日暮里から京成本線に乗り、
降り立ったのは京成立石。
東東京における呑ン兵衛の聖地の一つだ。
町のランドマークの焼きとん屋は
見ただけで意気消沈させる長蛇の列。
君子はこういうところに近寄らない。
訪れたのは線路の反対側。
北口商店街の2階にある洋食店「チロル」。
ご夫婦だろう、二人の切盛りである。
立派なメニューを開き、しばし沈思黙考。
ん? えっ、テキサスライス?
「なんじゃこりゃあ!」
おっと、撃たれて叫んだのはジーパンの松田優作で
テキサスは勝野洋でした。
いえ、「太陽にほえろ!」のハナシです。
「テキサスライスってどんなんですか?」ー
接客係の奥さん(?)に訊ねた。
「カレーピラフの上にカツが乗ってるんです」
「ふ~ん、ソレお願いします」
黒ラベルの中瓶を飲みながら待つこと5分少々。
まずコーヒーカップでスープがサーヴされた。
ほのかに鳥ガラの香りが鼻腔を抜ける。
これは化学の力に頼らない手作りだネ。
評価が一段上がった。
おやァ? 炒飯みたいなのが来たヨ。
具材は冷凍のミックス・ヴェジタブルじゃないかー。
添えられた福神漬けともども垢抜けないなァ。
まあ、葛飾区・立石だから仕方ないかな。
おっと葛飾区のみなさん、ごめんなさい。
テッペンには薄く小さいカツが3枚。
よくもまあ、薄く切ったもんだ。
ところがコイツがカリサクの好い揚げ上がり。
掛かっているのはデミグラスとは言いかねるソース。
ほとんど温めただけの中濃ソース、
でも、ゆるいデミよりこのカツにはふさわしい。
ピラフのみだともの足りなくともカツが実に効果的だ。
店内は喫茶店の居抜き風ながら創業は1981年。
初めからこの造作だったのかもしれない。
会計は1400円、ご馳走さまでした。
店を出てのんべえ横丁をさまよう。
いけねっ、テキサスライスの名前の由来を
訊きそびれちまった。
ぶらぶらしていて不図、思い当たる。
そうか、テキサス役の勝野洋。
カツは勝野の”勝”だったんだ。
ハハ、こじつけもはなはだしいってか?
「チロル」
東京都葛飾区立石4-27-9渋谷ビル2F
03-3697-3950