2023年3月21日火曜日

第3235話 ハゼ天で飲る 雨の午後 (その1)

その日は朝から雨模様。
家から濡れずに行けて濡れずに飲めるのは
日比谷・銀座・新橋・町屋・北千住あたり。
照準を北千住に定め、傘も持たずに出動した。

大箱のレストラン街は性に合わないため、
ルミネやマルイには足を踏み入れない。
もっとも地下の食品フロアだけは
しょっちゅうお世話になっているがネ。

ポツポツ来るものの、これなら問題ナシと
通称・せんべろストリートを往ったり来たり。
駅そばの酒場「幸楽」に差し掛かると
突然、雨足が強くなった。

店頭てアチラ系の若い娘がピーチクパーチク。
「いらしゃいませ~、
 もつ焼き、天ぷらいかがでしょうか~?
 空いてますぅ、どうぞいかがでしょうか~?」
渡りに舟と駆け込めば、娘が満面の笑みで迎える。

短いカウンターの左端、
入口に一番近い席でドライ大瓶を発注。
正午近くとはいえ、
午前中から飲むのは元旦以来だ。

オモテを見やると本降りの雨が
アスファルトにしぶきを上げている。
おっと、水前寺清子が歌い出すじゃないかー。

♪   女の名前は 花という
  日陰の花だと 泣いていう
  外は九月の 雨しぶき
  抱いたこの俺 流れ者

  女は数えて 二十一
  しあわせ一年 あと不幸
  枕かかえて はやり唄
  歌う横顔 あどけない ♪

   (作詞:阿久悠)

チータが歌った「昭和放浪記」は
1972年10月のリリース。
彼女のマイベストにつき、2番までお届けした。
作曲は小林亜星。

不朽の名曲と評判が高かったものの、
レコード売り上げは伸びなかった。
クラウンからの発売なれど
作詞・作曲のナイスコンビに
目を付けたのは何故かコロムビアであった。

=つづく=