2026年7月30日木曜日

第4147話 ある子鳩との出逢いと別れ (その4)

谷中銀座のキジ夫とキジ子に
心癒されている J.C.。
それが2カ月ほど前のこと。
身体が小さいから子鳩だろうが
ビッコを引く1羽を見つけた。

この子はこれから
生きていけるのだろうか?
無理かも知れないな。
いっちょまえに飛ぶことは
出来るが足元が覚束ない。
ヨッタヨッタ歩くので
ヨタ子と名付けた。

毎日ではないが見掛けると
すぐそばのパン屋、
「ヒトテマ」に駆け込み、
クロワッサンを一つ買う。
ヨタ子を中心に食事の時間。

それが先週のこと、
ヨタ子は彼氏を作りやがった。
嘴と嘴を重ね合う、
いわゆる鳩のくちづけを交わす。
ほうら伊東ゆかりも歌い出す。

♪ あなたの面影 だきしめながら
  目ざめる朝の 私はしあわせよ
  愛してみて 愛してみて
  はじめてわかるのね
  あなたのもとへ 届けたい
  やわらかい 朝のくちづけ ♪
   (作詞:有馬三恵子)

「朝のくちづけ」は
1968年のリリース。
作曲は当時の有馬の夫で
先ごろ亡くなった鈴木淳。
ゆかりのナンバーでは
J.C.が一番好きな曲だが
浪花の小姑はご存じあるまい。

それはそうとヨタ子は
しばらく今の彼氏と
別れる気はないようだ。
まっ、それもよかろう。
温かく見守ってやろう。

検診は丸3時間かかった。
急いで帰宅する。
ソッとダンボールをのぞくと
眠っているのか身動きしない。
おかしいな・・・
いや、そうじゃないヨ、
哀れにもこと切れていた。

外見からは判らなかったが
内臓もやられていたんだろう。
すぐに保健所に運んでやれば
助かっていたかと思うと
胸が痛んだ。

子どもの頃から
ニワトりほどではないにせよ、
鳩は苦手なほうだった。
それが今ではキジバトに限らず、
ドバドですらも可愛いと思う、
J.C.なのであります。
鳩よ、安らかに眠っておくれ!

=おしまい=

2026年7月29日水曜日

第4146話 或る子鳩との出逢いと別れ (その3)

作話はロンドンの鳩の思い出。
今話はニューヨークだ。
あれは1990年、当時の恋人は
スペイン系エルサルバドリアン、
マルガリータ・ピネダ。
通称マギーだった。

その夜はミッドタウンの
「壽司田」で夕食を取った。
この4月に大阪で再会したM子。
彼女がフロア・マネージャーを
していた店である。

食後、クイーンズの彼女の家まで
送って行くため、ガレージに戻ると
片隅に一羽の鳩が
うずくまっている。

「オー・パロマ!」
歓んだ彼女が鳩を抱き上げた。
パロマはご存じのように
スペイン語で鳩のこと。

J.C.は傍らで言葉を失った。
抱き上げるのは何とか理解できる。
驚いたことにマギー、
鳩にキスをしたんだ。

こういう行動は
日本人の許容限度を超えている。
いや、アメリカ人も理解できまい。
スペイン系は鳩を
こよなく愛しているんだネ。
彼我の差をまざまざと
見せつけられる思いがした。

結局は薬局、
マギーは鳩をお持ち帰り。
翌朝、J.C.の不安は的中する。
彼女からの電話によれば、
ルームメートに野鳥の危険性を
とくとくと諭され、
やむなく手放すことにー。

そりゃそうだろう。
鳥インフルはないとしても
何かの菌を持ってる可能性は
じゅうぶんにあるからネ。

さて、そろそろ日本に戻って
昨今の鳩エピソード。
これがまたけっこうあるんだ。

先日は吟行の前に
東向島の「鳩家」で
ハンバーグを食べたし、
(こりゃ関係ないかー)
先週は西日暮里の交差点で
車に轢きつぶされたノシ鳩を
目撃している。

そして地元の谷中銀座。
かつては此処に
何匹もの野良猫がいたが
今ではすべて死に絶えたか
消え失せてしまい、
代わりに十数羽の鳩が
棲みついている。

中にキジバトと交配したと見え、
きれいな羽色を持つ2羽がいて
J.C.はキジ色の濃いのをキジ夫。
薄いのをキジ子と呼び、
人目を避けながらひそかに
パン屑を与えているんだ。

=つづく=

2026年7月28日火曜日

第4145話 或る子鳩との出逢いと別れ (その2)

日医大病院の待合スペース。
(鳩かァ・・・今まで
 いろんなことがあったなァ)
つらつらと思い泛べていた。

あれは1974年。
J.C.はロンドンにいた。
ハンバーグ・レストランで
ウエイターをしていた。

そこの皿洗いが
ポルトガル領マデイラ出身の
セニョール・マルティン。
この人のことは前にも書いたが
英語がほとんど話せない。

店はハンバーガーも
主力商品につき、
バンズは売るほどある。
週にいっぺんくらいかな?
自分の休みの前日になると
マルティンはバンズを
手に店先に立つ。

目の前は地下鉄の
グロースター・ロード駅。
駅は洋の東西を問わず、
鳩の恰好の棲みかなのだ。

バンズをちぎって通りにまくと
鳩たちが一気に全羽集合。
押し合いへし合いパクパクパク。
よく食うったらありゃしない。

すると何気ない顔して
様子を伺っていたマルティン。
やおら一羽の鳩を捕まえると
アッという間に
首根っこをコキッ!
哀れ、鳩は天国へと旅立ち、
初めてそれを見たわれらは
度肝を抜かれたのだった。

そのあと鳩は
どうなるかというと
ライスや野菜と一緒に
スープ煮にされるそうだ。
食味は子鳩がいいらしい。
大きく育つと肉質が
硬くなるんだとー。

われわれスタッフは彼のことを
”ピジョンキラーのマルティン”、
そう呼んで怖れたものだった。
その後、故郷マデイラに帰ったが
当時、60代だったから
もう生きてはいないだろう。
天国でも鳩を
捕まえているのかな?

=つづく=

2026年7月27日月曜日

第4144話 或る子鳩との出逢いと別れ (その1)

先週のことだった。
定期健診のため、
日医大病院へ向かい、
谷中よみせ通りを歩いていた。

ん? 何だ、あれは?
向こうで何かが
パタパタしている。
道の真ん中で鳥らしきもの。
近づいてみたら鳩だった。

翼を傷めたらしく、
羽ばたきは可能でも
飛び立つのは無理のようだ。
しかし出血も無く、
瞳にも力があった。
人差し指で頭を突ついたら
ちゃんと反応する。

すると背後から今度は
バタバタと駆け寄る足音。
「私も、私も、心配でー」
30代と思しき女性が
今にも泣き出しそうな表情。

「クルマに撥ねられたのかな?」
「そうみたいですっ!」
場所はマルエツの真ん前。
彼女は肉や魚を包むビニール袋で
両手を覆っている。

そうして恐る恐る鳩を
道端へと移動させた。
「ごめんね、ごめんね、
 これしか出来ないのヨ」
そう、囁きかけながら。

「助かるかもしれないな」
「そうでしょうか?」
「動物病院に連れてってみるヨ」
「エッ? 本当ですか?
 お願いします、お願いします」
何度も頭を下げるんだ。

1年ほど前、よみせ通りに
アニマル・クリニックが
開業したことは知っていた。
鳩を両手で抱えて持ち込むと
院長らしき男性が血相を変えた。

「車にぶつかったみたいだけど」
「アッ、あの、ウチでは
 野生動物を診ることが
 できないんです」
「じゃ、どうしたらいいの?」
「保健所に連絡してください!」

(クソの役にも立たなねェな)
口には出さず大人しく引き下がる。
仕方ないから家に連れて帰った。
検診の時間が迫っているし、
ダンボール箱にタオルを敷き、
そこに置いてひとまず病院へ。

気が気じゃなく、
待ち時間も落ち着かない。
尻の座りが悪いのなんのっ。
かつてあった鳩の思い出が
あれこれと蘇るのだった。

=つづく=

2026年7月25日土曜日

第4133話 アーカイブ 第30回

今日は下町の話。

2015年6月26日金曜日

第1129話 横井サンが死んじゃった (その1)

 ♪ 下町の空に かがやく太陽は
  よろこびと 悲しみ写す ガラス窓
  心のいたむ その朝は
  足音しみる 橋の上
  ああ太陽に 呼びかける   ♪
   (作詞:横井弘)

横井サンが死んじゃった。
グアム島から生還した横井サンじゃないヨ、
大好きな作死者、もとい、
作詞者の横井サンだヨ。

冒頭に掲げた「下町の太陽」は
小学校五年生のとき、
リアルタイムで聴いていた。
倍賞千恵子のトランスペアレントな
歌声が東京のみならず、
日本全国に響き渡ったハズだ。
横井弘の作詞もさることながら
江口浩二の曲がまたすばらしい。

その年は1962年。
J.C.は下町もド下町、
深川に暮らしていたのでありました。
この1962年、昭和なら37年は
歌謡曲の当たり年。
ズラリ並べるというより、
その年のマイ・ベストテンを
ご披露してみましょう。

① 下町の太陽 (倍賞千恵子)
② 赤いハンカチ (石原裕次郎)
③ 遠くへ行きたい (ジェリー藤尾)
④ 川は流れる (仲宗根美樹)
⑤ コーヒー・ルンバ (西田佐知子)
⑥ 湖愁 (松島アキラ)
⑦ 寒い朝 (吉永小百合とマヒナスターズ)
⑧ 江梨子 (橋幸夫)
⑨ 若いふたり (北原謙二)
⑩ 星屑の町 (三橋美智也)
 次点:なみだ船 (北島三郎)

流行歌ファンなら誰しもが
ご存じの曲たちである。
自他ともに認める寅さんファンの J.C.ながら
女優であり歌手である倍賞千恵子に関しては
たとえば寅次郎の妹・さくらよりも
歌手としての実力を高く評価している。

彼女のナンバーでは「下町の太陽」の3年後、
「さよならはダンスのあとに」も
スマッシュヒットを記録した。
これがまた無類の名曲なんです。
驚くべきことに「下町の~」、
「さよならは~」はともに横井弘の作詞だ。

作曲家に比して作詞家は
過小評価されてきた感がある。
その証拠に国民栄誉賞を
もらった作曲家が何人もいるのに対して
作詞家は誰一人としていやしない。
どうやらこの国において
国語は音楽より劣っているらしい。

=つづく=

=本日追記=
もともと国民栄誉賞なんて
ときの総理大臣が
人気を取るための戦略。
無能な彼らでも作詞ならば
そこそこ出来ようが
作曲となるとハナからムリ。
自分の出来ないことを
過大評価するんでしょうヨ。

2026年7月24日金曜日

第4132話 猛暑日に めげず歩いた 炎天下(その2)

何はともあれ、とりあえず、
区役所の敷地から離れた。
バスに乗れば、浅草、南千住、
向島、曳舟、亀戸、
何処へでも行ける。

何せ、猛暑日だから
無謀な歩行は謹んでおきたい。
でも男 J.C.、若い頃からずっと
好きな季節は真夏で
暑さには滅法強い。
熱中症とはまったく無縁の身、
かかってみたいほどなのだ。

公園のほとんど隣りに
「徳勝楼」なる中華料理店あり。
バスで何度も通っているから
存在は認識している。
浅草寿町行きバスに乗ると
三ノ輪支店の前も通る。
近くで2軒の営業となれば
人気と実力が予想されよう。

店頭のメニューもそれなりだし、
未訪ながら試してみようか?
そんな気になって入店。
マダムというか、女将というか、
オバちゃんに案内されて
奥の四人掛けに通された。
愛嬌たっぷりだが声のデカさから
大陸系中国人と推測される。

卓上と壁面の品書きを見比べて
中華丼&半ラーメンのセットを
丼のライスも半分でお願いした。
初めての中華屋に来ると
半チャンラーメンの麺も半分が
定番になりつつある。
1回の訪問で2種の料理を
味わえるからだ。

でもネ、毎回それじゃ芸が無いし、
何よりも読者に飽きられる。
よって今日はひねりを加え、
滅多に食べない中華丼にした。

ラーメンはまずまず。
平打ちちぢれ太麺に
あっさり醤油スープ。
バラ叉焼1枚・シナチク・わかめ。
具材もシンプルで好し。

けれども好事魔多し。
中華丼がアカンかった。
小海老・イカ・豚バラ・うず玉に
竹の子・白菜・人参・小松菜・
キクラゲと具は多彩で豊富なれど、
大半が白菜の白い部分。
松田優作じゃないが
何じゃこりゃあ! なのである。

そこは我慢しても醤油ベースに
ニンニク臭強く味付けが濃すぎる。
ドライ中瓶はちゃんと2本飲み、
会計は金2050円也。
中瓶1本550円は安いなァと
思いつつ、炎天下を
家まで歩くことにした。

ガスを補給した後の J.C.はタフ。
荒川仲町通りを往かず、
常磐線のガードをくぐって
日暮里中央通りを右折し、
日暮里駅へまっしぐら。
おかげで汗ぐっしょりだ。

帰宅後は即、
頭から水シャワーを浴びる羽目に。
たかだか3時間の間に
2度目の洗髪と相成りました。

「徳勝楼 荒川区役所前店(本店)」
 東京都荒川区荒川2-1-9
 03-3801-2858

2026年7月23日木曜日

第4131話 猛暑日に めげず歩いた 炎天下(その1)

谷中よみせ通りをブラブラと
突き抜け、道灌山通り。
田端銀座に向かって
道を横断したらおりよく
浅草寿町行きのバスが来た。
乗っちゃえ!

われながら己の気ままさに
あきれてしまう。
勝手に自分でやっといて
勝手にあきれてりゃ世話ねェ!
ってか? ハイ、ごもっとも。

バスは宮地交差点を過ぎてゆく。
南側一帯は三河島である。
昨日は昼間っから独りで
和牛カルビを焼いたが
毎日現れるわけにもいくまい。

だが次の停留所で降りた。
此処は荒川3丁目。
気に入り町そば「ますや」で
一杯飲っとこう。
当店のまぐろとろろ(山かけ)は
麦酒でん、清酒でん、
この上ない酒の友になるからネ。

ん? おや、あれ、おかしいな。
シャッターが降りてるゾ。
日曜定休のハズなんだが・・・
おっと、そうか、
今日は祝日だったんだ。

猛暑日の海の日。
いや、マイッたな。
次のバスを待つとするか?
いや、立ってるだけで
汗が噴き出る暑さ。
歩けば空気が自然に風になる。
明治通りを三ノ輪方面に歩いた。

ほどなく荒川区役所。
区役所内に入ったことはないが
この区役所は都内屈指。
目の前の緑豊かな荒川公園を
他区に見倣って欲しいくらいだ。

グルッと一めぐりして
ベンチに腰掛け、一休み。
缶ビールが欲しいところだが
近所にコンビニはないし、
区役所で酒類販売はなかろう。
もっとも今日は祝日で休みだ。

ボケッとしていられやしない。
木陰のお蔭で暑さは凌げたが
さて、どうするか?
ほとほと思いあぐねていた。

=つづく=