2026年10月27日火曜日

第4215話 福井よいとこ 一度は行かにゃ (その1)=

夕闇迫る福井駅に降り立つ。
初めての福井市である。
この4月に和歌山県を訪問し、
5月には徳島県を訪れた。
これで日本全国47都道府県を
全てクリアしたのだったが
都道府県庁所在地のほうは
青森市と福井市が残っていた。

本来は此度の福井で
全国制覇達成のハズだったけど
9月半ばにホテルが
まったく取れず、断念した青森市。
47番目の県庁所在地は
来夏に持ち越しとなった。

それはそれとして駅に
隣接する宿にチェックインし、
夜の街に打って出る。
あらかじめ目星を付けて
おいたのは居酒屋「錦輝」。
これを「にしき」と読み下す。

カウンターに着きドライ中瓶。
真っ先に通したのは
これも目星を付けていた、
福井の珍味五種盛り合わせだ。

越前汐うに(バフンウニ塩漬け)
鯖のへしこ(鯖の糠漬け)
ふくのこ(ふぐ卵巣の粕漬け)
花らっきょう(三年熟成小粒逸品)
つまみたら(干しだら) 1600円

少食なくせにあれやこれやと
手を出したいスケベ人間に
これ以上のつまみはない。
中瓶なんぞすぐカラとなり、
越前岬の冷酒を所望した。
ほうら小林旭が歌い出す。

♪  哭くな荒磯(ありそ)の海燕
  夕陽が落ちる
  ひびけ男の嘆き唄 越前岬に
  いまさら呼んでも 還る女か
  泣くため生まれて来たような
  おまえのふるさとにゃ
  似合いすぎる 暗い海だ 日本海だ…
  雪子…雪子
  何故に この世を捨てた  ♪
   (作詞:吉田旺)

この曲はNY時代に
クルマを飛ばしながらさんざ聴いた。
カセット収録の次の曲、
細川たかしの「おんな岬」と
J.C.の頭ん中ではペアを組んでいる。

さて、福井の地酒・越前岬だが
なぜか日本海と反対の永平寺町、
田辺酒造の手によるもの。
品書きに"抜群の後キレのよさ" 。
いや、驚きました。
その通りである。
のど越しスッキリどころか
瞬時に消えてなくなる印象。
こんな酒は生まれて初めて。
日本酒党はぜひ試して欲しい。

九頭竜川の天然鮎、
その白子と卵の塩辛、
うるかを追注に及ぶ。
稀少な珍味はなかなかである。
ここで福井市・安本酒造の
白岳仙に切り替えた。
ほどよい酸味が特徴ながら
何せ越前岬のアトなので
どうしても印象が薄れてしまう。

〆サバの炙りで文字通り〆て
お勘定は6千5百円。
好い店だった。

この旅、最初の夜。
ここで寄宿する J.C.ではない。
市内随一の繁華街、
片町へ足を向けたのでした。

=つづく=

「錦輝(にしき)」
 福井県福井市大手3-14-6
 0776-28-2829

2026年10月26日月曜日

第4214話 加賀・金沢は20年ぶり

本日より北陸ひとり旅。
上野から乗った北陸新幹線、
かがやき507号は正午前に金沢着。
この街は20年ぶりである。

駅がド派手に生まれ変わり、
イタリアからの団体ツアーが
上向いてしきりに写真を撮る。
駅から近江町市場を経て
浅野川のほとりにやって来た。

「八郎すし」は予約済み。
独りっきりのつけ台は
先・後客ともにゼロ。
目の前に二代目親方と
倅の三代目が居並び、
接客は二代目の嫁さんの若女将。

ドライ中瓶のアテは岩もずくで
沖縄の養殖モノとは違い、
歯ざわりがこりこりと快適。
能登のもずくはひと味違う。

電話の際に若女将から
おまかせでよろしいでしょうか?
訊かれてアグリーしている。
最初に珍しいものが登場した。
潮仕立ての蛤に酢めしが乗っかり、
何やらお茶漬け風だ。
江戸前仕事では見たことが無く、
いかにも加賀前という感じ。

そうして、にぎりがスタート。
アラ・あおりいか・がんどぶり・
鯖・バイ貝・赤身・中とろ・
甘海老・炙りかます・鯵。
鯖・バイ貝・甘海老・鯵の4種は
にぎりの脇に刺身も少々。
ユニークなスタイルである。

ボストン産の本まぐろには
じゅうぶんに満足した。
最後の鯵で腹がくちくなり、
吸い物は辞退する。

昭和23年創業は今年で73年。
とても美味しい鮨ながら
J.C.には種が大き過ぎて
おちょぼ口の中が
魚に占領されてしまう。
この半分でも大きいくらいだ。

まさか手練れの鮨職人の面前で
鮨種を一刀両断することなど
出来るハズもない。
これこそ J.C.が鮨屋を
敬遠する最大の理由なのだ。

それでも地方へ行くと
よく鮨屋を利用するのは
地場のサカナを何種類も
少しづつ食べられるから。
料理屋ではとてもこうはいかない。

日本酒を我慢して中瓶2本のみ。
お勘定は1万6千円也。
ごちそうさまでした。
若女将が外まで送ってくれた。

浅野川に架かる梅ノ橋が真ん前。
床版(しょうばん)は
鉄筋コンクリートだろうが
木製の欄干に風情があった。
右岸へ渡りながら川面を覗くと
澄み切った水の流れが美しい。

すぐ近くのひがし茶屋街を歩く。
うわっ! 何だヨ、この人出は!
そういやあ、先刻も
駅のコインロッカーが全滅。
オッサン3人の手荷物預かり所に
バッグを置いて来たんだった。
京都ほどじゃないにせよ、
金沢も終わっちゃってますネ。

兼六園でシンボルマークの
徽軫(ことじ)灯籠を拝む。
徽軫は琴の糸を支える、
琴柱(ことじ)のことである。

兼六園、香林坊、犀川大橋、
近江町市場と歩きめぐり、
敦賀行きの新幹線で
初めての福井市に着きました。

「八郎すし」
 石川県金沢市並木町2-16
 0762-31-1939

2026年10月24日土曜日

第4213話 歓びアーカイブ 第45回

ここ数年、朝食はほとんどパン。
ごはんを食べることは滅多にない。
町歩きをしていても
パン屋はよく覗く。
ええ、そうです。
昔のパン屋で買ってます。

2014年12月9日火曜日

第986話 秋の日の一人歩き

結局は薬局、前話のつづきみたいだが
こち亀タウンでラーメンを食べたあと、
まっすぐ都心に戻りはしなかった。
小春日和りを味方につけて
真東に進路を取った。

荒川と江戸川の間に中川が流れている。
その中川を中川橋で渡った。
するとほどなく現れたのがコレだ。
新しくとも老舗ベーカリーの風情あり
以前にもたびたび述べているが
J.C.は古いパン屋に弱い。
オサレなブーランジェリーなんぞ興味ナシ。

でもって、入っただヨ。
スペースのある店ながら品数はきわめて少ない。
それでも惹かれたのがコレだ。
三色パンと称する
いや、マイッたなァ、懐かしいなァ。
実はこのパンを見るのは 30年ぶり。
小学生の頃に棲んだ大田区・大森辺りでは
”三つ島” と呼ばれていた。
ちゅうちょなく買い求め、
一人歩きはなおも東へ東へ。
いや、正確には東北東かな。

JR常磐線・金町駅のロータリーを横切り、
ガードをくぐり抜けて北上し、
かなり歩いて水元公園にやって来た。
何年ぶりだろうか? たぶん35年ぶりだが
水周りの風景をよく覚えている。
この池は小合溜(こあいだめ)という。

其処からさらにテクテク歩いた。
ふと気がつけば埼玉県・三郷市に入県。
いや、この日目指したのは埼玉じゃなく
千葉県・松戸だったんだけどネ。

かなり遠回りの末、
やっとこさたどり着いた松戸だった。
松戸神社や旧平潟遊郭跡を散策したものの、
かつて訪れた酒場の開店には
まだだいぶ時間がある。
ええい、ままよ! 
再び徒歩で都内の金町に引き返す。

引き返したが、さすがの健脚も
くたびれ果ててヨレヨレ。
息も絶えだえに「末広飯店」へ。
注文はまたもやラーメン(550円)だ。
店は上湯(シャンタン)をウリにしており、
この値付けはお値打ちといえる。
具はチャーシュー・シナチク・うず玉
さすがにスープ上質にして
麺もシコシコと極上のラーメンを味わえた。
金町まで遠出する価値、大いにありの佳店だ。
(現在は閉業)
結局、昼も夜もラーメンの一日になった。

おっと、帰宅後に開いた三色パンを披露せねば。
ジャム・クリーム・あんこの3点
煎茶を淹れて食したものの、
美味しさはまずまず止まりだが
J.C.にとっては懐かしみも旨みのうち。
まっ、しっかたなかんべサ。

「星野ベーカリー」
 東京都葛飾区新宿2-11-1
 03-3607-2930

「末広飯店」
 すでに閉店

=本日追記=
最近はレトロブームなのか
あちらこちらで三色パンを
見掛けるようになりました。

2026年10月23日金曜日

第4212話 居心地よろしく 麦酒も美味し (その2)

そんなこって彼女らの会話が
ヤケに騒々しい。
こりゃ、口ん中に
何か放り込んでやらにゃあ、
収まることはないな。
騒ぐ女子会は居酒屋でおやりっ!

ところがどんどん料理が
運ばれても彼女らの口角から
泡が消えることはなかった。
哀れオッサン、独り淋しく
諦めの境地に沈んでいた。

仕方ないからメインの料理をー。
TOKYO-X は2種類あって
肩ロースのグリルと
部位は定かでないが
柔かく煮込んだ X 豚のオーヴン焼き。
どちらか行こうと迷ったものの、
ポーションが大きそうで尻込みする。

結局は薬局、温かい前菜から
天使の海老のカダイフ包み揚げを。
カダイフはトルコ由来で
小麦粉と水から成る麺状の食材。
”天使の髪” の愛称を持ち、
イタリアンのカペッリーニと同名。
天使の海老の天使の髪包みねェ。
見事にダブル・エンジェルだわ。

天使たちの羽ばたきは
軽やかにして繊細。
パリはマドレーヌ広場の
三ツ星レストラン、
「ルカ・カルトン」の
名物料理をほうふつとさせる。

あちらはより高級なアカザエビ、
いわゆるスカンピが使われ、
アラン・サンドランスの才能を
いかんなく発揮する逸品だった。

お勘定は4400円也。
明細を見たら麦酒と料理が
仲良く2200円づつ。
我ながら上手に飲み、
食べ分けたものだと感心。

帰りに1階の売店でみやげを物色。
TOKYO-X の規格外ベーコンを
発見して小躍りする。
いわゆる切り落としだが
150g で1000円と規格外は破格。
ここは買いの一手である。
そうだ、明日の朝は
ベーコンエッグを焼いて
トーストの友としよう。

そんなことを考えながら
福生の街をあとにした。
Y野サンとの義理も果たせて
肩の荷が降りた心持ちであります。

「シュトゥーベン・オータマ」
 東京都福生市福生785
 0425-51-1325

2026年10月22日木曜日

第4211話 居心地よろしく 麦酒も美味し (その1)

「シュトゥーベン・オータマ」は
当地の大多摩ハム直営店。
シュトゥーベンは
居心地のいい部屋を指す。
ダイニング・フロアの天井高く、
都心ではまず考えられない、
ぜいたくな空間を誇っている。

窓辺の四人掛けに案内され、
まずは麦酒の品定め。
クラフトビールは苦手につき、
一番スッキリのデンマーク産、
カールスバーグを大ジョッキでー。

前菜はハム盛合わせのハーフ。
お運びのコに内容の説明を受ける。
TOKYO-X とフツーの豚のロースハム。
ソーセージも2種で
ボローニャともう1種は
残念ながら彼女に知識なく、
"もう一つのソーセージ" となった。

ハム・ソーセージにパンは必須。
一緒に食べると互いに引き立て合う。
バゲットを追注したら
きちんとバター付きで来た。
最近はバターを省く所が多い中、
この店はいい店だ。

ハムたちの上に美食家のパセリの
異名を取るセルフィーユが1房。
くだんの彼女に
「もちろん有料で構わないから
 セルフィーユを10房ほど
 貰えないかな?」
「ハイ、かしこまりました」

しばらくして戻り、
「150円いただくとのことです」
「エッ、もっと高くてもいいのに」
小皿に10房以上がこんもりと来た。

お替わりは福生の石川酒蔵による
ピルスナーを同じく大ジョッキで。
此処の(大)は1100円。
750円の(中)の倍は楽にあり、
呑ん兵衛は迷わず(大)にすべし。

18時近くになって立て混み始めた。
カップルや家族連れなどさまざま。
若い娘ばかりの8人組が来店し、
急に騒がしくなった。
店はにわかにざわめいて来た。
ほうら松山千春も歌い出す。

♪ 深く耳をすませば 
  朝一番の汽笛
  街はにわかに ざわめいて
  遠い旅の空から 
  君に送る便りは
  力まかせの なぐり書き
  まわり道でも 旅の終わりに
  君にもう一度 
  会えたならいいね    ♪
   (作詞:松山千春)

「人生(たび)の空から」は
1980年のリリースで
彼の9枚目のシングル。
浪花の小姑は知ってるだろうか?

=つづく=

2026年10月21日水曜日

第4210話 横田基地に 興味は無くとも

青梅から乗ったJR青梅線は
十数分で福生に到着。
余りに小ぢんまりした駅に
拍子抜けしてしまう。
2駅東京寄りの拝島が
立派な駅なだけに
この印象も無理はない。

福生といえば横田基地。
そう、アメリカ空軍のネ。
まずは行ってみるかー。
いえ、キャンプ内には入れない。
ベースサイドストリートを
ただ歩くだけでここは国道16号線。

道の東側はフェンス&鉄条網。
西側に店々が軒を連ねている。
米兵を当て込んだ食い物屋が多い。
ハワイアンにタコライス。
ベーグル、ピッツァ、ハンバーガー。
スパムおにぎりに
名物イタリアンライスなんてのも。

数ある食べ物にはほとんど興味ナシ。
むろんのことに
横田基地にもまったく興味がない。
長居は無用とばかり、
福生駅方面に引き返す。
来た・見た・帰った! の典型例。

夕食予定の「オータマ」。
そのすぐ近くにバーやスナックが
密集する裏通りを発見。
言わば、アメリカ版飲み屋横丁だ。
この街に1泊するつもりなら
食後に立ち寄ってもいいが
今回はそうもいかない。

「オータマ」の開店までは
まだまだ時間があり、
駅の反対側の西口に回ってみた。
こちらも思ったより開けている。
「FUSSA 福生」なるエスニックは
アジアに限らず、
南米料理もウリにしており、
23区内にはまず無いタイプ。

サルタード、エンパナーダ、
ジャークチキン、セビッチェ、
ティラピアのフライまであった。
このサカナは淡水に生息し、
和名を泉鯛という。

ちなみにサルタードは
ペルーの中華料理とも
いわれる肉野菜炒め。
エンパナーダは具材を包んだ、
餃子型パンでスペイン発祥ながら
アルゼンチンの国民食となる。
J.C.もブエノスアイレスで食べた。

どうにか時間を潰し、
開店の17時と同時に入店。
一番乗りである。
ふむ、なかなかにオサレな
空間じゃないでしょか。

2026年10月20日火曜日

第4209話 青森転じて 青梅になった (その2)

東青梅のうどん店「根岸屋」。
カレー南ばんが運ばれたのは
かっきり30分後だった。
混雑しているとはいえ、
ちと時間が掛かり過ぎの感あり。
まっ、いいか。

武蔵野うどんはぶっとい。
歯応えもかなりのものである。
しかも並盛りで
他店の大盛り分はあった。

カレーが並々を超えて
どんぶりから溢れて出ている。
イヤだなァと思いつつも
食べざるを得ない。

TOKYO-X は3片。
足せば薄切りロース1枚分だ。
噛んだときの食感がミシッミシ。
独特の味わいがあって旨い。

地元・青梅市の小澤酒造による
冷たい澤乃井に切り替えた。
1合500円だが片口に
たっぷり入って来た。
1合半はあるんじゃなかろうか。

フロアで独り奮闘する
お運びのオバちゃんに
「これで1合? もっとあるよネ」
「サービスなのよ」
「へぇ、大サービスだありがと!」

うどんは食べ切れんかった。
普段は麺半分にするが
初めての店ではどれほどの量か
見当がつかないからネ。
こういうものを書き綴る以上、
内容を正確に伝える義務も
生ずるし・・・。

東青梅から青梅まで1駅歩く。
旧青梅街道を西へズンズンズン。
途中、昭和幻燈館と
昭和レトロ商品博物館に立ち寄る。
ここで多くを語らないのは
どちらもそれなりだからだ。

青梅の街の南を流れる多摩川に
行ってみようとも思ったが
坂を下らねばならないため、
帰りがけっこうキツそうで
遠望するだけにとどめた。

駅に近い仲通りは寂れていたが
鰻「寿々喜家」と
日本そば「玉川屋」は揃って健在。
殊に「寿々喜家」は
また来る機会があったら
一飲一飯の恩恵にあやかりたい。

まだ15時前、さて、どうしよう。
此度、背中を押してくれたY野サン。
そうだ、彼女の棲む福生に行こう。
以前から気になっている
「シュトゥーベン・オータマ」で
生ビールを飲もう。

「根岸屋」
 東京都青梅市勝沼1-40-4
 0428-22-3083