2016年10月31日月曜日

第1480話 ラブホ街の入口で (その2)

江戸情緒を残す下町を擁する東東京の住人にとって
ラブホ街といえば第一感は鶯谷である。

 ♪    上野オフィスのかわいい娘
    声は鴬谷渡り
    日暮里笑ったあのえくぼ
    田端ないなぁ好きだなぁ
    駒込したことぬきにして
    グッと巣鴨がイカすなぁ   ♪
       (作詞:星野哲郎)

小林旭が歌った「恋の山手線」が世に流れたのは・・・
おっと、こいつはいつぞや紹介したのでありやした。
よって省略。

とにもかくにも鶯谷の大ラブホ街入口にある、
居酒屋というか、小料理屋と呼ぼうか、
そんな店のカウンターにいる。

なかなかに可愛らしい(すでに顔を忘れちゃったけど)ママと
相方の会話を聴き流しながら生ビールを飲んでいる。
ああ、今頃この街では何組の男女が
組んずほぐれつしてるんだろうか・・・数百組はくだるまい、
なんてくだらないことをボンヤリと考えながら―。

突き出しの小海老は悪くない。
これなら懸念材料だったつまみも何とかイケるであろうヨ。
M鷹サンが最初に注文したのは串焼きで
鮭のハラスと今がハシリの牡蠣だった。
J.C.にとって今シーズンの牡蠣初めである。

飲むときの合いの手はチョコチョコいろいろつまむのがよい。
一ぺんにどっさり頼んでハズすと修正が効かないからネ。
何事も始まりは小当たりに当たるのがよく、
これは食いモノに限ったことではない。
人の恋路にだって当てはまるのだ。

種を蒔いたら水をやり、適度にお日様にも当てて
期が熟したときにようやく果実を享受する。
これが鉄則にもかかわらず、だしぬけに大告白した挙句、
ドン引きされて、ハイ、永遠にサヨウナラ、
こういうバカがあとを絶たないんだよねェ。
この手じゃないの? しまいにゃストーカーに変身するのは―。

さてハラスはともかく牡蠣であった。
焼き上がりがレアもレア、ほとんど純生に近い。
たらこのチョイ焼きは好きなくせに
牡蠣やレバの半生が苦手の相方は
即座に二度焼きをお願いしている。
これでじゅうぶん旨いのになァ・・・
そう思いつつ黙って見ておった。

=つづく=