2012年1月3日火曜日

第221話 チダイにダイダイ

昨日紹介したサメガレイを「松坂屋 上野店」で買った日、
近所の鮮魚店「吉池」の青果部で珍しい柑橘を見つけた。
今日のサブタイトルにある橙(ダイダイ)である。
橙色に色づく前のまだ青い果実であった。

時節柄、鏡餅の上に鎮座まします橙を見ることはあっても
それは正月用のお飾りに一役買っている姿に過ぎない。
本来の出生に基づき、
単体の果実として店頭に並んでいるのはなかなか拝めない。
値札を見たら1個100円だった。
カリフォルニア産レモンより高いがメキシコ産ライムより安い。

橙の前にたたずんで鍋物のポン酢に加えてみようと思った。
名のあるふぐ専門店ではちり酢に橙を使う店が少なくない。
簡単に手に入るかぼすよりポピュラーとも思えぬが
橙の持つ強い酸味や苦みが淡白な身質のふぐに
よりなじむような気がしないでもない。
事実、味わってみると橙に軍配が挙がる。

結局、100円の橙を1個買った。
買ったからには今夜はたらちりである。
とは思ったものの、
なんとなく気が変わって焼き魚の上から搾ることに。
よってあまり大きくないサイズの血鯛(チダイ)を1尾購入。
エラぶたに血のような赤が走っているので血鯛。
地方によっては花鯛、連子鯛とばれることもある。
真鯛の半分の40センチほどにしか成長しないが
素人が真鯛と見分けるのは難しいだろう。

100%天然モノの血鯛は真鯛より淡白にして繊細。
風味に欠けると指摘する向きもあるが
個人的には非常に好きなサカナである。
少なくとも養殖真鯛を超えるよさがある。

塩焼きの代わりにイタリア風のハーブ焼きにした。
振り塩をして香草のタイムとニンニクを効かし、
ヴァージン・オリーヴオイルを振り掛けた。
焼き立て熱々のところに橙をたっぷりと搾る。
むむぅ、何なんだ、この旨さは!
これじゃリストランテに行く理由が見つからんじゃないか!

サカナ1尾に搾るのに1個は多すぎる。
そこで橙スカッシュを作ってみると、これがまたけっこう。
甘さが立ちすぎるオレンジスカッシュはもう飲めないぞ。
英語名をビターオレンジというくらいで
通常のオレンジとはパンチ力が明らかに違う。

橙の果実は冬に黄熟しても春には再び緑色に戻る。
そして冬を過ぎても落下せずに
2~3年はそのまま木にぶら下がっているのだ。
その生命力の強さ、目出度さから
代々(だいだい)と名付けられたそうな。
まことに素敵なネーミングと感心するほかはない。

「吉池」
 東京都台東区上野3-27-12
 03-3835-8071