2024年5月3日金曜日

第3528話 昼は鯛 夜は穴子が 売切れて (その2)

真鯛の売切れにより、
めぬけに逃れたものの、不発に終わった。
いったん帰宅し、夕刻にまた出掛ける。
行く先は墨田区最大の繁華街・錦糸町だ。

Zooとも・白鶴と喫茶店で逢った。
喫茶と言っても
おチャの代わりにおチャケを飲む。
柿ピーをつまみにビールだけだけどネ。
「ニット」は古く良かりし昭和の喫茶である。
食事メニュー豊富にして
女性にはパフェやホットケーキの人気が高い。

しばし互いの近況を語り合ったのち、
帰宅の途に着く鶴をバス停まで送り、
「それじゃ、またネ」と手を振った。
J.C.にはこのあと、狙い定めた店がある。
駅そばの「丸清寿司」に向かった。

久々の鮨屋だが実はここ数年、
あまり鮨屋に行かなくなった理由がある。
いくつかあり、いい機会だから列挙してみよう。

① 生モノ中心に魚介を食べ続けるのがツラい
② 生わさびを驚くほど使うため、
  店に嫌がられるし、他客の手前も体裁悪し
③ 白身は昆布〆、赤身はづけ、青背は酢〆、
  穴子・はまぐりは煮る技術を自分で習得
④ 年々、江戸前シゴトを施す店が減り、
  鮨種の鮮度ばかりに偏重しがち
 
ザッとこんなところであります。
一時は週に3回も通った鮨屋なんだがねェ。

「丸清寿司」に惹かれたのは数週前、
店先の品書きに穴子の刺身を見とめたため。
ほかにも穴子にぎり三点盛りと称して
生・炙り・煮の盛合わせがある。

韓国の釜山で出逢って以来、
穴子刺しには目が無いのだ。
生の姐御(アネゴ)もけっこうだが
生の穴子(アナゴ)はもっと好き。

つけ場に立つのは八十路の親方と
還暦前後と思しき二番手である。
面立ちが似ているから親子だろうかー。
「穴子刺しお願いします」
「あっ、穴子が売切れちゃってー」
ガッビ~ン! こんなのあり~ッ?
昼は鯛、夜は穴子に蹴飛ばされちまった。

スーパードライがスーパー苦い。
結局は薬局、つまんだにぎりは
小肌・さば・すみいか・しゃこ・赤身、
そして穴子を1カンづつ。
さすがに鮨種の穴子はあり、
全体的に水準は高いものがあった。

20年以上も前に仙台の国分町で飲んだ、
宮城県川崎町の銘酒、伯楽星を1杯飲りながら
「穴子刺しは電話予約しなきゃダメですか?」
「いえ、いえ、今日はたまたまなんですヨ」
「じゃ、近いうちにウラを返しますネ」
「すみませんねェ」
お勘定は3300円でした。
昭和の鮨屋、錦糸町にあり。

「ニット」
 東京都墨田区江東橋4-26-12
 03-3631-3884

「丸清寿司」
 東京都墨田区江東橋4-29-1
 03-3634-7935

2024年5月2日木曜日

第3527話 昼は鯛 夜は穴子が 売切れて (その1)

東京メトロ丸ノ内線を茗荷谷で降りた。
真鯛の刺身が食べたくなったものでネ。
候補店は3つあった。

銀座「竹葉亭」ー鯛茶漬け
浜松町「鯛樹」ー宇和島鯛めし
茗荷谷「小石川かとう」ー鯛のごまづけ丼

初めて食べるごまづけ丼を選択。
おそらく鯛茶の鯛みたいに
ごまダレに漬けてあるんだろうが
茶漬けではない、丼めしのようだ。

地下に降りてカウンターの隅に促されたが
イの一番に云われてしまいやした。
「鯛のごまづけ丼が完売ですがよろしいですか?」
それはないぜセニョリータ!
「それを食べに来たんだけど・・・」
「すみませ~ん!」
「しょうがないなァ、じゃ、出直すネ」
「ハイ、ごめんなさい」

戻りかけつつ、チェンジ・マイ・マインド。
「やっぱり何か食べるネ」
「はい、よかったです、どうぞ」
時刻は12時15分。
手に取った品書きはかくの如し。

焼き魚定食    950円
さば味噌定食   950円
あじフライ定食  1000円
鯛のごまづけ丼  1200円
まぐろづけ丼   1200円
まぐろ刺身定食  1200円
稲庭うどんと
まぐろ中おちご飯 1300円

焼き魚のラインナップを訊くと
めぬけ西京、さば塩、あこう粕漬けの3種。
めぬけには少なからず驚いた。
深海から釣り上げられる高級魚は
水圧の変動で目玉が飛び出るので目抜け。
大好物につき、ドライ中瓶とともにお願い。

配膳された陣容は主役のほかに
マカサロニサラダ、キャベツ煮びたし、
大根葉漬け、しじみ味噌椀、白飯。
副菜はちまちませずにタップリ。
でもネ、めぬけってもっとフックラして
美味しい魚のハズなんだがなァ。
翠富士の肩透かしを食らった印象拭えず。

周りを見渡すと女性客が圧倒的ながら
若い娘は少なくキャリアウーマン風が多い。
千円を超える昼めしを食べるには
それなりの稼ぎが必要なんでしょうネ。

=つづく=

「小石川 かとう」
 東京都文京区小石川5-5-2 バンビビルB1
 03-3943-0145

2024年5月1日水曜日

第3526話 馬喰町の南インド料理店

中央区・日本橋馬喰町でランチ。
北隣りの台東区・柳橋に棲んでいた頃は
ちょくちょく出没した馬喰町ながら
最近はトンとご無沙汰である。

馬喰(ばくろう)というのは江戸の昔から
牛馬を売買したり、周旋する人たちのこと。
牛馬の値踏みをしたり、
ときには治療までしたという。

もともとは博労町だったところ、
17世紀半ば、正保年間に馬喰町に改称された。
以来、隣接する横山町とともに
問屋街として発展し、現代に至っている。

15年前、夜に一度だけ利用した南インド料理店、
「ダクシン」を久方ぶりに訪問。
1階は喫煙可とあって2階に上がる。
殺風景な1階と違い、2階はログハウス風だ。

ドライの中瓶を通してメニューの吟味。
本日のカレー、南インド定食、
ダクシン・スペシャルなどの中から
ドーサランチ(1250円)をお願いした。

ドーサというのは豆粉を焼いた一種のガレット。
円錐形をしており、
アメリカ・インディアンの移動式住居、
ティピーによく似ている。
いわゆるテントだネ。

喫茶店のウエイトレスが持つような
ステンレスのトレイに乗って登場した。
3種あるカレーから択んだ魚カレーはメカジキ。
ダル(スープ)は玉ねぎ・大根・茄子入り。
キャベツ・にんじん・サニーレタスのサラダには
なぜか和風の胡麻ドレッシングが掛かっていた。

残念ながらジャポニカ米のライスに
デザート代わりのつもりなのか、
甘味のほとんど無いヨーグルト。
そして主役のドーサだが
ドーサだけにこれでドウサ?とばかりドサッ。
自ずとこちらの動作も機敏になるヨ。

テントの中にはインディアンの代わりに
茹でたじゃが芋をスパイスで炒めたものが
棲み着いていた。
ドーサには付き物の副菜なのだ。

支払い時、接客のオジさんに訊ねた。
「ダクシンって何の意味ですか?」
「南インドの街、私は北ですがネ」
「カシミールとか?」
「デリーから来ました」

ネパールやスリランカの料理店は
現地の人が働くケースが多いが
南インドは北インド人で持つという。
どこまでホントか判らんけれど
そういうもんなんですな。
ちなみに千代田区・大手町にも店舗あり。

「DAKSHIN 東日本橋店」
 東京都中央区日本橋馬喰町1-12-1
 03-3249-9155

2024年4月30日火曜日

第3525話 「戦前戦後 東京活写」始まる

10日ほど前に神保町シアターで
新シリーズ「戦前戦後 東京活写」が始まった。
心待ちにしていたこの特集は
J.C.の嗜好にピッタンコ。
先週、さっそく3本観てきた。

第一弾は「一万三千人の容疑者」(1966)で
ドキュメンタリー・タッチのドラマ。
1963年3月31日、昭和62年度の最終日に
列島を震撼させた事件が
発生したのは台東区・入谷(現・松が谷)。
吉展ちゃん誘拐殺人事件である。

被害者が実際に連れ去られた、
入谷南公園のロケが生々しい。
近所によく利用する中国料理店と
日本そば屋があるため、
J.C.は何度も公園内に足を踏み入れている。

人工のものと思われるが
園内に小高い山があり、
子どもたちの遊具の宝庫になっている。
山は事件当時も素朴に盛り上がっていた。

2本目は「にっぽんのお婆あちゃん」(1962)。
北林谷栄とミヤコ蝶々が主人公を演じ、
爺さん・婆さんを十八番とする、
名優たちがゾロゾロとオンパレード。

昭和37年の浅草を活写して
雷門・仲見世・花やしき・神谷バー・
吾妻橋と、この街はあまり変貌していないが
今は無き新世界がたまらなく懐かしい。

そして3本目は長門裕之が
非情な刑事を演じる「人間狩り」(1962年)。
薄幸のヒロイン・渡辺美佐子が
とてもいい味を醸している。
舞台は北区・赤羽がちょいと出て来るが
メインは荒川区・町屋である。

まだメトロ千代田線が開通する前のことで
都電荒川線のほかは
京成本線の高架駅があるのみ。
長門が追う犯人の大坂志郎の住まいは
ドブ板横丁のごとき様相を呈している。
今では荒川区随一の繁華街・町屋。
あの頃はこんなんだったんだねェ。

今週は成瀬巳喜男の「銀座化粧」、
山田洋次の「下町の太陽」が待ち受けている。
楽しみ尽きぬ今日この頃。
わが人生に歓びの泉、湧き出づりけり。

2024年4月29日月曜日

第3524話 8年ぶりの同窓会

食用ひょうたんのおかげをもちまして
♪ リズムウキウキ 心ズキスキ ワクワク ♪
意気揚々と「地球飯店」に乗り込んだ。
同窓会は8年ぶりで前回も此処だった。

東武東上線の線路の脇にあった母校。
生徒たちが先生の目を盗んで遊ぶのは
いつも池袋だったせいもあり、
同窓会は常にこの街なのだ。

会場の4階へと上ったエレベーターで
出勤して来たスタッフと相乗りになる。
「何階ですか?」
「4階お願いします」
「お客さまは上板一中ですか?」
「そうだけど、よく判ったネ?」
「同僚が上板一中出身なんですってー」
「そうなの? 彼女も出勤?」
「今日はお休みなんです」
「そりゃ、残念だな」
「ええ、そうですネ」

参加者はめっきり数を減らして28名。
男女ほぼ半々である。
幹事・N中クンの挨拶のあと、
J.C.が乾杯の音頭。
何の役にも立たなかったけれど、
一応、生徒会長だったもんでネ。
幹事のN中、音頭のO澤は不動なのだ。

ビールから紹興酒に移行する頃、
料理が運ばれて来た。
こういう席ではあまり食べないJ.C.ながら
前菜のクラゲと鳥&豚のチャーシュー、
青椒肉糸は少しづつづつ取り皿に取った。

7~8席設けられたテーブルは4つ。
あちらこちらと渡り歩く。
たとえクラスは違えど
3年も同じ学窓に過ごした仲である。
言葉を交わしたことなどなくとも
面貌に当時の面影をしのぶことはできた。

アッという間に2時間半が過ぎゆき二次会。
これまた8年前と同じ、
近所の「清龍 西口店」へ。
食べものは何も口にせず、
ひたすらビールを飲み続ける。

一同、興に乗ってしまい、続いて三次会。
ここまでくると店名も場所も覚えちゃいない。
みんなよく飲み、よくしゃべる。
中華コースのあとだってのに
パクパク食ってるヤツも少なからず。

かく言うJ.C.、中瓶換算で12本は飲んじまった。
げっ、6リットルと来たもんだ。
かくも楽しき宵ですもの、仕方なかんべサ。

「地球飯店」
 東京都豊島区西池袋1-22-8 三笠ビル3・4F
 050-5456-5894

「清龍 池袋西口店」
 東京都豊島区西池袋1-22-2
 03-5928-2992

2024年4月26日金曜日

第3523話 生まれて初めて 食べたひょうたん

今宵は母校、上板橋第一中学校の同窓会。
ちょいと早めに開催地の池袋に赴き、
例によって独りO次会である。
昭和31年創業の行きつけ酒場、
「三福」のカウンターに落ち着いた。

ドライ大瓶と当店の名物、
なか豆腐(380円)を通す。
もつ煮込み(650円)のもつ抜きなんだが
もつが1~2片、いつも必ず混入するのは
単なる偶然ではあるまい。
生活困窮者に対する店側の情けだろう。
ハハ、困窮者が酒場に来ることはないかー。

スタッフはベトナム、あるいはミャンマー、
男女ともアジア系が大半を占めるが
珍しくカウンターに日本のオネバさん。
ここで働き始めてそう長くはないらしい。

本日のおすすめボードに 
ひょうたん漬け(450円)というのを発見。
ん? ひょうたん? 見たことないな。
食べられるんかいな?

オネバさんに訊いてみた。
「ひょうたんって、あのひょうたん?
 食べられるの?」
彼女応えて
「エエ、食用ひょうたんです」
「エエッ? そんなのあるの?」
どうして看過することができようかー。

へえ~っ、こうなんだ。
小鉢に4ツほど小さいのが盛られていた。
カブトムシの半分くらいのサイズで
薄緑色がちゃんとひょうたん形である。
こればかりは写真を紹介したいところだが
写真を撮らなくなって久しい。

この7年間、何度も読者の方々に
「どうして写真を載せなくなったんですか?」
異口同音に質問を受けてきた。
「ある日突然、こんなことをしてる自分に
 嫌気がさしちまいましてー」
そう、応えてきた。

味わいは酸っぱくしょっぱく、
奈良漬に使われる小型のスイカに似ている。
帰宅後、調べてみたらククルビタシンという、
苦味成分を含有しており、
嘔吐・下痢などの症状を起こすが
その成分の少ない食用品種も存在するとのこと。

話のタネにもなるし、実に美味しいので
どこかで出逢ったら、ぜひお試しください。
載せはしませんが、この写真だけは撮りました。

「三福」
 東京都豊島区西池袋1-27-1
 03-3971-1773

2024年4月25日木曜日

第3522話 翌日戻った 荒川車庫前

車庫でフラれたその翌日。
どうにも気になって今一度、現場へ。
犯行現場に戻る犯人の心理と一緒だネ。
同じ轍は踏むまいと12時半前には到着した。

うわっ、けっこうな繁盛ぶりじゃないかー。
元気なオバちゃんたちがフロアを縦横無尽。
壁に向いた変形カウンターの一画を確保し、
料理カウンターに進み寄る。

あんまり並んでないなァ。
というのも注文後に作り始めるもの多し。
「今日の揚げ物はイカフライで~す!」
オバちゃんの掛け声にイカを通す客が7割だ。

冷奴と肉じゃがの小鉢を取り、
ドライ大瓶とともにお願いした。
トレイに乗せて着席したら
ビールとグラスが直ちに運ばれ来た。

近所で人気の豆腐屋のものと思われる豆腐は
半丁だけど、けっこう大きい。
ねぎとおかかが掛かっているが
やはりこれにはおろし生姜が欲しい。
肉じゃがは新じゃがとにんじんに豚小間。
今が季節の新じゃががうれしい。

1240分になると潮が引くように客が引ける。
ライチャス・ブラザースの「引き潮(Ebb tide)」が
聞こえてきたが英語なのでやめとく。
たぶん英語を解さない浪花の小姑の目を
すり抜けるには好い機会だが
鬼の居ぬ間の洗濯みたいな行為は慎みたい。
いろいろ気を使うなァ、ジッサイ。

引き潮とともに身を引くことにした。
しかし、まだ飲み足りない。
荒川線の車庫前から熊野前まで4駅歩き、
日暮里・舎人ライナーに乗った。
行く先は西新井大師西の「みたけ食堂」。

此処でもドライ大瓶をもらい、
生たらこ1切れ、さば味噌煮1/4身、
そしてさっきはパスしたイカフライ。
当店はポーションが小さいので
少食のJ.C.にはまさに打ってつけ。
明るく楽しく健康的な独り飲みである。

壁に「居酒屋風営業はしません」の但し書き。
ビールだけはあるが
日本酒・焼酎・ウイスキーの類は置かない。
フロアのオジさんにおそるおそる、
缶ビールの追加を打診すると
快く引き受けてくれた。
何度も来ているので覚えてもらったらしい。

ちなみに「ふじ家」も「みたけ食堂」も
飲んでいたのは、われ独りきりでした。

「ふじ家」
 東京都荒川区西尾久8-33-3
 03-3893-7186

「みたけ食堂」
 東京都足立区谷在家2-5-2
 03-3890-4421