2026年10月14日水曜日

第4203話 根津の仇は 根津で討つ (その1)

前日、図らずもヒドい目に
遭わされた根津の町。
無沙汰をしてる間に
店は変わってしまうものなんだ。
そこでもう1軒、
気になる店を思い出した。

裏通りにひっそりと佇む、
日本そば屋「鷹匠」である。
訪れたのは今世紀初頭、
すでに四半世紀も前だ。

暖簾を潜って細い通路を進み、
玄関の引き戸を引く。
あれっ? 
カウンターなんてあったかな?
2~3席しかないところで
先客が日本酒を飲んでいる。

「テーブルとどちらでも・・・」
言われて懐かしの奥に進む。
ビールは苦手なエビスのみ。
えいや! とばかりに
清水の舞台から飛び降りた。
実に十数年ぶりのこと。
ふ~む、以前より多少なりとも
飲み易くなったかな?
気のせいかも知れんけど・・・。

小鉢の突き出しは
えのき&切り昆布の炊いたの。
つまみながら品書きに目を落とす。
イの一番に惹かれたのは
酒肴盛り合わせ
(玉子焼き・板わさ・漬物など)
 1200円
即、発注の巻である。

玉子焼きに大根おろし。
板わさには少ないながらも本わさ。
漬物が充実している。
切りいか&人参の松前漬け風、
わかめ&おかか煮、大根甘酢漬け、
白菜浅漬けの計4品。
そして青唐を練り込んだ甘味噌。

これじゃ日本酒に行くしかない。
鷹勇というのがあり、
先刻のお運びさんに
「これは”ようゆう”?
 それとも”たかいさみ”かな?」
「”たかいさみ” です」

「まさか『鷹匠』さんで
 作らせてるんじゃないでしょ?」
「開店のときに全国のお酒で
 ”鷹”の字がつくのを
  探してたら鳥取にありました」
「じゃあ、味じゃなくて名前で
 択んだわけネ?」
「いいえ、とっても
 美味しかったんですの」

ふむ、なかなかに味わい深い。
酒肴たちもこの酒に合わせて
作られているのだろう。

=つづく=

2026年10月13日火曜日

第4202話 人生最ヤワのカニチャーハン

日医大付属病院で眼科の定期健診。
4カ月に1度のことだが
眼の方はもういいんじゃないかと
自分では思っている。

院外薬局で目薬を1本だけ調達。
その際、薬局の女性に
「それでは今後も朝夕さして下さい」
「はあ~っ!  朝夕ですか?」
「そうですよ」
「ここ1年半、朝だけしか・・・」
「ええ~っ!」
と相成った。

今まで院内で調達していたが
そんな説明聞いてないぜ。
おそらく医師の言葉を
聞き洩らしてたんだろうな。

道理で目薬がだいぶ余るわけだ。
でも、それで結果変わらずなら
このまま1日1度で押し通そう。
目薬でも飲み薬でも
少ないに越したことはない。

さて、昼めし。
ふと思い、近くに棲んだ頃は
何度かおジャマしたものの
しばらくご無沙汰している
根津の中華「オトメ」へ。 

10年ほど前、お運びのコに
「オトメは何か意味あるの?」
彼女応えて
「判んないですけど
 昔は『オトメパン』っていう、
 パン屋さんだったんです」
「ふ~ん、そうなのネ」
「それをお爺ちゃんが勝手に
 中華に代えちゃってー」
「そりゃ困った爺ちゃんだ」
「ホントですよ」
このコはおそらく孫娘だろうな。

以前はまずまずだったが
その後、ガクンと味が落ちた。
今日も別段、期待はしていない。
黒ラベル中瓶を通し、
今まで気づかなかった
カニチャーハンを初めて発注。

サイドの清湯は悪くない。
ところが肝心の炒飯に問題発生。
まず見た目がベチョベチョ。
米の粒が立ってないんだ。
当然、食感も極めて悪し。

ハッキリ云って蟹炒飯と
蟹雑炊の中間状態だネ。
具材は質の悪いカニ缶に
玉子・しいたけ・竹の子・小ねぎ。
人生最ヤワのカニチャーハンに
レンゲも止まり、完食能わず。

目前の卓ではオッサンが3人、
昼から紹興酒で盛り上がっている。
会話がちと五月蠅いんで
注意してやろうと立ち上がった。

すると驚いたことにうち一人が
先日、盟友・N田とともに
鼎飲に及んだO切でやんの。
後ろ姿だから気づかなかったが
彼らは中学の同期との由。

まっ、奴も文京区民だから
大した偶然じゃないけど
秋深し酒は静かに飲むべかりけり
じゃないのかえ?
えっ、O切クンよっ!
やれやれ。

「オトメ」
 東京都文京区根津2-14-8
 03-3821-5422

2026年10月12日月曜日

第4201話 また浅草に 足が向き

金曜日のコラムについて
大田区在住のS村サンから質問。
「美家古寿司」四代目、
わが師匠の教えの一つ。
小肌にぎりのでんぐり返し
What is This ?
でありました。

半世紀近くも以前のある夜。
往時のGF、八戸生まれのE子が
「光りモノが苦手だから
 小肌はイヤなの」
コレを聞いた四代目。
絣模様の皮目を内側にして握り、
彼女の前にソッと置いた。

何食わぬ顔で頬張ったE子。
「美味し~い!」
すかさずお替わりと来たもんだ。
してやったりの親方の笑顔を
昨日のことのように思い出す。

それはそれとして
最近はよく浅草に足が向く。
20年以上も前、
自著「浅草を食べる」のために
昼夜を問わず、この街に通った。
往時ほどではないにせよ、
下町愛がよみがえったかの如くだ。

この日もそうだった。
谷中よみせ通りから乗った、
台東区のコミュニティバス、
めぐりんを竜泉で降りる。

ステュワーデスの聖地、
飛不動から千束を抜け、
観音裏を経てひさご通り。
そろそろどこぞへ入らねば。
久しぶりに「みずの」に
顔を出してみようかな?

「神谷バー」ほどではなくとも
やはり浅草のランドマークの一つ、
お好み焼き「染太郎」の隣りに赴く。
先客は一人。
彼の背中を掠めてカウンターの奥へ。

当店には何度かおジャマしているが
常に娘のY生チャンの出勤日。
母上には初めてお目に掛かる。
ドライ中瓶をトクトクやって
択べるおばんざいから
マカロニサラダを通す。

そうしておいて
来れば頼むの会津産馬刺し、
フタエゴを所望。
特製の辛味噌が添えられるが
にんにくスライスもお願い。
フタエゴはいわゆるバラの部位で
ロース同様に好物なのだ。

壁に信州・小布施のシャルドネを
見つけて試してみた。
ボトルを拝見すると
品書きはシャルドネでも実際は
ソーヴィニヨン・ブラン。
まずまずながら1杯にとどめ置く。

中瓶に戻って赤貝醤油漬けをー。
まぐろでん、赤貝でん、
生モノをヅケにするのは賢い方法。
J.C.も自宅で刺身類が
余ったりすると
ヅケにして翌日また楽しむ。

滞空1時間で切り上げ、
お勘定は4千5百円ほど。
女将さんに玄関まで送って貰い、
「Y生チャンによろしくネ」
「は~い、伝えます!」
はて、2軒目はいずこへ?
銭形平次よろしく、
胸に思案の空を見上げた。

「みずの」
 東京都台東区西浅草2-2-1
 080-6192-3187

2026年10月10日土曜日

第4200話 歓びアーカイブ 第42回

京王線・笹塚の青果店で
たまたま見つけた隼人瓜。
そのフレッシュな美味しさに
痺れたことでした。

2011年12月9日金曜日

第202話 久しぶりだネ 隼人瓜

笹塚観音通りの「常盤食堂」に赴いた際、
近所のの青果店で珍しいものを見つけた。
隼人瓜(はやとうり)という瓜で
実に5年ぶりの再会だった。
最後に見たのは水上温泉近くの朝市だった。

あのツアーはヒドかったなァ。
クラブ・ツーリズムの
秩父夜祭を観る1泊2日のツアー。
夜祭は好かったけれども
そのあとがいけまへん。
あろうことか宿が水上と来たもんだ。
バスは延々と走り、露天風呂のある宿に
着いたのは翌日の午前1時。
水上よりよっぽど近い東京に
戻ったほうがなんぼかマシだったぜ。

それはそれとして笹塚の隼人瓜を
ただちに買って帰り、浅漬けにして食べ、
舌先に涼を呼ぶシャッキリ感を堪能した。
その前の出会いは10年以上になろう。
散歩の途中、葛飾区・青戸の民家に
実をつけているのを発見。
中川を臨む民家の塀の外に
垂れ下がる隼人瓜を見て
無意識に周りを見回した。

あたりに人影はない。
ってことは目撃者がいないことを意味する。
これはもう完全にコソ泥の心理。
あるいは我慢ならなくて
立ちションに及ぶ酔っ払いの心理ですな。

蜜柑や柿ならいざ知らず、
隼人瓜なんて誰も知らんだろうし、
ましてや採って食おうなんて
酔狂な輩は皆無であろう。
(遠回しに罪を正当化している)

でもって駅前に戻り、
コンビニで飲みたくもない
おーいお茶を購入する。
もいだ瓜を入れる袋が必要だったのだ。
犯行現場に再び現れ、
色ぶりのいいヤツを三つばかり失敬した。
どちらサンのお宅か存ぜぬが
盗んだのはこのワタシです。
すでに時効成立とはいえ、
その節はスイマセンでした。

早いとこ現物を見せろ! ってか?

はいコレです

スライスして一晩浅漬けにしたのがこちら。

塩漬けの実山椒を散らしてみた

もちろん山椒がなくても構わないし、
大葉の千切りなんかは相性がよろしい。
スライスは微妙に厚さや形状を変えると
食感のヴァリエーションが楽しめる。

隼人瓜はアフリカや南米でもポピュラーな野菜。
日本へは真っ先に鹿児島県に渡来した。
薩摩隼人に因んでのネーミングとなった由である。
八百屋のオジさん曰く、今回のは千葉産とのこと。

同じ八百屋で赤かぶも買ってきた。
こちらは甘酢に漬ける。

皮の色が酢に溶け出して真っ赤

隼人瓜と赤かぶを食べ比べてみた。
迷わず軍配を挙げたのは隼人瓜のほうでした。


=本日追記=
早いものであれから15年。
その間、隼人瓜に出逢ったのは
ただの2回のみ。
とても稀少な瓜なのでしょう。

2026年10月9日金曜日

第4199話 飲んだくれて浅草 (その2)

浅草随一の江戸前鮨店、
「弁天山美家古」に横並び。
相棒はつまみを満喫したいと云う。
その旨、六代目親方、
ダイちゃんに伝えると、
出た出た月が、もとい、
出た出たつまみが、続々とー。

以前はこんなに揃ってなかった。
六代目は若いんだねェ。
まだ五十そこそこだもの。
あれこれ試行錯誤を
重ねた結果だろう。

J.C.の江戸前鮨の師匠は
先々代の四代目。
この人にはかけがえのない、
多くの江戸流儀を習った。

まぐろ赤身の超薄切り
小肌にぎりのでんぐり返し
トロから食う奴は愚の骨頂
わさびを醤油に溶かすなかれ
いくらは酒の肴にちょっとだけ
納豆巻き・新香巻きは家で食え!

思い出していて懐かしさに
目頭が熱くなり、
あやうく落涙しそうになった。
いえ、これはわさびが
効いたのでした。

宮城の浦霞に切り替える。
出て来たつまみは
昆布&おかか煮
まぐろ赤身&海苔佃煮
北寄貝&赤貝ひもぬた
平目煮凝り 穴子白焼き
炙り〆鯖 戻りかつお刺し

相方は美味しく感じると
ばんたび拍手までしている。
ほんとだネ、にぎり以外の
「美家古」の味を堪能した。

福井の伝心にスイッチ。
冷酒はみな 1.5合の徳利入り。
すぐに浦霞に戻す。
いえ、伝心に不満はないけどネ。

4本ほど空けたところで
にぎりに移行したものの、
平目昆布締めと車海老は
覚えてるが他は記憶に無い。
計4~5カンほどつまんだら
また徳利のお替わり。

したたかに酔った。
こんな飲み方をしたのは
久しぶりのことだ。
お勘定は2万7千円ほど。

夜の街に出たが
その夜はまだ終らない。
田原町の「The Auld」に流れた。
馴染みのスナックの跡に出来た
ブリティッシュ・パブだ。
Auld はスコティッシュで
イングリッシュの Oldと同義。

入口近くのバーカウンターは
変わらないものの奥は一変。
トイレだけが昔のままで懐かしい。
はばかりに往時を偲ぶ秋夜長

ここでもホワイトレディと
サイドカーまで覚えちゃいるが
あとは忘却の彼方。
しかし、N美も強くなったもんだ。
J.C.の向こうを張って
ここまで飲める女なんて
手持ちの駒では彼女一人だけ。

「神谷」の電氣オールドで始まり、
「The Auld」のカクテルで締めた。
Old から Auld、
イングランドからスコットランドに
旅した気分の浅草の夜でした。

「弁天山美家古寿司」
 東京都台東区浅草2-1-16
 03-3844-0034

「The Auld」
 東京都台東区西浅草1-7-3
 志津野ビルB1
 03-5830-7100

2026年10月8日木曜日

第4198話 飲んだくれて浅草 (その1)

最初に白状してしまうが
この日は飲み過ぎた。
いや、飲み過ぎどころじゃない。
完全に飲んだくれてしまった。
相棒は大雨に見舞われた、
内房の雨女・N美である。

ひと月前。
小雨に煙る隅田川を眺めつつ、
イタめしを食べたときに
鮨屋に連れてゆく約束をした。
それがこの日で
さいわい東京の雨降り連続記録が
途絶えた日でもあった。
雨を止めたのが雨女かえ?
奇怪なこともあるもんだ。

前回同様まずは「神谷バー」へ。
あのときは J.C.の必食アイテム、
蛍烏賊沖漬けを食べさせるために
1階で飲んだが
此度は2階に上がった。
蛍烏賊は1階限定だからネ。

ドライ大瓶を注ぎ合って乾杯。
ビールをチェイサー代わりに
当方、電氣ブランオールド。
相方、電氣ブランサワー。
1階ならフード無しで構わぬが
2階はそうもいかない。
苦肉の策で枝豆。
これから鮨を鱈腹食うからネ。

話題はもっぱら
NY時代のエピソード。
話がワインから食後酒に及び、
デンマークのチェリーブランデー、
ピーター・ヒーリングに及んだ。

そう言えば「神谷」には
この酒を使ったカクテルがあり、
電氣ブランFIXという。
味見させてやった。

エニウェイ、1時間ほど過ごし、
開店の17時には
「弁天山美家古寿司」に赴く。
つけ台の一番奥に着き、
再びドライを注ぎ合う。
本日二度目の乾杯。

此処へ来ると突き出しを
少しつまんだら即刻、
にぎりに移行する。
今日はN美がにぎりの前に
いろいろつまみたいとのたまう。
いいでしょう、いいでしょう。
思う存分、食べとくれ。

=つづく=

「神谷バー」
 東京都台東区浅草1-1-1
 03-3841-5400

2026年10月7日水曜日

第4197話 宮崎女 宮崎鰻に 感極まれり (その2)

荒川区・小台駅前「あら川」。
何枚も重なる品書きを
丁寧にめくってチェックする。
惹かれたのは新仔鰻だ。

国産新仔入荷いたしました
本日は鹿児島・宮崎・愛知産です
鰻重 蒲焼き 白焼き
6500円 税込み
入荷したばかりの国産養殖鰻です
柔かさが特徴です
一度、ご賞味下さいませ!!

こうまで言われちゃあネ。
まっ、言われなくとも
心に決めていたけどネ。

丸々1尾で来るに相違あるまい。
J.C.は少食だが相方も
バクバク食べるタイプではない。
1人前のシェアで合意した。

待つこと20分。
その間、金鵄のお替わり2回。
調った鰻重は見るからにつややか。
こんな姿の鰻が不味いワケがない。

蒸し・焼きの塩梅よろしく、
たれの甘・辛も申し分無し。
接客のオニイさんに
「今日の新仔は何処の産?」
「ハイ、本日は宮崎です」

黙って聞いていたK子の腰が
ピョコンと浮いた。
いや、実際に浮きはしないが
浮いたように見えたのだ。

そうだよねェ。
はるばる東京にやって来て
ふるさとのウナ助に
バッタリ出逢うなんてなァ。
単なる偶然とは思えないもんネ。

あらあら瞳がうるんで
心なしか涙があふれそう。
泣くことはなかろうが
その気持ち、判らなくもない。
感極まっちまったんだネ。

重箱を仲良く半分づつ平らげて
本日はそれでおしまい。
この夜も妹君宅に泊すると云う。
それではと梶原まで送り届けた。

梶原は北区ながら
都電で一つ手前の荒川車庫は
文字通り荒川区。
「夢コンサート」の情報は
妹さんに拠るものらしい。

年内にもう一度上京すると
云うので再会を約し、
肩をポンポンと叩いて
それじゃまたネ、サヨウナラ。

「あら川」
 東京都荒川区西尾久3-21-2
 03-3893-4167