2013年1月14日月曜日

第490話 東京だよママさん (その1)

 ♪ 久しぶりに手をひいて
   親子で歩ける うれしさに
   小さい頃が 浮かんで来ますよ
   おっ母さん ここがここが二重橋
   記念の写真を とりましょね  ♪
          (作詞:野村俊夫)

この日はニューヨーク時代からの友人・N美と会った。
彼女とは一昨年の夏、16年ぶりに再会し、
当ブログでも「乙女はママになっていた」と題して紹介した。
現在、一児の母で千葉県の内房に住んでいる。

聞けば、行動範囲がおそろしく狭く、
せいぜい千葉市に出掛けるくらいで東京にはまず来ないという。
そういえば、一昨年は浅草で食事をしたが
彼女にとっては生まれて初めての浅草だった。
にわかには信じられないやネ。

待合わせたのは新装なった東京駅の丸の内南口。
高校時代の夏休みにアルバイトをした、
「東京ステーションホテル」のエントランス前である。
ママとはいえ、現役のコンパニオンだから
身体の線は崩れておらず、装いもなかなかにオサレである。

東京駅から東京見物を開始した。
最初に向かったのは皇居前広場。
 ♪ あれがあれが二重橋 ♪
指差してやったりして、まったく歌の通りだネ。
おっ母さんじゃ可哀想だから
さしずめ「東京だよママさん」といったところか。

広場から日比谷公園に移動して園内を一めぐり。
目の前に見える帝国ホテルには来たことがあると言うので
「バンケットのコンパニオンかい?」―訊ねたら
「ううん、自分の結婚披露宴!」―思いもかけぬ応えが返ってきた。
「ふ~ん、N美のダンナ、けっこう無理したじゃないか」
「ううん、それは前のダンナ」
彼女曰く、そっちとはすぐ別れたのだと―。
二番目のダンナがたまたま前夫と同姓で
何かにつけ、都合がよかったのだと―。
いや、マイッたッス。

いっときは晴れの舞台となった帝国ホテルの脇を抜け、
みゆき通り・並木通りを経て
銀座のメインストリート、銀座通り(中央通り)に到達した。
N美曰く、銀座は10年前に面接で一度来たきりで
食事も買い物もしたことないし、映画1本観ていないんだと―。
(冗談も休み休み言え!)
心の中でつぶやき、口には出さない。
世の中にはこんなオンナもいるんだねェ、いや、ジッサイ。

歩行者天国を歩み、「銀座ライオン7丁目店」に入った。
サッポロビールが直営するライオングループの旗艦店だ。
J.C.が通い始めて、かれこれ40年にもなろうか・・・。

=つづく=