その日は朝から雨模様。
家から濡れずに行けて濡れずに飲めるのは
日比谷・銀座・新橋・町屋・北千住あたり。
照準を北千住に定め、傘も持たずに出動した。
大箱のレストラン街は性に合わないため、
ルミネやマルイには足を踏み入れない。
もっとも地下の食品フロアだけは
しょっちゅうお世話になっているがネ。
ポツポツ来るものの、これなら問題ナシと
通称・せんべろストリートを往ったり来たり。
駅そばの酒場「幸楽」に差し掛かると
突然、雨足が強くなった。
店頭てアチラ系の若い娘がピーチクパーチク。
「いらしゃいませ~、
もつ焼き、天ぷらいかがでしょうか~?
空いてますぅ、どうぞいかがでしょうか~?」
渡りに舟と駆け込めば、娘が満面の笑みで迎える。
短いカウンターの左端、
入口に一番近い席でドライ大瓶を発注。
正午近くとはいえ、
午前中から飲むのは元旦以来だ。
オモテを見やると本降りの雨が
アスファルトにしぶきを上げている。
おっと、水前寺清子が歌い出すじゃないかー。
♪ 女の名前は 花という
日陰の花だと 泣いていう
外は九月の 雨しぶき
抱いたこの俺 流れ者
女は数えて 二十一
しあわせ一年 あと不幸
枕かかえて はやり唄
歌う横顔 あどけない ♪
(作詞:阿久悠)
チータが歌った「昭和放浪記」は
1972年10月のリリース。
彼女のマイベストにつき、2番までお届けした。
作曲は小林亜星。
不朽の名曲と評判が高かったものの、
レコード売り上げは伸びなかった。
クラウンからの発売なれど
作詞・作曲のナイスコンビに
目を付けたのは何故かコロムビアであった。
=つづく=