2015年11月30日月曜日

第1240話 秋のスポーツ 花ざかり(その4)

アップが大幅に遅れ、ご迷惑をお掛けしました。
お詫びします。

実はマイクロソフト8.1から10へのグレードアップを試みたのが失敗の元。
インターネットがまったく使えない状況に。
綴れば長くなるし、愚痴や怒りが湧出するので省くが
復旧に5時間も費やしてしまった。
いや、鳴きたくなりました、ジッサイ。

 ♪  泣くな嘆くな 男じゃないか
  どうせ実らぬ 恋じゃもの
  愚痴や未練は 玄界灘に
  捨てて太鼓の 乱れ打ち
  夢も通えよ 男女(みょうと)波 ♪
     (作詞:吉野夫二郎)

ただ今11月末日の16時半すぎ。
気を取り直して行きまっしょう!

サッカーはハリル・ジャパンである。
W杯ロシア大会のアジア予選を通して課題が続出。
カンボジア相手にオウンゴール含みの計2点とはあまりに情けない。
杉山隆一・釜本邦成を擁して臨んだ、
メキシコ五輪予選(古くてゴメンナサイ!)のフィリピン戦では
驚くなかれ、15―0の圧勝ですぜ。

あれから47年といえば実に半世紀。
遠い道のりを経て世界相手にそこそこ戦えるようになったと思いきや、
まったくもって元の木阿弥もいいところだ。
振り返ればW杯南ア大会本戦の頃が
日本サッカーの頂点だったような気がする。

カメルーンとデンマークに対する勝利は
世界のサッカーファンを瞠目させたハズだ。
ちょうど先日のラグビーW杯イングランド大会のようにネ。

大きなポイントは二点。
毎度言われ続けているオフェンスの得点力不足と
ディフェンスのセットプレーに対するもろさだろう。
古くはカズだヒデだァ? 新しくは本多だ香川だァ?

笑わせちゃいけません。
半世紀のあいだ、未だに釜本を超えるFWが出てこない。
突破力もなければ空中戦に長けているでもない。
揃いも揃って小粒に過ぎるんだヨ。

両方兼ね備えた大型FWは釜本以外に一人もいない。
まさに釜本の前に釜本ナシ、
釜本のあとに釜本ナシ。
このままじゃブラジル大会では
まず決勝トーナメントに進めやしないネ。

=つづく=

2015年11月27日金曜日

第1239話 秋のスポーツ 花ざかり (その3)

勝負の世界はどこに落とし穴が潜んでいるか知れたものではない。
8回をたった8球で三者凡退に抑えた、
則本の急変はまったく想定の範囲外だったろう。

あとを継いだ松井の投入こそが継投ミス。
すでに一度失敗しているにも関わらず、
無死満塁でのリリーフはなかろうヨ。
クローザー・岩瀬に執着しすぎて墓穴を掘った、
北京五輪での星野監督の二の舞であった。
あゝ、歴史は繰り返す。

星野元楽天監督といえば楽天監督就任時に
「北京のリベンジをはたしたい!」―そんな決意を述べて意気込んだ。
このオトコはアホやないか!
あきれはてたJ.C,、そないに思うたのどす。
ナショナルフラッグを背負って戦った五輪の惨敗を
一職業野球団の優勝でリベンジできると考えてけつかる。
バカに付ける薬はまったくもってあらしまへん。

ちょいと古くなるが日本シリーズでは
ソフトの強さがハードであることが証明された。
セリーグ6チームの連合軍と戦っていい勝負と思われたくらいだ。

メジャーリーグの覇者はロイヤルズだったが
あれはUSシリーズであってワールドシリーズではないハズ。
カンザスシティと福岡で真のワールドシリーズを戦って欲しかった。
何とか実現できないものかねェ。
日本の野球ファンはみんなそう思ってるだろうに―。
もっともアメリカのファンとの温度差はかなりあるかもしれない。

サッカーにいきましょう。

 ♪   森へ行きましょう 娘さん(アハハ)
   鳥が鳴く(アハハ) あの森へ(ラララララ)
   僕らは木を伐る 君たちは(アハハ)
   草刈りの(アハハ) 仕事しに

   ランラララン ランラララン ランラーララン
   ランラララン ランラララン ランラーララン ♪

      (日本語詞:東大音感合唱団)

いえ、べつに深い意味はなんですけど、
ちょいと小休止の意味も込めて
ポーランド民謡「森へ行きましょう(シュワ・ジェヴェチカ)を
流してみました。
小学校の五年生あたりだったかな、
みんなで盛んに歌った記憶があります。

文明開化以降、日本国民の人口に膾炙してきた、
スコットランドやイングランドの民謡とはどこか違う調べ。
明るいメロディーの中に潜むスラブ民族特有の哀愁。
なかなかに味わい深い名曲でありました。
今も歌い継がれているのだろうか・・・。

=つづく=

2015年11月26日木曜日

第1238話 秋のスポーツ 花ざかり (その2)

その白鵬だが故障を抱えてしまった先場所はともかく、
今場所のラスト三番に体力・気力の衰えを感じた。
長きに渡った彼の栄華は終焉を迎えようとしている。
V3やV4みたいな連覇はもうムリ、時代が変わったのだ。

今場所優勝の日馬富士は
体力的にムラか゛あるため、多くは望めまい。
年齢も白鵬より上だしネ。
怪我さえ治せばこれからは照の富士の時代がやって来る。

それにしても稀勢の里のふがいなさはいったい何なんだ。
これほど期待を裏切った力士は前代未聞と言うほかはない。
お粗末の骨頂であろう。
琴欧州や把瑠都ですら優勝経験があるというのに
期待の星は地に堕ちた。

これにて相撲は打ち止め、ラグビーに移行しよう。
W杯イングランド大会である。
人気沸騰の五郎丸選手が日本人、
殊に女性や子どもたちの視線をラグビーというスポーツに
向けさせた功績はきわめて大きいものがあった。
スコットランド戦では重要なキックをかなり外していたけどネ。

時の人としてはフェンシングの太田選手に共通するものがあり、
移籍する豪州のプロチームでどこまでやれるのか、
楽しみではありますな。

日本中、いや世界中の度胆を抜いた南ア戦の逆転勝利。
拍手喝采を送りたいけれど、
対スコットランドの、それも後半の作戦ミスが返すがえすも残念。
成就し掛かった見果てぬ夢を砕いてしまった。
夢破れて山河あり、障子破れてサンがあり。
アーメン!

野球の第1回プレミア12にもふれておかねば―。
思い出したくもない準決勝、韓国戦の9回表。
野球というスポーツは団体戦でありながら
実体は数人の投げ手と十数人の打ち手の局地戦である。
投手と打者のそのときどきのタイマン勝負に
極論すれば、介在できるのは守る側の捕手のみ。
もちろん、ヒット性のあたりを美技で救ったり、
イージーフライを落球したりする野手の影響は重要ながら
あくまでもそれはサッカーでいうところのアシストや凡ミスにすぎない。

あゝ、韓国戦!
すべては7回表に大谷が打たれた1本の単打だった。
あれがなければノーヒットノーランの大記録がかかる、
8回以降も大谷続投だったハズ。
いつぞやの日本シリーズでの中日・落合監督による確信犯的愚行を
サムライ・ジャパンの小久保監督が犯すことはあり得ないからネ。

=つづく=

2015年11月25日水曜日

第1237話 秋のスポーツ 花ざかり (その1)

去年の夏の悪夢、ブラジルW杯の惨敗を受けて
しばらくスポーツ・ネタから遠ざかっていたが
ひねくれていても仕方がないので久々にいってみたい。

はて・・・どこから始めてみましょうか?
日馬富士が2年ぶりの賜杯を抱いたことだし、
大相撲からいくとしますかの。
しばしのおつき合いを―。

意想外だった日馬富士の優勝。
ハルマ・ファンを自認する、
英国のウイリアム皇子もさぞや歓んでおられることだろう。
いつもいつでも白鵬の独壇場では観る者もさすがに飽きてしまう。
先場所の鶴竜、今場所の日馬富士の優勝は
マンネリズムからの脱却という意味合いもあってよかった。

さて、白鵬が栃煌山戦でパフォームした猫だまし。
良かれ悪しかれ日本国中津々浦々、
この話題で盛り上がったことは確かだ。
直後に急逝した北の湖理事長はじめ、
角界の関係者はおしなべて否定的だが
世間の相撲ファンは賛成派、
あるいは容認派が過半数を占めている。

一般的なファンのJ.C.も賛成に1票を投じたい。
角界では解説者の舞の海が印象的なコメントを残している。
「白鵬流のユーモアの表れではないか」と言うのだ。
さすがですねェ、いいですねェ。
ニュートラルな立場に立って正鵠を射た寸評だった。

かように軽く流せば目クジラを立てるほどの罪ではあるまい。
もとより犯罪でも何でもないが
有態(ありてい)に申せば、あれは確信犯だネ。
本人はちっとも悪いと思っちゃいない。

立ち合いの変化に比べたら猫だましのほうがなんぼかマシ。
と言うより、どこかシャレっ気、チャメっ気を感じる。
変わり身だってルールで許される範囲内。
杓子定規でアタマの硬い角界の面々こそ、
これを機会に反省してもらいたい。

ただ一つ、ちょっとばかり気になるのは
最近の白鵬は自ら偽悪主義に疾っているような気がする。
乱暴な言い方をすれば、白鵬の”朝青龍化”だろうか・・・。
本人だってまさかあそこまでヒドくなろうと思っちゃいまいが
頑固で封建的な角界という名の泉に
小石の礫(つぶて)を投げ込んでいるのだ。

若・貴なきあと、ずっと低迷を続けてきた大相撲人気。
それを支えてきたのはオレじゃないか。
けっして悪ガキ・朝青じゃないハズだ。
その功績に対し、長いこと日本人力士の優勝がないからって
ヒール役の立ち回りはあんまりじゃないか!
声なき声が聴こえてくる。
不満と鬱屈に裏打ちされた、いらだちが伝わってくる。
角界の内・外を問わず、不世出の大横綱を
もうちょっとリスペクトしてあげましょうヨ。
ねっ、皆の衆!

=つづく=

2015年11月24日火曜日

第1236話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その10)

神楽坂の焼き鳥屋「駒安」の牛すじ煮込みはまずまず。
ニラを入れ込んでもらったものの、
煮込みとニラの相性は別段どうということはなかった。
時間も押してきたし、そろそろ焼き鳥に移行せねば―。

最初のオーダーはハツモトとハラミを塩で。
ハツモトはハートとレバーを繋ぐ動脈。
コリコリとした歯ざわりに滋味もじゅうぶんだ。
ハラミは焼肉屋で食べる牛のそれとはまったく異なる。
あばら骨を包む横隔膜でクニュクニュ感を楽しむことができる。
相方のM鷹サンも満足そうに笑みを浮かべていた。

思えば焼き鳥屋で正肉・ねぎま・ササミ・手羽先の類いを
注文することはほとんどない。
コースの場合は仕方がないが
そうでないとどうしても内蔵中心になってしまう。
ハツとレバーは必食。
ほかには首肉のせせり、お尻の先っちょのボンジリあたりだ。

瓶ビールをさらにお替わりしていよいよ肝である。
それも一般的なレバー、いわゆる肝臓ではなくて背肝。
あまり聞きなれないかもしれないが背肝は鳥の腎臓だ。
丸一羽のローストチキンを召し上がった方なら覚えがあろう。
内臓を抜かれて空洞となった中心部、
あばらの奥にこびり付いている小片が背肝で
肝臓ほど大きくはない。

1羽から少量しか取れないから
1串の態を成すには相当の寄せ集めが必要。
したがって「駒安」のラインナップでは最高額の220円也となる。
これはタレでお願いした。

待つこと10分、焼き上がった背肝はミディアム・レア状態。
熱いところをさっそくいただくと、レバーに似てはいるものの、
独特の食感と風味が食欲をそそること、そそること。
もしもどこかの店で遭遇したら是が非でも試していただきたい。
希少部位を提供する奇特な焼き鳥屋において
どれか1本と問われれば、J.C.は迷わずコレですネ。

まだ腹は八分目どころか六分目がいいところ。
定番のハツ&レバにいきたい気持ちはやまやまなれど、
次なる会も一種のパーティーにつき、
それなりの料理が用意されているハズ。
ストマックに余裕を持たせておきたい。

勘定を済ませ、神楽坂を散策することもなく、
JR飯田橋駅へと向かう。
代々木上原のうなぎ屋に始まり、渋谷のヘアサロン、
神楽坂の焼き鳥屋、そしてこれから田端のスナックだ。
長い一日はまだまだ終わることがない。

=おしまいー

「駒安」
 東京都新宿区神楽坂1-11
 03-3260-3549

2015年11月23日月曜日

第1235話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その9)

1979年夏。
佐渡の相川。
日中は金山を訪ねたり、海水浴場で泳いだりしたが
夜はどこで晩酌して、どこで晩めしを食べたのか、
まったく記憶がない。
おそらく近場の居酒屋だったであろうヨ。
 
宿に戻り、窓ガラス越しに暗い海を眺める。
窓を開け放つとおびただしい数の虫たちが来襲してくるからネ。
夜の佐渡の海は「漁火恋歌」の歌詞そのまんま。
  
 ♪   ハー  沖でゆれてるヨー
   アー  あの漁火は
   好きなあなたが  好きなあなたが
   烏賊釣る 小船ヨー     ♪

なのであった。

音が無いと判じにくいが
上記の部分は「佐渡おけさ」調。
そう、「漁火恋歌」の舞台は佐渡ヶ島にほかならない。

1泊目だったか2泊目だったか、
夜が明けて朝めしを宿のそばの食堂でとったことは覚えている。
朝からイカの刺身が出てきてビックリしたから記憶に残ったのだ。

生モノはけして嫌いではないが
朝から刺身というのはどうもネ。
焼き魚にしたって生を焼いたものより、
アジの開きや塩ジャケが好ましい。
このひと干し、このひと塩が
にっぽんの朝食の食卓にあるべき姿だ。
とにもかくにも佐渡は島中、イカであふれかえっていた。

神楽坂の「駒安」である。
てっきりイカの一夜干しと早合点したのはこちらの勘違い。
実物は品書きに書いてある通り丸干しだった。
したがってワタもそのまま残されている。
スルメほどカチンコチンではないものの、
いわゆるセミドライ仕上げだ。

刺身→一夜干し→丸干し→するめ
(フレッシュ→セミフレッシュ→セミドライ→ドライ)

といった感じの流れかな。

丸干しのせいで日本酒が欲しくなったが
当夜はこれから動坂下のスナックにて二次会の予定。
先が長いのでガマンする。

瓶ビールと一緒に牛すじの煮込みを追加した。
この店では煮込みに
豆腐・ニラ・キムチをそれぞれ好みでトッピングしてもらえる。
なかなかユニークなアイデアである。

=つづく=

2015年11月20日金曜日

第1234話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その8)

神楽坂下「駒安」でキャベジンをつまみにビールを飲んでいる。
キャベジン(発売元:興和)となれば、かれこれ40年以上も前、
森繁久弥&悠木千帆(現・樹木希林)による、
TVコマーシャルがなつかしい。

正確な台詞(セリフ)はぼんやりとしか覚えちゃいないが
確か・・・

「レバニラとボタ餅食べたんだけど、
 キャベジン飲んだほうがいいだべか?」―(悠木)
「ん?いいだべヨ」―(森繁)

であったと思う。

ところが「駒安」のスペシャリテ、キャベジンは胃腸薬に非ず。
キャベツの浅漬けなのだ。
そこそこの量が合ってたったの250円。
ほとんどの客が注文するのではないだろうか。

ビールととともにキャベジンを頼み、
同時に焼き鳥を何本かお願いしておくのがマイ・スタイル。
こうして串が焼き上がるのを待つわけだ。
ビールの銘柄もアサヒ・スーパードライとサッポロ黒ラベル。
これまたジャスト・マイ・スタイルときたもんだ。

「駒安」の店主はどうやら新潟県・佐渡ヶ島の出身であるらしい。
2011年の甲子園、春の選抜に21世紀枠で出場した佐渡高校。
そのときの栄光を報じた新聞の切り抜きが
これ見よがしに壁に貼られている。

店の品書きも、いごねりやイカの丸干しなど佐渡色が強いし、
日本酒の品揃えもまたしかりなのだ。
本日の品書きボードからイカの丸干しを選んだ。

思えばこれも40年近く以前、夏の佐渡を訪れたことがある。

 ♪  誰にも言わずに 裏木戸をぬけて
   海辺の坂道 駆けてゆく
   紅い椿の 散る道で
   やさしく胸に 抱かれたころも
   今では帰らぬ 夢なのね
   ハアー 沖でゆれてるヨー
   アー あの漁火は
   好きなあなたが 好きなあなたが
   烏賊つる 小船ヨー     ♪
      (作詞:山上路夫)

小柳ルミ子の「漁火恋歌」は6枚目のシングルで1972年11月のリリース。
「わたしの城下町」でデビューし、
いきなり160万枚のヒットを飛ばしてから1年半後のことだった。

=つづく=

2015年11月19日木曜日

第1233話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その7)

ファミリーマートの店頭テラスで缶ビールを飲んでいた。
しかるに缶からダイレクトだとあまり美味しくない。
ノドの渇きをなだめるため、グビッと飲ったものの、
さわやかだったのは最初の一口か二口、
あとは何か違うんだよねェ。
ビールはやはりジョッキとか
グラスとかに注いでから飲みほしたい。

さっき来た道を真っ直ぐ進んでキラー通りにぶつかった。
そう、キラー通り・・・。
不思議な名前のストリートでしょ?
ネーミングの由来には諸説あれど、
名付け親は服飾デザイナーのコシノジュンコ女史らしい。
それにしてもヘンな名前だ。

外苑前→青山一丁目→赤坂見附→市ヶ谷見附→神楽坂下

目的地にたどり着いたときには
すでに日はとっぷりと暮れていた。
当夜の相方はのみとも・M鷹サン。
神楽坂は不案内の友人に判りやすいよう、
待合わせは「不二家」の店先を指定しておいた。

都内、いや、国内のあちこちに「不二家」の店舗は
展開されていると思うけれど、
ペコちゃん焼きは唯一、この神楽坂店の販売である。
一種の人形焼きといおうか、今川焼きといおうか、
まあ、そんなお菓子だが、けっして美味しいものではない。
ハナシの種に一度食べればじゅうぶん。
ただし、子どもは歓ぶから
どこどこファミリーへの手みやげには重宝するだろう。

M鷹サンと酒盃を交わしたのは焼き鳥の「駒安」。
好きなんだよねェ、この店、
神楽坂で飲み会や食事会があると、
必ずといってよいほど独りで零次会にやって来る。

そのときのシチュエーション次第ながら
おおよそビールの大瓶1本に焼き鳥を2、3本。
軽く下地を作っておいて一次会にのぞむワケだ。
この憩いのひとときが実に楽しい。

独り酒もよいが二人酒もまたよし。
当日は昼・夕・晩とビールの飲みっ通しじゃないか。

中瓶(500ml)→ロング缶(500ml)→大瓶(633ml)

と、単に中身の容量が変わっているだけだ。
乾杯とともに必注のキャベジンをお願いした。

=つづく=

2015年11月18日水曜日

第1232話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その6)

今の東京、吸い殻のポイ捨てはもちろん、歩き煙草も禁止。
郊外区の条例はよく織らないが
都心部の千代田区や文京区はかなり厳しい。

煙草の吸える場所がほとんどなく、
公園のベンチもアウトだから
気兼ねなく愛煙可能なのは
自宅以外は居酒屋やバーに限られてしまう。
喫煙者はつくづく肩身が狭い思いをしている。

さて、歩行のつづき、つづき。
宮益坂上で青山通りに出る。
表参道の四つ角を左折し、
進路を原宿方面にとったもののすぐに右折した。

しばらくごぶさたしている、
ブラジリアン・シュラスコの「バルバッコア・グリル」に差し掛かった。
開店前で様子が判らないが、たぶん繁盛しているのだろう。
現代人は牛肉が大好きだからネ。
立ち食いでステーキを食べさせる「いきなり!ステーキ!」など、
どんどん支店網を拡げている。

とんかつの人気店「まい泉」は中休みもとらずに営業中。
それにしても以前と比べてずいぶん値段が上がった印象。
上野の老舗「ぽん多」や「蓬莱屋」並みになっている。

「まい泉」の女社長は
もともと湯島の「井泉本店」でお運びを担当していた人。
それが今や本家をしのいで飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
判官びいきをするわけじゃないが
J.C.はまぎれもない「井泉」派を自認する。

湯島本店の2階座敷で味わうとんかつは
古く良かりし昭和の情緒が付加価値となって
その美味しさが倍加するように感じるのだ。

ガラス越しにのぞいた「まい泉」の店内は
中途半端な時間帯にもかかわらず、それなりの客足。
デパ地下でいくらでも買えるのに
かなりの人気を誇っていると言ってよい。

「まい泉」の並び、数軒先にコンビニのファミリーマート。
ストリートからちょっと奥まって
あいだのスペースがテラス風に設えられている。
家族連れが憩っていたり、オジさんがビールを飲んでたりする。

まだ大して歩いてないけれど、
オジさんの缶ビールに条件反射、ノドの渇きを覚えた。
スーパードライのロング缶を買い求め、
立ち去ったオジさんが空けた席に陣取った。
プシューッ! グビグビッ!
花の青山、表参道の黄昏どきである。

=つづく=

2015年11月17日火曜日

第1231話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その5)

渋谷のヘアサロン「B」にて
新妻・K子チャンに髪を任せながら雑談。

「区役所建て替えるんだねェ」
「そうなんですヨ、長いこと工事されると思うとユウウツで―」
「そんなに長く掛からないと思うヨ」
「エッ、どうしてですか?」
「どうせ近頃流行りの杭打ち浅めだろうし・・・」
「アハ、アハハハ・・・」

この女(ひと)とは十数年もの長きに渡り、
必ず2ヶ月毎に顔を合わせていることになる。
わが実生活において他にそんな女が
はたしているだろうか?いや、いないネ。
コレってスゴくなぁい~ッ?

多くの読者に
「バッカじゃねェの?」―そう言われそう。
よって前に進もう。

およそ50分で理髪は終了。
カットとシャンプーだけだから簡単だ。
ヘアサロン「B」はいつも空いていてリラックスできる。
他店にあるまじき快適な空間がここにある。
おそらく足腰が立たなくなるまでこの店に通い続けるのだろう。
まだ先がナゲェな。

 一に新宿 二に渋谷 三、四がなくて 五に秋葉原

突然のことで驚かれたろうが
都内の街のわがワースト・スリーである。
そんな渋谷に定期的に出没するのはヘアカットのためだけだ。
来たくもない場所に来なければならない。
腐れ縁はこれからも続くのだ。

夜の予定は神楽坂で二人飲み。
時間がずいぶん空いたので歩くことにする。

渋谷駅前の雑踏を避けて宮下公園下のガードをくぐり、
宮益坂の隣りの小坂をのぼってゆくと左手に小さな公園。
いや、驚いたネ。
片隅に飲料水の自販機がいくつか並び、
その前に黒山の人だかりである。

いえ、缶コーヒーやお~いお茶を買い求める人々ではなく、
実際はオール・スモーカーであった。
自販機のの脇にいくつかスモーキング・スタンドが置いてあり、
近隣のリーマンやフリーターの諸君が憩いの場としている景色。
砂漠のオアシスに水を求めて集結する、
動物たちと形容すれば聞こえがいいが
こりゃどう見ても蜜に群がる蟻ん子ですぜ。

=つづく=

2015年11月16日月曜日

第1230話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その4)

上原のうなぎ店「鮒与」。
ビッグサイズの肝焼きを肴にビールを飲んでいる。
なぜ、この肝が当店で捌いたうなぎのソレではなく、
別途仕入れたモノだと判るのか?

通常、他店では売り切れ御免が多々あり、
たとえありつけたとしても1人1本までの店が多い。
ところが「鮒与」では1人で2本食おうが
3本食おうがお構いナシなのだ。
都内にこんな店はほとんどないのではないか。

かような量のうな肝を用意するには
何十匹もの、いや、百匹以上のうなぎが必要。
普通の店では肝吸いに活用され、
肝焼きまでは手が回らないのが実情だろう。

かなりの食べ応えは多少大味ながら
1串400円と良心的な値付けは好感が持てる。
以前も複数本注文できたから当店の伝統なのであろうヨ。

金1600円也のうな重(並)が到着して
別仕入れの事実がさらに裏付けられた。
炊き立てのごはんの上に
チョコンと鎮座ましましている蒲焼は小ぶりな個体の半尾分。
こんな小さなうなぎから取った肝があんなにデカいハズがない。

でもって重箱のうなぎだが上から番茶でもぶっかければ
鰻茶漬けと見まごうばかりのスモールサイズ。
食べていて胸の奥から侘しさが這い上がってくる始末。
しかしながらうなぎは小ぶりなほうがよい。
デリケートな滋味がしみじみと伝わるからネ。

したがってJ.C.の場合、うなぎ屋においては(並)専門。
松・竹・梅のケースは(梅)を選択する。
ときどき並びが梅・竹・松と逆の店があるけれど、
その際はむろんのことに(松)である。

ちょいとばかり肝に辟易としてしまい、肝吸いはパス。
古漬けのきゅうり&大根の新香とともに
うなぎ少なめのうな重(並)を食べ終え、
渋谷の街に向けて歩を進めた。

渋谷区役所前のヘアサロン「B」で
10年来、髪を切ってくれているK子チャンとよもやま話。
去年、韓国の若者と所帯を持った彼女、
食生活の不適合が悩みの種だとこぼすものの、
おおむねシアワセな新婚家庭を営んでいる様子だ。
まずはめでたし。

=つづく=

「鮒与」
 東京都渋谷区上原1-34-8
 03-3467-6231

2015年11月13日金曜日

第1229話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その3)

昭和歌謡を代表する作曲家・古賀政男が愛顧した、
代々木上原のうなぎ屋「鮒与」を久しぶりに訪れた。

この日は2ヶ月に一ぺんの理髪日であった。
ヘアサロン「B」は
このほど解体の決まった渋谷区役所の真ん前にある。
もともと嫌いな渋谷の街、
せっかく出かけるからには何か付加価値を求めたい。
晩酌するか、晩めしを食うか、なのである。

当日は珍しくも昼めしのために代々木上原に赴いたのだった。
「鮒与」は以前とまったく変わらぬたたずまい。
何となく安心して暖簾をくぐった。

先客は1名のみ。
60代だろうか、初老の男性が蒲焼きをつまみに
日本酒をチビリちびりと飲っていた。
遠方から遠征してきた様子はないから
近隣に棲む常連サンだろう。

こちらも負けじと、というわけでもないがキリンラガーを注文。
もっとも清酒とビールじゃすでに負けかもネ。
それにしてもここ「鮒与」、
相いも変わらずキリンとエビスしか置いてない。
判ってないねェ、ホントにまったく融通が利かないんだワ。

エビスなら飲まないが
キリンラガーは無いよりマシにつき、所望した。
そうしておいて大好物の肝焼きを2本お願いの巻。
他人のフリ見てわがフリ直せ、
先客が肝焼きを追加した。
そうでしょう、そうでしょう。

肝焼きが整うまで少々手持無沙汰。
ひまつぶしに携帯電話の手を借りる。
その間、2通ほどメールのやり取りを済ませた。

しばらくして到着した肝焼きがドデカい。
前回の訪問からすでに何年か経過しているので
ハッキリした覚えはないが
こんなに大きな串ではなかったなァ。

一片を咀嚼して疑問が確信に変わる。
明らかに以前とは違うのだ。
悪くはないけれど、期待していたモノとは異なる。
まさか中国産ではあるまいが
肝だけ別に仕入れたモノと推察された。

なぜそんなことが判るんだ!ってか?
その答えは次話で―。

=つづくー

2015年11月12日木曜日

第1228話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その2)

代々木上原のうなぎ店「鮒与」にちなんで
「文豪の味を食べる」は古賀政男の稿のつづき。

店内は実に質素と言うか、はっきり言わせてもらうと殺風景。
うなぎの寝床風に細長く156人は入れそうだが先客はいなかった。
一見して出前中心の商いだと知れる。
それを裏付けるようにほどなく出前注文の電話が鳴った。
壁には棟方志功の大弁財天の版画が掛かっている。

品書きはいたってシンプル。
箸袋に「うなぎ専門」と記されている通り、
酒の肴も肝焼きと中骨の唐揚げ(各300円)があるだけだ。
 
ビールはキリンとエビス。
キリンを頼むと、おっそろしく冷えたクラシックラガーの中瓶が登場した。
一緒に運ばれた突き出し代わりが旨い。
きゅうり古漬けと大根浅漬けをきざみ合わせただけなのに
お替わりしたくなるほどのもの多少の化調には目をつぶった。

間もなく焼き上がった肝焼きにも言葉を失う。
ギュッと打ち込まれた肝が串にミッシリとまとわり付くところを
紀州備長炭でミディアムレアにあぶられ、身もだえしたくなるほどの美味。
ほのかな苦味が香ばしく、
鳥のハツを思わせるプリッとした食感も快く、あわてて二本追加する。
結局、一人で三本やっつけたからその晩うつ伏せで寝たら
翌朝、体が持ち上がるかもしれないので仰向けに寝た。

日本酒を飲みたいと思ったが
ここは我慢してうな重に直行。
中(1800円)や上(2200円)には見向きもせずに
並(1400円)をお願いした。
 
蓋を開けると相当小ぶりなうなぎが一匹分整列していた。
まだ幼魚と成魚の中間という感じで
穴子ならばめそっ子、本まぐろならめじまぐろに匹敵しよう。
これを”めじうなぎ”とは呼ぶまいが
余計な脂肪分が蓄えられる前のデリケートな美味しさが際立つ。

固めに炊かれたごはんも言うことなし。
お椀にたっぷり張られた肝吸い(100円)には
三つ葉が散って柚子皮が一片。
今度は薄切りではないきゅうり&大根ぬか漬けが
うな重を支える恰好の脇役となっていた。

さすがに昭和の音楽界の大御所はよい店をご存知だった。
ほかにうなぎ屋の見当たらぬ上原界隈とは言え、
「鮒与」一軒で事はじゅうぶんに足りるというもの。
こんな名店を持つ近所の人たちを
うらやむどころか、ねたましく思えてきた。

ということでありました。
 
=つづく=

2015年11月11日水曜日

第1227話 昼はうな肝 夜は鳥肝 (その1)

昨夜のNHKの「歌謡コンサート」は古賀政男特集だった
所用を済ませて帰宅したときにはほぼ番組の大詰め、
大川栄作が早稲田大学の第二校歌「人生劇場」を歌っていた。
それにしても森昌子と別れた森進一は歳をとったねェ。

それはそれとして
現代人には忘却の彼方に追いやられた感すらある古賀政男。
自著「文豪の味を食べる」の古賀翁の稿をご覧いただきたい。

=酒はうなぎか肝焼きか=

流行歌の作曲家としては初めての国民栄誉賞に輝いた古賀政男。
1960年代のテレビ番組に
素人勝ち抜きのど自慢の「歌まね読本」があり、
審査員長を務めた古賀政男はお茶の間の人気者だった。
ちなみに小林幸子はこの番組出身の出世頭だ。

スポンサーは肩こり用貼り薬メーカーのトクホン。
うまいこと番組のタイトルにスポンサー名がかぶったのだが
これをおやじギャグと揶揄したら叱られる。
今でも日本橋本町に小ぢんまりとした本社ビルが立っていて
江戸前天ぷらの「てん茂」に立ち寄るとき、
その前を通り過ぎるのだが
ひっそりとしたビルの姿に隔世の思いをぬぐいえない。

代々木上原の古賀政男音楽博物館を年に一度は訪れる。
ホールでの講演会を初め、各種イベントに興味を惹かれるためだ。
些少な参加費で有意義なときを過ごせるのがありがたい。

古賀自身の住まいを再利用した博物館は
駅から至近なのに落ち着いた佇まいを見せており、
故人の人柄を偲ばせている。
 
晩年はやもめで通した古賀が
愛顧したうなぎ屋が代々木上原駅前の「鮒与」。
飲食店が数軒並ぶ横丁にある小体な店だ。

御大は店に出向いて食べることはなかったようで
もっぱら出前を楽しんだ。
当時、数人のお手伝いさんがいたハズだが
使用人と一緒に食卓を囲むこともあるまいし、
独りでの箸の上げ下げはあまりにも味気ない。

おそらく天下の大作曲家は
気心の知れた来客や弟子たちに振舞いながら
一緒に食べたものと思われる。

遠方の店に出向くときにはあらかじめ電話を入れる。
予約を取るというより、その日の営業を確認するためだ。
たどり着いたら臨時休業では文句を言う相手が見つからない。
その夜もそうしてから赴いた。

=つづく=

2015年11月10日火曜日

第1226話 YOKOHAMA is Beautiful ! (その10)

横浜・野毛町の「もつしげ本店」。
塩煮込みに七色をふりかけて食した。
以前、某月刊誌で煮込みの連載を担当したことがあり、
その時期に食べすぎたせいか、
最近は必注品目から外すようになった。
食傷気味といったところかな?

さて好物の焼きとんに移行である。
生産量の少ない希少部位から攻めてゆく。
ボヤボヤしてると売り切れちゃうからネ。
よって最初に注文したのがこの2種。
左がハツモト、右がツナギ
ハツモトは心臓近くの大動脈、
ツナギは心臓と肝臓を継ぐ管らしい。
塩焼きで頼み、素材の持ち味を楽しむと、
どちらもなかなかの焼き上がりだ。

ドリンク・メニューに生マッコリを見つけ、オーダーしてみる。
グラスでお願いしたつもりが実際はボトルできた。
容量は600mlもある。
日本酒を苦手とする相方は焼酎ならいけてもマッコリはダメ。
ちょいと多いような気もしたが大した量でもないし、
やっつけちゃうか・・・。
そう思いつつ、飲み始めた。

焼きとんのシロをタレで追加する。
ついでにレバーもタレだ。
やはり何だかんだ言っても焼きとんはこの二つが双璧。
と思いきや、なぜかレバーは鶏だった。
焼き鳥屋でもレバーは必食につき、文句はない。

野毛でハシゴという手もあったが当夜は1軒で東京に戻る。
夜更けてからの電車で帰るのは気がすすまないからネ。
とにもかくにもハマの街々はいつ訪れてもビューティフル!
冬が来る前にまたやって来よう。

JR京浜東北線・御徒町駅で下車。
上野広小路の隠れ家にてイタリアの赤ワインを飲んでいて
先刻、横浜で遭遇したA子からのメールに気づいた。
アラアラ、3時間前の着信じゃないか!
「野毛でまだ飲んでらしたらワタシたちもジョインさせてください」―
何てこったい、時すでに遅し。
気づかぬこちらもこちらなれど、
その気だったら出合ったときに言えばいいものを―。

ところで「もつしげ」のデータを検索していて驚いた。
てっきり野毛に2店だけだと早合点していたら
ここは一種のチェーン店。
横浜市南区の「天龍」なる焼肉店の直営で
あちこちに姉妹店が存在していた。
ちょいと鼻白む思いをしたが
YOKOHAMA is still Beautiful !
ぞなもし。

=おしまい=

「もつしげ野毛小路店」
 神奈川県横浜市中区野毛1-41-3
 045-262-0298

2015年11月9日月曜日

第1225話 YOKOHAMA is Beautiful !(その9)

♪   追いかけてヨコハマ
  あの人が逃げる
  残した捨てゼリフに
  誰か見覚えはありませんか
  追いかけてヨコハマ
  あの人がいつも
  この街をほめたことが
  裏切りの手がかりです  ♪
    (作詞:中島みゆき)

1977年にリリースされた「追いかけてヨコハマ」は
桜田淳子と中島みゆきのコンビネーション。
同コンビによる「しあわせ芝居」には及ばぬものの、
心に響く印象的な佳曲だった。

大好きな横浜の、大好きな野毛町の夕まぐれ。
元部下推薦の「もつしげ本店」でビールを飲み始めたところだ。
サービスなのか有料なのか見当がつかないが
辛味噌を添えた生キャベツがともにやって来た。

会計時に判明したが250円でお替わり自由だったみたい。
若者たちには人気の様子で値段も安いし、
チェーン居酒屋の愚にもつかぬ有料突き出しよりはマシだろう。
よって目クジラをたてるのはよす。

でもこれってちっともうれしくないんだよねェ。
そりゃトンカツやカキフライのお供の繊切りキャベツはありがたい。
だけど玉から1枚1枚はがされたのは好きじゃない。
もうちょっと細かい配慮があっていいんじゃないの。

例えば日本橋「たいめいけん」の酢油キャベツ。
あるいは神楽坂「駒安」のキャベジン。
一手間加えるだけで食味のよさは倍加し、
存在感も増すのに残念だ。

気を取り直して当店の名物らしい塩煮込みを所望した。
見た目はアッサリ風
ところが実際はコッテリだった。
使用されているのは牛のシマ腸。
腸壁にビッシリと脂の付いたシロコロと呼ばれるヤツである。
われわれは好まぬけれど、好きな御仁にはたまらんだろうネ。

このタイプのもつ煮込みに出会うと、
瞬時に連想されるのが深川は平久小学校前の「河本」である。
ホッピーと煮込みがウリの店で
こちらは味噌仕立てだが脂肪の塊は
「もつしげ」の比ではないほどにビッシリ。
冬場、すきま風の中では急いで食べないと冷めてしまい、
それこそ手に負えなくなる。

とにかく「もつしげ本店」の塩煮込みを
ビールで流し込むようにやっつけた。

=つづく=

2015年11月6日金曜日

第1224話 YOKOHAMA is Beautiful ! (その8)

ほどなく灯ともし頃を迎える港町・横浜。
元直属部下のA子とバッタリ遭遇したのだった。
10年近く前にも数寄屋橋の書店で同じことがあったから
これが二度目である。

彼女の同伴者は男女一人づつ。
紹介されると、女性は上方から遊びに来ている友だち、
男性は現在のダンナであった。
現在の、ということは、以前のダンナではない。

三年半前にA子と飲んだときは
前のダンナとシアワセな日々を過ごしていたハズ。
余計なお世話ながら、身軽なモンだなァ。
いや、実に若いオンナの実生活は波乱に富んでるんだねェ。

そのA子、J.C,を今のダンナに紹介した際、
「元上司でワタシにお酒の飲み方教えてくれた人なの」―
言うに事欠いてトンデモないことを言いいやんの。
こちとら冷や汗かいちまったじゃないか!

それはともかく、
「野毛に行くんだったら『もつしげ』に寄ってみてくださいな」―
焼きとん好きもちゃあんとお見通しであった。
マイッちゃうなもう。
立ち話もほどほどに近々の再会を約して別れた。

野毛の町はJR桜木町駅をはさんで
みなとみらいの反対側に拡がっている。
横浜に来たときは中華街に行かなくとも
野毛を訪れぬことはまずない。
それほどに愛着を持っているのだ。

A子のオススメに従って「もつしげ」を探し当てた。
本店と2号店が向かい合っている。
ここは本店でしょ。
東京の下町に散在する焼きとん屋の雰囲気とは異なり、
好きなタイプの店舗ではなかったが
とにかく入って飲んで食べてみなけりゃ始まらない。

あいにくカウンターは満席。
相方のM代サンと二人、小卓に落ち着いた。
江戸前の鮨・天ぷらは絶対にカウンター。
酒場でも居酒屋でもラーメン屋でさえも
カウンターに座るのが好きだ。
まっ、今宵は致し方あるまい。

日本のビール生誕の街にしてキリン発祥の地、横浜。
ほとんどの飲み屋がキリンしか置かない。
この点、アサヒの浅草とまことに対照的。
よってキリンラガーで乾杯と相成った。
郷に入れば郷に従うほかに手立てがないのだ。

=つづく=

2015年11月5日木曜日

第1223話 YOKOHAMA is Beautiful ! (その7)

横浜の山下公園で船を見ながら語らい、
しばし過ごしたあとである。
吉幾三の名曲「横浜」の歌詞の通りに

 ♪   夕陽が傾く 横浜桟橋
   海鳥鳴いてよ 私と一緒に ♪

時は流れてそんな情景となった。
いつまでも公園でのんびりとしていられない。
一日のうちで一番好きな時間帯がやってきた。
今宵は何処で飲もうか・・・。

手っ取り早いのはすぐ隣りにロケートする中華街ながら
どうもチャイナタウンのチャイニーズはいま一つ満足度が低い。
関内駅への道筋に何軒か心当たりはあるものの、
さっき歩いてきた道をそのまま戻るのはシャクだ。

やはりここは横浜の浅草、
美空ひばり所縁(ゆかり)の街、野毛に繰り出すしかあるまい。
それが最善のチョイスであろうヨ。

でもって相方と薄暮の街を歩き始める。
神奈川県庁の手前あたりかな・・・
いきなり声を掛けられた。

「オッカザワさ~ん!」
「エッ?」
ちょいと間が空いて
声の主がこちらに向かって速足。
「A子ですっ!」
「おぉ、A子かっ!」

どことなく劇画、あいや、漫画チックだネ。
ともあれ、バッタリ出会ったのは
元部下のA子だったぞなもし。

何年ぶりの再会だろうか・・・。
そうだ、このブログでも紹介したことがあった。
探し当てたのでおヒマでしたらどうぞ!
http://ikiru-yorokobi.blogspot.jp/2012/03/273.html

おおよそ3年半ぶりになる。
とにかくあまりの偶然に法要、
もとい、抱擁まではしなかったが握手はした。
そしてその直後の発言にビックリだ。

「オカザワさんはこれから野毛で飲むんでしょ?」
まさにピンポ~ン!であった。
何で判るんかいな。
コイツは超能力の持ち主かいな。

我に返ってよくよく背後を見れば、彼女は三人連れだった。

=つづく=

2015年11月4日水曜日

第1222話 YOKOHAMA is Beautiful ! (その6)

アップしたつもりが下書きのままで失礼しました。
よって遅ればせながら―。

料理のデキはともかくも内装・雰囲気は格別。
栄華を極めた、ハプスブルグ家の館に招かれた、
そんな気分にさせてくれた「アルテ・リーベ」だった。
 
明るい陽射しの下に戻り、はて、どうしよう。
久しぶりの再会をはたした相方である。
「ハイ、さようなら」―そんなわけにはゆくまい。
晩酌、あるいは晩飯をともにする覚悟で逢っている。
先方も同じ腹積もりだろうヨ。
 
 時刻はまだ15時、夕陽が傾くまであと2時間は要する。
どこへ行こうかな?
候補地は数限りない。
元町・中華街・山下公園・大桟橋・伊勢佐木町・
港の見える丘公園・外人墓地・野毛町・野毛動物園・・・・。
思いはちりぢりに乱れるのだ。
 
こんなときはレディーの意向に従うのがエチケット。
そう致すと、ご要望は山下公園ときたもんだ。
まあ、当方に異存はございやせん。
 
今は昔の1970年代。
デートの会場となると東京は日比谷公園、
横浜なら山下公園、
二つの公園には本当にお世話になった。
心のふるさと我が母園、決めつけても問題はない。
 
「アルテ・リーベ」から山下公園までは歩いて10分足らず、
素直に仰せに従うことにした。
港に面したベンチに二人並んで海を見ている。
すると、このシリーズの初めに紹介した、
平山三紀の「ビューティフル・ヨコハマ」がよみがえってきた。
そういえば2番をパスしたんだっけ・・・。
 
 ♪   ヨコハマ ヨコハマ 明日は雨が
   ヨコハマ ヨコハマ 降ったらいいわ
   踊り上手な ハルオにゼンタ
   トモコの彼も スウィングしてる
   わたしの好きな あの人は
   港で船を 見ているわ
   ラララ ララララ
   ビューティフルな お話しね ♪
      (作詞:橋本淳)
 
何となく気がかりで小骨がノドに刺さった気分。
批難覚悟で紹介しちゃった。
よってスッキリの巻である。
まっ、そんなこって右手に氷川丸、
左手におそらくどこか欧州の豪華客船、
二人は

 ♪   港で船を 見ているわ 
   ラララ ララララ 
   ビューティフルな  ♪

かどうかは、これからの成り行き次第と相成った。
 
=つづく=

2015年11月3日火曜日

第1221話 YOKOHAMA is Beautiful ! (その5)

例によってハナシは脇にそれ、
美食家・ロッシーニの名前を冠した牛フィレステーキである。
フィレ・ド・ブッフ・トゥルヌド・アラ・ロッシーニのトゥルヌドは
英語でトルネード、日本語で竜巻のことだ。

1995年、野茂英雄がメジャーリーグにデビューしたとき、
ホームベースに背中を見せて回転するトルネード投法は
全米の注目を集めた。

牛のフィレ肉の周りををベーコンで包み、
丸く成形したそのカタチが竜巻を連想させるのだ。
仕上げにかけられるソース・ペリグーは
食材のフォワグラと黒トリュフが
フランスのペリゴール地方の名産だからである。

「アルテ・リーベ」のランチであった。
最初に運ばれたのは緑のトマトとフリルレタスの小さなサラダ。
緑のトマトは珍しい。
祐天寺の門前にあった「ビストロ・ポン・レベック」で食べたのが最後、
もう7年も以前になる。

続いて真鯛が登場した。
真鯛のクレープ包みには2種類のソース
下地の白いのはブール・ブラン。
赤は甲殻類の香りがしたからおそらくアルモリケーヌであろう。
アッサリと食べられたがパンチ力の不足を感じる。

そして本日のメインのハンバーグだ。
ハンバーグが見えない
それもそのハズ。
3グラムと6グラム、黒トリュフの量が選べるところ、
豪勢に6グラムをお願いしたからネ。

肝心の味のほうだが質のせいだろうか、イマイチ香りが薄い。
ペリゴール産の高級品ではないらしい。
北イタリアはアルバの白トリュフとは比べるべくもないけれど、
多少の不満が残った。

本体のハンバーグにしても粗挽きの牛肉が主張するものの、
ジューシーさに乏しく、洋食の優良店のレベルに達していない。
食べながら浅草は観音裏の名店、
「ニュー王将」のソレを思い出していた。

「アルテ・リーベ」はこの横浜店が本店。
東京の新橋に支店があって、あちらはワイワイガヤガヤのなか、
ミュージックも楽しめる。
早いハナシ、新橋はビヤホールで横浜はクラシカル・レストラン。
本店は結婚式の披露宴にも力を入れており、
それなりの荘重な雰囲気を備えている。
まっ、どちらにしても料理の水準はそこそこなのである。

=つづく=

「アルテ・リーベ」
 神奈川県横浜市中区日本通11
 050-5787-1949

2015年11月2日月曜日

第1220話 YOKOHAMA is Beautiful ! (その4)

むかしばなしもほどほどに「アルテ・リーベ」の昼下がり。
「昼下がりの情事」ならぬ「昼下がりの食事」である。

オーストリアのドライな白ワインでも抜きたいところなれど、
昼から飲むとあとがかったるくなるのでビールにしておく。
ドイツはレーベンブロイ(ローエンブロウ)の生を注文。
泡少なめでお願いしたら接客係に
「中身多めですネ?」―ちょいと皮肉っぽく返された。

何もジョッキにあふれ返るほどのビールを
欲しているわけではない。
厚い泡におおわれたのがイヤなのだ。
中にはほぼ半分が泡のヒドい店があるからネ。
ソープランドじゃあるまいし・・・。

「アルテ・リーベ」の生ビールはジョッキではなく、
陶製のマグで供される。
背丈は低いがズングリとしてけっこうな容量がある。

世に有名なミュンヘンの「ホフブロイハウス」のマグも陶製だった。
記憶が確かならば、背はずっと高かったんじゃないかな?
何せ最後に訪れたのが18年も前だもの。
「ホフブロイハウス」はヒットラーが
ナチ立ち上げの集会を開いたビヤハウスだ。

ドイツやオーストリアでは
ガラスのジョッキより陶器のマグを好む傾向があるように思われる。
ひるがえってイギリスのパブではまず陶製を見掛けることはない。
フランス・イタリア・スペインなど、ラテン系諸国では
マグどころかジョッキも珍しい。
ガバガバとビールを飲む習慣がないのだ。
そう彼らにはワインがあるからネ。

さてランチメニューの吟味である。
魚系と肉系を1皿づつ取って分け合うことにする。
カップルのメニュー選びとしては
これが王道とまでは言わないけれど、ベストの選択肢であろうヨ。
ヤング・ジェネレーション同士による初回のデートでは
なかなかこうはいくまいがネ。

あまり目を引く品目がない中で
協議の結果、真鯛のクレープ包み焼きと
ハンバーグステーキのフォワグラ&黒トリュフ添えをチョイスした。

これが牛フィレ肉のステーキに
フォワグラ&黒トリュフ使用のペリグー・ソースをあしらうと、
フィレ・ド・ブッフ・トゥルヌド・アラ・ロッシーニという名の
高級フランス料理となる。
直訳すれば、牛フィレ肉の竜巻・ロッシーニ風だが
もう何年、いや、十数年も食べてないなァ。

=つづく=