2013年11月29日金曜日

第719話 「俺のフレンチ」、俺は好まぬ! (その2)

久方ぶりに逢うやくざのK、もとい、薬剤師・K村サンと一緒に
意想外の「俺のフレンチ」に入店すると、
そこは立ち飲みスペースだった。
それもやたらめったら狭くて
隣りのOL(?)二人組とは袖摺り合う仲のニアミス状態だ。
何だよコレ、酒屋の角打ちより狭いじゃん。

気を取り直して、さて、さて、
相方の頭の中はクレーム・ブリュレ一色に染まっているハズ。
さっそくそいつをオーダーしてやがら・・・。
それに”俺の白”と名付けられたグラスの白ワイン800円也。
セパージュはシャルドネ、だったかな?
こちらはポルティーヨなる造り手のピノ・ノワールで500円也。
アレゼンチンの産である。
この国のブドウとなれば、マルベックだが
やはりありました、ピノと同値だ。

グラスワインとともに3種のオリーブ盛合わせが運ばれた。
オニイさんが言いました、「アミューズです」
鮮やかな緑、真っ黒、オリーブ色の三色は大量だ。
(オリーブばっかり、こんなに食えるかヨ)
口には出さず、胸の奥で毒づく。
と、同時に「こんなに食べられないわ」―相方がが口にした。
ごもっとも、ごもっとも。

再会を祝してグラスをチン!
1杯だけで河岸を替えるつもりでも、つまみが一品ほしい。
オリーブだけじゃ味気ないもん(まだ言ってるヨ)。
そこで選んだのは蝦夷アワビのキャビア添え(680円)。
数に限りがあるため、お一人様1個までという注釈付きだ。
高級食材コンビでこの値段、聞きしに勝る安さではないか。

数分後、現れたアワビを見てオロロいた。
相方も一べつくれて苦笑いの巻。
何とまァ、ちっこいこと! 蝦夷だか房総だか知らんが、
こんな未成熟なアワビを獲っちゃっていいもんかしら?
こりゃどう考えても、キャッチ&リリースだろうヨ。
何せ親指と人差し指で作ったワッカより小さいんだもの。

ところが、ちょこんと乗ったキャビアは本物であった。
模造品のランプフィッシュの卵を黒く染めたヤツなんかじゃない。
ただし、真っ当なカスピ海産に非ず。
訊きそびれたが養殖に間違いない。
ここ数年、世界のあちこちで養殖モノが出回っているからネ。
クレーム・ブリュレは安くてデカくてデキも悪くないけれど、
極小アワビはアカンわ、小粒がいいのは山椒と納豆でっせ。

たかだか15分でお勘定、レシートをチェックすると、
大量に食べ残したアミューズのオリーブが300円X2、
しっかり600円もチャージされていた。
いかに若者たちの支持を得ていようとも、
「俺のフレンチ」、俺は好まぬ! フンだ!

「俺のフレンチ 神楽坂店」
 東京都新宿区納戸町12
 03-6265-3907

2013年11月28日木曜日

第718話 「俺のフレンチ」、俺は好まぬ! (その1)

ずっと以前、イタリアワインを楽しむ会で
何度か同席したK村サンと久々に再会。
飲食店開業術のセミナーにつき合わされたのだった。
場所は市ヶ谷の谷から
靖国神社に向かって九段坂を上った中腹あたり。
島倉のお千代サンが
おっかさんの手を引いたのはここだろか?
あいや、九段下から坂を上って来たのであろうヨ。

セミナーは続いていたが早めに抜け出し、
酒盃を交えることにした。
新見附橋で外濠を西に渡り、牛込中央通りへ。
目当てのそば居酒屋「たまち屋」は案の定、準備中だ。
夜の開店は17時からで時計を見るとまだ16時半である。
時間を無駄にしたくない、よって界隈を散策することに―。

かつては活気があったこの通り。
神楽坂で人気のそば店「蕎楽亭」もここにあった。
イタリアンの「ラストリカート」も同じくである。
一時は一世を風靡したピッツァの「カルミネ」は
どうにか残存している。

一筋奥まったところにあるうなぎの老舗「宮川」は
驚くなかれ居酒屋と化していた。
昼間は焼き魚定食なんぞをウリにしたりもしている。
原材料のうなぎの高騰に耐えられなかったのだろう。
大変だねェ、わびしいなァ、一瞬、気の毒な思いが心にきざした。
商売繁盛であってくれればよいのだが・・・。

「蕎楽亭」より好きな日本そば店「芳とも庵」の店先に差し掛かる。
この店については近々あらためて紹介したい。
その数軒先にここ数年、
飛ぶ鳥を落とす勢いの「俺のフレンチ 神楽坂店」を見とめた。
恵比寿店や銀座店は長蛇の列ながら、ここは比較的空いている。
最寄りは大江戸線・牛込神楽坂だが駅からはちょっと歩く。
ロケーションがよろしくないのだろう。
名うての人気店も人の動線までは変えられまい。

われわれ二人、「俺のフレンチ」、「俺のイタリアン」ともに
利用したことは一度もない。
オマール海老はじめ、高価な食材を手頃な価格で提供し、
フレンチに縁遠かった若者たちの絶大なる支持を得たお店。
ヤングカップルにとっては”フレンチ入門”といった位置づけかな?

デセール大好き人間のK村サンの目が
店頭のメニューに釘付けになっている。
視線の先を追うとやっぱりネ、
クレーム・ブリュレ(380円)とあった。

しょうがないなァ、気配りに長けるJ.C.に
ここで袖を引くような冷淡なマネはできやしない。
「軽く一杯飲ってく?」―水を向けると
「そうしましょ、そうしましょ」―にっこり笑顔の二つ返事だ。
そば屋酒のつもりがフレカジュかいな、やれやれ、男はつらいよ。

=つづく=

2013年11月27日水曜日

第717話 戦いすんだヨーロッパ (その3)

のっけから苦言を呈して恐縮ながら
ザックジャパンのDF陣は揃いもそろってアタマ悪すぎっ!
持論を展開させてもらうと、
バカでもできるFW、バカじゃできないDF、
むろんMFはアタマを使えなきゃつとまらない。
極論すれば、そういうことになる。

試合開始からほどなくやられたオランダ戦の1点目。
痛恨のミスを犯した内田には猛省を促したい。
自陣ゴールの正面に
アタマでボールを落とすバカがどこにいるかネ。
DFのボールの処理は常に外へ外へ、
小学生でも実践している基本中の基本だ。

そして2点目。
ロッベンの伝家の宝刀は右45度からの仕掛け。
ペナルティエリアに入る直前に
左へ左へと切れ込んで左足を一閃するパターンは
毎度のことで判りきっているのに
何の対応もできなかった長谷部と長友。
MFの長谷部はともかくも長友はDFだろうがっ!
観ててイヤになっちゃうヨ。

続いてベルギー戦の1失点目。
解説の松木サンはGK川島の判断ミスと糾弾したが
それはないぜ、セニョール!
GKの飛び出しはイチかバチか。
出なきゃ出ないで、やられた確率が高いし、
イチかバチかは丁半バクチと同じだから
どちらに転ぶか見当がつかない。
たまたま賽の目が裏目に出ただけのことだろう。

あれはDF酒井高徳のポカ。
緩慢なプレーが招いた悔やみきれない失点だった。
J.C.がザッケローニだったら、高徳はしばらく使わない。
周りが見えないDFは使い道がないのだ。

2点目。
日本代表は75分を過ぎると決まって足が止まる
マラソンランナーの35kmと酷似している。
ありゃどうしてかネ、走り込みが足りないんじゃないの。
オマケに永遠の課題、CKへの対処だ。
自陣ゴール前を横切ってゆくボールを
いつもヘッドで合わせられてズドン!
何べんこの悲劇を見せつけられたことか!

加えて身長差が半端じゃないときたひにゃ、
観ているほうは生きた心地がしないんだよネ。
もっともある意味、この失点だけがまともだった。
こればかりは一朝一夕に解決できる問題じゃないし、
あとの3点はボーンヘッドのオンパレードだもの。

エニウェイ、はるばる行ったぜ欧州へ。
とにもかくにも二度の長征は終わった。
あとはいざブラジルを残すばかりとなりにけり。
おっとその前に来年3月5日、国際Aマッチデーがあったか。
東京五輪に向け、改築される聖地・国立でのメモリアル・マッチは
韓国とは組めないらしいが、それならオーストラリアでしょ。

=おしまい=

2013年11月26日火曜日

第716話 戦いすんだヨーロッパ (その2)

昨日、みなさんに投げかけたシッツモ~ン!、
ワンタッチのもう一つの重要性は何でありましょうか?
さっそく、その解答いきます。

ダイレクトシュートはGK泣かせなんです。
球筋が非常に読みにくい。
ということは、GKの反応がワンテンポ遅れてしまう。
ドリブルやトラップ後のシュートは
シューターの軸足を見れば、容易にコースが読めるのに
ワンタッチだと、その見極めがきわめて難しい。
よってゴールインの確立が高まる。
ヘディングシュートが決まりやすいのは
ヘッドは限りなく100%に近いダイレクトですからネ。

加えてもう一つ理由がある。
今でもそうだろうが、われわれがサッカー少年だった頃、
指導者からセンタリング(クロス)の重要性を
徹底的にたたき込まれた。
「得点は相手ゴールの前をボールが横切るときに生まれる」
往時の金科玉条はこれだったのだ。

お次は中盤、守備的MFをみてみよう。
最近、ささやかれている、もとい、
声高に叫ばれているのは長谷部&遠藤、不要論。
はたしてそうだろうか?
確かに衰えは事実で殊に運動量がダウンしている。

でもネ、90分フル出場はムリだとしても
まだまだ使えるんじゃないかな。
オランダ戦の大迫はフロム長谷部、
ベルギー戦の本田はフロム遠藤、
彼らのナイスパスから生まれたゴール。
相手守備陣のポジションを
見極めたうえでの絶妙なパスだった。

後継者が育ちきれていない現実に臨むと
二人の力に頼らざるを得ないのも致し方あるまい。
運動量豊富な山口蛍にしたっていまだ経験不足。
幾多の修羅場をくぐらずして成長はない。

最後に日本人の悩みの種、チョー弱小DF陣である。
ここは要のGK川島も含めてクリティサイズしてみたい。
オランダ戦とベルギー戦、ともに仲良く2失点。
思い出したくはないけれど、
読者諸兄におかれては失点シーンをいま一度、
脳裏に浮かべていただきたい。

と、ここまで綴ってスペースがなくなった。
惨憺たる失点、愚かなる失点の検証については
明日またあらためて語ります。

=つづく=

2013年11月25日月曜日

第715話 戦いすんだヨーロッパ (その1)

先週は東京を離れていた。
よって当ブログの原稿を丸々1週ぶん書きためて家を出た。

ザックジャパンVSベルギー戦は出張先のホテルにて観戦。
オランダ戦後半の調子を持続できれば、この一戦も善戦必至、
勝機ありとみて眠い目をこすったが予想を超えるデキであった。
1週間も経ってから語るのは間が抜けたハナシながら
事情が事情につき、ここは大目にみてくだされ。

今回の欧州遠征による2試合は
前回の対セルビア&対ベラルーシとは雲泥の差。
短期間でまったく別のチームに生まれ変われていた。
えてしてサッカーとはこういうものである。
と言えるのは世界の強豪だけに当てはまる表現で
これまでの日本代表は好調時も不調時も大差なかった。

対戦相手のベルギーが好例だ。
1年かそこいらでFIFAランク5位まで駆け上がったものの、
コロンビアと日本に二連敗、しかもホームゲームで―。
化けの皮がはがれてしまったのかもしれない。

たったの2試合で判断するのは早計ながら
この二連戦は日本サッカー史上、
もっともみのり多き成果だったと確信している。
遅ればせながら2試合まとめておさらいしてみよう。

最初にFW陣、彼らは絶好調。
まず本田の成長が著しい。
もともと自信だけは人一倍だったが
ブレーン、ボディ・バランス、ボール・コントロール、
すべてにおいて一皮むけた。
彼の2ゴールは特筆に価する。

ゴールには結びつかなかったものの、香川の復調もめざましい。
身体の動きがキレまくっている。
そして新鋭の大迫と柿谷、すでにベテランの岡崎は
三者三様、それなりの決定力を発揮して結果を出した。

日本が挙げた5点の得点シーンを振り返ろう。
オランダ戦の大迫と本田、ベルギー戦の柿谷と岡崎、
5点のうち4点までもがワンタッチのダイレクトシュート。
これこそが得点力アップのキーポイントなのだ。

メディアも解説者もこぞってその点にはふれている。
相手DFが寄せる前に素早く決める・・・大事なことだ。
ただ、そこばかりが強調されるが
実はダイレクトシュートにはもう一つ、
計り知れない大きな利点がある。

それはいったい何でありましょうか?
ここは一番、読者のみなさんも一緒にお考えください。
TVのクイズ番組じゃあるまいし、
もったいぶって申し訳ございませんが、正解はまた明日。

=つづく=

2013年11月22日金曜日

第714話 よみがえった珈琲 (その5)

コーヒーにまつわるハナシのつづき。
ハンバーガー屋と喫茶店、
たった2軒の訪問なのにずいぶん長引いている。
いい歳こいてから色恋沙汰に目覚めると、
われを忘れてのめり込むというけれど、
まさかこの歳になってわが人生にコーヒーがよみがえるとは―。

「やなか珈琲店」の2階席にいる。
目の前にはサントス・デカフェとハムチーズのホットサンド。
時刻は日曜日の13時を回ったところで
店内にはおだやかな時間が流れている。
意外にも年配者の独り身が目立ち、何やら孤独のグルメ風。

サンドの中身のハムは薄いがチーズはわりとミッシリ。
そして黒胡椒がバチッと効いている。
ボリューム感はなくともハンバーガーのフォローによいサイズだ。
思い起こせばホットサンド・メーカーで焼かれたサンドイッチに
初めて出会ったのは1969年、池袋西口の喫茶店「ネスパ」だった。
懐かしいなァ。
当時、この店に出入りするのはある種のステータス。
高校三年生はここで大人の香りをかいだのだった。

その後、「ネスパ」はどうなったんだろう?
好奇心を刺激され、ネットで調べてみたら
「ネスパ事務所」というのに突き当たった。
さっそくダイヤルすると、何やらどこぞへ転送されて
電話口に出たのはかなりのお歳のお爺さん。
見たわけじゃないから確証はないが
少なくともしゃがれ声はそう感じさせるにじゅうぶん。
すでに事務所のほうもたたみ、
現在はなんの営業活動もしていないとおっしゃる。
こりゃどうも失礼いたしました。

「やなか珈琲店」で翌々日の原稿も書き上げ、
時計を見るとまだ14時前である。
これからゆっくり帰宅の途につけばよいのだが
ものはついで、谷中銀座からよみせ通り界隈をぶらぶら。
夕焼けだんだんを上り、
日暮里駅のエスカレーターを降りて駅前広場へ。
目の前に1軒のスーパーがある。
晩酌のつまみでも買い求めるつもりで入店した。

ひと通り店内をめぐって目にとまったのは
インスタントコーヒーの瓶だ。
銘柄はネスカフェである。
 ♪ ラララ~ ラ~ラ ラララ~ ♪
ゴールドブレンドのCMのメロディーが瞬時に脳裏をかけめぐった。
いや、迷いましたネ、買うべきか、買わざるべきか・・・。

面倒くさがり屋につき、挽いた豆から淹れるなんてマネはできっこない。
せいぜいがインスタントであろうヨ。
決断して瓶に手を伸ばしたそのときにズボンのポケットがブルルルッ。
間の悪い電話を受けて店外に出ると、これがまた長電話。
どうにか通話が終わったときには日暮里駅の改札前にいましたとサ。

気勢をそがれたJ.C.、いまだわが家にコーヒーはありません。

=おしまい=

「やなか珈琲店 千駄木店」
 東京都文京区千駄木2-31-3
 0120-877-281

2013年11月21日木曜日

第713話 よみがえった珈琲 (その4)

文京区・千駄木は団子坂下、
「やなか珈琲店」の店先で逡巡している。
都内に支店網を張り巡らせ、商売を拡げているのだから
さぞかし美味しいコーヒーを淹れるに相違ない。
いまだ入ったことのない店ながら
コーヒーのはしごくらいで何をためらうことがあろう。
居酒屋のはしごなら4軒、5軒と平気の平左なのに
たかだかキッチャ店2軒、ここは迷わずゴー・アヘッドだろうヨ。

でもって、ドアを押しました。
いや、引いたのかもしれやせん。
それにしてもコーヒーのはしごはわが半生に記憶がないゾ。
何でこうなったんだろか!

豆種もチェックせずに本日のコーヒー(230円)をお願い。
「モス」ではハンバーガー1つきりで
フライドポテトもオニオンリングも付けなかった。
日曜日の優雅な昼食にはいささかの不足があろう。
よってフードメニューに目を通すと、ホットサンドがあった。
ハムチーズとツナがあってともに240円、ずいぶん安いなァ。
ハムチーズを選択する。

1階にも飲食スペースがあったが
先客はトレイを持って2階に上がっていった。
ハイ、慣れない場所では先人の行動に習いましょう。
多少時間の掛かるホットサンドはあとでお席にお持ちしますとのこと。
コーヒーだけをトレイに乗せてアップステアーズである。

2階担当の女性スタッフに訊ねたら
本日のコーヒーはサントス・デカフェとの応え。
デカフェはカフェイン抜き、
ブラジル産サントスのカフェインレスということだ。
味わうと実にユニークな風味。
シナモンみたいな香りが立っている。
コーヒーに関しては何の薀蓄も持たないJ.C.、
ふ~ん、こんなものかいな、
一人ごちていると、ホットサンドがやって来た。

ほほう、こういうヤツだったのか。
鯛焼きを焼く鉄製の器具、それの四角い版、
いわゆるホットサンド・メーカーで焼かれたサンドイッチだ。
「モスバーガー」は十数年ぶりの訪問だが
このタイプのホットサンドに出くわすのは数十年ぶりである。

そういえばはるか昔、この器具を買ったことがあった。
ただし、使ったのはホンの2~3回。
あとはどこに行ったのやら目にすることもなく、
おおかた戸棚の奥にでもうっちゃられていたんだろうな。
キワモノはまず短命に終わるネ。
営業用ならまだしも、
庶民の日常生活に定着したためしがないのだ。

=つづく=

2013年11月20日水曜日

第712話 よみがえった珈琲 (その3)

都内では数少ない夕陽の名所、
谷中の夕焼けだんだんにほど近い千駄木の町にいる。
不慣れにして不釣合いな「モスバーガー」で
ハンバーガーを手にしている。
あれれ、なんでだろうネ?
テイクアウトでもないのにバーガーが紙にラップされている。
周りを見回すと老若男女を問わず、
みんな紙包みの中に半分顔を突っ込んで食べている。

ああいうマネはできないなァ。
饅頭でも大福でも包み紙を中途半端に開いて食うかい?
なんかじれったいなァ。
ストローで飲む生ビールというか、
下着をつけたままの入浴というか、
包み紙はきれいサッパリ取り除きましょうヨ。

中学時代のクラスの昼めしどき、
弁当のフタを半分だけ開けて食べる女子生徒をよく見掛けた。
乙女の恥じらいなんだろうが、
あれじゃ食った気がしないんじゃないかネ。
そういう印象が否めないヨ、包みごと食うのは―。

とびきりバーガーは悪くなかった。
生っぽいオニオンがいいアクセントになっている。
ただし、照り焼き風のソースが余計で、ちと甘すぎる。
もともとモスバーガーは甘めの味付けが特徴だったな。
記憶の糸をたぐり寄せてみた。
ブログ1話分の原稿を書き上げたことだし、
あまり長居しても店や他の客に迷惑だろうから腰を上げる。

おっと、そうそう、埼玉県のW田サンからのご質問。
「J.C.サンは車内や店内にパソコン持込んでるんですか?
 それとも原稿用紙かしら?」―
ハハハ、まさか。
PCはともかくも、原稿用紙と万年筆なんて
そんな芸当はできゃしませんヨ。
携帯メールで打った文章を自宅のPCに送りつけ、
帰宅後、あらためて修正するんです。

十数年ぶりの「モス」に別れを告げ、不忍通りを北上する。
ほどなく団子坂の交差点に差し掛かるハズ。
江戸川乱歩の小説、「D坂の殺人事件」の舞台になった団子坂。
その手前で1軒のコーヒーショップに遭遇した。

店の名は「やなか珈琲店 千駄木店」。
都内に20軒以上も店舗を構えているから
あちこちで見掛けるが入店したことはない。
「やなか珈琲店」を名乗るくらいだから1号店は谷中だろう。
そういえばよく出向く、よみせ通りに小体な店があったっけ。
店頭に客がひっきりなし、かなりの人気店と踏んでいた。

その店先でヘジテート。
さて、どうしたものかいな?

=つづく=

「モスバーガー 千駄木店」
 東京都文京区千駄木2-21-1
 03-3823-9310

2013年11月19日火曜日

第711話 よみがえった珈琲 (その2)

不忍通りに面した「モスバーガー 千駄木店」にいる。
下げ物はセルフのようだが
注文品はウエイターがテーブルまで運んでくれる。
ほどなくコーヒーが届いた。

ここでハナシは飛ぶ。
こと飲食物に関しては好き嫌いの少ないJ.C.ながら
コーヒーはあまり好きではない。
むしろ苦手なものの代表格といえる。

フレンチやイタリアンの食後に飲む、
深煎りのエスプレッソやカフェ・ルンゴはよくても
日本の喫茶店にありがちな煎りの浅いコーヒーはまず飲まない。
酸味が強いとなぜか胸焼けしてしまう。
苦いのはいいけれど、酸っぱいのは避けてきたのだ。

それでも若い頃はよく飲んだ。
芝公園のホテルで働いていた時分、
フルコースの締めにコーヒーを持ち回ると、
ポットに必ず1~2杯ぶんは残る。
これ幸いとサービス係もそれで一息つくのが常だった。
小ぶりなデミタス・カップとはいえ、平気で2杯も飲んでたのに―。

ときは1989年、北海道・小樽に旅をした。
青森・八戸在住の旧友と札幌で落ち合い、
1日アシをのばしてみたのだった。
観光地化された小樽運河のしらじらしさに
われわれもしらけ切ったりしたが
駅前の三角市場はそれなりに楽しめた。
ただ、やたらめったら蟹のオンパレードだったっけ・・・。

夕方まで時間が空いてしまい、
喫茶店に立ち寄ったのがいけなかった。
コーヒー党の相方につき合ったのが災いの元だ。
胸焼けを通り越して胃の腑を不快感が襲い、
とうとう貴重な旅先の晩めしを棒に振る破目に。
翌朝には回復したものの、
以来、しばらくコーヒーとの関係はプッツリ。
絶好状態が続くことになる。

それがここ数ヶ月、たまに飲んでいる。
きっかけは行きつけの雀荘、文京区・春日の「ロンロン」。
麻雀教室の際にコーヒーと茶菓子が出て
しかもなかなかの香りと味なので
いつしかカップを手に取るようになったのだ。

さて、その日曜日の午後、
千駄木の「モスバーガー」に独り。
おもむろにコーヒーを一口すすって
とびきりバーガーに取り掛かったのだった。

=つづく=

2013年11月18日月曜日

第710話 よみがえった珈琲 (その1)

一昨日のザック・ジャパンVSオランダ戦。
後半は目を疑いましたネ。
途中でむかっ腹立ててTVを消さないでよかった。
日本の2点目、流れるような美しいゴールは
歴代代表史上のベストであろう。
ベルギー戦がいよいよ楽しみになってきた。

それはそれとして、どんより曇ったある日曜日の正午。
時間ピッタリにハウスキーパーが来宅し、家から追い出される。
これから2時間どう過ごすか、うかつにも算段していなかった。
落ち着ける店にシケ込み、
食後のひとときに翌日アップする原稿でも書くとするかの。
2時間もありゃ、2日分いけちゃうし・・・そうしよう、そうしましょう。

この手はときどき使う。
食欲のないときなんか、ゆくえ定めぬ電車に飛び乗り、
車内で執筆にいそしむことたびたび。
いつぞやはふと気がついたらJR中央線の吉祥寺にいた。
びっくりしたなもう!

ともあれ、吉祥寺は若者に人気のある街で
彼らが棲みたい街のNo1なんだとサ。
いい趣味してるぜ、最近の若いモンはヨッ!
老頭児(ロートル)のJ.C.はイヤだネ、なぜか性に合わない。
お隣りの西荻ならOKだけど、吉祥寺はご免こうむりたい。

そいでもってその日曜日、流れ来たのは千駄木の町である。
台東区の谷中に文京区の千駄木と根津を
トリオ・ロス・パンチョス(古いネ)にすると、
谷根千なる、熟年カップルにとっては散歩の聖地と相成る。
週末に限らずともオジさん&オバさんが仲良く闊歩するエリアだ。

魔が差したのかな?
ふらふらっと入ったのは「モスバーガー 千駄木店」。
「モス」はおそらく十数年ぶりで、前回は三田の慶大前だった。
久しぶりではあるが、J.C.は1970年代初頭、
「モスバーガー」1号店を、しかも開店の数日後に訪れている。
ところは当時棲んでいた板橋区・成増。
このことは以前どこかで書いたから此度はスルーするぅ。

ハンバーガーショップにはめったに入らない。
したがって注文の仕方がよく判らずトンチンカン。
順番が来てメニューを見るヒマもあらばこそ、
うしろがつかえてたりしたら
もうそれだけでおちおち選んでなんかいられない。

その日はモスバーガーのプレミアム・バージョン、
とびきりプレーンハンバーガー(370円)ってヤツを
ほとんど反射的に注文していた。
カサにかかったカウンターのアンちゃんに飲みものを訊かれ、
これまた反射的にコーヒー(220円)を頼んでいた。
あとで気がついたが
事前に店外のメニューをチェックしてから入店すればいいんだネ。
われながらダサいや。

=つづく=

2013年11月15日金曜日

第709話 逝く人 逝く人 (その2)

 ♪ あかく咲く花 青い花 
   この世に咲く花 数々あれど 
   涙にぬれて 蕾のままに 
   散るは乙女の 初恋の花 ♪
       (作詞:西條八十)

島倉千代子のデビュー曲「この世の花」は1955年のリリース。
当時、長野市の幼稚園に入園したばかりのJ.C.は
蕾のままに散る乙女の花のことなど、
からっきし理解できなかったが
チマタに流れるこの曲の歌詞とメロディーはしっかり覚えている。
自宅に蓄音機があり、流行歌を聴くマセたガキだったのだ。

ところがその翌年、夢破れて一家心中、
もとい、なんとか命長らえて東京へ流転したのでした。
幼い記憶に残る楽曲は「この世の花」のほかに

美ち奴―「あゝそれなのに」
高英男―「雪の降るまちを」
春日八郎―「お富さん」
三橋美智也―「リンゴ村から」

てなところでありました。
あとは酔った親父がうなる軍歌の「麦と兵隊」ときたひにゃ、
いやはや、お恥ずかしい限りでござんすヨ。
ヨタもたいがいにして、お千代サンまいります。

島倉千代子(1938―2013)・・・歌手

コブシ封印の美空ひばり。
コブシが命の島倉千代子。
180度異なる歌唱スタイルの二人は大の仲良しだった。
J.C.的にはお千代サンのノドが好み。
細いわりに芯が強く、小粋な余韻を耳朶に残して心地よい。
では恒例のベストテン。

① 東京だよおっ母さん
② 逢いたいなァあの人に
③ この世の花
④ 恋しているんだもん
⑤ からたち日記
⑥ りんどう峠
⑦ 東京の人さようなら
⑧ 思い出さん今日は
⑨ 積木くずし
⑩ 星空に両手を(守屋浩とのデュエット)

冒頭で「この世の花」を紹介したから、あとはやめとく。
そこで一つ、作詞家・星野哲郎のエピソード。
⑧の「思い出さん今日は」は作曲家の船村徹が
F・サガンの小説、「悲しみよこんにちは」を星野に与え、
読後に何か詞を書いてくれ、と迫った曰くつきの作品。

出来上がった詞は船村の意に染まずオクラ入りとなる。
それを拾い上げたのが大御所・古賀正男で
千代チャンが歌い大ヒット。
古賀御大がいなかったら
星野による幾多の名曲は生まれなかったハズ。
寅さんが歌った「男はつらいよ」もまたしかりだ。
時は流れて作った人も歌った人も、みんな逝っちゃいましたネ。

2013年11月14日木曜日

第708話 逝く人 逝く人 (その1)

訃報が続いております。
殊に日本の音楽界で―。
今話は最近亡くなったお二人にスポットを当てます。

 ♪ 地球もちいっちゃな星だけど ♪
墜ちたふたつの★は小さなものではなく、
好きな表現ではないけれど、まさに巨星。
ご冥福を祈りつつ、筆をすすめてまいりましょう。

岩谷時子(1916―2013)・・・作詞家

大スター越路吹雪の心の友にして押しかけマネージャー。
ただし、マネージメント料はいっさい受け取らなかったという。
それはそれとして
日本人の心にしみ入る珠玉の言霊を紡ぎだしてくれた。

さっそく例によって
彼女の全作品(全部知ってるわけじゃないけど)から
マイ・ベスト10を選んでみた。
訳詩は省いて作詞のみを対象とした。
本当は順位なんかつけたくないが
無理やり無い知恵絞って
というより、気持ちに折合いをつけて並べてみた。

① 恋のバカンス (ザ・ピーナッツ)
② 嘘 (越路吹雪)
③ 北国の空は燃えている (石原裕次郎)
④ 別れたあの人 (加山雄三)
⑤ いいじゃないの幸せならば (佐良直美)
⑥ 土曜日はいちばん (ピンキーとキラーズ)
⑦ 愛の嵐 (菅原洋一)
⑧ 誰も知らない (伊東ゆかり)
⑨ 裸のビーナス (郷ひろみ)
⑩ 妻を恋うる唄 (フランク永井)
      (  )内は歌っている歌手名

すべてを紹介するわけにはいかないので
無名の名作、「嘘」をお届けしたい。

 ♪ あなただって 嘘をつく
   私だって 嘘をつく
   あなたが男で 私が女だから
   私たち恋をして 日向ぼっこのかたつむり
   夜は夜 目も見えず
   角でクチュクチュ 嘘をつく
   妬いてなんか いないのに
   怒るあなたが 大好きよ
   ラララララー ラララー      ♪

大人同士の男と女、その心模様に恋模様。
J.C.の大好きな曲の作曲者は内藤法美。
そう、越路吹雪の夫君です。
明日は島倉千代子を語りましょう。

=つづく=

2013年11月13日水曜日

第707話 11月11日は鮭の日

今は亡きQサン時代から
当ブログの長い読者にO見サンなる知識人がいる。
何と申しましょうか・・・驚くべき博学の方で
かなりオタク的な要素を内包しながらも
キジハタならぬ、キジン博学者といったカンジなのだ。

ここ数日、彼から何通かメールをいただいた。
興味深いので披露してみましょう。

その①
本日のブログを拝見しました。
本日11月7日は福本豊の66回目の誕生日。
彼もイチローと同じように国民栄誉賞を辞退しました。
一般的にB型人間はわが道をゆくタイプであり、
名誉に興味を持たない傾向があります。
マイペースB型人間は国際舞台でも滅法強いのです。
(野球)― イチロー 野茂 上原 (水泳)― 北島
(柔道)― 谷亮子 野村 (ゴルフ)― 青木

なるほどネ。
ミスターG、長嶋茂雄もB型ですし・・・。

その②
ひょっとしたらイチローは野茂に敬意を表して
栄誉賞を辞退したような気がします。
最近、川上元巨人監督が亡くなりましたが
日本歴代No1は三原監督でしょうか?

言われてみればそうかもしれません。
何たって野茂はパイオニアですからネ。
されどJ.C.はベスト監督に広岡達朗を選びましたが・・・。

その③
本日のブログ、拝見しました。
11月11日は鮭の日です。
魚偏に土(ツチはジュウイチ)が二つですから。

鮭の日なんてあったのネ。
なるほどなァ、土が重なってるもんねェ。
いや、まいりましてございます。

偶然にもその11日、
J.C.は珍しくも自宅で自炊のランチを食べました。
献立は

 中辛塩の焼き紅鮭 小粒納豆 梅干し(つぶれ梅)
 自家製しその実漬け 木綿豆腐と長ねぎの味噌汁
 富山・福光産コシヒカリ 冷麦茶

友人のI﨑サンからいただいた新米が格別。
したがっておかずは何でもよかとですが
紅鮭はじめ、み~んな旨かったんだな、これがっ!

今を去ること50年、1963年11月11日。
そのまた11日後の22日に時の米国大統領、
J.F.Kがテキサス州ダラスで凶弾に倒れた。
その朝(日本時間)の巷間のざわめきはよお~く覚えている。
さらにさかのぼって昭和11年、二・二六事件勃発の翌朝、
帝都のざわめきはかくの如しであったろう。

2013年11月12日火曜日

第706話 キジに劣らぬキジハタの味 (その2)

天下の美味魚、ハタのつづきである。
ちなみに漢字では羽太と綴る。
一口にハタといっても種類は多種多彩。

 ♪ 恋にもいろいろ ありまして
   ヒゴイにマゴイは 池の鯉
   今夜来てねと 甘えても
   金もって来いでは 恋じゃない ♪
        (作詞:藤田まさと)

コイ同様にハタにもいろいろあるのだ。
ザッと挙げただけでも
真ハタ、赤ハタ、ネズミハタ、アズキハタ、ユカタハタ、
安価な青ハタに高級なサラサハタ、
毒素を体内に蓄積して危険なバラハタ、
そしてサブタイトルのキジハタだ。

まずはそのキジハタをお目にかけましょう。
オレンジ色の斑点がキジハタの特徴  
よって広東料理店では清蒸石斑魚と称する。
読み方はチンチェン・シーバンユイ。
写真はウロコを落としてもらったから少々くすんでいる。
実際はもっと鮮やかな色合いで
撮影にはもちろんそのままのほうがよいが
自宅でウロコを引くのはシンドいから仕方がない。

コイツをゲットしたのはJ.C.御用達、
北千住マルイの地下にある「食遊館」。
なかなか立派な鮮魚売場を備えており、
陳列スペースにこのキジハタを発見したときは小躍りした。
しかも、値段は800円ほどじゃなかったかな。

あまりにうれしくて産地の確認を忘れたほどだ。
さっそく買って帰り、清蒸は厄介だから香草焼きにした。
使ったハーブはタイムとタラゴン。
塩・胡椒したところにオリーブオイルを掛け回してシンプルに焼き上げる。
ハーブは焦げるから二度に分けてハタの上に盛ってやる。

焼き立てにレモンを搾り、味わってみると、
いや、まことにけっこうでありました。
半身はアイオリ(にんにくマヨネーズ)と一緒にやり、
清蒸には及ばずとも、じゅうぶんに満足したのであった。

吉事は重なるものですな。
後日、御徒町のサカナのデパート「吉池」で
同じキジハタに出会ったのでありました。
前回よりホンの少し小ぶりで700円ほどだった。
産地は富山湾だ。
おそらく北千住のそれも富山だったのだろう。

此度は日本酒・醤油・上白糖で煮付けてみる。
あとは根しょうがを控えめに1片だけ。
いやはや、これまたまことにけっこう毛だらけ、猫灰だらけ。
わが家の猫もキジに劣らぬキジハタに夢中になっておりましたとサ。

「食遊館」
 東京都足立区千住3-92 マルイB1

「吉池」
 東京都台東区上野5-25-8
 03-3834-0145

2013年11月11日月曜日

第705話 キジに劣らぬキジハタの味 (その1)

50年前の今日(11月11日)のことはよく覚えている。
当時、J.C.は紅顔の美少年ならぬ、歳のわりにはヒネた小学六年生。
授業中、隣りにいたクラスメートが
今日は”11.11”だネ、とつぶやいたからだ。

まっ、どうでもいいことだから前へ進んで
野鳥にしてわが国の国鳥、キジのおハナシ。
ケーン!と鳴いちゃ、鉄砲で撃たれちゃってるらしい。
キジも鳴かずば撃たれまい。
杉内も投げずば打たれまい。
タハッ、まだ日本シリーズを引きずってるヨ、やれやれ。

ところが実態は毎年数万羽も放鳥されているのに
ほとんどキツネや猛禽類のエジキになり、
ハンティングの対象になるのはごく少数だという。
そして驚いたことに飛ぶのが苦手で走るのが得意なんだと―。
ダチョウみたいなヤツなんだネ、まったく。

キジは引き締まった白身の肉質を備え、たいへん食味がいい。
概して禽類の身肉の色は紅白に分かれる。
分類してみよう。

紅組 ・・・ カモ ハト ウズラ ツグミ シギ スズメ ダチョウ
白組 ・・・ キジ ホロホロ鳥 七面鳥 ニワトリ

禽類ではないが面白いのはウサギで
飼いウサギの身は白いのに野ウサギのそれは深紅。
これは与えられる飼料と獲得するエサの違いが原因だろう。

久しく口にしてないけれど、キジのローストが食べたいな。
南信州にキジの養殖場があり、
肉や卵の取り寄せが可能ながら値段は相当に張る。
ニューヨーク在住時代、
よく訪れたイタリア料理屋、「Il Cantinori」では
いつもウサギ背肉のローストを注文したが
イノシシやキジが入荷した日はそちらに切り替えた。

キジはイタリア語でファジアーノ。
サッカーのJ2に所属するファジアーノ岡山のネーミングは
郷土ののヒーロー・桃太郎が連れ行く家来の一員に由来する。

ここでハナシはキジから一足飛びにキジハタへ。
何じゃそりゃあ? と声を荒げる向きも少なくあるまい。
主として磯の岩礁を棲み家とするサカナにハタがいる。
しっとりとした白身は広東料理の清蒸(チンチェン)にしたらもう最高。
香港やシンガポールではもっとも珍重されるサカナなのだ。

香港は九龍の「竹園」では大小さまざまなハタ類が水槽にひしめいて
客のご指名を待ちながら最後のスイミングにいそしんでいる。
サイズ豊富な品揃えがありがたく、
カップルでもグループでも使い勝手がよかった。
手ごろな値段もうれしくて
これが「福臨門酒家」なんぞで食べようものなら
目ン玉は飛び出し、軽くなった財布が宙を舞う。
まるで星野の仙チャンみたいにヨ(まだ言ってら)!

先日、香港に行って来た友人の言うことにゃ、
昨今のハタ類の値上がりはすさまじいらしい。
前述の「竹園」も例外ではないかもしれない。
久しく行ってないから、もしも高騰しちまってたらゴメンなすって。

=つづく=

2013年11月8日金曜日

第704話 お米よ今夜もありがとう 古く良かりしニューヨーク Vol.7

久しぶりに”古く良かりしニューヨーク”シリーズをいきます。
読売アメリカの連載コラム、
J.C.オカザワの「れすとらんしったかぶり」から
抜粋してお届けする回顧版であります。

=お米よ今夜もありがとう==

まず、サブタイトルをご覧いただきたい。
そして、お米をおコメと読んでいただきたい。
これをおヨネと読むと太郎に嫁ぐアイちゃんの手を引く、
でしゃばり婆さんになってしまい、はなはだ不都合であります。

さて、去年からの日本国内の米騒動も落着した今日この頃、
われわれ在米邦人にとっても米抜きの食生活は考えられない。
炊き立てのごはんはもとより、
この時期の冷酒の晩酌は日本人の身に心にしみわたる。

グランドセントラル駅そばの和食店、「竹生」の酒は春鹿。
鹿児島から空輸されるスズキ、カンパチ、シマアジの刺身は
高級鮨店に負けず劣らずの旨さだ。
大根おろしで食べる大トロもたまらない。
色鮮やかな本玉の赤貝は鮨屋のそれを上回り、
ニューヨークNo1の折り紙をつけたい。
本わさびを使用する姿勢も高く評価したい。

自家製の蟹しゅうまいは
イタリアンのラヴィオリやアニョロッティを連想させて美味。
揚げものだけは改良の余地があり、
穴子の天ぷらなど穴子自体が大きすぎるきらいがある。
締めの食事は釜めしが一番人気。
関西割烹を謳う店だが、手羽先、天むす、きしめんに
店主のふるさと、名古屋の香りを偲ぶことができる。

セントラルパークに近い「麦」の酒は白鹿。
こちらはローカルのサカナを使っていても良質。
美味しい槍いかの刺身は通年食べられるし、
旬のカツオ、サバ、トコブシもすばらしい。

バーからキッチンまで取り仕切る店主は
ちょっと見、場末のバーテンダー風ながら
こと食べものに関しては目利きの鋭いものがある。
名物はシャケのカマ焼き。
スモークしたキングサーモンのカマは独特の味わいを誇り、
ビールにも日本酒にもピッタリでウォッカにも合うだろう。

肉じゃが、芋コロッケ、串カツも悪くない。
玉子とじはニラとシメジの2種類。
アサリも酒蒸しと鉄板焼きの2種類。
餃子は餡、皮、焼き加減、すべて完璧に近い。
ほとんどの客が支那そばで締めるが
小かぶのぬか漬けとアサリの味噌椀でやる茶碗めしは最高だ。

日本酒の代わりにビールを飲み、
白飯の代わりにきしめんや支那そばで仕上げた方は
最後にひとこと、こうつぶやいてください。
「お麦よ今夜もありがとう」

残念ながら2店ともすでに閉店してしまった。
振り返れば、帰らぬ昔がただ、ただ、なつかしい

2013年11月7日木曜日

第703話 51歳のバローロ

長々と日本シリーズの話題を引っ張っても仕方がないが
星野の仙チャンに言い忘れたことがあった。
おととし、楽天イヌワシ球団の監督に就任した際、
愚かにも北京のリベンジを楽天で、みたいな発言があった。。
即座に思いましたネ。
ありゃりゃ、このオッサン、大きな勘違いをしとるヨと―。

晴れて日本一を達成し、
本人はリベンジを果たしたつもりでいるなら
そりゃトンデモないハナシだ。
ナショナルフラッグを掲げて臨んだオリンピックと
職業野球の一球団の優勝を
同じ土俵に上げてほしくはないわい。
まっ、5年前の責任をいつまでも追及はしないがネ。

10月某日。
鎌倉ののみとも・P子からの誘いを受け、いざ鎌倉。
その日は彼女の誕生日・・・何回目かは知らない。
内輪だけで小ぢんまりやるから
遠いけれども来てちょうだいとのお達しで馳せ参じたわけなのだ。

到着すると初対面の男女が数人、集結しておった。
自慢じゃないが、ぶっちぎりの最年長者はJ.C.サンだ。
ご両親は関西方面に旅行中とのことで
親しい友人だけに声を掛けたんだと―。
ハハア~、こりゃ、親御さんを体よく追っ払いやがったナ。

食卓に並んだオードヴルはみなさんのポットラック(持ち寄り)。
メインだけP子の手料理でその夕のメニューは
何と、以前に当ブログで紹介した合い合い挽きのハンバーグ。
牛・豚・羊の三種混合だから
またの名をワクチン・ハンバーグともいう。

ガルニテュールも
アリコ・ヴェール(隠元)、キャロット・ヴィシー(人参)、
ポム・フリット(馬鈴薯)と、黄金のトリオが完璧に勢揃い。
ハンバーグ自体も”大変よくできました”の仕上がりで
文句のつけようがなかった。

加えてJ.C.の持込んだワインがコレである。
1962年のバローロ
造り手はバローロで最大の畑を有するフォンタナフレッダだ。
その当時は畑がデカいばかりで
ワインの評判はあまりよくなかった。
ニューヨーク時代は比較的廉価ということもあり、
弟分のバルバレスコともども愛飲したものだ。
それが近年は目覚しい改良を見せて
今じゃ一流の仲間入りを果たしている。

集まったメンバーも51歳のバローロを愛でてくれ、和気あいあい。
平和で幸せなひとときが流れていったのでした。
51歳ねェ、51という数字は
マリナーズ時代のイチローを思い出させるなァ。
B・ウイリアムスに敬意を表し、
ただ今ヤンキースで背負っているのは31番と、実に謙虚なお人柄。
そういやあ、国民栄誉賞を辞退したこともあったっけ・・・。
イチローというアスリートからは
”わきまえの美学”というヤツを強烈に感じる。

何だか今日も野球に始まり、野球に終わってしまったみたい。
まっ、いいか!

2013年11月6日水曜日

第702話 三人揃って 舞い、舞い、舞! (その2)

日本球界におけるピッチャー酷使のハナシのつづき。
今年は最後の最後で敗れたものの、
球界の覇者・ジャイアンツの投手はわりかし長持ちしている。
のちに監督を務めた藤田元司は比較的短命だったが
おしなべて長命ではなかろうか。

原因は川上監督の采配が大きいように思う。
何といっても8時半の男、宮田征典の出現だ。
リリーフ専門投手の草分け的存在で
これは当時ピッチング・コーチだった藤田の着想。
国鉄から巨人に移籍してきた金田が400勝を目指しており、
あとを任されたロングリリーフも多かった。

1965年には69試合に登板して20勝を挙げる。
リリーフ投手で20勝なんて、今では夢物語だろう。
しかし、登板過多がたたって翌年から低迷、
以後、復活することはなかった。
いくら何でも’65年は投げ過ぎで、
彼もまた川上監督に殺されたと言えなくもない。

古い名前が続々だが
今年のシリーズ優勝監督、星野仙一のエピソードを一席。

明大出身の星野は1969年、中日ドラゴンズに入団。
当時の監督は怪童・尾崎をつぶした元巨人の水原茂だった。
その年のある巨人戦でルーキーはKOされ、敗戦投手となった。
星野は首脳陣に
「明日も投げさせてください。必ずリベンジしてみせます!」―
と直接訴えた。

コーチ陣は連投に難色を示すものの、水原監督の鶴の一声。
「仙が投げたいと言ってるんだ、投げさせてやれ!」―
こんな経緯の末に翌日の巨人戦でも先発連投が実現する。
当夜の星野のピッチング内容はよかった。
しかし、打線の援護に恵まれず、再び敗戦投手になってしまう。

面目を失い、ダグアウトでうなだれる星野に
手を差し伸べ、声を掛けたのは水原だった。
「よく投げた、いいか、プロの世界ではやられたら必ずやり返す。
 この精神を忘れるな、それがなくなったらプロとして終わる。
 今日のゲームを決して忘れるな、よくやった」
どんなに新人は励まされたことだろう。

のちに星野は
「あのとき、水原サンに握手してもらった、
 その手の温かさは今でも昨日のことのように覚えています。
 プロの精神を自分は水原さんから教わりました」―
このように語っている。

ときは流れて2013年11月3日。
「仙台で宙に舞いたい!」―
田中で負けてしまい、
宙に浮きかけた念願がようやくかなって宙に舞う。
胴上げ投手のマー君も舞い、
オマケに彼のかみサンは里田まいときたもんだ。
三人揃って舞えてよかったネ、とにかくおめでとっ!

2013年11月5日火曜日

第701話 三人揃って 舞い、舞い、舞! (その1)

文化の日、日本シリーズ第7戦が
戦われている仙台から帰京したのは18時過ぎ。
下手な駅弁よりはましなので
出来合いのにぎり鮨を買い込み、急遽、帰宅の巻である。
この試合をを見逃すワケにはいかないものネ。

前夜は宮城県最高の米どころ、登米市にいた。
まったく期待していなかった街道筋の中華料理屋で
第6戦を満喫したのだった。
この店の酒と料理が意想外の大当たり。
野球中継ともども、大いに楽しませてもらった。

結果はみなさんご覧の通り。
楽天の福の神トリオが、美馬・則本・銀次なら
巨人の貧乏神トリオは、杉内・阿部・坂本。
これだけA・B・Cのヒーローと
A・B・Cの戦犯がハッキリするのは珍しい。

一夜明けて休日の振替日。
在カリフォルニアのポン友・ホケンからメールが届いた。
内容は例に寄ってスポーツ絡み。
ワールドシリーズの際も逐次メールをもらっていたが
此度は当然のことながら日本シリーズである。

以下、紹介してみましょう。

日本の野球は相変わらず浪花節みたい。
田中は前日に160球も投げたのに連投とは!
気持ちは判るが
彼のこれからの大リーグ人生にはよいことではない。
松坂みたいに2-3年で肩が。。。

日本では完投や完封勝利を美談にするけど、
肩を壊しては元も子もない。
皆、高校時代から投げすぎ。。。
昔、大好きだった南海の杉浦忠投手が
連投しすぎで短い投手生命を終えたことが忘れられないよ。

いや、おっしゃる通りだ、ホケンちゃん!
杉浦は鶴岡に、稲尾は三原に、
今年、肺ガンで亡くなった尾崎は水原に、
球界の宝物といってよいピッチャーたちは
み~んな当時の監督に殺されてるんだヨ。
おっと、池永だけは黒い社会にやられたんだった。
これが日本のプロ野球の残酷史というもんでっしゃろ。

こう振り返ると、ピッチャー殺人事件の現場はすべてパリーグ。
ひるがえってセリーグの大投手、金田と江夏は異常に長生きだ。
殊に金やんはネ。
彼らの肩が丈夫だったこともあろうが
それ以上に幸いしたのは持って生まれた性格だろうヨ。
二人ともまず監督の言うことに耳を貸さんもん。
自分の好きなときに投げてりゃ、肩の酷使もありますまいて。

=つづく=

2013年11月4日月曜日

第700話 芝エビ偽装にゃ 裏がある

一昨日の早朝、旅先のホテルで独りさみしく朝食をとる。
岡林信康の「山谷ブルース」じゃないが
 ♪ 一人ホテルで 食う飯に
    帰らぬ昔が なつかしい ♪
である。

化調まみれのオカズに辟易としながらも
こればかりは飛び切り旨い炊き立ての白飯を
化調ヌキの目玉焼き(当たり前か)で1膳しっかり食べた。
こなさなければならないミッションは
午後からで心身ともにリラックス。
食後、レストラン据え付けの読売新聞を読み流す。

飲みつけない、しかも旨くも何ともない、
コーヒーをすすりながらページをめくっていると、
目に飛び込んできたのが、かくなる見出し。

 仙台の2ホテル  他のエビ使い「芝エビ」
 県内初の誤表示  「偽装意図なかった」

ホテルやゴルフクラブでの食材偽装が
にわかに巷を騒がせている今日この頃。
舞台は首都圏・近畿圏どころか、
日本全国津々浦々の様相を呈してきた。
多いのはやはりエビ類の誤表示で偽装芝エビ以外にも
ブラックタイガーやクマエビを車エビ、
ロブスターを伊勢エビなどと偽るケースが目立つ。

記事によれば、両ホテルともに偽装の意図を否定している。
新聞社の取材に対する弁明を見てみよう。

まず、江陽グランドホテル。
「食材に対する認識不足による誤表示で、
 偽装の意図はなかった」

続いて仙台国際ホテル。
「仕入れの都合でエビを変更せざるを得なかった。
 お客様におわびしたい」

2ホテルのエクスキューズは微妙に異なる。
江陽は開き直っているフシがあり、謝罪の言葉はない。
一方の仙台国際は都合でエビを変更せざるを得なかったと
白状したうえで、謝罪している。
都合というのはもちろん金の問題であるハズだ。
私見ではこちらのほうがより真っ当に思える。
日々、エビを扱う一流ホテルの料理人が
芝エビの何たるかを知らぬハズがない。
江陽の食材に対する認識不足という言い訳にはムリがあるのだ。

読売新聞を読んだ当日の午後。
日本料理店の料理長と話をする機会があった。
彼曰く、
「ボクはその料理人たちが可哀相に思います。
  仕入れ値を抑えろという指示が上から出てるんですヨ。
 それでメニューは芝エビでいけ!ですからネ、おそらく」

ふむ、ふむ、こりゃ、一理あるゾ。
悪いのは現場じゃなくてマネージメントだな、きっと。
食材に対する認識不足だなんて
責任をなすりつけられたらたまらんヨ、現場は!
悪い奴らはいつも雲の上に隠れて
常に下々が尻拭いさせられる図式。
何だか東電による福島第一原発の汚染水処理みたいじゃないか。
この国の大きな汚点、腐った膿をまたもや見た思いがしやした。

2013年11月1日金曜日

第699話 黒いにんにく 双子の玉子 (その3)

さて、さて、このビッグ・エッグである。
運び人に訊いたら、コレは紛れもなく鶏卵だという。

ハナシは変わるが
漢字の卵と玉子は本来、使い分けるのだそうだ。
生のタマゴが卵で、調理すると玉子になるそうな。
J.C.の場合は”卵”という字を極力避けている。
だけど、”鶏卵”を”鶏玉”とは書けんもん。

なぜ、”卵”がイヤかというと領海侵犯が得意な隣国では
”卵”はカエルや昆虫のタマゴを指し、
ニワトリのタマゴには”蛋”の字を当てるからだ。
いわゆる蛋白質の”蛋”ですネ。
何かの拍子にそのことを知り、隣国に学んでしまった。

言われてみりゃ、たとえば中華料理のフヨウハイ(カニ玉)は
芙蓉蟹蛋(フヨウハイタン)が正式名。
芙蓉蟹卵(フヨウハイラン)じゃ、
とてもとても薄気味悪くて食べる気になれない。
調べてないから判らんが
彼の国では排卵期も排蛋期になるんだろうか?

そんなことはそれとしてデッカい玉子を割ってみてまた驚いた。
だって、こうだもん。
双子の黄身が出てきたヨ
専門用語でこういう鶏卵は二黄卵(におうらん)というんだそうだ。
俗名は二子玉川よろしく、ニコタマとも。

いくら図体がデカくても黄身が2個では白身も肩身が狭かろう。
実際に目玉焼きと玉子焼きを作ってみたら
やはり白身が少なく黄身が多いぶん、味が濃厚だった。

なんでこんな玉子が生まれるのだろう?
実は青森県畜産試験場では1979年から
二黄卵の実用化に向けて品種改良と育成研究が実施され、
餌の与え方により発生率を高める方法を編み出したんだと。

いやはや、黒にんにくもそうだけど、
青森県って進取の精神に満ち満ちて
いろんなことにチャレンジするんだねェ。
それに比べてわが東京都は寂しい限り。
何とかせいや、猪瀬のとっつぁんヨ。

デカ玉の到来でいろいろ玉子料理を試したが、ふと思った。
殻の中はいったいどうなってんのかな?
中をのぞくことはできないし、
手っ取り早いのはゆで玉子であろうヨ。

でもって、ゆでてみました。
黄身は雪だるまのごとし
ゆでたからには食べたけど、
いや、食べ応えがあったこと、あったこと。

=おしまい=