2015年1月13日火曜日

第1011話 本を読む少女 (その1)

今年の初春は暖かいですねェ。
関東地方を暖冬が包んでくれているのか、
はたまた自分自身の寒さに対する感度が鈍ったのか、
そのあたりはよく判らないんだけれど―。

数日前のこと。
東京メトロ・千代田線に乗り、渋谷を目指していた。
行きつけのヘアサロンで髪を理するためである。
車内は空いており、ほぼガラガラ状態。
常日頃から、たとえ空席があっても
なるべく座らないように心がけてはいる。
心がけてはいてもガラガラの車内で不自然に突っ立っていると、
かえって目立ってしまい、他の乗客に怪しまれないとも限らない。
よってすみやかに着席した次第だ。

やけに暖房が効いて、おケツがムズムズと温かいぞなもし。
おまけに重くなったまぶたが自然に降下をし始める。
うたた寝に陥る寸前、二日前にTVで観たワンシーンを思い出した。
おかげで閉じかけたまぶたが開いたのだった。

民放による群馬県・みなかみ温泉を紹介する番組だったが
近年この地に、欧米・オセアニア・東南アジアあたりから
観光客が激増しているというではないか。

そのなかで北欧・スウェーデンより来訪したカップルが
ひとしきり日本の温泉の素晴らしさを語ったあと、ひとこと付け加えたネ。
それは温泉とは無関係ながら
「都心を走る電車内の乗客が揃ってしているお昼寝は
 国民的慣習なのでしょうか?」―
ハハ、言われちまったヨ。
あまり世界に誇れることではないからなァ。
事実、日本人は電車に乗るとホントによく眠るねェ。
まっ、車内だけにシャーナイ、ってか。

でもってその千代田線である。
向かいの座席には男女2名づつの計4名。
うち3名が眠りこけていて
残りのアンちゃんはケータイの操作に忙しかった。

でもって反対側、いわゆるJ.C.側を流し目で見てみると、
数メートルへだてて若い娘が一人だけだ。
ここでいや、マイッたなァ、彼女の横顔をみとめた瞬間、
年甲斐もなくビビッとくるものがあったのでした。

いや、ベツにイヤらしい気持ちでそう思ったのではないし、
ましてや下心の”シ”の字もなかったんだヨ、正直言って―。
歳の頃なら二十歳(はたち)前後だったでしょう。
ひょっとしたら昨日あたり、晴れ着をまとって
どこぞで性人式、もとい、成人式にのぞまれておったやも知れぬ。
いや、ハタチはないな、せいぜいがハイティーン、
ヘタしたら15歳の中学三年のセンもあり得るぞなもし―。

=つづく=