2017年3月1日水曜日

第1569話 ある日旅立ち (その3)

東海道線の熱海行きは横浜を通過した。
見知らぬ乗客に囲まれて
シャイな乗客はなかなかビールを開けられない。
それでもこの時点ではまだ楽観視しておりました。

「次は藤沢、ふじさわ~っ!」―
そんなアナウンスがあったかどうか忘れちまったが
藤沢に到達しても
わが身沈めるボックスには他人同士が約4名。

時間は過ぎゆき熱海は迫る。
 ことここに及んで浮足立つJ.C.でありました。
列車が大磯駅に停車した。
窓外を見やると、ホームにベンチがあって
(そりゃありますわな)
陽射しが燦々とそそいでいる。
行楽にもってこいの好日なのである。

そうだ、ベンチという手があったか!
ここであわてて隣りの乗客に会釈し、降りようとして
その瞬間にドアが閉まったらカッコが悪すぎる。
あえて急がず、次の二宮駅の下車を心に決めた。

大磯ほどのどかではないものの、
二宮にもベンチはあった。
周りから解放され、リラックスして缶をプシュッ。
いやはや我慢したかいあって旨いのなんの!
飲めない時間が愛育てるんだネ。
目をつぶって一気に飲んじゃいましたとサ。

「小洞天」の特製焼きそばもシンプルな味付けがけっこう。
具材に乏しくとも穏やかな旨味がささやかに主張する。
15年も以前、日本橋の本店を訪れたが
その際は焼売を食べた記憶がある。

2缶目のビールを開けた。
その間にもホームの反対側には
宇都宮行きだの高崎行きだのが入線してくる。
湘南でそういう列車を見るのはかなりの違和感を伴う。
これもみな相互直通運転の功罪と言えよう。
もっとも利便の”功”が違和感の”罪”を圧倒するがネ。

大きな荷物を背負って来た若者が
同じベンチの端に座った。
J.C.との間にバックパックを置き、とりい出したる1個のおにぎり。
のぞくつもりはなかったが目に入るものは致し方ない。
中身はしゃけである。

近年、コンビニおにぎりの売れ筋はツナマヨと聞き及ぶ。
気色悪いもんが流行るもんだ、まったく。
とにかくそんなんじゃなくてよかったヨ。
ホッと胸をなで下ろす昔気質のJ.C.でありました。
ところが・・・ところがであった。

=つづく=