「来々軒」を機嫌よく退店し、
祐天寺駅前で三軒茶屋行きのバスに乗る。
東急世田谷線の起点から歩き始めた。
この路線は言わば、山の手のチンチン電車。
そう、荒川線みたいなものである。
西太子堂、若林を経て
松陰神社前にやって来た。
世田谷区の駅前商店街のうち、
好きなのは二つ、尾山台と此処である。
町のランドマークは松陰神社に譲っても
ナンバー2の「ニコラス精養堂」。
創業1912年は明治45年にして大正元年。
老舗中の老舗が駅踏切の脇で今も盛業中だ。
シーザーサラダ・ドッグと
カスタード・クリームパンを買い求めた。
その隣りに「吉良」という名の
炭火焼ダイニングがあった。
存在に気づかなかったくらいだから
そんなに古い店ではなさそう。
何気なしに店先の品書きを見とめると
まとう鯛の照り漬け焼きがある。
当欄でも幾たびか紹介したまとう鯛。
英語こそジョン・ドーリィだが
ラテン系のフランスではサン・ピエール。
イタリアだと、このほど帰天召された、
フランシスコ教皇のお膝元、
サン・ピエトロとなり、聖なる魚なのだ。
中華そばを食べたばかりながら
こればかりは看過できなかった。
まとう鯛の単品が可能かどうか、
お伺いを立てたらOK。
赤星中瓶とともにお願いする。
皿には切り身がストンと乗ってるだけ。
でも、いいんだヨ、これでー。
サイドのエンガワ部分が
カレイやヒラメに似てポリポリいけちゃう。
会計は2200円、ごちそうさまでした。
松陰神社を参詣し、さらに歩く。
隣り駅の世田谷に到着した。
区名のタイトルロールを張ってるけど
ちっぽけな駅である。
世田谷線の駅はおおむねこんな感じだ。
生大、中瓶と飲んで来たのに
天気が好いせいか、ノドが渇く。
毎度お世話になる牛めし屋は見当たらない。
見切って先を急ぐか?
するとパッタリ巡り合ったのが
「U」という名のお店。
2階から音楽が落ちて来る。
歌声も聞こえた。
ここはカラオケ・スナックだ。
世田谷くんだりまで遠出して
スナックもないもんだ。
立ち去ろうと思ったけれど、
ビールは飲みたい。
ええい、ままヨ、行っちゃえ!
階段をトントン上り始めました。
=つづく=
「ニコラス精養堂」
東京都世田谷区若林3-19-4
03-3410-7276
「吉良」
東京都世田谷区若林3-19-4
03-3413-6556