2026年10月9日金曜日

第4199話 飲んだくれて浅草 (その2)

浅草随一の江戸前鮨店、
「弁天山美家古」に横並び。
相棒はつまみを満喫したいと云う。
その旨、六代目親方、
ダイちゃんに伝えると、
出た出た月が、もとい、
出た出たつまみが、続々とー。

以前はこんなに揃ってなかった。
六代目は若いんだねェ。
まだ五十そこそこだもの。
あれこれ試行錯誤を
重ねた結果だろう。

J.C.の江戸前鮨の師匠は
先々代の四代目。
この人にはかけがえのない、
多くの江戸流儀を習った。

まぐろ赤身の超薄切り
小肌にぎりのでんぐり返し
トロから食う奴は愚の骨頂
わさびを醤油に溶かすなかれ
いくらは酒の肴にちょっとだけ
納豆巻き・新香巻きは家で食え!

思い出していて懐かしさに
目頭が熱くなり、
あやうく落涙しそうになった。
いえ、これはわさびが
効いたのでした。

宮城の浦霞に切り替える。
出て来たつまみは
昆布&おかか煮
まぐろ赤身&海苔佃煮
北寄貝&赤貝ひもぬた
平目煮凝り 穴子白焼き
炙り〆鯖 戻りかつお刺し

相方は美味しく感じると
ばんたび拍手までしている。
ほんとだネ、にぎり以外の
「美家古」の味を堪能した。

福井の伝心にスイッチ。
冷酒はみな 1.5合の徳利入り。
すぐに浦霞に戻す。
いえ、伝心に不満はないけどネ。

4本ほど空けたところで
にぎりに移行したものの、
平目昆布締めと車海老は
覚えてるが他は記憶に無い。
計4~5カンほどつまんだら
また徳利のお替わり。

したたかに酔った。
こんな飲み方をしたのは
久しぶりのことだ。
お勘定は2万7千円ほど。

夜の街に出たが
その夜はまだ終らない。
田原町の「The Auld」に流れた。
馴染みのスナックの跡に出来た
ブリティッシュ・パブだ。
Auld はスコティッシュで
イングリッシュの Oldと同義。

入口近くのバーカウンターは
変わらないものの奥は一変。
トイレだけが昔のままで懐かしい。
はばかりに往時を偲ぶ秋夜長

ここでもホワイトレディと
サイドカーまで覚えちゃいるが
あとは忘却の彼方。
しかし、N美も強くなったもんだ。
J.C.の向こうを張って
ここまで飲める女なんて
手持ちの駒では彼女一人だけ。

「神谷」の電氣オールドで始まり、
「The Auld」のカクテルで締めた。
Old から Auld、
イングランドからスコットランドに
旅した気分の浅草の夜でした。

「弁天山美家古寿司」
 東京都台東区浅草2-1-16
 03-3844-0034

「The Auld」
 東京都台東区西浅草1-7-3
 志津野ビルB1
 03-5830-7100

2026年10月8日木曜日

第4198話 飲んだくれて浅草 (その1)

最初に白状してしまうが
この日は飲み過ぎた。
いや、飲み過ぎどころじゃない。
完全に飲んだくれてしまった。
相棒は大雨に見舞われた、
内房の雨女・N美である。

ひと月前。
小雨に煙る隅田川を眺めつつ、
イタめしを食べたときに
鮨屋に連れてゆく約束をした。
それがこの日で
さいわい東京の雨降り連続記録が
途絶えた日でもあった。
雨を止めたのが雨女かえ?
奇怪なこともあるもんだ。

前回同様まずは「神谷バー」へ。
あのときは J.C.の必食アイテム、
蛍烏賊沖漬けを食べさせるために
1階で飲んだが
此度は2階に上がった。
蛍烏賊は1階限定だからネ。

ドライ大瓶を注ぎ合って乾杯。
ビールをチェイサー代わりに
当方、電氣ブランオールド。
相方、電氣ブランサワー。
1階ならフード無しで構わぬが
2階はそうもいかない。
苦肉の策で枝豆。
これから鮨を鱈腹食うからネ。

話題はもっぱら
NY時代のエピソード。
話がワインから食後酒に及び、
デンマークのチェリーブランデー、
ピーター・ヒーリングに及んだ。

そう言えば「神谷」には
この酒を使ったカクテルがあり、
電氣ブランFIXという。
味見させてやった。

エニウェイ、1時間ほど過ごし、
開店の17時には
「弁天山美家古寿司」に赴く。
つけ台の一番奥に着き、
再びドライを注ぎ合う。
本日二度目の乾杯。

此処へ来ると突き出しを
少しつまんだら即刻、
にぎりに移行する。
今日はN美がにぎりの前に
いろいろつまみたいとのたまう。
いいでしょう、いいでしょう。
思う存分、食べとくれ。

=つづく=

「神谷バー」
 東京都台東区浅草1-1-1
 03-3841-5400

2026年10月7日水曜日

第4197話 宮崎女 宮崎鰻に 感極まれり (その2)

荒川区・小台駅前「あら川」。
何枚も重なる品書きを
丁寧にめくってチェックする。
惹かれたのは新仔鰻だ。

国産新仔入荷いたしました
本日は鹿児島・宮崎・愛知産です
鰻重 蒲焼き 白焼き
6500円 税込み
入荷したばかりの国産養殖鰻です
柔かさが特徴です
一度、ご賞味下さいませ!!

こうまで言われちゃあネ。
まっ、言われなくとも
心に決めていたけどネ。

丸々1尾で来るに相違あるまい。
J.C.は少食だが相方も
バクバク食べるタイプではない。
1人前のシェアで合意した。

待つこと20分。
その間、金鵄のお替わり2回。
調った鰻重は見るからにつややか。
こんな姿の鰻が不味いワケがない。

蒸し・焼きの塩梅よろしく、
たれの甘・辛も申し分無し。
接客のオニイさんに
「今日の新仔は何処の産?」
「ハイ、本日は宮崎です」

黙って聞いていたK子の腰が
ピョコンと浮いた。
いや、実際に浮きはしないが
浮いたように見えたのだ。

そうだよねェ。
はるばる東京にやって来て
ふるさとのウナ助に
バッタリ出逢うなんてなァ。
単なる偶然とは思えないもんネ。

あらあら瞳がうるんで
心なしか涙があふれそう。
泣くことはなかろうが
その気持ち、判らなくもない。
感極まっちまったんだネ。

重箱を仲良く半分づつ平らげて
本日はそれでおしまい。
この夜も妹君宅に泊すると云う。
それではと梶原まで送り届けた。

梶原は北区ながら
都電で一つ手前の荒川車庫は
文字通り荒川区。
「夢コンサート」の情報は
妹さんに拠るものらしい。

年内にもう一度上京すると
云うので再会を約し、
肩をポンポンと叩いて
それじゃまたネ、サヨウナラ。

「あら川」
 東京都荒川区西尾久3-21-2
 03-3893-4167

2026年10月6日火曜日

第4196話 宮崎女 宮崎鰻に 感極まれり (その1)

「夢コンサート」が15時半に
ハネたあと、早めの夕食。
荒川区役所前から都電荒川線で
8ツ目の小台へ移動する。

思えばこの1月。
K子と初めて逢ったのは
小台の一つ手前、
宮ノ前の停留所だった。
二人して都電に揺られながら
往時が懐かしくよみがえる。

入店したのは駅前で通し営業する
その名も「あら川」なる鰻屋さん。
鰻屋は持ち帰り客が多いため、
通し営業せざるを得なかろう。
われわれには好都合だった。

ドライ中瓶を注ぎ合って
グラスをカチンと合わせる。
まずは肝焼き2本と
上新香1人前を通す。
鰻屋に来たら焼き上がりを待つ間、
これが定石となっている。

何故か新香盛合わせを上新香と
呼ぶのは鰻屋だけの習わし。
鰻重でん、鰻丼でん、
小さな新香はデフォで付いて来る。

対して多少なりとも
豪華になるから上新香と
いうことだろうが
ならば天丼やかつ丼を扱う
蕎麦屋・食堂だって同じこと。
なぜか蕎麦屋に上新香の文字を
見たことは今まで一度として無い。

まあ、価格的に丼モノの頂点に
君臨する鰻であるからにして
高級感を高めるための
流儀なのかも知れない。

「あら川」の上新香はさすがだ。
浅漬けが胡瓜・蕪・大根・茗荷。
出来合いは瓜奈良漬けと山牛蒡。
”上”を謳うに値する。

肝焼きも立派で他店の倍はなくとも
1.5 倍はあるんじゃなかろうか?
1本を分け合ってもいいくらいだ。
腸管だけでなくレバーもいくつかー。

日本酒が欲しくなった。
いろいろ揃ううち、
京都は伏見の金鵄正宗の冷酒を所望。
金鵄は ”きんし” と音ずるが
金のトビのことで
日本神話では霊鳥を意味するそうだ。

別段、霊魂を感じはしなかったが
そこそこ美味しい清酒ではあった。
そろそろ鰻に参りましょうかー。

=つづく=

2026年10月5日月曜日

第4195話 大いに笑った「夢コンサート」

断筆騒動のおかげで知己を得て
のみともとなった、
M浦K子サンより、LINE着信。
宮崎県・延岡市在住の方である。

「J.C.は伊藤ゆかりサンが
 お好きでしたよネ?」
「歌い回しも声色も大好き!」
「荒川区役所前でコンサートが
 あるんだけど行きます?」
「へえ~っ、彼女独りの?」
「他に千昌夫とか狩人とかー」
「ふ~ん、行ってみようかな」
「チケット取っときますネ」

てなこって上京した、
K子サンと赴いたのは
荒川区民会館(サンパール荒川)
大ホールであった。
BSのTVCMでお馴染み、
夢グループ主催の「夢コンサート」。
石田社長と同社専属の保科有里も
歌うんだとサ。

いや、予想以上に楽しめた。
出場者は順に
石原詢子・狩人・社長&保科有里。
休憩を挟んで
伊東ゆかり・新沼謙治・千昌夫。

お目当てのゆかりチャンは
「小指の思い出」「恋のしずく」
「私の青空」「百万本のバラ」と
4曲も披露してくれた。
ベシャリもお手の物で
会場を大いに沸かせる。

狩人の「コスモス街道」は
気に入りの曲で、大ヒットした
「あずさ2号」より好きなくらい。
売店で彼らのCDを買っちまった。

保科有里が社長と掛け合う、
「やすくして❤」は笑わせる。
爺さん・婆さんだらけの観客は
みんなBSを見てんだネ。
彼らのCMは先刻ご存じ、爆笑の渦だ。

かく云う J.C.も最初見たとき、
なんじゃこれ?! 顔をしかめたけど
見慣れて来ると彼女が
何とも可愛くなって来た。
人間ってつくづくヘンな生き物だ。

新沼謙治の「ヘッドライト」は
ヒズ・ナンバーのマイ・ベスト。
仏映画、ジャン・ギャバン主演、
「ヘッドライト」に触発された詩は
曲ともども秀逸につき、
みなさんも聴いてみて下さい。
浪花の小姑は知らんだろうな。

トリは大御所・千昌夫。
ここまで話術が巧みとは知らなんだ。
歌ってんのかギャグってんだか、
もうゴッチャゴチャ。

一つだけギャグを紹介しておこう。
ボランティアで近所の雑草を
刈っていたんだとー。
すると独りの婆さんが
「ヒョッとしてあんた、千昌夫?」
「いいえ、草刈正雄ですっ!」
おあとがよろしいようで。

2026年10月4日日曜日

第4194話 歓びアーカイブ 第41回

お約束の続きです。

2012年9月24日月曜日

第410話 関八州を見廻って (その3)

猛暑をものともせず敢行した
関八州見廻りシリーズの一環、
上州・桐生の町で出くわしたのがこの店舗だ。
ソースかつ丼の「志多美屋本店」
いつの頃からか町の名物に
のし上がったソースかつ丼。
中でもこの店の名前は聞き及んでいた。
ここで遭ったが三年目、
機会を逃してはなるまい。
古い家屋や仕舞屋が残る桐生にあって
モダンな一軒屋が否が応でも目をひく。

暖簾をくぐり、引き戸を引き、
敷居をまたいだとき、
大宮の「いづみや」で
イカフライを食べたことを思い出す。
あらら、昼にイカフライで
夜にソースかつ丼かや?
揚げものばっかやん。
これも何かのめぐり合わせ、
ドンマイ、ドンマイである。

読者は耳タコでございましょうが
生ビールが旨いのなんのっ!
ところが品書きのほうはきわめて限定的。

 ソースかつ丼 玉子かつ丼 
 玉子丼 親子丼 ソースかつ定食 
 かつ鍋定食 親子鍋定食

これだけである。
つまみが一切ないということは
遠回しに飲む客を
歓迎しないという意思表示。
でも飲んじゃうもんネ。
地元群馬はみどり市の近藤酒造による、
赤城山(あかぎさん)の冷酒をー。

ソースかつ丼4個入り(780円)を所望。
ちなみに2個アップの6個入りは
200円アップの980円。
かつはヒレかつである。
歯を立てるとパン粉ガシガシで
食感悪く不満が残った。
肉にジューシーさも乏しい。

醤油ベースにウスターソースを
混ぜ合わせたようなタレは
新潟のタレかつ丼より
カツレツにマッチしている。
とは言え、名物に美味いものナシ、
浅草辺りの言い伝えが
からっ風の上州にも吹いていた。

再び夜の大宮に舞い戻る。
昼に訪れた「いづみや本店」の隣り、
「いづみや第二支店」へ。
すると、
「お客さん、10時までなんですヨ」
「エッ、隣りの本店も?」
「いいえ、あっちはもう少し
 遅くまでやってますヨ」
ときに午後9時45分、
すべるようにお隣りへお引越し。
結局は薬局、振り出しに戻ったわけです。

腹一杯でこれ以上食べられないのだから
真っ直ぐ帰宅すりゃいいものを
ビールは別腹、ベツバラ。
結局は薬局、ジョッキのお供はコレである。
冷奴は心強いわがシェルター
豆腐に腕押し? 豆腐にかすがい? 
子はかすがい? フフッ、
豆腐は酒とわが胃袋のかすがいなんざんす。

そう、そう、読者から”関八州”って何ぞや?
そんな問い合わせがありました。
正式には関八州取締出役といい、
関東八州の治安・風俗を
取り締まるパトロール隊のこと。

黒澤明の名作「用心棒」では
目明しの沢村いき雄が
八州廻りにソデの下を渡すところを
桑畑三十郎の三船敏郎と
めし屋のオヤヂの東野英治郎が覗いて
笑いをかみ殺している。
ご覧になれば八州廻りの何たるかが
一目瞭然でありましょう。

=おしまい=

「志多美屋本店」
 群馬県桐生市浜松町1-1-1
 0277-44-4693

=本日追記=
「いずみや本店」のデータは
作話をご覧下さい。
またちょいと寄りたくなりました。

2026年10月3日土曜日

第4193話 歓びアーカイブ 第40回

14年前に埼玉県・大宮と
群馬県・桐生を訪れたときの話です。

2012年9月21日金曜日

第409話 関八州を見廻って (その2)

大宮駅前の「いづみや」で
真昼の生ビールを飲んでいる。
瓶の銘柄は何じゃらホイと冷蔵庫をのぞいたら
これまたサッポロのラガー、いわゆる赤星だった。
大瓶で510円はずいぶん安いや。

ラーメンのあとだからつまみはいらないが
そうもいかずに所望したのがコレ。
ハテ、これは何でありましょう?
とんかつだろうってか?
いいえ、これは金360円也のイカフライなんざんす。
こんなカタチの1枚揚げはきわめて珍しい。

接客のオバちゃんとオネエちゃんがフレンドリーで
居心地よく、なかなかいい店だわい。
あらためて周りを見回すと、ほぼ全員が単身客。
友だちいなけりゃ、恋人もいない連中ばかりかな?
ここは哀しいオトコの吹き溜まりかい? 
いや、そうでははあるまい。
独り酒場で飲む酒には
それなりの楽しみがあるものだ。
細長いテーブルは相席が苦にならず、
独り飲みに適している。

ところ変わって上州は桐生の町にやって来た。
映画同様にブログも
アッという間に舞台が変わる。
高崎・伊勢崎を素通りしたのは単なる気まぐれ。
3年ぶりの桐生の町を歩きたくなったのだ。

1時間ほどほっつき歩き、
汗ビッショリになって3年前にも訪れた、
レトロな「立田野食堂」に到着した。
来てはみたものの、空腹感のクの字もない。
今しばらく渡良瀬川のほとりでも
散策してみようか・・・。
と、そのとき視野に入ったのが
真向かいの「高野商店」。
忠治漬で有名な老舗の漬物店である。
フラフラッと道路を渡り、
貼り紙の”梅の奈良漬”に惹かれ、
購入した次第だ。

帰宅後、味わうと奈良漬にはまだ若い。
梅の実の粕漬けといった感じ

見ているうちに荒木一郎の
「梅の実」が聴きたくなった。
ちょいとデスクを離れてCDラックへ。

 ♪   梅の実がなった この小さな朝に
   青く冷たい 朝もやの中に
   梅の実は風の ゆりかごに眠る
   やがて生まれる 子どものように
   あの空 あの雲 遠い調べよ
   山の頂きの 白い雪    ♪
    (作詞:荒木一郎)

現実の桐生に戻ろう。
梅の奈良漬をぶら下げて
渡良瀬川と反対の道を行った。
この時点で「立田野食堂」での晩酌も
消えたことになる。
町のはずれを歩いているうち、
聞き覚えのある店に遭遇した。

=つづく=

「いづみや本店」
 埼玉県さいたま市大宮区大門町1-43
 048-641-0211

「高野商店」
 群馬県桐生市東6-6-21
 0277-45-0746

=本日追記=
この続きを紹介したいので
明日は日曜ですが載せますネ。