2014年1月8日水曜日

第747話 北関東で豚・ぶた・ブタ (その3)

再び上毛線の車中の人。
次の目的地は定めていない。
候補としては群馬県を離れ、
栃木県の足利・佐野・小山辺りだろうか。

降りたのは一番手前の足利だった。
陽がそろそろ西に傾き始め、吹く風はさらに冷たい。
吹きっつぁらしである。
冷たい風に対抗するには冷たいビールだろう。
ここは毒をもって毒を制するに限る。
はたしてこの町でよい店が見つかるかな?

古(いにしえ)の最高学府、
足利学校の前を通り過ぎるも入館はせず、
小ぢんまりとした鑁阿寺(ばんなじ)の参道を往く。
この日は休日明けにつき、
シャッターを下ろしている店々が目につく。

それにしても何でしょうネ、このお寺の名前、鑁阿寺。
まず読めやしない。
っていうかァ、この”ばん”の字には初めてお目に掛かったわい。
こんなん読み書きできる酔狂な人間はおらんやろう。
でも、通りかかったが百年目、とにかく山門をくぐることにした。

すると、あらあら、カルガモの群れが濠端に遊んでる。
それも半端な数じゃございやせんぜ。
この寒いのに日向を避けてる
マガモやオナガガモと異なり、カルガモは渡りをしない。
ずっと、自分たちが棲みついたいた場所で一生を過ごす。
健気だねェ、可愛いなァ。
それに引き換え、われわれヒューマン・ビーイングときたらもう、
いや、今さら愚痴は言うまい、嘆くまい。

寺に濠は珍しいが、鑁阿寺は足利氏の館(やかた)だったからだ。
日本100名城の一つに数えられ、真言宗大日派の本山でもある。

からっ風に吹きすさばれながら歩くうちに
やはり日頃の行いがよいのであろう、
好みの食堂にバッタリ出くわした。
その名も「富士屋」
確か去年、あいや、すでに一昨年か、
山梨・甲府で2軒の「富士屋」に遭遇したっけ・・・。

とまれ、こういう見てくれの店には弱いJ.C.、
何のとまどいもなく即入店。
ところが店内は真っ暗の暗だ。
店先でオバちゃんが自慢焼きなる、
一種の今川焼きを焼いてたものだから
てっきり営業中と勝手に思ったものの、
なあ~んだ、ガックリの巻である。

=つづく=