2015年1月21日水曜日

第1017話 汝の隣人を愛せ (その2)

銀座7丁目の巨大ビヤホール「L」にいる。
アルゼンチン人の夫、スペイン人の妻、
ともにスペイン語圏に出生した夫婦と会話を楽しんでいるのだ。

まずは夫のほうのふるさと、ブエノスアイレス談義だ。
J.C.がこの街を訪れたのはちょうど20年前の1995年3月。
ニューヨーク在住時代に
予定外の休暇が5日ほどポッコリ取れたので
以前から行ってみたかったブエノスに単身出かけたのだった。

観光には興味が湧かないタチにつき、
あてもなく市内をぶらぶらしては昼日中から酒を飲んでいた。
よく顔を出したのは有名な「Cafe Tortoni」。
ランチタイムはいつもここだった。
アンニュイ漂う店の雰囲気が好きだった。
クルメス・インペリアルという銘柄のビールを水のようにあおり、
その片手間にサンドイッチやサラダをつまむのだ。
二日酔いのときにはフレッシュ・オレンジジュースを飲んだりもした。
店のステイタスは一流だったが味はせいぜい二流どまり。
アルゼンチンの食文化は推して知るべしであったネ。

晩飯には「Alturito」に2回行っている。
リブアイステーキやパリラなるミックスグリルを食べている。
未消化の詰め物入り豚の腸にはマイッた記憶がある。
以上2軒のレストランをブエノス生まれの夫・ミゲルは知っており、
ハナシに花が咲いたのだった。

一方の妻・マリアはスペインの大学都市・サラマンカの出身。
サラマンカ大学はヨーロッパ大陸において
ボローニャ大学、パリ大学と並ぶ古い歴史を持っている。
J.C.はこの街には行ったことがない。
行ったことはないけれど、縁も所縁もないというわけではなかった。

今は昔、1971年4月30日。
初めての欧州旅行のさなか、スペインの首都・マドリッドにいた。
その日の日記を紹介してみよう。

近郊の古都・トレドに行く。
マドリのユースホステルで一緒になったS君と同行した。
一つ列車に乗り遅れてしまい、駅前で軽い昼食をとる。

トレド行きの列車内で日本人の女の子と偶然出会った。
旅は道連れ、3人で古いトレドの町を歩く。
さすがに他のスペインの町々と比べると、趣きを異にしている。
これぞスペインの感がしないでもない。
一通り廻ったあと、カフェで話し込み、帰りの列車に乗った。

発車後すぐS君は居眠りを始めてしまい、会話は彼女と二人。
K滝M子サンはA大学の4年生だが
現在、サラマンカ大学に留学中とのこと。
驚いたのは出身地が同じ長野県の篠ノ井で
もっと驚いたのが出身校が長野西高だったこと。
西高は母親の母校であり、自分も附属幼稚園に通っていたのだ。
こちらも驚いたけれど、向こうも驚いた。

とここまで綴って、日記の途中ながら以下は次話。

=つづく=