2017年12月19日火曜日

第1768話 ブロードウェイの天ぷら屋 (その1)

やって来たのはJR中野駅。
ただし利用した交通機関は
乗り入れている東京メトロ・東西線である。
ガラケーを開くと時刻は14時半だった。
もうこんな時間かァ、腹が減るわけだ。

北口を出てサンモールを直進。
芋の子を洗うが如くの人混みである。
それも駅に向かって南下する人々が圧倒的に優勢。
逆行する北上組は歩きにくいことこのうえない。

突き当りのブロードウェイに入館する。
目指すは2階にある天ぷら店「住友」だ。
うっかりしてエスカレーターに乗ると3階に直通してしまう。
よって階段を上るが、よおく考えてみれば、
3階から階段を下ったほうが足腰はラクだ。
それでも若々しい(?)肉体を保持する身.は上りチョーOK。
足取りも軽く2段歩きで2階へ。

アイドルタイムだというのに店内は5割超えの入りである。
館内では人気の1軒なのだ。
懐かしい空間に気分を和ませつつ、カウンターに陣を取った。
大手の銘柄を取り揃えた中から好みのアサヒをお願いする。

あれっ!
店主の姿が見えない。
息子さんが揚げ場に立っている。
女将さんの姿も見えない。
息子の嫁さんだろうか、貫禄がなさすぎて
若女将とは呼びにくい女性が接客を担当している。
老夫婦は引退したのかもしれない。
でも、こういうのって気安く訊きにくいのよねェ。
よって未だに消息は定かでない。

天ぷらを揚げてもらう前に何か軽いつまみをいただこう。
品書きに甘海老刺身があった。
魚介類の豊富な店ではまず頼まない甘海老だが
当店の当日の刺身はこれしかなかった。
ところが売切れだという。
売切れではなく、仕入れナシであろうヨ。

代わりに所望したのはイカゲソ煮だ。
これが何と150円。
いくら何でも安過ぎるんじゃないの?
ほとんど儲けがないだろうに―。

10分ほどかかって運ばれた煮付けは
サッと煮立てた出来立てのホヤホヤである。
甘みを抑えた大人の味だった。
こりゃあ、いいや!

=つづく=