2026年4月18日土曜日

第4048話 歓びアーカイブ 第14回

男子、厨房に立ったときのハナシ。
一世一代の名品をご覧あそばせ。

2011年4月20日水曜日

第35話 オムレツが鬼門

オムレツが鬼門である。
いえ、食べるのが
苦手というんじゃなくて
作るのが下手なんざんす。
どうにもこうにも上手に焼き上がらない。
火力の調節がまずいのか、
フライパンと菜箸の使い方が悪いのか、
おそらくはその両方であろう。
いやはや、イヤになっちゃう。

とは言え、味のほうは上々だし、
姿カタチだってそんなに悪くはない。
ただ、プロの料理人みたいに
光り輝くのがどうしても焼けない。
美しい流線形を描き、
焼け焦げなんかないヤツ、
表面はしっかりしていながら
中はトロトロで
フォークの背を押し当てると
プルプル震える、そんなのが理想的。

ホテルの朝食ビュッフェで
プロが目の前で焼く実演を
食い入るように
見つめたことも何度かあった。
技術を盗もうとしたのだが結局は薬局、
ハハハ、無駄でした。

いつぞやは玉子を大量に買い込み、
腕まくりして特訓に励んだことさえある。
特訓といってもコーチは
付かないからまったくの自己流。
この試みも不発に終わった。

ガスの火と上手く折合いをつけ、
フライパンを握る左手首を
右手でトントントン、
焼き上がった玉子を
くるり反転させ、皿で受ける。
言うは易く行うは難し、
とかくこの世はままならぬ。

自分で言うのもなんだがこう見えても
ステーキを焼かせたらかなりの腕前。
外でめったにステーキを食べないのは
シツッコい霜降肉を嫌うのと、
自作のほうが美味しいから。
それがオムレツはからっきし駄目。
牛肉と玉子じゃえらい違いだ。

ところが先日、とうとうやりました。
カタチの整った器量ヨシを
やっとのことで焼き上げやした。
とくとご覧くだされ。

美しい完成品に絹さやを添えて

どうです? プロはだしでござんしょう?
エッ、やけに白っぽいじゃないか! 
ってか?
テヘッ、やっぱ判りますぅ?
さすが当ブログの読者はお目がお高い。

中からトロリと黄身が流れ出た

お察しの通りコイツはオムレツじゃなくて
フライドエッグ、目玉焼きなんでサ。
しかも偶然の賜物ときたもんだ。
でも、負け惜しみで言うんじゃないが
こんな目玉焼きはプロだって
そう簡単にゃ焼けやせんぜ。
何たって本人がもう2度と
作れないんですもの。

2026年4月17日金曜日

第4047話 「生駒軒」を もう1軒

神田和泉町の「生駒軒」を
紹介したところだが
その勢いでもう1軒。
今度は日本橋人形町だ。
おそらく現存する「生駒軒」で
最古参と思われる。

甘酒横丁の入口近く、向かいには
玉子焼きと焼き鳥の人気店、
「鳥忠」が店を構えている。
並びには鯛焼きの有名店「柳屋」。
こちらは年がら年中、長蛇の列だ。

立て混む12時半に訪れたが
待たされることもなく、
すんなり四人掛けに案内された。
そのうち相席となるんだろう。

ビールは中瓶で一番苦手な
キリン・クラシックラガーのみ。
よほど見送ろうと思ったものの、
しばらく飲んでいないため、
味わいの確認に踏み切る。

う~ん、やっぱりなァ。
でも、飲み切った。
ラガーや一番搾りのこともあるが
「生駒軒」はどこもキリンだ。

半チャンラーメンに行き掛かり、
すんでのところで思いとどまる。
毎度、毎度、半チャンじゃ、
ナントカの一つ覚えに等しい。
野菜の補給も兼ねて
タンメンに白羽の矢を立てた。

どこにでもありそうな
ヴィジュアルはごくフツー。
でも期待通りにヴェジいっぱい。
もやし・にんじん・玉ねぎ・
小松菜にキクラゲと豚バラ肉。
麺上にごっそり盛られている。

タンメンはラーメンと違い、
太打ち麺であることが多いが
当店はわりと細め。
ノビないうちに麺から攻めてゆく。

隣りの空卓にオッサン、
いや、爺サン3人組が着卓。
揃って広東麺を通すじゃないかー。
仲良しトリオの確信的狙い撃ちは
どんな逸品が出て来るのか
拝んでみたかったものの、
ビールがカラでは退店のほかない。

帰宅後、いろいろ調べていて
面白いことが判明した。
昭和6年創業の麻布1号店は
初代のなじみの麻布芸者の名前が
生駒姐さんだったそうな。

昔のオッサンはこういうことを
恥ずかしげもなく、
平気でやらかしていたんだネ。
大恐慌からまだ2年しか
経ってないってえのにー。
やれやれ。

「生駒軒」
 東京都中央区日本橋人形町2-3-4
 03-3666-1633

2026年4月16日木曜日

第4046話 幾たびも お世話になった 「生駒軒」

かつて都内各地に
点在していた町中華「生駒軒」。
近頃はその数を減らしている。
昭和6年、1号店が麻布に生まれ、
全盛期には百数十店に
及んだというから
人も歩けば生駒に当たる、
そんな状態だったことだろう。

J.C.が一番お世話になったのは
今は無き神谷町店。
金融業界に足を踏み入れた、
1980年から丸3年間、
月に2~3度のペースで
オフィス近くの敷居をまたいだ。

その後、シンガポール、NYと
赴任を続けている間に
店は消えてしまった。
ある日、ろくすっぽ調べもせず、
出掛けて行ってその喪失に
呆然としたものだ。

1年を通して最も食べたのは
看板商品のラーメンだが
夏場の冷やし中華も忘れられない。
甘辛醤油の典型的な昭和の味。
もう一度食べたい。

浅草雷門で1年前まで
営業を続けていた店も
たびたびおジャマした。
ご無沙汰している間に
やはり突然の閉店。
現在、都内に残るのは
三十店余りと聞くけれど
そのほとんどが未訪である。

今回訪れたのは神田和泉町。
昭和45年創業の老舗だ。
秋葉原東口から
5分ほどの場所にあり、
昼のみの営業で臨時休業もある。

半チャンラーメンを
ラーメンも麺半分でお願い。
ビールはキリンラガー中瓶。
まずはトクトクのプッファ~!

生駒特有の細打ちストレート麺に
鶏・豚・煮干しベースのスープ。
具材はバラチャーシューと
シナチクにわかめ。
ほのかに神谷町を思い起こさせる。

炒飯はチャーシュー・ハム・玉子。
青ねぎはまったく使われていない。
それでも懐かしい香りが立ち上る。
炒飯は何を投入しようとも
大事なのは米であることが
よお~く判る。

パラパラの上等な仕上がりに
テーブルのあちこちから
拍手がパラパラと湧き起こる。
そんなことはなかったけどネ。

「生駒軒」
 東京都千代田区神田和泉町1-2-30
 03-3866-3857

2026年4月15日水曜日

第4045話 佐渡から弁慶が やって来た (その2)

佐渡島に本店を構える「佐渡弁慶」。
屋号の由来は存ぜぬが
新潟市を中心に展開しており、
首都圏では埼玉県・浦和、
千葉県・津田沼にも
廻転寿司店がある。

さほど気に入った、
というのでもないけれど
何度か通うようになった。
一番ありがたいのは
腹の具合によって
あまり食べなくてもよいこと。

あるときなんぞ、中瓶2本に
にぎり2カンだけで出て来た。
もっともこれは極端なケース。
平均すれば6~8カン。
10カンやっつけたことさえある。

正直なところ、立ち食い鮨よりも
立ち飲み麦酒に
使い勝手の良さを感じている。
一度、麦歩ともを連れて来て
やろうと思っているが
蕎歩とものナンパに先を越された。

実は J.C.、当店のにぎりをぜひ、
本わさびで味わいたいと思っていた。
とある日、わさびとおろし板持参で
Mきともどもカウンターに横並ぶ。

職人は注文に追われて
目線が手元に集中するが
周りの客の目は気になる。
一人だと目立つため、
Mきをカモフラージュにしたのだ。
案の定、彼女は大満足の大歓び。

後日、念願の佐渡産桜マスはじめ、
アラバチメ・イシモチ・オニカサゴ・
本あら・ホウボウ・クロソイなど、
様々な珍魚をいただいた。

珍しかったのはマトウダイ(的鯛)。
生を食べるのは生まれて初めてだ。
仏ではサン・ピエール、
伊ではサン・ピエトロと呼ばれ、
珍重される白身魚の王者である。
デリケートな味わいに
ミシッ、ミシッと来る食感も
まことに快適、美味の極みであった。

豊富なイカ類もスミイカ、
スルメイカ(真イカ)のほか、
気まぐれで普段は滅多に食べない、
紋甲イカまで試したが
驚いたのはこの紋甲クン。
噛んだらパキッ、パキッと来た。

今まで馬鹿にしていたイカを
あらためて見直す羽目に陥る。
以来、寄れば食べる必注種目に
格上げされたのでした。
半月に一度は立ち食い人に
なるつもりでおります、ハイ!

「立喰寿司 佐渡弁慶 上野店」
 東京都台東区上野7-1-1
 上野駅構内
 03-6284-7253

2026年4月14日火曜日

第4044話 佐渡から弁慶が やって来た (その1)

この日は一日中、積み木ゲーム。
競技タイムはいつものように
イレブンセブンの8時間である。
朝から雑用に追われてしまい、
朝食抜きで出掛ける憂き目を見た。

J.C.は打牌中、ビールだけは
ガンガン飲むが食事は取らない。
ビールのつまみすら口にしない。
だけど今日は朝抜きだからなァ。
何か軽く入れとかなきゃなァ。

ここで不図、思いついたのが
上野駅構内の立ち食い鮨店だ。
ずいぶん前から
存在を認知していたが
利用したことは一度もない。

最近、経営が変わったように思う。
帰宅後、調べたら「佐渡弁慶」は
今月24日で1周年とのこと。
なるほど、そうでしたかー。

神田に行く予定を上野で途中下車。
入店するとカウンターは11席ほど。
他に2人立ち食えるテーブルが
1卓あってこれは2人客専用。

ビール中瓶は
赤星とドライの2種完備。
生は J.C.とは無縁のエビスだ。
ドライを所望する。

さっそくのにぎりは
肝付き皮はぎ・本ずわい蟹・
炙り〆鯖・イタヤ貝・
平目昆布締め・めじまぐろ・
ウルメイワシ。
計7カンで切り上げた。
中瓶はしっかり2本飲み、
会計は3千円とちょっと。

腹が減っては戦が出来ぬ。
とは云え、腹いっぱいでも
勝負に勝てぬ。
勝負師は常におのれの胃袋と
折り合いをつけねばならんのだ。

鮨種は揃って良質。
立ち食いでは都内一、二を
争うレベルに達している。
ここ数年、人気の Sロー、
K寿司・H寿司とは
一線を画すこと歴然である。

加えて品揃えの豊富さが圧倒的。
注文はタッチパネルを通すが
その日、入荷の無いものが
相当数あってもなお、
客を厭きさせない。

壁の貼り板にズラリと
明記された品々には
思わず目が行ってしまう。
佐渡産桜マスはぜひ試したいな。
メバルの1種のアラバチメは
とてつもなく珍しいゾ。

=つづく=

2026年4月13日月曜日

第4043話 鰻で始め 鰯で締める

尾山台で乗った電車を
降りたのは終点の大井町だった。
おそらく品川区内で
最も頻繁に訪れるのはこの街だ。

と云っても通常は
戦後のヤミ市の匂いを残す、
平和と東の両小路、
その界隈での飲み食いに終始する。

この日は小路の入口を素通りし、
桜並木越しに車両センターに並ぶ、
電車を見下ろしながら崖上を
北に向かってしばらく歩いた。

潜った暖簾は「だるまや」。
鰯料理専門店である。
鰻で幕を開けた日を
鰯で締めくくる。
われながらオツなものだ。
ひとりゴチてカウンターに横並ぶ。

切盛りは店主と女将の二人体制。
大瓶のドライに頬がゆるんだ。
大瓶が出てくると
「サァ、飲むゾ!」
気持ちに拍車がかかる気がする。
まずは定番の刺身を通す。

N子が女将に話し掛ける。
「松重サンは何を
 召し上がったんですか?」
一瞬、ポカンとした J.C.、
すぐに気が付いた。
「孤独のグルメ」に
登場した店なんだ。

女将応えて
「刺身とユッケとチーズロール!」
相方は
「わたしたちにもユッケと
 チーズロールお願いしますっ!」

18時を過ぎると立て混んで来て
入店を断られる客も出て来る始末。
相方は大瓶を続飲。
当方は菊正生貯蔵酒の冷たいの。
スッキリ飲んで
後続に席を譲ることにした。

鰯で締めるつもりだったが
そうはならなかった。
短い滞空時間も影響していよう。
大井町から乗った京浜東北線を
降りたのは地元に近い日暮里駅。
彼女と一緒だとこのところ、
急速に出没率の高まる街になった。

焼けくそだんだん「夕焼け酒場」に
到着したが毎度この店ってのもなァ。
向かいの「のみくいや ぽちゃ」に
初めて入り、此処でもカウンター。
ドライ中瓶を注ぎ合い、カチン。
健啖家の相方は揚げ茄子を所望。

J.C.の隣りに和服姿の
可愛いお婆ちゃんが着席。
どちらからともなく言葉を交わす。
訊けば、Hみチャンは常連サン。
飲み屋ではよくあることながら
盛り上がってしまい、気付いたら
本日も残すところ15分でした。

「だるまや」
 東京都品川区南品川6-11-28
 03-3450-8858

「のみくいや ぽちゃ」
 東京都荒川区西日暮里3-14-13
 03-6826-2916

2026年4月11日土曜日

第4042話 歓びアーカイブ 第13回

本日のアーカイブは
そば屋の定食ざんす。

2015年4月21日火曜日

第1081話 めざしうれしや麦とろ定食 (その2)

根津の谷と茗荷谷、
二つの谷に挟まれた台地は
向丘と白山であり、
馬の背のごとく南北に走っている。
その白山上、
「戸隠そば 満寿美屋」にいる。

前話で豊富な品書きの一部を
紹介したがさらに加えて
この店の特徴でもある小ぶりのどんぶり、
いわゆるミニ丼の多彩な顔ぶれにも
ふれておかねばならない。
”おそばとご一緒にミニ丼をどうぞ” と
謳われており、これは全品ご披露しよう。

=ミニ丼=
 かつ丼 鴨丼  以上450円
 麦とろ丼 じゃこ高菜丼 カレー丼 
 肉味噌丼 牛丼 ひじき丼 
 かき揚げ丼  以上350円

ここまで充実したラインナップを
日本そば屋で見るのは初めてだ。
食べ手にとってはまことに
けっこうではあるけれど、
さすがにひじき丼はやり過ぎ。
こんなん誰も注文せんやろ、
と思ったものの、
渡る世間は奇人ばかり。

「アラ、私は歓んでお願いするわ」
「玉子とじにひじき丼なんて
 素敵な組合わせじゃない」
かように言い放った友人二人。
”こじき”(禁句にして死語?)が
姿を消した今の日本、
代わって”ひじき”が台頭している。

品書きを吟味する間に
中ジョッキは空っぽ。
わがふるさと、信州の生んだ銘酒、
真澄の吟醸に移行した。
七笑といい、千曲錦といい、
信濃の酒は好きだ。
いえ、これはけっして
ひいき目ではありませんゾ。

結局、白羽の矢を立てたのは
サブタイトルにある麦とろ定食。
というのも店先のサンプルケースを
チェックして発見したことに
2本のめざしも添えてある。
目黒にサンマあらば、
白山にメザシあり。
酒のアテによし、飯の友にまたよし。

あの土光サンが愛しためざし。
(古すぎてどなたもご存じないか?)
麦とろ定食を選択したのは
ひとえにめざしの存在が
あったればこそなのだ。
普段は晩酌時にいきなり
定食など頼まないが
この宵は空腹感激しく、
ついオーダーしてしまった。

まずはご覧あられたし。
2尾の小魚に存在感あり
こうしてワンショットに収めると、
主役の麦とろを押しのけて
完全に食っておりますな。
名脇役をめざしためざしなれど、
小さな巨人とは
彼らのことを云うのでしょう。

=つづく=