2013年11月20日水曜日

第712話 よみがえった珈琲 (その3)

都内では数少ない夕陽の名所、
谷中の夕焼けだんだんにほど近い千駄木の町にいる。
不慣れにして不釣合いな「モスバーガー」で
ハンバーガーを手にしている。
あれれ、なんでだろうネ?
テイクアウトでもないのにバーガーが紙にラップされている。
周りを見回すと老若男女を問わず、
みんな紙包みの中に半分顔を突っ込んで食べている。

ああいうマネはできないなァ。
饅頭でも大福でも包み紙を中途半端に開いて食うかい?
なんかじれったいなァ。
ストローで飲む生ビールというか、
下着をつけたままの入浴というか、
包み紙はきれいサッパリ取り除きましょうヨ。

中学時代のクラスの昼めしどき、
弁当のフタを半分だけ開けて食べる女子生徒をよく見掛けた。
乙女の恥じらいなんだろうが、
あれじゃ食った気がしないんじゃないかネ。
そういう印象が否めないヨ、包みごと食うのは―。

とびきりバーガーは悪くなかった。
生っぽいオニオンがいいアクセントになっている。
ただし、照り焼き風のソースが余計で、ちと甘すぎる。
もともとモスバーガーは甘めの味付けが特徴だったな。
記憶の糸をたぐり寄せてみた。
ブログ1話分の原稿を書き上げたことだし、
あまり長居しても店や他の客に迷惑だろうから腰を上げる。

おっと、そうそう、埼玉県のW田サンからのご質問。
「J.C.サンは車内や店内にパソコン持込んでるんですか?
 それとも原稿用紙かしら?」―
ハハハ、まさか。
PCはともかくも、原稿用紙と万年筆なんて
そんな芸当はできゃしませんヨ。
携帯メールで打った文章を自宅のPCに送りつけ、
帰宅後、あらためて修正するんです。

十数年ぶりの「モス」に別れを告げ、不忍通りを北上する。
ほどなく団子坂の交差点に差し掛かるハズ。
江戸川乱歩の小説、「D坂の殺人事件」の舞台になった団子坂。
その手前で1軒のコーヒーショップに遭遇した。

店の名は「やなか珈琲店 千駄木店」。
都内に20軒以上も店舗を構えているから
あちこちで見掛けるが入店したことはない。
「やなか珈琲店」を名乗るくらいだから1号店は谷中だろう。
そういえばよく出向く、よみせ通りに小体な店があったっけ。
店頭に客がひっきりなし、かなりの人気店と踏んでいた。

その店先でヘジテート。
さて、どうしたものかいな?

=つづく=

「モスバーガー 千駄木店」
 東京都文京区千駄木2-21-1
 03-3823-9310