに
出て来たのでありました。

「神田まつや 本店」
 東京都千代田区神田須田町1-13
 03-3251-1556

2026年8月26日水曜日

第4160話 馬に蹴られ 生に癒され

行きつけそば屋に蹴られた翌日。
ブランデーの調達に湯島へ。
その前の昼食で苦労した。
気に入り店はみな順番待ち。
カレーの老舗「デリー」なんざ
10人以上の行列と来たもんだ。

広小路の交差点そばに以前、
一度だけ利用した居酒屋、
「祭家 夢吉」がある。
ガラス越しに中を覗いて
空席を確かめ、ステップ・イン。

日中はハッピー・アワーにつき、
お飲み得のドライ中ジョッキを。
メニューにサッと目を通し、
霜降り馬刺し(980円+)に
白羽の矢を立てた。

2杯目を楽しんでいると
馬刺しが着卓。
ゲッ! 何だヨ、コレ?
何処が霜降りなんだヨ!
霜降りどころか赤身でもなく、
ずいぶん黒ずんじまって
これじゃ黒身だぜ!
オマケに半解凍のルイベ状態。
馬いワケ、もとい、
旨いワケなど、あるハズもない。

最初の一皿に蹴り飛ばされた思い。
昨日の行きつけといい、
何か最近、悪いことしたかな?
チューブの生姜とニンニクに
不満ながらも助けを借りて
咀嚼&嚥下の繰り返し。
舌が味わういとまとて無し。

厨房の責任者を
呼びつけたくなったが
どうにか思いとどまった。
生だけはいつも通りの旨さで
馬に蹴られた我が身を慰め、
癒してくれる。

ざるそばも半分食べ進んだが
哀れ、向こう正面で
落馬の憂き目を見る。
これなら市販の乾麺を
茹でたほうがよほどマシだ。

前回はそれなりの店と思ったが
ここまでヒドいとはー。
吉と出るのが夢と終る、
「夢吉」だったのだ。

こりゃ、どう考えても
ネバー・カム・バック。
口直しの飲み直しにどこぞへ
行かねばならぬ、
行かねばならんのだァ~!
「大利根無情」の平手造酒を
気取って店をあとにしたのです。

「祭家 夢吉」
 東京都文京区湯島3-40-7
 03-6284-4081