2014年1月10日金曜日

第749話 北関東で豚・ぶた・ブタ (その5)

夕闇に包まれた栃木の小山にいる。
 ♪ おやまっ あれまっ 何にもねェゾ! ♪
もっとも小山にせい、伊勢崎にせい、
駅の周囲をチャラッと流しただけで
深場にはまり込んだのではないから
何もないと嘆いたところで始まらない。
地元の人にしてみれば、
「うるせェよ、ほっとけや」―てなとこだろう。

晩酌開始タイムをとっくに過ぎているにもかかわらず、
止まる止まり木が見つからない。
そしてまた線路の旅である。
すでに汽車は夜汽車となっている。

 ♪ 花嫁は 夜汽車にのって とついでゆくの 
   あの人の 写真を胸に 海辺の街へ 
   命かけて燃えた 恋が結ばれる
   帰れない 何があっても 心に誓うの  ♪
             (作詞:北山修)

再びはしだのりひこの歌声が頭の中をグルグルし始めた。
「花嫁」の作詞もまた北山修だ。
シンプルだけど、この人はいい詞を書くなァ。

「夜汽車」といえば、十朱幸代の映画も思い出す。
一人の男を二人の姉妹が愛してしまう愛憎悲劇。
何よりも女の指詰めシーンを観たのは後にも先にもこれきりだ。

さて、夜汽車を降りたのは埼玉県・浦和。
小山から宇都宮線に乗ってやって来た。
浦和は何年ぶりだろうか? 10年は堅いと思うな。
それにしてもこんなにデカい街だったかねェ。
伊勢丹もあれば、PARCOもあるヨ。
いや、昔からあったのだろうが気づかなかった。

ナカギンザの「モルガン」、旭通りの「まるちゃん」、
どちらにしようかしばらく迷った。
前者は立ち飲みにつき、長旅で疲れた身には少々キツい。
よって、向かったのはもつ焼き「まるちゃん」だった。
もつ焼きといえば焼きとんである。
ゲッ! また豚じゃんか!
まっ、いいか。

旭通りだけに飲んだのはアサヒ。
上ハラミのタタキを所望したが
オヤ? これははたしてハラミかいな?
食感がハラミとは微妙に異なった。
まっ、いいか。
ハハ、こればっかりである。

菊正の樽をコップでもらい、焼きとんに突入。
注文したオッパイは入荷ナシとのことで
カシラを塩、レバをタレで1本づつお願いする。
カシラには味噌ダレが付いてきた。
同じ埼玉は東松山のやきとり(焼きとんですが)のスタイルを
踏襲しているようだ。
下町の佳店には及ばぬものの、及第点はあげられる。

群馬県・高崎、栃木県・足利、埼玉県・浦和と、
日帰りの北関東めぐりは”豚行脚”の旅となりましたとサ。

=おしまい=

「まるちゃん」
 埼玉県さいたま市浦和区高砂1-8-10
 048-822-4682