2017年3月20日月曜日

第1582話 鰻屋で鰻食わずに何を食う? (その5)

両国橋東詰の鰻屋ですっぽん鍋を味わっている。
卓上の箸袋には
 東両國橋畔 明神下神田川支店
とある。

煮出汁を残して鍋の中を総ざらいした。
きりがないから菊正の樽酒も切り上げた。
そうしてすっぽん雑炊の出来上がりを待つ。

待つこと5分ほどで女将が先刻の鍋を運んできた。
ちょいとのぞくと雑炊のボリュームが半端ではない。
ちょっと見、3~4人前はありそうだ。
出汁とごはんの他には溶き玉子に小ねぎが散るのみ、
実にシンプルである。

見た目はふぐちりのあとの雑炊に似ている。
ふぐ雑炊なら残ったポン酢を掛けたりもするが
すっぽんにポン酢は使わないからそのまま食べるだけ。
合いの手はささやかな香の物だ。

こんなに食べられるかな?
とも思ったけれど、
けっこうなお味だったこともあり、
多少無理してサラサラと完食した。
サラサラとはいうものの、胃の腑にはズシリときている。
まっ、女将さんが歓んでくれたのでよかった。

夕闇に包まれた両国橋を西に渡り返す。
北東の方向に国技館が姿を現した。
このとき、あるメロディーが頭の中を回り出した。

  ♪    やぐら太鼓が 隅田の川に
     ドンと響けば 土俵の上で
     男同士の 血汐はたぎる
     負けてなるかと どんとぶつかれば
     まげも乱れる まげも乱れる 大銀杏  ♪
      (作詞:二階堂伸 作曲:北くすお)

浪花節で鍛え上げた村田英雄のシブい声が
隅田の畔に流れたのは1964年の初め。
普段は作詞者しか紹介しないが
作曲者まで記したのにはワケがある。

そうだ! その逸話も含めて
次話では村田英雄を取り上げよう。
演歌嫌いの方には、はなはだご迷惑でしょうがネ。

大相撲といえば、
遅れてきた青年がすでに中年に差し掛かって
やっとこさ綱取りに成功した稀勢の里。
昨日の中日を全勝で折り返して目出度し、めでたし。
高安と同部屋ということもあり、
二場所連続優勝はまず間違いないところ。
目指すは自身初の全勝でありましょう。

=おしまい=

「神田川支店」
 東京都墨田区両国1-9-1
 03-3631-3561