厨房に走ったオネエはすぐ戻り、
「真ガキでした!」
「それじゃ1個お願いネ」
「ハイ、かしこまりました!」
香草パン粉焼きを
それなりに美味しくいただく。
食後の飲みものはエスプレッソ。
カキに添えられたカットレモンを
皿に残しておいた。
指で潰して皮から滲むエキスを
カップのフチに塗りたくる。
こうすることによって
エスプレッソに新たな息吹を
吹き込むことが出来るのだ。
このスタイルはおそらく、
ニューヨーク発祥だろう。
他の都市では見掛けないし、
イタリア本国でも
お目に掛からなかった。
読者にもぜひおすすめしたい。
エスプレッソの香りが
より際立って来る。
そうしておいて食後酒。
NY時代にさんざお世話になった、
くるみのリキュール、
ノチェッロがある。
味も風味もそっくりの
ヘーゼルナッツのリキュール、
フランジェリコより好んだ。
J.C.は基本的にドルチェや
デセールの類いを取らない。
むか~し、アラン・ドロンが
何かのインタビューに応えて
食後たしなむものは
「カマンベールとウイスキー。
デセールは嫌いで取らない!」
まさに我が意を得たりだった。
おっと、サンブーカが
あるじゃないか!
アニス風味のリキュールは
ノチェッロの合間を縫って
ときどき賞味した。
久々だからこちらにしよう。
オニイさんのサーヴの十秒後、
今度はポチャオネバが現れた。
白い小皿を手にして J.C.の顔を
遠慮がちにのぞき込みながら・・・
見ると炒ったコーヒー豆が5粒。
(ほお~、ヤるじゃないかー)
心の内で思いつつ、
「判ってるねェ~ッ!」
「ハイ~イッ!」
ポチャ、満面の笑みである。
ニューヨークでは
サンブーカにコーヒー豆は
無くてはならないモノ。
それを彼女は識っていたのだ。
レモンの皮にコーヒー豆。
高田馬場でニューヨークが蘇る。
ささやかなシアワセを感じた。
自分で云うのは
自慢気でイヤなんだが
こんなサービスを理解して
やれる客の存在は
店側も嬉しいものなのだ。
会計は6700円。
「またよろしくお願いします」
オネバがドアまで送ってくれた。
「どうもごちそうさま」
「ありがとうございました!」
まことに気持ちの好い、
プランゾでありました。
=おしまい=
「文流」
東京都新宿区高田馬場1-26-5
F1ビル B1
03-3208-5447

