2012年6月15日金曜日

第339話 陽のかげる坂道 (その1)

風薫る5月中旬であった。
せんぽ東京高輪病院にて
友人のハーピスト・石﨑千枝子サンのコンサート。
いつものようにMCをつとめるために同行した。
去年に続いて2度目である。

患者さんと病院のスタッフが集まる受付ロビーに
ハープの音色が流れる。
いやあ、いい病院ですねェ。
患者さんが癒されれば演奏者としても
こんなに幸せなことはないでしょう。

仕掛け人は当病院に勤務する I 原医学博士。
泌尿器科の権威で医学博士の肩書きがいかめしいが
本人の性格はいたって気さく。
気心の知れたマイのみともなのである。
宴席でのバカ笑い、もとい、高笑いは
座をうるおす一服の清涼剤ともなっている。
一応、J.C.は親しみをこめて”ハカセ”と呼んでおりまする。

コンサートが成功裏に終わり、
音楽に理解と造詣の深いY芝院長と談笑。
クラシックからジャズから、いや、お詳しいこと。
「来年も再来年もお越しください」との仰せに、
石﨑女史も満面の笑みであった。

その夜はハカセとハーピストと3人で会食。
この夕餉はハカセが慰労を兼ねて
われわれにご馳走してくれるのだ。

当夜の会場は品川駅前、
GOOSホテル内にある加賀料理の「大志満 高輪店」。
耳慣れないホテルは以前のホテル・パシフィック。
むか~し、芝の東京プリンスホテルでバイトをしていたとき、
パシフィックで開かれた大晩餐会のサービスに
助っ人でかり出されたことがあったなァ。

病院のある高輪台から陽がかげり始めた坂道を降りてゆく。
このときであった、以前ふれたオマワリ2人組のチャリンコが
狭い歩道を前後して走って行ったのは!
この件は例の「職質シリーズ」でさんざっぱら書いたから
今日はこれでやめておく。

坂を降り切ってホテルの敷地内に踏み込もうとすると、
その一画にシンガポール料理店が開業していた。
彼の地の名物、チリ・クラブがウリの店だ。
内心、加賀よりシンガポールがいいなァと思いつつも
そんなことは口に出せた義理ではない。
ホテルの3階に昇って行きましたとも。

=つづく=