2012年1月31日火曜日

第241話 イスタンブールに飛んだ

♪   いつか忘れていった こんなジタンの空箱
   ひねり捨てるだけで あきらめきれる人 ♪
              (作詞:ちあき哲也)


庄野真代の「飛んでイスタンブール」。
作曲は敬愛する筒美京平サンである。

シンガポール赴任時代の1984年。
休暇でイスタンブールに飛んだ。
パキスタン航空を利用した手前、
カラチにストップオーバーしてから現地入りした。
酒にからんだカラチでの顛末はいつか書いたから今回はふれない。

イスタンブールは気に入りの街である。
ローマとパリはさておいて、ストックホルム、ウイーン、ブダペスト、
ドゥブロヴニク、マルセイユ、ヴェネツィア、ジェノヴァ、コルドバ、
好みの街は欧州に数あれど、イスタンブールは途方もなく好きだ。

イスタンブールには1週間ほどいたが
日本からやって来た阪神航空のトルコ周遊ツアーに途中参加した。
国内線で首都・アンカラへ飛び、あとはのんきなバスの旅である。
ギョレメ(カッパドキア)―コンヤ―アンタルヤ―パムッカレ―
イズミル―チャナッカレと周遊してイスタンブールに戻る日程だ。

遺跡めぐりに飽きてしまって1日、独りだけ自由行動にしてもらい、
過ごしたアンタルヤの街と海が強く印象に残っている。
たまたま滞在したホテルの真裏が
映画「太陽がいっぱい」のラストシーンに出てくる岩礁にそっくり。
A・ドロンとM・ラフォレのあのシーンね。
波も穏やかでプカリぷかり浮かんでいると、
水深10メートルほどの海底に紫海胆の群れを発見。
ザッと数えて50匹はいただろう。

ダイヴィングなんてしたことないし、素もぐりなんかハナから無理。
泳ぎのほうもまったく自信がないうえに、
海胆の棘(とげ)に指されたら、さぞや痛かろう。
20人ほどのツアーだったから
中にはこういうのが得意の達人がいたかもしれないが
みんなエフェスだったかな? 遺跡見物に行っちゃってる。
生海胆は垂涎だったけれど、あきらめるほかはなかった。

バスで移動中、メンバーの一人に歌謡曲好きのオジさんがいた。
この人がのべつまくなしウォークマンを聴いてるんだよねェ。
結局はそいつを分捕ってこちとら楽しんだが
彼自身が録った曲の中に由紀さおりの「挽歌」があったというわけ。

♪    やはりあのひとは 
   私を送りに来なかった
   にぎわう夕暮れ 人ごみの中
   私はただバスを待つ
   悲しみだけを 道案内に
   想い出色の 洋服を着て
   辛くないと 言えば嘘だわ
   あのひとのことが 気がかりだけど
   私は今バスを待つ      ♪
         (作詞:千家和也)


そうしてこうしてイスタンブールに舞い戻り、
翌朝はみんなを見送るために空港へ。
その後、数日間をまた独り東ローマ帝国の古都で過ごしたが
街角を歩いてるときもバーでビールを飲むときも
しばらくは頭の中を「挽歌」がグルグル回っていたっけ・・・。
繰り返し巻き戻し、何度も何度も聴いたものなァ。
ややっ、今もイントロが聴こえだしたよ。
さっそく youtube のお世話になるとしますかの。