2018年9月12日水曜日

第1957話 うどんが奏でた二重奏

まことに唐突ながら、わが日常の食生活において
うどんを食することは極めてマレである。
ベツに嫌いなわけじゃないが機会に恵まれない。
というより、機会を作らないと言ったほうが正しい。
うどん屋には入らないし、そば屋でうどんは頼まない。

日曜日の昼下がり、14時を回る頃、
讃岐うどんの佳店「根の津」を何年ぶりかで訪れた。
「根の津」は読んで字の如し、文京区・根津にある。
過去に何度も来ているから
以前はもっとうどんを食べていたことが判る。

昼の営業は15時まで。
さすがにこの時間だと人気店もスンナリ席を確保できた。
メニューを開いて熟考の末、 2種うどんに決定。
・・・かやく・わかめ・焼きばら海苔
・・・ぶっかけ・生醤油
以上のうちからそれぞれ1つを択ぶスタイル。
ボリュームはトータル1.5人前で870円はお食べ得である。
讃岐うどんでもっとも好きな生醤油と
最近、そば屋でちょくちょく見掛けるばら海苔をお願い。
ばら海苔は温つゆに限り、冷つゆは不向きなのだ。

ビールは生・瓶ともにキリンのみ、ここは我慢して見送る。
酒は長野の澤の花、福島の飛露喜など揃っていたが
ビールを差し置き、日本酒で晩酌を始める習慣はない。

茹でるのに12分ほど掛かって15分は待ったかな。
2つの小どんぶりが1枚の盆に載って登場。
うどんがノビやすい温つゆの焼きばら海苔からいただく。
どんぶりを彩るのはばら海苔、かまぼこ、きざみ小ねぎ。

うどんはやや太めの平打ち、ツルッときてモチッとくる。
なかなかに美味しいうどんだ。
残念ながら青みがかった愛媛産ばら海苔は香りに乏しい。
自宅でも愛用する有明海産黒ばら海苔に遠く及ばない。

いりこの出汁が効いてアッサリ甘めのつゆは
熱すぎてどんぶりが持てず、飲むことができない。
求めればくれるだろうが基本的にレンゲは女性専用らしい。
器はなるべく手で持ちたいもの。
屈みこんで食べるのは見苦しく不作法だ。

つゆが多少冷めるまでのあいだ、生醤油にハンドルを切った。
讃岐名物・生醤油うどんの薬味は
酢橘(すだち)、大根おろし、生醤油が三種の神器ながら
生醤油とは名ばかりで、じゅうぶんに出汁が効いている。
1/6カットの酢橘はちょいとシケている。
有料で構わんからせめて半個はほしい。
致し方なく、ときおり皮ごとかじり、
アクセントをつけながら食べ終える。

本年初のうどんはの二重奏を楽しませてくれた。
このアイデアをそば屋に見習わせたいが不可能だろう。
うどんと違い、そばはノビやすいからネ。
それに西国人と違い、東国人はせっかちだから
ノビゆくそばを前に気ばかりが急くからネ。

「根の津」
 東京都文京区根津1-23-16
 03-3822-9015