2026年8月10日月曜日

第4156話 わが青春の早大キャンパス

気分がいいので馬場から
早稲田まで歩くことにした。
古くて小さな映画館、
早稲田松竹の前を通りすがった。
ただ今遅れて「国宝」を上映中。
入館は数回に過ぎないが
向かいの雀荘「ワセダ」は
幾度も利用した。

馬場口の交差点を渡り、
早稲田通りをなおも東へ。
グランド坂上、西早稲田の手前に
居酒屋「源兵衛」が今も健在だ。

穴八幡の境内に入る。
せっかくなので手を合わせ、
石段を降りてゆく。
アレッ?こんなに急だったかな?
若い頃はトントン下ったけれど
年を取ると、ちょいと怖いネ。

石段の前は早大戸山キャンパス。
文学部があるところだ。
久方ぶりに立ち寄ってみよう。
校舎に続くスロープが
文学部の代名詞。
上って右手に学食がある。

受付のオジさんに訊いてみた。
「今日は学食、開いてますか?」
「エッと、今日はお休みです」
「今も坂の右手ですか?」
「いいえ、左ですよ」

ん?おかしいな。
右のハズだけどな。
移転したんだろうか。
それとも記憶違い?
そんなことはあるまい。

となると、移ったんだろう。
さすれば、在学中の吉永小百合が
よく座ったサユリズ・テーブルは
もう消えたことになる。

本学に廻ろう。
カレー南蛮の発祥店「三朝庵」が
閉業して久しい。
跡地は待ってましたとコンビニ。
まったくイヤになるネ。

値段も敷居も高くて入れなかった、
洋食店「高田牧舎」は
営業を続けているが
いつの間にかピザ屋に代わった。

書店「成文堂」は営業中ながら
雀荘「早苗」は廃業した。
通用門の脇にあって
仲間で入り浸った喫茶兼バー、
「ポントス」はとっくの昔に消滅。
今はインド料理屋「ターリー」が
カレーとナンを商っている。

通用門から本学のキャンパスへ。
大隈さんの銅像を仰ぎ正門を出た。
そろそろ帰ろう。
三ノ輪橋行き都電荒川線。
上野松坂屋行き都営バス。
どちらにしようかな?
どっちでもいいや!

2026年8月8日土曜日

第4155回 歓びアーカイブ 第32回

宮城県・登米市を訪れ、
懐かしきマーくんの全盛時代に
この年、唯一の敗戦試合を
中華屋のTVで観たのでした。

2014年3月27日木曜日

第803話 ありそでなかった中華のレバ焼き

宮城県・登米市となれば、
「麺や文左」のほかにもう1軒、
是が非にも紹介しておきたい店がある。
実は今回もスキを見ておジャマしたかった。
ところがスケジュールは
あまりにもキツッキツ。
よって訪問かなわずだった。

それでもちょっと間、
身体が空いたので電話を入れたものの、
休憩時間だったらしく、ノー・アンサー。
仕方なく断念した次第だ。
したがって前回訪れた際のリポートとなる。

忘れもしない昨年の日本シリーズ第6戦。
地元、楽天のマウンドには今をときめく、
マーくんがあのどんぐりマナコで
巨人打線を見下していた。
そのときJ.C.は店のTVの真ん前に独り、
陣を取っていた。
プレイボールからゲームセットまで
じっくり観戦したが2013年における、
田中将大の敗戦はこの1試合のみ。
貴重なゲームを観ることができた歓び、
いかばかりであろうか。

中華料理店の名は「賢龍」。
ストリートの名こそ知らねど、
幹線道路に面した、
プチ・ドライブインのような店。
前には晩秋の田んぼが拡がっていた。

この店を訪れるのは二度目だった。
前回、目にとめて惹かれ、
オーダーしたレバ焼きを再びお願い。
もともとレバーは大好物だから
しょっちゅう焼きとん屋を訪ねている。
中華料理店においてはせいぜい、
ニラレバくらいしか選択肢がない。
しかもニラレバを謳っていても
実際はモヤレバであることたびたび。
不満は残るし、納得もいかない。

しかしこの店ときたら豚レバが
ビシッと主役を張るレバ焼きなのだ。
試しに注文してみたが
ズドンと真ん中に命中だった。
オラ、こんなレバ好きだ!
これぞ純レバなりき
いいですなァ、いいでしょう?
脇の長ねぎとピーマンがことのほかうれしく、
かれらはかれらで
おのれの存在をけなげに訴える。
うん、キミたちの美味はよお~く判っちょる。

レバを口元に運びながらTVを観レバ、
おや? 今夜のマーくんは
いつもと様子が違うじゃん。
得意の持ち玉、スプリット・フィンガーに
心なしかキレがない。
あらら、高橋由伸が打ったヨ、
あやや、やったヨ、巨人が勝っちゃったヨ。

こんなシーンはまず観られない。
思わずビールを追加して
最後まで観切ったのだった。
よって夜更けの会合に
遅刻すること半時間。
失礼こうむった次第ながら
ワケを弁明すると、みなさん許してくれた。

しっかし、このレバ焼きを
炊きたての登米米の友としたら
さぞや旨かったことでありましょう。

「賢龍」
 宮城県登米市南方町王塚50−1
 0220-58-5228

=本日追記=
宮城県にはトンとご無沙汰だが
来月、青森・岩手の帰りに
立ち寄るつもりでいます。

2026年8月7日金曜日

第4154話 馬場で蘇るニューヨーク (その5)

厨房に走ったオネエはすぐ戻り、
「真ガキでした!」
「それじゃ1個お願いネ」
「ハイ、かしこまりました!」
香草パン粉焼きを
それなりに美味しくいただく。

食後の飲みものはエスプレッソ。
カキに添えられたカットレモンを
皿に残しておいた。
指で潰して皮から滲むエキスを
カップのフチに塗りたくる。
こうすることによって
エスプレッソに新たな息吹を
吹き込むことが出来るのだ。

このスタイルはおそらく、
ニューヨーク発祥だろう。
他の都市では見掛けないし、
イタリア本国でも
お目に掛からなかった。
読者にもぜひおすすめしたい。
エスプレッソの香りが
より際立って来る。

そうしておいて食後酒。
NY時代にさんざお世話になった、
くるみのリキュール、
ノチェッロがある。
味も風味もそっくりの
ヘーゼルナッツのリキュール、
フランジェリコより好んだ。

J.C.は基本的にドルチェや
デセールの類いを取らない。
むか~し、アラン・ドロンが
何かのインタビューに応えて
食後たしなむものは
「カマンベールとウイスキー。
 デセールは嫌いで取らない!」
まさに我が意を得たりだった。

おっと、サンブーカが
あるじゃないか!
アニス風味のリキュールは
ノチェッロの合間を縫って
ときどき賞味した。
久々だからこちらにしよう。

オニイさんのサーヴの十秒後、
今度はポチャオネバが現れた。
白い小皿を手にして J.C.の顔を
遠慮がちにのぞき込みながら・・・
見ると炒ったコーヒー豆が5粒。

(ほお~、ヤるじゃないかー)
心の内で思いつつ、
「判ってるねェ~ッ!」
「ハイ~イッ!」
ポチャ、満面の笑みである。

ニューヨークでは
サンブーカにコーヒー豆は
無くてはならないモノ。
それを彼女は識っていたのだ。

レモンの皮にコーヒー豆。
高田馬場でニューヨークが蘇る。
ささやかなシアワセを感じた。
自分で云うのは
自慢気でイヤなんだが
こんなサービスを理解して
やれる客の存在は
店側も嬉しいものなのだ。

会計は6700円。
「またよろしくお願いします」
オネバがドアまで送ってくれた。
「どうもごちそうさま」
「ありがとうございました!」
まことに気持ちの好い、
プランゾでありました。

=おしまい=

「文流」
 東京都新宿区高田馬場1-26-5
 F1ビル B1
 03-3208-5447

2026年8月6日木曜日

第4153話 馬場で蘇るニューヨーク (その4)

作日のつづきです。

そしてフランス料理店と
ステーキハウスへの高すぎる評価は
もはや異常である。
どちらを取っても
パリと東京に遠く及ばないのにー。
しかしこればかりは
アメリカ人の舌の問題ではなく、
心の問題というところが面白い。
フランスに対するコンプレックスと
アメリカへの愛国思想が
同居しているのだ。
ダウ9000ドル(安かったなァ)
クリアして世界経済を牛耳り、
得意満面のアメリカも
フランスには弱いのである。

かくして、とある日、
ひとつ、自分の舌を
信じてみようという気になった。
いくらなんでも2000軒は
一個人の力では及ばないから
優良店を225軒に絞り込む。
この数字に特別の意味はなく、
ウォール街のマネー・ブローカー、
という職業柄、目の前の
モニター・スクリーンに
たまたま映ったシカゴ先物市場、
日経225のページから
そのまま拝借しただけでした。

ということですが
あれから早や30年近く。
こと仔牛に関して世の中は
まったく変わっていない。
J.C.の嘆きは今も続いている。

まっ、嘆いていても仕方がない。
話を前に進めましょう。
そう言えば、ただ一度、
こういうことがあった。

去年の今頃、紹介した、
麻布十番の「ヴィーノ・ヒラタ」。
そのワンフロア上にあるのが
兄貴分の「クッチーナ・ヒラタ」。
仔牛料理があるというので
当店のマダムに訊いてみた。

「仔牛のパイラルド出来ますか?」
彼女、胸を叩いて
「ハイ、出来ますとも!」
思いがけない歓びだった。
そして、とても美味しかった。
はるか昔、2001年。
四半世紀も前だけどネ。

さて、高田馬場「文流」。
冷たいコーンポタージュに満足し、
仔牛のソテーには
若干の不満を残すところへ
オネエさんがやって来た。

「カキがたった今、届きましたが
 いかが致しましょうか?」
「うん、そうだネ、
 どうしようかなァ?」

仔牛のあとのカキでは
順序が後先になるが
「それじゃ、1個だけいただくネ。
 真ガキかな? 岩ガキかな?」
彼女、首を傾げる。
「厨房で訊いて来てくれる?
 真ガキなら欲しいけど
 岩ガキなら要らないっ!」

=つづく=

2026年8月5日水曜日

第4152話 馬場で蘇るニューヨーク(その3)

高田馬場で仔牛を食べながら
ニューヨークの仔牛を
思い出していた。

1998年6月に上梓した自著、
「ニューヨークレストラン
 Best 225 」から
” 読者の方々に ”(まえがき)を
紹介してみたい。
長いため、途中までネ。

ニューヨークに移り住んで10年あまり。
ほとんど毎晩、外食の生活。
訪れた店は高級レストランから
デリ、ダイナーに至るまで
のべ2千数百軒、われながら
よく食べたものだとため息が出る。
初めの頃は各種レストランガイドを
片手にあちこち食べ歩いてみた。
そのうち「何だかコイツはおかしいぞ」
違和感を覚えるようになる。
日本語版旅行ガイドのレストランを
紹介するコラムは論外としても
現地のベストセラーでさえ、
オヤッ? と首を傾げることが
少なくないのだ。

まず、日本料理店の評価が
メチャクチャである。
安くて量の多い店が
もてはやされてしまうから
すし屋でもキッチリ江戸前の仕事を
施すところより大きな鮪の切り身を
恥ずかし気もなくドンと酢めしに
乗せた店の評価が高くなる。
握りめしのような握りずしに
大手を振って歩かれたひにゃ、
同じ日本人として
修業を積んだ職人さんに
申し訳が立たないではないか。

次にイタリア料理に対しては
非常にアンフェアである。
この街のイタリアンの水準が
世界一にもかかわらずだ。
ミラノ、フィレンツェ、ローマ、
イタリアのどの都市にも
都市対抗で負けることはない。
ただし全イタリア対ニューヨーク、
ということになれば全イタリアに
軍配を挙げざるを得ないけれどー。

では東京はどうかというと、
世界最大にして最良の
築地市場が控えているのだ、
魚介料理が不味いわけはない。
しかし、和食と比較して
イタリアンはいまだ、
その素晴らしい素材を
活かしきれていない。
おまけにイタリア料理において
最重要食材である仔牛肉の流通も
流行も不十分なのは致命傷。
松坂牛や前沢牛もけっこうだが
仔牛なくして何の霜降り、
食大国・日本の名が泣いている。

このあたりで止めようと
思ったのですが
もう少々、おつき合い下され。
それではまた明日!

=つづく=

2026年8月4日火曜日

第4151話 馬場で蘇るニューヨーク(その2)

高田馬場駅前の「文流」。
先刻のオネエさんが
すぐに舞い戻って来た。
「すみません、カキの入荷が
 ありませんとのことです」
「無いものはしょうがないネ」

サラダ or スープは
冷たいコーンポタージュと聞き、
無条件で選択。
周囲の客たちもほとんどコレだ。

しかし客層が年配者ばかり。
うち多くの方々が若い頃から
利用しているものと思われた。
さすがに老舗「文流」の底力を
感じさせるものがある。

生のお替わりを追うようにして
仔牛ロースが焼き上がった。
ふむ? 
見た目イマイチやないか?

5月に瀬戸内の直島で食べた、
平目の煮付けみたいなのが
出て来たヨ。
トマト主体のソースが掛かってる。
付合せは新じゃがロースト。

ナイフを入れて
フォークをつっと刺し、パクリ。
う~ん、厳密には
仔牛と言い難いものがあるな。
通常、欧米で仔牛と言えば、
乳呑み仔牛を指す。

母乳だけで育ち、
肉色も淡いピンク。
穀物を口にし始めると
肉に赤みがさして来るんだ。
味わえば、ほんのりと
ミルクの香りすら立ち上る。

NY時代は何せ、
イタリア料理の本場で
あるからにして
仔牛を食べまくった。

最も愛した仔牛料理はパイラルド。
サーロインの部分を
叩き延ばしたものである。
コレを炭火で炙り、
ローズマリー&ガーリックで
風味付けを施す。
10年余りの滞在中、
100回以上は食べただろう。

=つづく=。

2026年8月3日月曜日

第4150話 馬場で蘇るニューヨーク(その1)

本日、出没したのは高田馬場。
たまには独りイタリアンと
シャレ込むつもりでネ。
駅前にあるドンキホーテ。
そのビルの地下に潜った。

「文流」は実に久しぶり。
日本におけるイタリア料理屋の
草分け的存在で漢字二文字の
イタリアンらしからぬ店名は
日本とイタリアの化交
一役買うため名付けられた。
その大志を尊重したい。

人気店につき、電話予約を
事前に入れておいた。
入店すると、
「いらっしゃいませ~!」
ん? どこか聞き覚えのある声。
おう、さっきの電話の声の主だヨ。

様子を拝見したらけっこうな貫禄。
何となく店の主みたいなオネバだ。
ガタイも立派でポッチャリ。
まことに失礼ながら
ポチャオネバと名付けた。

接客担当のオニイさんに
ドライ生中を発注しておいて
メニューに目を通す。
Aセットは数種のスパゲッティに
スープかサラダと
食後の飲み物が付く。

シュフのおすすめに
北海道産仔牛ロースのローストを
見とめた。
仔牛は全食肉中にあって
J.C.が最も愛するものの一つ。
見逃すワケもなく、
迷わず即注の巻である。

すると接客のオネエさんが
申し訳なさそうにささやいた。
「本日、ローストではなく、
 ソテーでのお承りに
 なるのですが・・・」
「ソテーでいいとも!」

あとは同じくおすすめにあった、
から付きカキ香草パン粉焼きを
2個所望に及んだ。
おそらく真がきであろうヨ。

昨今は通年、真がきが
食べられるようになった。
産卵のため身の細る夏場に
その産卵を抑制する技術を
開発したことによって
実現が叶ったわけである。

=つづく=