2026年8月31日月曜日

第4164話 銀座の片隅 BDディナー (その1)

今年も8月がやって来た。
8月の恒例行事に
バースデイ・ディナーがある。
J.C.よりは若いが
今もアパレル業界で
辣腕をふるうT子サン。
彼女の生まれ月が8月なのだ。

ここ数年の舞台は
浅草の「弁天山美家古寿司」に
固定されていたが協議の結果、
今夏はフレンチで行こうとなった。

待ち合わせたのは
メトロ銀座線・京橋駅改札。
向かったのは京橋公園を臨む、
「ビストロ シンバ」。
銀座一丁目の東端に位置し、
都心環状線の向こうは新富町。
銀座のはずれの片隅である。

黒ラベルの生を2杯。
「片方泡少なめだと嬉しいな」
「ハイ、ボクも少なめが好きです」
ギャルソン(男性給仕)は
ナイス・ガイだった。

択んだ料理はかくの如し。
山形産馬肉のタルタルw/丸茄子
長良川・天然鮎のリゾット
シンバ特製ブイヤベース
フランス・ブレス産鳩のロースト

最初にアミューズが運ばれる。
1片の生真鯵を大葉でくるみ、
口元に運ぶ。
鯵は良質ながら料理人が
奇をてらった感あり。

ワインに移行する。
当店にリストは無い。
くだんのギャルソンによる、
説明というか・・・、
彼と相談しながら決めてゆく。

カベ・ソーは苦手だから
ピノ・ノワールを指定すると
モレ・サン・ドニ '18 の提示。
オディフレなる造り手には
初めてお目に掛かった。

ん? グラスに注がれる絶対量が
少な過ぎじゃないかい?
取り合えず、カチン。
いえ、カチンと来たのではなく、
合わせたグラスの音です。
香り、舌ざわりともに
イマイチだった。

けっこうな量の馬肉タルタルは
実山椒のパンチが効いている。
なぜか、殻付きハマグリが1個。
セルヴーズ(女性給仕)に
この意味を質すと
馬肉はハマグリ出汁とのこと。

何だって馬に貝出汁なんだ?
まっ、不味くはないが
さほど効果を発揮してもいない。
それでも山形ホースの赤身は
なかなかの食味であった。

=つづく=

2026年8月29日土曜日

第4163話 歓びアーカイブ 第35回

11年前に何度か通った、
巣鴨駅そばのワインバー。
もっぱらランチでの利用だったが
当時は仕事をかかえており、
ビールを控えたのでした。

2015年12月23日水曜日

第1257話 グッと巣鴨がイカすなア (その2)

JR巣鴨駅から
徒歩2分の「プチ・ポワ」。
注文したコンフィが来る前に
野菜たっぷりの熱いスープが運ばれた。
暖冬とはいえ、この時期にありがたい。
スープはサラダとの二択だが
いつもスープを択ぶ。

サイドにはバゲットが
2片添えられている。
空腹だったこともあり、
スープとともに食べ終えた。
お替わり可能ですしネ。

いつものことながら
スープとメインの間隔が空く。
この時間が少々手持無沙汰で
時間の制約がある、
OLやサラリーマンには
使い勝手がよくない。
したがって、いつ訪れても
混雑していることがない。

鶏もものコンフィがようやく整った。
プックリ感が食欲をそそる
骨に沿ってナイフを入れ、
大き目の切り身をパクリ。
ウ、ウマい!
本格的なビストロの水準に達している。
バゲットをもう1片所望した。

食後のコーヒー・紅茶は
めったに取らないので
食べ終えたらすぐにお勘定。
次回は海南鶏飯を食べよう。

翌々日、再び「プチ・ポワ」に参上。
もちろん目当ては
ハイナネーズ・チキンライスだ。
注文の際、浮気心につまづいて
よほど本日のカレー、
ポーク・ヴィンダルーと思ったが
結局は薬局、初心貫徹の巻。

本場・シンガポールのそれとは
多少ルックスが異なるものの、
日本女性のデリカシーが皿に表れている。
香菜(パクチー)も添えられて
チリとダークソースは不在なれど、
しっかり楽しめるワンプレートだった。

フレンチ・ワインバーだから
ビストロ系の料理が主体でも
東南アジアやインドの風そよぐ
「プチ・ポワ」は
読者、殊に女性には自信を持って
オススメできる佳店であります。

=つづく=

「プチ・ポワ」
 東京都豊島区巣鴨1-1-16
 03-3944-8508

=本日追記=
店名の「プチ・ポワ」は
グリーンピースのこと。
現在はランチをやめて
夜の営業のみです。

2026年8月28日金曜日

第4162話 もりを手繰りに「まつや」再訪

翌週、「まつや」に舞い戻った。
池波正太郎翁は
「酒を飲まぬくらいなら
 蕎麦屋には入らぬ!」
とまで言い切ったが
入ればちゃあんと
そばを手繰っている。

先週の J.C.は酒を飲んだが
そばは食べなかった。
これでは翁の
「これ J.C.、そちもなかなかの
 阿呆よのぉ!」
そんな誹(そし)りが
耳元に届いて来そうだ。
くわばら、くわばら。

でもって今日は
いただきますとも。
よって再訪と相成った次第なり。

開店前の10時50分に到着すると
すでに8人待ち。
猛暑日になることは確定的。
あたる陽射しが半端ではない。
待ってるだけで一汗かいた。

そのせいもあって
ドライ大瓶に精一杯、
ノドを鳴らされた。
J.C.にとって世の中に
これ以上美味いものは皆無。
この瞬間のために日々、
生き抜いていると言っても
過言ではない。

瞬く間に2本目突入。
この時点でお通しのそば味噌は
まだ手付かずのまま。
2本目は残されたそば味噌と
今日もまた葉わさびで愉しむ。

続いて菊正常温と
やきとりを塩でお願い。
もも肉6片に白ねぎ4片。
脇には粗塩、練辛子、
レモンスライス、パセリ。
美味いねェ、嬉しいなァ。

菊正は1合にとどめ、
すみやかにもりを通した。
100円だか150円だかの
有料生本わさびもちゃんと
お願いしてネ。

しなやかなそばに
甘みを内包したつゆ。
かなりの人気を誇るそばゆえに
美味くないわけがない。
かといって特段に
舌を唸らせるのでもない。

最後に当店謹製のゆず七味を振り、
満足して湯桶のそば湯を注ぐ。
お勘定は津田梅子女史1枚で
小銭のおつりを頂戴した。

淡路町からメトロ丸の内線に乗る。
東京ビルTOKIAの地下に潜伏して
飲み直しと参りましょう。
どうして来る日も来る日も
こんなに飲むんでしょう。
肝硬変には気を付けないとネ。

「神田まつや 本店」
 東京都千代田区神田須田町1-13
 03-3251-1556

2026年8月27日木曜日

第4161話 独り蕎麦屋で 蕎麦も食わずに 

老舗の日本そばを食べたくなった。
そんな店が集中しているのは
東京広しといえども第一に
JR神田駅の北と南だろう。
神田須田町「やぶそば」「まつや」。
日本橋室町「砂場」が御三家だ。

この日は行列覚悟で「まつや」へ。
案の定、順番待ちが何人かー。
あまり大人数だと回避するが
11時45分に並び始め、
12時05分には着卓と相成った。
一応、上首尾と云えましょう。

ドライ大瓶にそば味噌のお通し。
品書きに目を通すと
好物の粒うにが消えている。
お運びのオネバさんに
「粒うにはもう無いんですか?」
「ええ、そうなんですのよ。
 業者さんが辞めてしまってー」
これは残念至極。
菊正との相性も好かったのになァ。

それではと、これまた好物、
葉わさび(550円)をお願い。
山葵の葉と茎のおひたしである。
あれば頼むのわが必注品だ。

大瓶は2本目に突入。
青大豆冷し豆腐(715円)を
追注に及ぶ。
さほど青々しくはないが
大豆の旨さはじゅうぶん。
あしらいのおろし生姜と
刻み茗荷のアクセントが冴え渡る。

菊正(990円)に切り替えた。
当店に冷酒の用意は無く、
常温かお燗の二択。
この暑さじゃ必然的に常温だ。

すぐに1合は底を尽き、お替わり。
何かもう1品つまみが欲しい。
今は昔、ワイン仲間の女性二人と
訪れた際、もりのあとで
親子丼を分け合ったことがあった。
当時から当店の親子は女性に
絶大なる人気を誇っていたのだ。

それを思い出して
親子煮(1430円)を発注。
菊正ともども存分に
楽しんだはいいが
哀れ、J.C.のストマック、
そばを食べる余裕が失われていた。

敬愛する池波正太郎翁は
「酒を飲まぬくらいなら
 蕎麦屋には入らぬ!」
とまで断言された。
翁は手酌酒のあと、
むろんのことに
蕎麦を手繰られたであろう。

蕎麦屋酒における不肖の弟子は
蕎麦屋に入って蕎麦も食わずに
出て来たのでありました。

「神田まつや 本店」
 東京都千代田区神田須田町1-13
 03-3251-1556

2026年8月26日水曜日

第4160話 馬に蹴られ 生に癒され

行きつけそば屋に蹴られた翌日。
ブランデーの調達に湯島へ。
その前の昼食で苦労した。
気に入り店はみな順番待ち。
カレーの老舗「デリー」なんざ
10人以上の行列と来たもんだ。

広小路の交差点そばに以前、
一度だけ利用した居酒屋、
「祭家 夢吉」がある。
ガラス越しに中を覗いて
空席を確かめ、ステップ・イン。

日中はハッピー・アワーにつき、
お飲み得のドライ中ジョッキを。
メニューにサッと目を通し、
霜降り馬刺し(980円+)に
白羽の矢を立てた。

2杯目を楽しんでいると
馬刺しが着卓。
ゲッ! 何だヨ、コレ?
何処が霜降りなんだヨ!
霜降りどころか赤身でもなく、
ずいぶん黒ずんじまって
これじゃ黒身だぜ!
オマケに半解凍のルイベ状態。
馬いワケ、もとい、
旨いワケなど、あるハズもない。

最初の一皿に蹴り飛ばされた思い。
昨日の行きつけといい、
何か最近、悪いことしたかな?
チューブの生姜とニンニクに
不満ながらも助けを借りて
咀嚼&嚥下の繰り返し。
舌が味わういとまとて無し。

厨房の責任者を
呼びつけたくなったが
どうにか思いとどまった。
生だけはいつも通りの旨さで
馬に蹴られた我が身を慰め、
癒してくれる。

ざるそばも半分食べ進んだが
哀れ、向こう正面で
落馬の憂き目を見る。
これなら市販の乾麺を
茹でたほうがよほどマシだ。

前回はそれなりの店と思ったが
ここまでヒドいとはー。
吉と出るのが夢と終る、
「夢吉」だったのだ。

こりゃ、どう考えても
ネバー・カム・バック。
口直しの飲み直しにどこぞへ
行かねばならぬ、
行かねばならんのだァ~!
「大利根無情」の平手造酒を
気取って店をあとにしたのです。

「祭家 夢吉」
 東京都文京区湯島3-40-7
 03-6284-4081

2026年8月25日火曜日

第4159話 行きつけに 蹴られて隣りで 癒されて

お盆明けのことでした。
池之端の行きつけそば屋、
「新ふじ」の引き戸を
引いたのは開店と同時の11時。
いや、ブッタマげやしたネ。
何とすでに満席。
相席の余地すらなかった。

一体どうなってんだ!
こりゃ11時前に開けやがったな。
こんなことは初めてだ。
開店直後でまだ誰にも
そばが出ていない。

しばらく席は空かない。
女将さんに手を合わされたものの、
こちらの心境としては
蹴り飛ばされたも同然。
退店を余儀なくされた。

滑り止めは2軒隣りの「JACK」。
数カ月もご無沙汰している。
同じ11時開店に救われて
いつものように黒ラベル中瓶。

そして当店ナンバー1の折り紙を
J.C.が自信を持って付ける、
めかじきのムニエル。
これをライス半分でお願いした。

直後に入店して来た、
30代男性はオムライス。
そのあとの50代はめかムニ。
そして年代不明のオッサンが
またもやめかムニ。
みんなよく判ってるねェ。
でも、男ばっかりだな。

10分ほどでプレートが調う。
相変わらず立派なめかじきに
レモンスライスが1枚。
生野菜はトマト・きゅうり・
レタス・キャベツ。
マカロニサラダはフジッリだ。

これにライスが付いて730円。
驚き、桃の木、山椒の木である。
この一品は銀座の老舗、
「煉瓦亭」にないが
あったとすれば 3千円は
下らない代物だろう。
J.C.的に当店は東京の洋食店、
ベスト10入り確実です。
費用対効果を鑑みてですがネ。

行きつけに蹴られたものの、
隣店に癒された。
機嫌を直したついでに
不忍池をグルッと一周。
もっとも鳥はドバトの他に
カルガモの番(つがい)が
1組居ただけでした。

「JACK」
 東京都台東区池之端2-8-5
 電話ナシ

2026年8月24日月曜日

第4158話 この半年で だるま3軒

お盆休みで空振った、
田端駅下の「だるま屋食堂」。
お盆明けに舞い戻ると
白い暖簾が出ていた。

カウンター9席に4人掛け2卓。
オバちゃん二人の切盛りである。
だのにビール大瓶の銘柄が
スーパードライ、黒ラベル、
クラシックラガーと
主力3社が揃い踏んでいる。
心ある飲食店は常に
こうでありたい。

ドライを飲みながら
つまみは珍しくも赤ウインナー。
これが300円と来たもんだ。
メニューは壁にしかなく、
見上げれば、みんな安い。
夢グループ専属の保科有里なら
「安い~っ!」
身もだえするに違いない。

ここでふと思い当たった。
今年はあちらこちらで
 ”だるま” のお世話になった。
そのことである。

麦歩とも・N子と行った、
大井町のいわし料理「だるま屋」。
札幌すすきのに本拠を構える、
湯島の「だるま」では
独りジンギスカンを焼いた。

そしてこの「だるま屋食堂」。
半年で3軒の ”だるま” である。
”だるま” なのに手も足も
出てるじゃないかー。

炒め上がったウインナーは
ヤケにしょっぱい。
粗塩振り過ぎだヨ、オバちゃん!
サイドのレタスに助けを借りて
どうにかつまんだ。

周りを見ると人気メニューは
味噌ラーメン、肉野菜炒め、
炒飯がトップ・スリー。
シンプルな通常のラーメンを
食べる客が全然居ない。
ならばいってみようじゃないかー。
例によって麺半分でお願いした。

中太ちぢれ麺がシコシコ。
昔ながらの醤油スープは
けれんが無く化調も薄め。
具は、小さいながらも
厚みのあるチャーシューに
小松菜とわかめのみ。
シナチクの不在が淋しいが
ワンコインだもん仕方ない。

ユニーク極まりないサービスが
客全員に配られる1本のバナナ。
だが少食 J.C.にはちと荷が重い。
突き返すワケにもいかず、
ジーンズの左ポッケに
ねじ込みましたとサ。
次回は炒飯をいきましょう。

「だるま屋食堂」
 東京都北区東田端1-17-20
 03-3800-4178

2026年8月22日土曜日

第4157話 歓びアーカイブ 第34回

本日のアーカイブは
スポーツ・ネタであります。
それもサッカー・野球・ゴルフを
まとめていきました。

2013年6月21日金曜日

第604話 スポーツ漬けの昨日・今日

結果は残念無念なれど
面白いゲームだった。
いえ、コンフェデ杯の
日本VSイタリアですがな。
ザッケローニの言うように
勝利にふさわしいのは
日本だったかもしれない。
だが、そこがサッカーというスポーツ。
柔道みたいに優勢勝ちはないし、
同じ球技でもバスケットのように
押しまくってるほうが
必勝というわけじゃないからネ。

死んだ子の歳を数えても仕方ないけれど、
返すがえすも吉田麻也の判断ミスが痛恨。
あそこはセコくゴールキックを欲しがらず、
CKを与えたくないのなら
タッチラインに蹴り出すのが
手すじ、もとい、足すじ。
自分の身体でオブストラクトしつつ、
ボールがゴールラインを
割るのを待ったものの、
ヤバくなってあわててクリアしたボールが
相手に当たってゴール側に転がっちまった。
ささいなミスが致命傷の典型例を
見せつけられた思いがした。

長谷部が取られたPKは100%誤審だ。
アレを取られたひにゃ、
DFはたまったもんじゃない。
ずいぶん古いことなれど、
シドニー五輪の篠原VSドゥイエ、
あのミスジャッジが脳裏をよぎった。

日本にとってイタリアは
ブラジルより組し易しと踏んではいた。
だが、ここまで健闘するとは!
うれしい誤算以外の何物でもない。
立ち上がりから目を見張る攻撃に
何だ、なんだ、やりゃあ出来るじゃん! 
胸弾み、心わくわく。
首尾よく2点取って欣喜雀躍。
何とかこのまま持ちこたえておくれ。
その祈りとどかず、
やっぱり2-0では折り返せなかった。

後半の出だしはご覧の通り。
昨日、お伝えしたように心が萎えた。
ところが、ところがですヨ、
そこからの頑張りがスゴかった。
萎えた心が再びエレクトしたもんネ。
先日、岡崎には期待できない、
なんて書いちゃって
あれは謝らなきゃいけません、
お見それしやした。

香川・本田のデキもよかった。
マンUの香川は適材適所ながら
本田はチェスカなんかに
居ちゃいけないプレイヤーだ。
イタリア戦のパフォーマンスを観て
リーガ、プレミア、セリエAから
声が掛からないものかねェ。

ハナシ変わって同じ頃に
ヤンキースのイチローが久々の大活躍。
攻守にわたって黒田の7勝目に貢献。
でも何だかイチロー、
老けちゃったなァ・・という印象。
その理由はすぐに判った。
剃りを入れるのやめたんで
眉毛がぶっとくなったんだ。
それで爺さん臭くなったんだ。
いずれにしても松井無きあと、
イチローには頑張ってほしい。

スポネタの最後は日本ゴルフツアー選手権。
案の定、松山英樹と石川遼の実力差が
あからさまになった。
石川の悔しさたるや、
いかばかりかと、気の毒なくらいで
初日の夜は寝つけなかったのではなかろうか。
一緒に回って、かたや-5、こなた+8。
ゴルフって残酷なスポーツなんだネ。
遼クンには悪いが今日からあと3日間。
英樹クンをオッカケるのが楽しみになった。

=本日追記=
W杯優勝国のうち、
イタリアには未勝利の日本。
逃した魚はデカかった。
それと昨2025年は
釜本邦茂、長嶋茂雄、尾崎将司、
各界の三巨頭が
相次いで亡くなった。
単なる偶然とは到底思えません。

2026年8月21日金曜日

第4156話 だるま駄目でも日乃本あるサ

その日の日本列島はお盆真っ盛り。
ゆるり昼飲みを楽しむつもりで
山手線と京浜東北線が
左と右に泣き別れる
田端駅に降り立った。

改札から徒歩2分。
「だるま屋食堂」にやって来ると、
シャッターが半開き。
あとで電話して判ったが
今週は丸ごとお盆休みだ。

今日は滑り止めの用意があった。
東北本線高架下で
今も使われているのか
不明の短い踏切を渡り、
「日乃本食堂」に迂回した。
此処は田端新町である。

ズワイガニ食べ放題を
ウリとする店で昼からソイツに
挑戦する男女3人組の卓には
カニの抜け殻が山積みだ。

彼らを尻目に奥の4人掛けに着卓。
ビールはドライの生のみ。
泡少なめで発注に及んだ。
ほう、さんま酢締め炙りがある。
まずはソレを通しておいて
串カツを1本だけ追注した。

さんまには粉わさびに加え、
梅肉ペーストも添えられる。
ふむ、まずまずですな。
ジョッキのお替わりが
串カツとともに運ばれた。
コレは豚肉ばかりが3片。
豚より玉ねぎを好む J.C.は
到底満足できない。
まっ、いいか。

2杯目とともに普段は
滅多に食べない海鮮丼を
通してしまった。
魔が差したワケでもないが
たまには何かのはずみで
こういうこともあろう。

北里柴三郎1枚ポッキリなのに
ずいぶんと立派な丼である。
まぐろ赤身・炙り赤身・中とろ・
ぶり・サーモン・炙りきす・穴子・
するめいか・赤海老・いくら・
つぶ貝と豪華絢爛。
わかめ味噌汁とキャベツもみも
付いて来た。

いいアテになるので生をもう1杯。
ごはんは酢めしで
酢の塩梅もよろしい。
日の本一とは云わないまでも
海鮮丼をあらためて
見直した次第です。

「日乃本食堂」
 東京都北区田端新町2-14-8
 03-6807-6113

2026年8月20日木曜日

第4155話 驟雨に見舞われ 河豚に救われ (その2)

浅草はひさご通り。
「まん水」のカウンターに独り。
せっかくだから
河豚をいただきましょ。

2杯目の生を飲みながら
あらためて品書きを目で追った。
取り合えず、てっさはいっとこ。
通しながら訊ねた。

「白子だけとらふぐを
 名乗ってるってことは
 てっさやから揚げは
 他の河豚ってことなの?」
「いえ、みんなとらふぐですよ」
「よくこんな値段で出せるネ」
「河豚専門の卸業者直営ですから」
「じゃ、浅草の料理屋に
 卸しているわけ?」
「銀座が多いですね」

ふむ、銀座なら高級店ばかりだ。
牡蠣は駄目だったが
河豚は一流なんだろう。
死後硬直がまだ溶けてなく、
コリコリの食感。
うむ、悪かないネ。

もう一品はアラから揚げだ。
「アラってまさか
 内臓じゃないよネ?」
「肩と顔です」

頭じゃなくて顔と来ましたかー。
以前、新聞の読者投稿コラムで
北海道の主婦だったかな?
ある晩、一家3人で
ししゃもを食べていたら
息子が母親につぶやいたそうだ。

「ママとパパはおサカナの
 顔まで食べちゃうの?」
返答に困ったママの投稿。
「その夜は家族揃って
 顔を残しました!」
3杯目の生を飲みつつ、
思い出し笑いの J.C.でした。

ところがこのアラが
ことのほか好かった。
正肉の上を行くくらい。
レモンをたっぷり搾って
しゃぶり尽くす。
肩も顔もバツのグンだった。
お勘定は満足の3840円。
ちなみに卸業者は「満水」。

雨も上がったことだし、
このあと浅草の繁華街、
六区のROX内書店で
旅行ガイドの購入と参ろう。
いずれにしろ、河豚の雨宿りに
深く感謝の巻でした。

「まん水」
 東京都台東区浅草2-17-9
 03-6786-7416

2026年8月19日水曜日

第4154話 驟雨に見舞われ 河豚に救われ (その1)

台風のあとはピーカンが
通り相場ながらこの日は違った。
晴れてたかと思うとパラパラ来る。
日暮里駅のエスカレーターを
降りた時にはザア~ッと来た。
あわてて出発間際のバス、
錦糸町行きにシェルターを求めた。

奥浅草で降りよう。
あすこなら目の前は
ひさご通りのアーケード。
雨風を防げるし、
飲み処も見つかるだろう。

到着してもまだ降っている。
通りに2年ほど前にオープンした
カジュアル河豚屋「まん水」。
店頭で品書きをじっくり吟味する。
てっさ(ふぐ刺し)が980円って
ダイジョブだろうか?
安すぎに返って心配になる。

ほかにコレといった店も無い。
河豚で雨宿りもまたオツなもんだ。
初訪だが、よお~し、いてまえ!
店は30前後と思しきアンちゃんが
独りで切り盛りしていた。
速やかにドライ生中を発注。

ボードに書かれたままを記すと
河豚モノはてっさ以外に
ふぐ皮ゆびき(580円)
ふぐから揚げ(680円)
ふぐアラから揚げ(680円)
とらふぐ白子から揚げ(980円)
焼ふぐ(980円)
みなずいぶん安い。

ほかには
真牡蠣(680円)
ハモゆびき(780円)
めひかりから揚げ(680円)
カニクリームコロッケ(380円)
海老フライ(480円)
あさり酒蒸し(680円)
さつまいもスティック(480円)
カレーライス(480円)
といったところ。

最近はあちこちで見掛ける、
真夏の真牡蠣を所望した。
「それは殻付き?」
「ハイ、そうです」
「レモンが欲しいな」
「ウチは紅葉おろしとねぎに
 ポン酢なんですが・・・」
「要らないからレモンだけでー」
「ハイ、判りました」
真夏の真昼に真牡蠣を真面目に
食べるつもりになったのだ。

ん? 何だコレ?
一つの殻に二つの牡蠣が
同居している。
レモンを搾って一つパクリ。
ん、夏牡蠣みたいなネットリ感。
ちょいと匂うじゃないかー。
「オニイさん、悪いけどこりゃ
 食べられんわ、鮮度悪過ぎ!」
「アッ、どうも」
残念ながら真牡蠣は
真っ当じゃなかったのです。

=つづく=

2026年8月18日火曜日

第4153話 稀有なる女優 小川眞由美

女優・小川眞由美が
3月26日に亡くなっていた。
好きな女優さんだった。
晩年は得度して尼さんに
なったと聞いてはいた。

たまたま彼女が亡くなる12日前。
神保町シアターで
「あゝ声なき友」を観た。
渥美清の向こうを張っての共演は
なかなかの佳品であった。

渥美と肉体関係を持つ女性役だが
彼の作品でそんな経緯が
明らかになること自体が珍しい。
寅さんはそういうこととは
無縁というか、苦手というか、
そのイメージでシリーズが
成り立って来たからネ。

彼女の魅力は何だったのだろう?
昨晩、菊正を手酌で飲りながら
あらためてじっくりと考えた。
最初に断っておくが J.C.は
彼女を美しいと思ったことがない。
むろん不美人とも思っていない。
器量よしではあろう。

では何ゆえ彼女に惹かれたのか?
男顔負けの存在感だろうかー。
思い至ったのは観る者に
強い予感を抱かせること。

彼女がスクリーンに現れると
何か起こりそうな気配が
プンプン匂い立つ。
強烈な ”何か起こりそう感” 。
そこに魅了されるんだ。

例によって彼女の出演作から
マイ・ベスト5をいきましょう。

① 食卓のない家
② 復習するは我にあり
③ あゝ声なき友
④ 八つ墓村
⑤ 陸軍中野学校
次点: 鬼畜

TVの「女ねずみ小僧」も
忘れ得ぬドラマだった。
岩下志麻と並び、
寅さんシリーズのマドンナ役を
ぜひ演じて欲しい女優だった。

最後に以前も紹介したが
「食卓のない家」のエピソード。
金魚を食べるシーンがあり、
眞由美は生の金魚を嚙み殺す。
共演者の岩下志麻は
卒倒しそうになったと打ち明け、
スゴい女優さんだと
感服したそうだ。

極めつけはそのあとの一言。
「金魚って小骨が多いのね」
まさしく小川眞由美の特性が
噴出している。

安らかな眠りにつく人ではない。
はるか星空の彼方でも怪演、
いや、快演を続けられるよう、
心からお祈りします。
合掌。

2026年8月17日月曜日

第4152話 初めての清澄庭園

清澄庭園そばのコンビニで
ドライのロング缶を調達し、入園。
入園料は65歳以上70円と格安だ。
確か、浜離宮も同料金だったハズ。
500円は高くとも2~300円が
適正価格ではなかろうかー。

それはそれとして
隣接する深川図書館を
さんざ利用していながら
庭園に入るのは初めて。
小学生に敷居が高いわけではなく、
興味がまったく湧かなかった。
子どもには清澄庭園より
上野動物園であろうヨ。

池を眺めながらノドを潤す。
んん? ヤケにぬるいなァ。
いつも思うがコンビニのビールは
冷えが足りないこと多し。
冷房も冷蔵も経費削減ってか?
どうしようもねェな。
やれやれ。

池畔を歩みながら句をヒネる。
おっと、デッカい亀が寄って来た。
おっと、コイツは紛れもなく、
すっぽんじゃないかー。
ずいぶん人懐っこいが
自然界のすっぽんを初めて見た。

おっと、もう1匹寄って来たヨ。
カミさんかな?
おしどり夫婦ならぬ、
すっぽん夫婦もまた仲睦まじい。
ここで一句。
すっぽんや鍋に煮られず泳ぎ寄り

なおも池の周りをめぐる。
今度は池面(いけおも)の小岩に
亀が日向ぼっこをしていた。
耳が赤くないから
ミシシッピアカミミガメじゃない。
日本固有のイシガメに違いない。

皇居のお濠もそうだったが
さすが清澄庭園だ。
だけどもイシガメのヤツ、
近づいたら池にドボン!
とんずらしやがった。
ここでもう一句。
澄池や石亀飛び込む水の音
どっかで聞いた覚えあり。

もう一つこの庭園に驚いたのは
アオサギがたくさん居ること。
コロニーとまでは云わないが
10羽近くも居て当園で
繁殖しているものと思われる。
おっと、アオサギに混じって
愛嬌たっぷりのゴイサギも1羽。

13時に始まった句会は
15時半にお開き。
こうして月例の敬老の日は
無事終了したのでした。

何よりの収穫は
すっぽんとアオサギのおかげを
もちまして清澄庭園が都内随一、
マイ・フェイヴァリットの
ガーデンになったこと。
ジュリー・アンドリュースが
歌い出したが小姑が五月蠅いので
自重しておきます。

2026年8月15日土曜日

第4151話 歓びアーカイブ 第33回

前話では「北京菜館」の
スイカ・サワーを紹介した。
実は今を去ること18年。
自家製スイカ・ドリンクを
自宅で作っていたのでした。
「食べる歓び」から一話です。

2008年8月18日

第555回
西瓜のカクテル ソルティ・ラビット
=男の手抜き料理シリーズ第4回=

久しぶりに男の手抜き料理シリーズいきます。
と言っても今回は食べものではなく飲みもの。
それも盛夏にふさわしく
西瓜を使ったアルコール・ドリンクです。

今年は去年より西瓜の卸価格が
2割以上も高いようだ。
それでも家族4人で食べて500円ほど。
桃や梨よりは割安といえる。
このコラムでも一度ふれたが
J.C.は子どもの頃、
西瓜があまり好きではなかった。
あの青臭さが嫌だったのだ。
好きな果物ベストスリーは
金=枇杷 銀=梨 銅=桃
もっとも枇杷は昔から高価だったため、
めったなことでは口に入らなかった。

大人になって西瓜が好きになった理由は
自分でもよく判らない。
日本橋高島屋の地下に「レモン」なる
フルーツパーラーがあるが
(新宿高島屋にもあります)
ここで食べた西瓜の味が忘れられない。
西瓜のフレッシュジュースも美味しかった。
このとき西瓜のおいしさを初めて実感した。

さて西瓜カクテルだ。
あまりポピュラーではないけれど、
西瓜のリキュールには
<キングストン ウォーターメロン>や
<すいかのお酒 小丸>なんてのが
洋の東西を問わずに存在する。
だが、ここでは入手しにくい酒は使わない。
用意するものは下記の通り。

ウォッカ適宜 西瓜適宜 アイス適宜
レモン少量 塩少量

(1)西瓜をプラスチックの大根おろし器でおろす。
(2)アイスの入った大き目のグラスにウォッカを注ぐ。
(3)おろした西瓜ジュースでグラスを満たしてステア。
(4)レモンスライスを1枚浮かべ、グラスの縁に塩を。

たったこれだけで美味なる夏の酒が生まれるのだ。
ウォッカはストリチナヤでもスミノフでも
ギルビーでも銘柄にこだわることはない。
安価な甲類の焼酎で代用してもよいくらいだ。
家族の食後の団欒に
子どもたちは西瓜をそのまま。
パパとママは西瓜のカクテルでおしゃれにキメる。

気になるネーミングだが
ヒョンなことからひらめいた。
当コラムを愛読してくれている大阪在住の
“らびちゃん”から残暑見舞いをいただいた。
彼女の愛称はうさぎの“ラビットちゃん”から
由来するものと想像していたが、ここでピンときた。
ウォッカとグレープフルーツと塩で作るのが
有名なソルティ・ドッグ。
グレープフルーツが<犬>ならば、
西瓜が<うさぎ>で悪かろうハズがない。

かくしてソルティ・ラビットの名称が生まれる。
しかもうさぎの赤い眼は
西瓜のイメージにピッタリじゃないの。
われながらよい名前だと
一人、悦に入っている今日この頃です。
ありがとう、らびちゃん!

=本日追記=
今年4月の大坂遠征では
会いそびれたけど
らびちゃんとのつき合いも
20年近くになるんだネ。
まさに光陰矢の如し。

2026年8月14日金曜日

第4150話 「北京菜館」のスイカ・サワー

この日は吟行である。
舞台は江東区・深川の清澄庭園。
深川図書館が隣接しており、
実は J.C.、此処には幼少のみぎり、
ずいぶんお世話になった。

あれは1962年、町には
「寒い朝」や「いつでも夢を」、
吉永小百合の歌声が
流れまくっていた。

小学五年生の夏休みに 足繁く、
この図書館に通い詰めたのだ。
読書家の卵、J.C.少年は
2日に1冊のペースで
読了したため、隔日で通った。

まっ、思い出は思い出として
吟行の前に腹ごしらえといこう。
下調べして白羽の矢を立てたのは
タイ料理店「マキン」なる店。
メトロ・清澄白河駅から
徒歩5分少々である。

やって来たら店は閉じていた。
貼り紙が1枚。
何でも店主のヤムちゃんが
里帰りでタイに帰国中。
今日まで10日間のお休みと
来たもんだ。

前の晩からグリーン・カレーと
心に決めていたため、
精神的打撃は大きい。
それでも近くの「北京菜館」へ。

大陸系女性のツー・オペである。
カウンターに着き、結局は薬局、
いつも通り、半チャンラーメンを
麺も半分でお願いした。
黒ラベル中瓶を飲みながら
待つこと5分でラーメン到着。

具材は肩ロースチャーシュー・
シナチク・小松菜・焼き海苔・
白ねぎ粗きざみ。
ほぼ真っ直ぐの中細麺に
醤油スープが日本風だ。

続いてのチャーハンには
玉子と青ねぎ細きざみ。
ねぎの使い分けが憎いネ。
ともに美味しくいただき、
期待以上のものがあった。

卓上にスイカ・サワーなる、
飲みもののイラスト発見。
猫が西瓜を担ぐ絵柄に
1杯580円とあった。
中瓶お替わりの代わりに
即注の巻となる。

いや、美味いネ。
いいアイデアだネ。
茹だる暑さもなんのその、
さあ、庭園に参りましょ!

「北京菜館」
 東京都江東区白河3-7-13
 03-3642-8038

2026年8月13日木曜日

第4149話 山梨の 帰りに寄った 八王子 (その2)

八王子最古のラーメン店「釜玄」。
最初にお断りしておくが当店は
刻み玉ねぎがいっぱい入った、
いわゆる八王子ラーメンを
供する店ではない。

東京ラーメンとは趣を異にするが
まあ、子どもの頃から
親しんだタイプではある。
レジでラーメンの食券を購入。

此処でハタと思い当たった。
当店にビールをはじめ、
アルコール類はまったく無い。
そのことであった。
仕方ないから
十数年ぶりの三ツ矢サイダーを。

ノドが渇いてるため、
旨いことは旨いネ。
ただ、余りに甘いので
お冷やで割って飲んだ。

三ツ矢サイダーといえば、
コレが大好きな歌手の北島三郎。
弟子だか付け人だかに
買いに行かせたら
7-up だかスプライトだか
他の商品を買ってこられて
飲んだ瞬間、
「違うじゃねェか!」と
激怒したそうな。
”風雪” を耐えて来たわりにゃ、
ずいぶん気が短いな。

う~ん、確かにこの味だった。
いえ、ラーメンのことですがネ。
例によって麺を半分にして貰う。
ちなみに現在、ラーメンは780円。
16年前から230円の値上がりだ。
滞空時間は15分。
前回同様「都まんじゅう」へ。

今日は店の佇まいを
拝むだけにしとこうかな?
と思ったものの、結局は買った。
10個入りが500円と
こちらも200円値上がりしていた。

「都まんじゅう」は
昭和30年代に浅草のデパート、
松屋のそばにも在った。
新仲見世の入口の角にネ。
小学生の J.C.は回転式の製造機を
飽きもせず眺めていたものだ。

運営している「つるや製菓」は
神奈川県・平塚に本社があり、
静岡県・沼津にも店舗がある。
だけど、このまんじゅうだけで
会社が成り立つとは驚きだ。

今日は立ち食いを控え、
一箱すべてお持ち帰り。
一人じゃ食べ切れないので明朝、
マンションの清掃のオバちゃんに
差し上げよう。
一生懸命働く人なのでネ。

八王子からの帰りは
中央線、山手線を乗り継ぎました。

「釜玄 ラーメン専門店 竹の家」
 東京都八王子市中町4-2
 0426-42-5450

「都まんじゅう(つるや製菓)」
 東京都八王子市旭町7-8
 0426-26-0223

2026年8月12日水曜日

第4148話 山梨の 帰りに寄った 八王子 (その1)

上野原を出た列車は高尾に到着。
当初はこの町の「F」という、
鰻屋でうなぎバター焼きを
つまみに一杯やるつもりだった。
ところがネットの写真を見て
ゲンナリしてしまった。
見るからに脂っこそう。

もしコレが美味ならば
他店も追随するに違いない。
どの店もやらないということは
やっぱり駄目なんだろうヨ。

脂っこいうなぎに
油っこいバターは
やはりいただけないと
誰しもが思うハズだ。

高尾で東京行きに乗り換えて
二つ先の八王子で下車した。
この街は16年ぶりになる。
その節は街最古のラーメン店で
ラーメンを食べた。
当欄では紹介しそびれたが
当時のメモが残っている。

「釜玄」のほとんどの客は
ラーメンを注文する。
他にはチャーシューメン、
メンマラーメン、かけラーメン、
それしかないからネ。

具はももチャー・シナチク・海苔。
柔かく煮られたシナチクが旨し。
醤油スープやや甘めで酢と好相性。
ちぢれ麺は太くも細くもない。
ややヤワいがノビにくい。
後味のいいラーメンといえる。

卓上にはギャバン黒胡椒に
生酢と割り箸立てのみ。
食券制でラーメンは550円、
かけラーメンが450円。
前掛け姿のおばちゃん3人。
白い髪を角刈りにした店主は
一人もくもくと仕事に打ち込む。

帰りに近くの「都まんじゅう」へ。
懐かしさに10ケ入り300円を購入。
中身の白あんは白いんげんと
砂糖のみだったんだ。
熱いうちに食べたくて
2ツほど道端で立ち食い。
行儀が悪いが旅の恥はかき捨て?
そこまではいかないだろうヨ。

と、ありました。
牡蠣カレー焼き飯のおかげで
腹はちっとも空いちゃいないが
今回を逃すと、またいつ来れるか
知れたものではない。
頑張るとするかな。

見覚えのある店先にやって来た。
キャノピー(ひさし)が
ピンク&ホワイトの
キャンディー・ストライプ。
その下の看板には
ラーメン専門店 竹の家
こんな名前だったかなァ?
薄茶色の暖簾を潜った。

=つづく=

2026年8月11日火曜日

第4147話 一年半 気になっていた 上野原

都営新宿線、京王線、JR中央線を
乗り継いで、やって来たのは
山梨県・上野原。
初めて降りる駅である。
狙いを定めていたのはただ一つ、
「一福食堂」だった。

駅舎と線路を見下ろす位置にあり、
此処でビールを飲むのが
最高と云う川本三郎さんの文章を
一年半前に読んで以来、
ずっと気になっていたのだ。
まっ、かの松本清張翁も
「一年半待て」を書いてるしネ。

そして此度、ようやく実現。
白い暖簾を潜り、木の扉を開いた。
外見より店内はずっとコンパクト。
テーブルは6卓だけだ。
接客のオネエさんに
一番奥の2人掛けに促された。

ビールは黒ラベル大瓶。
こういう店で大瓶は珍しい。
注文はハナから決めていた。
店の一番人気、
牡蠣のカレー焼き飯(1300円)だ。
海無県の山梨県で牡蠣が評判とは
何の因果か、実に面白い。
看板商品だけに通年の提供である。

待つこと5分少々。
大きめの皿が運ばれた。
カレーピラフの上に
ソテーされた真牡蠣が5粒。
プックリ太った良型である。
レタス・キャベツ・トマト、
サラダも一緒盛りで
あとはラーメンスープ。

高田馬場の「文流」もそうだが
夏場でも美味しい真ガキが
食べられるようになって
カキ好きには
これ以上の朗報はあるまい。

他のテーブルを眺めていると
牡蠣フライが注文を集めていた。
カキメニューには
牡蠣ソテー、牡蠣玉子とじ、
牡蠣バターラーメンなども。

卓上のカスターは
生しょうゆ・中濃ソース・辣油・
生酢・一味・白胡椒・爪楊枝。
過不足ございませんネ。

問題は営業日が
金・土・日のみであること。
それと駅を見下ろす好立地に
ありながら眺めを楽しめるのは
窓辺の1卓だけなのだ。
期待して来ただけに肩透かしを
食らった思いは拭えない。

けれどもフロアのオネエさん、
厨房のオヤジさん、
二人ともすこぶる感じが好い。
山梨県の人って
好人物が多いのかもしれないネ。

食後、駅の周りを散策したが
こう暑くちゃ、ままならず、
上りの高尾行きに乗りました。

「一福食堂」
 山梨県上野原市新田1053
 0554-63-0636

2026年8月10日月曜日

第4146話 わが青春の早大キャンパス

気分がいいので馬場から
早稲田まで歩くことにした。
古くて小さな映画館、
早稲田松竹の前を通りすがった。
ただ今遅れて「国宝」を上映中。
入館は数回に過ぎないが
向かいの雀荘「ワセダ」は
幾度も利用した。

馬場口の交差点を渡り、
早稲田通りをなおも東へ。
グランド坂上、西早稲田の手前に
居酒屋「源兵衛」が今も健在だ。

穴八幡の境内に入る。
せっかくなので手を合わせ、
石段を降りてゆく。
アレッ?こんなに急だったかな?
若い頃はトントン下ったけれど
年を取ると、ちょいと怖いネ。

石段の前は早大戸山キャンパス。
文学部があるところだ。
久方ぶりに立ち寄ってみよう。
校舎に続くスロープが
文学部の代名詞。
上って右手に学食がある。

受付のオジさんに訊いてみた。
「今日は学食、開いてますか?」
「エッと、今日はお休みです」
「今も坂の右手ですか?」
「いいえ、左ですよ」

ん?おかしいな。
右のハズだけどな。
移転したんだろうか。
それとも記憶違い?
そんなことはあるまい。

となると、移ったんだろう。
さすれば、在学中の吉永小百合が
よく座ったサユリズ・テーブルは
もう消えたことになる。

本学に廻ろう。
カレー南蛮の発祥店「三朝庵」が
閉業して久しい。
跡地は待ってましたとコンビニ。
まったくイヤになるネ。

値段も敷居も高くて入れなかった、
洋食店「高田牧舎」は
営業を続けているが
いつの間にかピザ屋に代わった。

書店「成文堂」は営業中ながら
雀荘「早苗」は廃業した。
通用門の脇にあって
仲間で入り浸った喫茶兼バー、
「ポントス」はとっくの昔に消滅。
今はインド料理屋「ターリー」が
カレーとナンを商っている。

通用門から本学のキャンパスへ。
大隈さんの銅像を仰ぎ正門を出た。
そろそろ帰ろう。
三ノ輪橋行き都電荒川線。
上野松坂屋行き都営バス。
どちらにしようかな?
どっちでもいいや!

2026年8月8日土曜日

第4145回 歓びアーカイブ 第32回

宮城県・登米市を訪れ、
懐かしきマーくんの全盛時代に
この年、唯一の敗戦試合を
中華屋のTVで観たのでした。

2014年3月27日木曜日

第803話 ありそでなかった中華のレバ焼き

宮城県・登米市となれば、
「麺や文左」のほかにもう1軒、
是が非にも紹介しておきたい店がある。
実は今回もスキを見ておジャマしたかった。
ところがスケジュールは
あまりにもキツッキツ。
よって訪問かなわずだった。

それでもちょっと間、
身体が空いたので電話を入れたものの、
休憩時間だったらしく、ノー・アンサー。
仕方なく断念した次第だ。
したがって前回訪れた際のリポートとなる。

忘れもしない昨年の日本シリーズ第6戦。
地元、楽天のマウンドには今をときめく、
マーくんがあのどんぐりマナコで
巨人打線を見下していた。
そのときJ.C.は店のTVの真ん前に独り、
陣を取っていた。
プレイボールからゲームセットまで
じっくり観戦したが2013年における、
田中将大の敗戦はこの1試合のみ。
貴重なゲームを観ることができた歓び、
いかばかりであろうか。

中華料理店の名は「賢龍」。
ストリートの名こそ知らねど、
幹線道路に面した、
プチ・ドライブインのような店。
前には晩秋の田んぼが拡がっていた。

この店を訪れるのは二度目だった。
前回、目にとめて惹かれ、
オーダーしたレバ焼きを再びお願い。
もともとレバーは大好物だから
しょっちゅう焼きとん屋を訪ねている。
中華料理店においてはせいぜい、
ニラレバくらいしか選択肢がない。
しかもニラレバを謳っていても
実際はモヤレバであることたびたび。
不満は残るし、納得もいかない。

しかしこの店ときたら豚レバが
ビシッと主役を張るレバ焼きなのだ。
試しに注文してみたが
ズドンと真ん中に命中だった。
オラ、こんなレバ好きだ!
これぞ純レバなりき
いいですなァ、いいでしょう?
脇の長ねぎとピーマンがことのほかうれしく、
かれらはかれらで
おのれの存在をけなげに訴える。
うん、キミたちの美味はよお~く判っちょる。

レバを口元に運びながらTVを観レバ、
おや? 今夜のマーくんは
いつもと様子が違うじゃん。
得意の持ち玉、スプリット・フィンガーに
心なしかキレがない。
あらら、高橋由伸が打ったヨ、
あやや、やったヨ、巨人が勝っちゃったヨ。

こんなシーンはまず観られない。
思わずビールを追加して
最後まで観切ったのだった。
よって夜更けの会合に
遅刻すること半時間。
失礼こうむった次第ながら
ワケを弁明すると、みなさん許してくれた。

しっかし、このレバ焼きを
炊きたての登米米の友としたら
さぞや旨かったことでありましょう。

「賢龍」
 宮城県登米市南方町王塚50−1
 0220-58-5228

=本日追記=
宮城県にはトンとご無沙汰だが
来月、青森・岩手の帰りに
立ち寄るつもりでいます。

2026年8月7日金曜日

第4144話 馬場で蘇るニューヨーク (その5)

厨房に走ったオネエはすぐ戻り、
「真ガキでした!」
「それじゃ1個お願いネ」
「ハイ、かしこまりました!」
香草パン粉焼きを
それなりに美味しくいただく。

食後の飲みものはエスプレッソ。
カキに添えられたカットレモンを
皿に残しておいた。
指で潰して皮から滲むエキスを
カップのフチに塗りたくる。
こうすることによって
エスプレッソに新たな息吹を
吹き込むことが出来るのだ。

このスタイルはおそらく、
ニューヨーク発祥だろう。
他の都市では見掛けないし、
イタリア本国でも
お目に掛からなかった。
読者にもぜひおすすめしたい。
エスプレッソの香りが
より際立って来る。

そうしておいて食後酒。
NY時代にさんざお世話になった、
くるみのリキュール、
ノチェッロがある。
味も風味もそっくりの
ヘーゼルナッツのリキュール、
フランジェリコより好んだ。

J.C.は基本的にドルチェや
デセールの類いを取らない。
むか~し、アラン・ドロンが
何かのインタビューに応えて
食後たしなむものは
「カマンベールとウイスキー。
 デセールは嫌いで取らない!」
まさに我が意を得たりだった。

おっと、サンブーカが
あるじゃないか!
アニス風味のリキュールは
ノチェッロの合間を縫って
ときどき賞味した。
久々だからこちらにしよう。

オニイさんのサーヴの十秒後、
今度はポチャオネバが現れた。
白い小皿を手にして J.C.の顔を
遠慮がちにのぞき込みながら・・・
見ると炒ったコーヒー豆が5粒。

(ほお~、ヤるじゃないかー)
心の内で思いつつ、
「判ってるねェ~ッ!」
「ハイ~イッ!」
ポチャ、満面の笑みである。

ニューヨークでは
サンブーカにコーヒー豆は
無くてはならないモノ。
それを彼女は識っていたのだ。

レモンの皮にコーヒー豆。
高田馬場でニューヨークが蘇る。
ささやかなシアワセを感じた。
自分で云うのは
自慢気でイヤなんだが
こんなサービスを理解して
やれる客の存在は
店側も嬉しいものなのだ。

会計は6700円。
「またよろしくお願いします」
オネバがドアまで送ってくれた。
「どうもごちそうさま」
「ありがとうございました!」
まことに気持ちの好い、
プランゾでありました。

=おしまい=

「文流」
 東京都新宿区高田馬場1-26-5
 F1ビル B1
 03-3208-5447

2026年8月6日木曜日

第4143話 馬場で蘇るニューヨーク (その4)

作日のつづきです。

そしてフランス料理店と
ステーキハウスへの高すぎる評価は
もはや異常である。
どちらを取っても
パリと東京に遠く及ばないのにー。
しかしこればかりは
アメリカ人の舌の問題ではなく、
心の問題というところが面白い。
フランスに対するコンプレックスと
アメリカへの愛国思想が
同居しているのだ。
ダウ9000ドル(安かったなァ)を
クリアして世界経済を牛耳り、
得意満面のアメリカも
フランスには弱いのである。

かくして、とある日、
ひとつ、自分の舌を
信じてみようという気になった。
いくらなんでも2000軒は
一個人の力では及ばないから
優良店を225軒に絞り込む。
この数字に特別の意味はなく、
ウォール街のマネー・ブローカー、
という職業柄、目の前の
モニター・スクリーンに
たまたま映ったシカゴ先物市場、
日経225のページから
そのまま拝借しただけでした。

ということですが
あれから早や30年近く。
こと仔牛に関して世の中は
まったく変わっていない。
J.C.の嘆きは今も続いている。

まっ、嘆いていても仕方がない。
話を前に進めましょう。
そう言えば、ただ一度、
こういうことがあった。

去年の今頃、紹介した、
麻布十番の「ヴィーノ・ヒラタ」。
そのワンフロア上にあるのが
兄貴分の「クッチーナ・ヒラタ」。
仔牛料理があるというので
当店のマダムに訊いてみた。

「仔牛のパイラルド出来ますか?」
彼女、胸を叩いて
「ハイ、出来ますとも!」
思いがけない歓びだった。
そして、とても美味しかった。
はるか昔、2001年。
四半世紀も前だけどネ。

さて、高田馬場「文流」。
冷たいコーンポタージュに満足し、
仔牛のソテーには
若干の不満を残すところへ
オネエさんがやって来た。

「カキがたった今、届きましたが
 いかが致しましょうか?」
「うん、そうだネ、
 どうしようかなァ?」

仔牛のあとのカキでは
順序が後先になるが
「それじゃ、1個だけいただくネ。
 真ガキかな? 岩ガキかな?」
彼女、首を傾げる。
「厨房で訊いて来てくれる?
 真ガキなら欲しいけど
 岩ガキなら要らないっ!」

=つづく=

2026年8月5日水曜日

第4142話 馬場で蘇るニューヨーク(その3)

高田馬場で仔牛を食べながら
ニューヨークの仔牛を
思い出していた。

1998年6月に上梓した自著、
「ニューヨークレストラン
 Best 225 」から
” 読者の方々に ”(まえがき)を
紹介してみたい。
長いため、途中までネ。

ニューヨークに移り住んで10年あまり。
ほとんど毎晩、外食の生活。
訪れた店は高級レストランから
デリ、ダイナーに至るまで
のべ2千数百軒、われながら
よく食べたものだとため息が出る。
初めの頃は各種レストランガイドを
片手にあちこち食べ歩いてみた。
そのうち「何だかコイツはおかしいぞ」
違和感を覚えるようになる。
日本語版旅行ガイドのレストランを
紹介するコラムは論外としても
現地のベストセラーでさえ、
オヤッ? と首を傾げることが
少なくないのだ。

まず、日本料理店の評価が
メチャクチャである。
安くて量の多い店が
もてはやされてしまうから
すし屋でもキッチリ江戸前の仕事を
施すところより大きな鮪の切り身を
恥ずかし気もなくドンと酢めしに
乗せた店の評価が高くなる。
握りめしのような握りずしに
大手を振って歩かれたひにゃ、
同じ日本人として
修業を積んだ職人さんに
申し訳が立たないではないか。

次にイタリア料理に対しては
非常にアンフェアである。
この街のイタリアンの水準が
世界一にもかかわらずだ。
ミラノ、フィレンツェ、ローマ、
イタリアのどの都市にも
都市対抗で負けることはない。
ただし全イタリア対ニューヨーク、
ということになれば全イタリアに
軍配を挙げざるを得ないけれどー。

では東京はどうかというと、
世界最大にして最良の
築地市場が控えているのだ、
魚介料理が不味いわけはない。
しかし、和食と比較して
イタリアンはいまだ、
その素晴らしい素材を
活かしきれていない。
おまけにイタリア料理において
最重要食材である仔牛肉の流通も
流行も不十分なのは致命傷。
松坂牛や前沢牛もけっこうだが
仔牛なくして何の霜降り、
食大国・日本の名が泣いている。

このあたりで止めようと
思ったのですが
もう少々、おつき合い下され。
それではまた明日!

=つづく=

2026年8月4日火曜日

第4141話 馬場で蘇るニューヨーク(その2)

高田馬場駅前の「文流」。
先刻のオネエさんが
すぐに舞い戻って来た。
「すみません、カキの入荷が
 ありませんとのことです」
「無いものはしょうがないネ」

サラダ or スープは
冷たいコーンポタージュと聞き、
無条件で選択。
周囲の客たちもほとんどコレだ。

しかし客層が年配者ばかり。
うち多くの方々が若い頃から
利用しているものと思われた。
さすがに老舗「文流」の底力を
感じさせるものがある。

生のお替わりを追うようにして
仔牛ロースが焼き上がった。
ふむ? 
見た目イマイチやないか?

5月に瀬戸内の直島で食べた、
平目の煮付けみたいなのが
出て来たヨ。
トマト主体のソースが掛かってる。
付合せは新じゃがロースト。

ナイフを入れて
フォークをつっと刺し、パクリ。
う~ん、厳密には
仔牛と言い難いものがあるな。
通常、欧米で仔牛と言えば、
乳呑み仔牛を指す。

母乳だけで育ち、
肉色も淡いピンク。
穀物を口にし始めると
肉に赤みがさして来るんだ。
味わえば、ほんのりと
ミルクの香りすら立ち上る。

NY時代は何せ、
イタリア料理の本場で
あるからにして
仔牛を食べまくった。

最も愛した仔牛料理はパイラルド。
サーロインの部分を
叩き延ばしたものである。
コレを炭火で炙り、
ローズマリー&ガーリックで
風味付けを施す。
10年余りの滞在中、
100回以上は食べただろう。

=つづく=。

2026年8月3日月曜日

第4140話 馬場で蘇るニューヨーク(その1)

本日、出没したのは高田馬場。
たまには独りイタリアンと
シャレ込むつもりでネ。
駅前にあるドンキホーテ。
そのビルの地下に潜った。

「文流」は実に久しぶり。
日本におけるイタリア料理屋の
草分け的存在で漢字二文字の
イタリアンらしからぬ店名は
日本とイタリアの文化交流に
一役買うため名付けられた。
その大志を尊重したい。

人気店につき、電話予約を
事前に入れておいた。
入店すると、
「いらっしゃいませ~!」
ん? どこか聞き覚えのある声。
おう、さっきの電話の声の主だヨ。

様子を拝見したらけっこうな貫禄。
何となく店の主みたいなオネバだ。
ガタイも立派でポッチャリ。
まことに失礼ながら
ポチャオネバと名付けた。

接客担当のオニイさんに
ドライ生中を発注しておいて
メニューに目を通す。
Aセットは数種のスパゲッティに
スープかサラダと
食後の飲み物が付く。

シュフのおすすめに
北海道産仔牛ロースのローストを
見とめた。
仔牛は全食肉中にあって
J.C.が最も愛するものの一つ。
見逃すワケもなく、
迷わず即注の巻である。

すると接客のオネエさんが
申し訳なさそうにささやいた。
「本日、ローストではなく、
 ソテーでのお承りに
 なるのですが・・・」
「ソテーでいいとも!」

あとは同じくおすすめにあった、
から付きカキ香草パン粉焼きを
2個所望に及んだ。
おそらく真がきであろうヨ。

昨今は通年、真がきが
食べられるようになった。
産卵のため身の細る夏場に
その産卵を抑制する技術を
開発したことによって
実現が叶ったわけである。

=つづく=