2014年1月20日月曜日

第755話 みぞれの米沢 寒風の山形

今は昔、たびたび訊ねた米沢にいる。
駅前の「山庄館」には誰もいない。
カウンターに置かれたパネルに従い、
階上に向かって「すみませ~ん!」と呼んでみた。
「ハ~イ!」の応答とともに白髪のオジさんが降りてきた。
この人が笑うと右の犬歯がすっぽり抜けているのが見える。

瓶がないのでみぞれ模様に冷たい生ビール。
目当ての米沢ラーメン(600円)も同時にお願いした。
米沢牛使用の牛肉ラーメンというのがあり、倍額の1200円。
ラーメンに牛肉が乗っかってもうれしくないから見送った。
期待通りのちぢれ麺
ラーメンはスープの化調が強めながら麺は米沢そのもの。
昭和30年代の東京のラーメンはこんな感じが主流であった。
けっして満足したわけではないが
懐旧の情をじゅうぶんに満たしてくれるどんぶり鉢に
説得されてしまった古い人間が独りありけり。

仙台から仙山線でやって来たのみともが出迎えてくれた山形駅。
思えば1年前に訪れた山形だ。
目星をつけておいた居酒屋は2軒ともいっぱいで入れず。
大晦日の前夜だというのに駅周辺の飲食店、
とりわけ居酒屋の類いはどこも大盛況。
寒風の中をしばしウロウロして
繁華街を外れた場所に1軒の焼き鳥屋を発見した。
「楽々」という店だった。

出羽桜の常温で酒盃を合わせる。
1杯が350円、東京ではなかなかこうはいかない。
手始めの牛煮込みが予想を上回る美味。
仏料理のポトフを偲ばせた。
う~ん、旨いなァ、コレ。

入店時はまばらだった客がだんだんに増えてきて
いつのまにかほぼ満卓。
店主一人だけの営業だから頼んだオニオンスライスが
なかなか出来上がってこない。

他の客が注文する焼き鳥に追随することにした。
ハツ・レバー・つくね・皮・ねぎま・豚シロ、
いずれも東京のレベルには達していない。
とにかく忙しくて孤独なオヤジがてんてこ舞いである。

やっと出て来たオニスラでビールを飲み、
のみともともども仙山線の最終列車に乗り込み、
その日の終着、仙台へと向かう。
降りたのは終点・仙台の二つ手前、北仙台の駅だった。

「山庄館」
 データ不明ながら駅の真ん前

「楽々」
 山形県山形市香澄町1-14-12
 023-632-5896