2019年1月31日木曜日

第2058話 チートとパタンと豚足と (その2)

横浜日ノ出町、長者橋のたもとにある「第一亭」。
当店の名物料理、パタンは茹でた太麺の上に
生の刻みニンニクが盛られていた。
これがイタリアン・パスタのペペロンチーノを想起させる。

口直しのスープが添えられてくるが
メンバーのあわて者はつけ麺感覚で食べ始めちまった。
おいおい、そうじゃないんだって!
いやはや、世話の焼ける仲間たちである。
結果、チートもパタンも
リピーターが異口同音に絶賛するほどのものではなかった。

次に運ばれたのは豚足うま煮。
この料理に尻込みした者が2名。
かたや食わず嫌い、こなた一度試してもうこりごり。
無理強いして食わせてみると、
かたやは意外に気に入ったが、こなたはやっぱり駄目。
まっ、おのおの好きにせいや。

それにしても豚足は食べにくいや。
骨離れが悪いうえに
コラーゲンと煮汁が相まってヌルヌルのベットベト。
こんな塊りを胡坐(あぐら)をかいた股座(またぐら)に
落としたひにゃ、それこそ一大事、楽しい遠出が台無しだぜ。
気をつけて気をつけて、おそるおそるしゃぶりましたとサ。

意見の一致をみて老酒のフルボトルをお願い。
台湾産の5年物はシャオシン・タイジェイドなる銘柄だ。
J.C.は常温で飲ったが、ほかの連中はみなオンザロック。
これまた、おのおの好きにせいや。

料理の追加はレバニラ炒めと焼きビーフン。
意外にもこの2皿がクリーンヒットであった。
豚レバーの火の通しジャストにして
脇の野菜はニラの量に不満は残るものの、
シャキシャキと歯ざわりがまことにけっこう。

極細のビーフンはイタリアン・パスタの
カッペリ・ダンジェロ(エンジェル・ヘア)をしのばせる。
スパゲッティ王国の日本では人気薄のカッペリーニだが
ニューヨークあたりでは極めてポピュラー。
滞在時には毎週のように食べてたっけ・・・。

結局は薬局、
最後に通した焼きビーフンがベストで
レバニラ炒めがセカンド・ベスト。
けして不味いワケではないけれど、
人気トリオのチート、パタン、豚足は総崩れの巻。
名物に旨いものナシ。
正鵠を射抜いた昔の人は偉大なり。

「第一亭」
 神奈川県横浜市中区日ノ出町1-20
 045-231-6137

2019年1月30日水曜日

第2057話 チートとパタンと豚足と (その1)

2年ぶりで横浜を訪れた。
東京都心からさほど距離があるでもないのに
ずいぶんと間が空いてしまった。
今回は頭数(あたまかず)を揃えたプチ日帰り旅行。
JR京浜東北線・桜木町に集合後、野毛の町をゆく。
メンバーに”横浜の浅草”を見せてやりたくてネ。

都橋から大岡川沿いを歩き、台湾料理の「第一亭」へ。
最寄りは京急・日ノ出町。
それも駅から数分の距離ながら、逆に近すぎて面白くない。
多少なりとも遠出したからには遠足気分を味わわないとネ。

野毛町から宮川町、日ノ出町一帯はレトロスペクティヴな町。
その核心に転がりんだような気にさせるのが「第一亭」だ。
松竹映画なら小津安二郎の世界、
あるいは東宝の”駅前シリーズ”にもピッタリ。
われわれ一行は奥の小上がりに納まった。

ビールは店同士、申し合わせたようにキリン。
そう、横浜はキリンの街である。
乾杯しながら当店の名物料理を通した。
チート、パタン、豚足うま煮の3点である。
ついでに焼き餃子も1皿、粉モノ好きの女子のためにネ。

「1人前6個ですが何人前お持ちしましょうか?」—
意気込む接客のオニイさんに
「1人前でけっこう」
素っ気なく応えたJ.C.。
明らかに不満そうな仲間の視線を感じたけれど、
ここはこれでよいのだ。
メンバーは放っておいたら
餃子で腹一杯にしかねない愚か者の連なり、
カタギはこれを愚連隊と呼んで蔑視する。
だいじょうぶだヨ、他にもいろいろ頼むからヨ。

焼き餃子は面長の痩せ型、薄めの皮の歯ざわりがよろしい。
(お替わりしてヨ!)
いくつかの瞳がそうささやいている。
フン、バカめ!

チート登場。
チートって何だ! ってか?
豚の胃袋、いわゆるガツですな。
じゅうぶんに下茹でしたところに生姜を合わせ炒め、
トロみをつけて仕上げてある。
ウン、いかにも台湾だが料理名の由来は知らない。

チートを追いかけるようにパタンが運ばれる。
パタンって何だ! ってか?
焼きそばだとか冷やし中華だとか、
さまざまな意見があるようだが
一番近いのはイタリアンの
スパゲッティ・アリオ・エ・オリオ・ペペロンチーノだろう。
よく判らん! ってか?
それはまた明日。

=つづく=

2019年1月29日火曜日

第2056話 ヘンな駅だヨ 都立大学 (その3)

目黒区・中根のスナック「S」。
スタッフも客も歌わないのでママに先鞭をつけてもらった。
「エッ、ワタシが?」—
そう言いながらも入れたナンバーは「愛は限りなく」。
ドメニコ・モデューニョ作詞・作曲のカンツォーネは
ジリオラ・チンクエッティが歌い、
サンレモ音楽祭(1966)で優勝に輝いた名曲だ。
ママが歌ったのは伊東ゆかり版で訳詞はあらかはひろし。

ふ~む、意表を衝かれたが、なかなかの選曲である。
これを皮切りに常連サンの重い口ならぬ、
ノドが次第に開いてゆく。
八十路も半ばという紳士は「ゴッドファーザー」ときたもんだ。
それも尾崎紀世彦ではなく、
アンディ・ウイリアムスの英語ヴァージョンでっせ。
同じスナックでも目黒区となると、
上野・浅草に代表される台東区とはだいぶ異なるネ。

マイクが一回りしたあと、再びママ。
今度は金子由香利の「再会」ときた。
知る人ぞ知るシャンソン界の大御所だ。

   あら? ボンジュール 久し振りね
   その後 お変わりなくて
   あれから どれくらいかしら
   あなたは 元気そうね
   私は 変わったでしょう?
   あれから 旅をしたわ
   いろんな国を 見て来たの
   少しは 大人になったわ

   私って おしゃべりね
   引き止めて ごめんなさい
   あんまり 懐かしくて
   声を 掛けたのよ・・・      ♪

       (訳詞:矢田部道一)

ラストに女心の哀しみがにじむ佳曲ながら
長々綴るとまた大阪のらびちゃんあたりから
クレームが入るのでやめておく。

バックバーに俳句の短冊がいくつか。
訊けば月に何度かこの場所で句会が催されるという。
ふ~ん、スナックで句会でっか。
壁を飾る何枚もの絵も彼女が筆を取ったとのこと。
いったいこの女(ひと)は何者?
小沢昭一の名句が脳裏をよぎった。

スナックに煮凝りのあるママの過去

恐ろしい人だヨ、あの人は! いえ、小沢サンですがネ。

そうこうするうちにママの3曲目。
美空ひばりの「裏窓」がかかったときには
一瞬のけぞってから前につんのめり、
体勢を立て直したのもつかの間、唖然とした。
ヘンな駅のそばに怪物が棲息していたぜ。

=おしまい=

2019年1月28日月曜日

第2055話 ヘンな駅だヨ 都立大学 (その2)

東急東横線・都立大学駅近くの高架下にいる。
以前から気になっていたビルに突入するところだ。

自由が丘方面に向かう下り電車に乗って
進行方向右側のドアのそばに立っていると、
都立大を発車してほどなく、
スナックの袖看板を散りばめた雑居ビルが見えてくる。
西銀座のクラブ街のような派手さはなくとも
そのぶん、ひなびた味わいがあり、
何度か見掛けるうちに何となく惹かれた。

本日の同伴者は
自他ともに認めるスナッキー(スナック好き女子)。
こういうツレを手ごめ、もとい、手駒に持つと、
探訪に都合のよいこと、このうえない。

いくつか偵察に走らせてみたものの、
まったく当たりはないし、
フィッシングでいうところのアタリの気配すらない。
あきらめてビルをあとにした。

すると、同じ並びの数軒隣りににスナックの灯り。
さっそく一っ走り、走らせると、
ドアがガラス張りで中の様子が判ったらしく、
ここでいいんじゃないかしら? のサイン。
時間も時間だし、ゼイタクは言ってられない。
迷うことなく、レッツらゴー!

カウンター内の女性は2人。
先客も単身の男性が2人で常連サンと思われた。
3時間だったかな?
1人3000円で飲み放題、カラオケは無料だ。
しかもドリンクにビールが含まれるという。
これは画期的でっせ。
カラオケスナックの飲み放題は十中八九、
ビール別料金だからネ。

かといって良識(?)をわきまえているJ.C.は
バカスカ飲むことはない。
こういう場所ではせいぜい2本どまりだ。
もっとも来る前に、しこたま飲んでることもあるがネ。

ママは2010 年に他界した、
日本シャンソン界の先駆、石井好子と
先頃亡くなった名女優、市原悦子、
その2人を足して2で割ったような面立ち。
こういう商売には珍しく、比較的物静かな人だ。

ひとしきり、とりとめのないハナシのあと、
モノはためしでママに1曲うながしてみた。

=つづく=

2019年1月25日金曜日

第2054話 ヘンな駅だヨ 都立大学 (その1)

目黒区・自由ヶ丘で午後の数時間をやり過ごしたあと、
空腹感があまりないため、ちょい飲み、ちょい食べに向かう。
目星をつけておいたのは
隣り町の同区・中根にある日本そば屋だ。

折悪しく降り出した雨のせいで徒歩移動を断念。
東急東横線に乗って行った。
それにしても都立大学とは奇妙な駅名じゃないか。
隣りの学芸大学もそうだが、ともにとっくの昔に
大学は移転しており、現地に残っていない。
都立大学にいたっては名称が首都大学に変わったこともあり、
レゾンデートルをまったく見い出せない。
もっとも来年4月、大学名は元の都立大学に戻るらしい。

1999年に駅名改称の賛否を問うアンケートが
近隣住民によって行われた。
結果は改称賛成派が優位を占めたものの、
3分の2に達しなかったため、見送られたという。

J.C.的には昭和2年、駅開業時の柿の木坂駅が
一番だと思いますがネ。
ん? 自由ヶ丘ゲートウェイでどうだってか?
馬鹿言ってんじゃありやせんヨ。

まっ、そんなこたあ、東急と地元に任せておくとして
到着した「利き蕎麦 存ぶん」は
”ニューヨークコーナー161”などという、
トンデモない名前を持つビルの2階にあった。
余計なお世話だろうが、どうもこの近辺の人は
ことネーミングに関してセンスレスもいいとこですなァ。

身体が冷えており、いきなり群馬泉の上燗を注文した。
突き出しの梅くらげはもちろん既製品である。
当夜のオススメ品から皮のアル・ナシを確かめ、
皮付きと聞いてべったら漬けを通す。
東京名物のこの大根漬けは皮付きに限る。
パリパリとした感触が
前歯、奥歯、はては糸切り歯までも歓ばせる。

白いかの沖漬け、帆立とごぼうのかき揚げもお願い。
小ぶりの白いかを丸のまんま漬け込んだ沖漬けはヒット。
歯の当たりが柔らかく、滋味に秀でている。
かき揚げはダブル主役の帆立・ごぼうより、
玉ねぎの甘みが口内に拡がり、
脇役が主役を食ったカタチで高水準をキープしていた。

銚子をお替わりし、早くも締めのそばである。
3種から2種択べる二色せいろは
チョコレート色の十割そばと
ほんのりレモンイエローの柚子切りで―。

どちらも濃厚な風味に乏しいものの、噛み締め感は出色。
そば湯までしっかりいただいて滞在時間は1時間足らず。
これから近所のスナック雑居ビルを物色し、
佳店を見つけて飲み直すつもりなのだ。
目黒区・都立大学はホームタウンから遠いため、
早め早めに仕掛けないとネ。

=つづく=

「利き蕎麦 存ぶん」
 東京都目黒区中根1-6-1
 03-3724-3881

2019年1月24日木曜日

第2053話 田園調布に泡が立つ! (その3)

大田区・田園調布の「メッツゲライ ササキ」。
"佐々木精肉店"に来ている。
ハム・ベーコン・ソーセージのうち、
ソーセージ、いわゆるヴルストに狙いを定めた。

以前は珍しかったミュンヘン名物、
ヴァイスヴルスト(白ソーセージ)は最近、
あちらこちらでちょくちょく見かけるようになった。
わが屋の冷蔵庫にも
ローマイヤ製が4本ほど眠っている。
これは蜂蜜入りのハニーマスタードで食すると美味。

そんなこってブラートヴルストを選択。
ドイツでヴルストはゆでられることが多いけれど、
これは焼かれて供される。
それも焦げ目が付くほどに―。

食感の妙を愛でるために1本を
ナイフで半分は縦切り、残りは横切りにして
マスタードとともに味わうと、
まあ、標準的な美味しさでありました。

エーデルピルスをお替わり。
グラスには再び泡が立っている。
田園調布に・・・ハハ、やめときます。
相方は泡をながめつつ、チリ産のシャルドネを通した。

それぞれの料理はポーション小さめ、
価格抑えめにつき、何かもう1皿ほしい。
メニューを開く代わりに
ショーケースから択ぶことにした。
早いハナシがハナからそうすりゃ、
手間が省けたんだがネ。

おっと、フロマージュ・ド・テットがあるじゃないか。
直訳すれば、頭のチーズである。
頭のチーズ? 何のこっちゃい?
そう訝しがる向きもありましょう。

直感的に豚の脳みそを連想させるが
豚の頭部、いわゆるカシラを使用したゼリー寄せで
和食の煮凝りを想像していただきたい。
スライスされて運ばれた形状は
テリーヌやパテ・ド・カンパーニュに限りなく近い。

当店はゼラチンを使用せず、
豚のコラーゲンだけで固めてある。
添え忘れたか、マスタードがないため、お願いしたら
プレーンと粒入りが届き、粒入りでいただいて、なかなか。

軽めのランチの会計は飲みもの4杯を含め、6千円弱。
やはり田園調布プライスであった。
冬の陽射しのなか、隣り街の自由が丘へ歩いて行きました。

=おしまい=

「メッツゲライ ササキ」
 東京都大田区田園調布3-1-3
 03-5755-5971

2019年1月23日水曜日

第2052話 田園調布に泡が立つ! (その2)

生のエーデルピルスを味わっていると
接客の娘サンがバスケットを手にやって来た。
中には焼き栗みたいな茶色い粒がいくつか。
よおく見ると変わったカタチのプレッツェルだった。
可愛いので1人1個づついただく。

最初に通したのはトロニシンと根セロリのサラダ。
トロニシンって何だ? ってか?
マグロのトロみたいに脂が乗って
トロッととろける柔らかいニシンのことらしいッス。

メニューにはオランダ王室御用達と銘記されている。
オランダははるか昔に一度だけ訪れたが
アムステルダムのあちこちの街角に
塩漬け後に塩抜きした生ニシンを売る屋台が出ており、
道行く人が気軽につまんでいたのを思い出す。
陽気なオルガンのメロディーなんか流しちゃってネ。

「メッツゲライ ササキ」のトロニシンは
ゆでたポテトと合わせ、
アンチョヴィのアクセントを効かせたもので
王室御用達だけあってエレガントな仕上がり。
そのぶん青背のサカナ特有のパンチ力には乏しいが
強烈なサカナの匂いはちょいと苦手な身には
むしろありがたかったりもする。

和食ではまず使われることのない根セロリのサラダは
マヨネーズで和えたロングパスタのようなルックス。
カブラとゴボウの中間のような食感を楽しめる。
それほど美味しいものではないがネ。

一粒のプレッツェルでは足りないので
カイザーゼンメルとアクティパンをお願い。
フランスの陰に隠れがちだが
ドイツは文字通り隠れたパンの王国である。

カイザー(皇帝)のゼンメル(小麦粉のロール)と
呼ばれるオーストリア生まれの丸パンは軽い食感が命。
焼き立てがベストながら3~4時間は持ち味が消えない。
当店のカイザーゼンメルはプレーンだが
J.C.はケシの実を散らしたタイプが大好きだ。

アクティパンはライ麦入りのハードタイプ。
ロシアのパンに似ている。
サーモンやハムにはピッタリだ。
接客の女性に訊きそこねてしまい、名前の由来は判らない。

シャルキュトリーに来たからは
ハム・ベーコン・ソーセージのうち、
少なくとも何か1品はトライしなければ―
さて、何をいただくとしますかの?

=つづく=

2019年1月22日火曜日

第2051話 田園調布に泡が立つ! (その1)

かつて「田園調布に家が建つ!」のギャグで世に知られた、
星セント・ルイスという漫才コンビがいた。
ツー・ビートとの不仲説が伝わったりして
良きならぬ、悪しきライバル同士だったそうだが
お二人とも50代前半で亡くなってしまった。

てなこって大田区きって、いや、東京きっての高級住宅地、
田園調布に出没した昼下がり。
この日、訪れるのは
シャルキュトリーの「メッツゲライ ササキ」。
いわゆるデリカテッセンである。

自家製のソーセージ・ベーコン・ハムに加え、
ドイツ風、フランス風の惣菜類を店頭販売しつつ、
バーを備えたダイニング・スペースを合わせ持つ、
デンエンチョーフェーゼご用達のオサレな店舗だ。
フランス北東部に位置する美しい水の都、
ストラスブール辺りにありそうな店構えである。

本日のランチは
① ラザニア
② ヴルスト2種盛合せ
われわれはランチメニューを看過というか、
ほとんど無視してアラカルト・メニューを開いた。

ビールはドイツ産を初めとして
品揃え多彩ながら、みな小瓶。
よってサッポロ・エーデルピルスの生を所望した。
この銘柄の特徴はホップの苦みの際立ちである。
ステム付きのグラスで運ばれたが
必要以上に泡が多いじゃないか!
そう、田園調布に泡が立つ!

泡嫌いの身としては珍しく注文の際に
泡ナシ、あるいは泡少なめの要望を見送った。
バーカウンターでワインを飲む年配者や
背中合わせのテーブルに着いた中年カップルなど、
地元の常連サンに
「小うるさいヨソ者が何かエラそうに言ってるヨ」—
そんな嘲笑を避けたかったことが背中を引っ張った。

家を出る前にあらかじめ当店のメニューを
ある程度チェックして来たから
注文品の目途(めど)は立っている。
そう、田園調布に目途が立つ!

ハハ、いつまでたっても家は建たないしねェ。
ん? ちょいとシツコいってか? 
ハイ、スンマソン。
悪ノリはこれにて本日の打ち止めと致します。

=つづく=

2019年1月21日月曜日

第2050話 ミンククジラは大はずれ (その2)

板橋区・志村坂上の「飯綱」。
店は中山道沿いにあり、
道の下を都営地下鉄・三田線が走っている。

突き出し(300円)のぶり大根はけっこうな量。
ちと生臭さが残っていて一口で箸を置いた。
”本日の鮮魚”をしたためた品書きに見入る。

オススメ3点刺身し盛り(1500円)
 ソイ・ブリ・〆サバ

定番3点刺し盛り(1500円)
 アジ・マグロ・アオリイカ

インドマグロ刺し合盛り(特1000円)
 赤身・大トロ

以上が目を惹いたがJ.C.が注目したのは
活本カワハギ刺し 姿造り 肝入り
しかし
2~4名様(3800円)の文字に即刻、あきらめた。
ちなみに価格はすべて税抜き(以下同)である。

〆サバ(750円)と下仁田ねぎ焼き(450円)を通した。
ニセわさびが不本意ながら、
厚め大きめのサバ自体は悪くない。
それよりも下仁田ねぎがトンデモないボリューム。
青い部分までたっぷりで
大量のおろし生姜と花がつおを従えている。
馬じゃないんだから、こんなには食えないヨ。

インフルエンザの予防に
絶大な威力を発揮するといわれるねぎのこと、
頑張ってはみたものの、道半ばにしてリタイア。
むしろ薬味のおろし生姜をサバに転用してみたら
ニセわさより相性がよかった。

お一人様一杯限りで芋焼酎の森伊蔵を飲ませるという。
価格は950円なり。
20年以上前に大ブレークした銘柄だが
今でも人気の衰えはないようだ。
せっかくだから何年ぶりかでお験しに及んだ。
ロックでやったが鼻腔への突き抜け感鋭くとも
それほどの逸品と、わが舌は認めなかった。
いえ、もちろん旨いんですけどネ。

瓶ビールに戻して何かもう1品。
品書きを再見して北海道・網走より到来した、
ミンククジラ赤身刺し(750円)に白羽の矢を立てる。
択べる薬味はニンニクでお願いした。

ところがコイツが大はずれ。
風味・旨味に乏しいうえ、水っぽくて手の施しようががない。
サカナのスーパー、御徒町「吉池」で買える、
他のクジラ類には遠く、遠く、及ばない。
こういうのを獲るためだけに、IWCを抜けるんだったら
も一度、じっくり考え直したほうがいいかもネ?

「飯綱」
 東京都板橋区小豆沢2-17-7キャッスルマンションB1
 03-3967-0317

2019年1月18日金曜日

第2049話 ミンククジラは大はずれ (その1)

あまりの熱さに舌を灼かれた東武練馬の「飛鳥」。
ここの店名は「飛鳥」より
「火鳥」が似つかわしいんじゃないのかい?
いや、マイッたヨ。

駅前の大手スーパー、イオンに立ち寄る。
チーズを買い求めるためにネ。
翌日は終日フリーにつき、
自宅でゆっくり裕次郎のDVDでも観るつもり。
夕食というより、晩酌をじっくり楽しむつもり。
そこに生きる歓びを見い出すつもりなり。

よく冷えた缶ビール。
グレーン・ウイスキーのハイボール。
赤ワインはネッビオーロ。
そんな流れで行く予定だが
さすればチーズが欲しくなるだろう。

カマンベールとゴルゴンゾーラの
いいとこ取りみたいなカンバゾーラ(ドイツ)。
ほのかなほろ苦さが魅力のグリュイエール(スイス)。
レッドワイン・キラーのウォッシュタイプは
マンステール(フランス)。
3種も買い込んじまっただヨ。

東武東上線の線路に沿う、
ときわ通りを隣り駅の上板橋へと向かった。
途中、短い区間ながら桜並木が続くのは
西台中央通りとT字路で交差する辺り。
景色が古き良き昭和を偲ばせ、心を和ませてくれる。
いつか来た、この道が大好きだ。

上板橋駅界隈を徘徊して時間をつぶし、
そこから志村坂上を目指す。
通りすがった見次公園で一休み。
この小さな公園はとてもユニークでほとんどが池。
あとは低い崖しかない。
水面(みなも)に浮かぶ、
声なき番(つがい)のカルガモを眺めてしばらく過ごした。

17時過ぎに暖簾をくぐったのは割烹「飯綱」。
飯綱(あるいは飯縄とも)は北信州のそばの名産地だが
店名とのつながりは知らない。
カウンターの一番奥に通された。

昼はキリンラガーだったし、よく歩いたこともあって
スーパードライが勢いよくノドをすべり落ちてゆく。
あたかも峰よりおつる滝の如し。
1日24時間中、身も心もくつろげる極上のひとときである。

=つづく=

2019年1月17日木曜日

第2048話 灼熱のあんかけ焼きそば

そう遠くもないんだが板橋区に遠征。
東武東上線・東武練馬で下車した。
若者たちはここをトウネリと称するそうだ。
地番は徳丸で今は無き都立北野高校に
サッカーの試合のため、訪れた記憶がある。

駅北側の坂道を降りてゆく。
目指すのは「飛鳥」なる、
およそ中華料理屋にそぐわぬ屋号の町中華。
今や東京中に雨後の竹の子の如くまん延する、
本格中華の店よりJ.C.は町中華を愛する。

良い評判を聞きつけた「飛鳥」は
坂を降り切ったところにあった。
キタナシュランの代表のような店構えに店内が拍車を掛けて
物事にあまり動揺しないJ.C.もいささかタジタジ。
このまま出るわけにもいかんし、
表情を変えず、涼しい顔でカウンターに着席した。

ビールはキリンラガーの中瓶(500円)。
サッと食べるだけなら湯麺(タンメン)系でOKだが
飲むときは合いの手を兼ねてくれる、
炒麺(ツォーメン)が好都合だ。

よって、通したのは
3種あった炒麺系からあんかけ焼きそば(550円)を。
ずいぶん安いネ。
8割方埋まった客入りに対処するのは初老の夫婦のみ。
しかも調理はオヤジさんだけだから
かなり待たされることを覚悟した。

ラーメン・餃子・炒飯を注文する客が目立つなか、
左隣りのオジさんはタンメン。
右隣りのオジさんはチキンライスだ。
おっと、右にはチキンライスに続いてラーメンが運ばれた。

20分ほどで焼きそばが届く。
皿から湯気がもうもうと立ち上がっている。
あんかけの餡がやたらに多く、麺がまったく見えない状態だ。
豊富な具材は豚肉・にんじん・白菜・もやし・きくらげ・竹の子。
さあ、いただきましょう。

ふうふう吹いたつもりだったが
ウワッチッチッチ!
舌のみならず、下唇まで火傷しそうになった。
あわててビールを追いかける。
油が多いせいでかなりの高熱、いや、灼熱と呼ぶに相応しい。

二箸目はつまんだ麺を数回上げ下げし、息を何度も吹きかけた。
頃合いを見てパクッ。
アッチッチ!
さっきよりはマシながら、まだまだ熱いぜ。
結局、味がよく判らないまま、
どうにか完食して、すごすごと引き上げてまいりました。

「飛鳥」
 東京都板橋区徳丸1-33-11
 03-3550-6686

2019年1月16日水曜日

第2047話 馬券売り場の裏だから

何とかロースカツをクリアして業平の町を歩く。
2丁目から四ツ目通りを横断して4丁目へ。
業四商店街は別名、お買物横丁。
松の内のこととて開いている商店は少ない。
それでも向かい合わせで八百屋が2軒、
競い合うように営業していた。

横川、太平を経て錦糸町にやって来た。
腹はいっぱいでも酒は飲める。
わがストマックは液体・個体は別腹になっている。
場外馬券売り場のある錦糸町なら
中途半端な時間帯でも飲み屋を探すに苦労しない。

錦糸町でその名を知られた「三四郎」に入店。
変形カウンターはほぼ満席ながら
入口近くの1席を確保した。
時に15時50分。
小1時間ほど楽しめれば、それでじゅうぶんだ。

当店のビールは瓶がキリンラガー、生はスーパードライ。
ちゅうちょすることなく中ジョッキをオーダーする。
壁に貼りめぐされた短冊は裏返しが目立つ。
みな売切れちゃったんだネ。

煮込みもなければ、焼きとんは全滅である。
ちょいと待てヨ、こりゃ、売切れじゃなくって
ハナから仕込んでないんだな。
まっ、正月だから仕方がないか。

残り少ない料理は揚げものばかりである。
とんかつ・串かつ・カキフライ・イカフライ・魚フライに
鳥の唐揚げと来たもんだ。
命からがらとんかつ屋を脱してきた身に
このラインナップはきびし過ぎる。

つまみを取らぬわけにはいかないから何とかせねば―。
幸い、まぐろの刺身とブツを見つけ、ここはブツをお願い。
大衆酒場には刺身よりブツが似合う。
ところが、このブツ、
バチマグロだろうが、かなりスジッぽかった。
スジを通す男は好きだがスジの通ったマグロはなァ。

あれっ、まだ16時10分だってえのに暖簾が仕舞われたヨ。
TVの競馬中継も終わりつつあるし、
まだ通常営業に戻してないんだネ。
あわてて酎ハイを追加した。

支払いは1730円と、大衆酒場としてはやや高め。
これも馬券売り場の裏という好ロケーションの成せるわざ。
浅草では通用しないだろうに。
おっと、あっちにも売り場があったか―。
要するに錦糸町で飲むんなら浅草で飲め、
ということなんでしょうヨ。

「三四郎」
 東京都墨田区江東橋3-5-4
 03-3633-0346

2019年1月15日火曜日

第2046話 スカイツリーの下なのに

台東区のコミュニティバスに・めぐりんに乗って
浅草は吾妻橋のたもとに到着。
隅田の川面を眺めながら橋を渡り、業平の町にやって来た。
スカイツリーの足下にありながら
浅草通りをはさんだ反対側は
群衆のさんざめきすら聞こえず、静かなものである。
小ぢんまりとした天祖神社も
三が日を過ぎたせいか参詣の人影すらない。

佇まいにのどけさ漂う「とんかつみかさ」の扉を開けた。
マダムにカウンターへ通されて一息つく。
先客は単身の男性が2人。
他人のことを言えた義理ではないが
ともに昼間からビールの大瓶を飲んでいる。
まだ松の内だから、さもありなん。

この日の目当ては日替わりランチだった。
何でもメンチやアジフライやハムなんぞが
盛合わさってるそうで、それをつまみに飲む腹積もりでいた。
ライスは返上してネ。
ところが本日の日替わりは鳥唐揚げときたもんだ。
これじゃ、ダメじゃん。
いきなりの肩透かしに少々身体が泳いだ。
揚げもの以外につまみ類が何品か揃うものの、
どれもみな月並な印象である。

ロースカツは()()があり、
それなら()をお願いしようか?
と思ったときに自家製シューマイに目がとまった。
単品で500円なら大したボリュームはなかろうヨ。
余裕で大瓶とともに通す。
とんかつ屋でシューマイだけじゃ恰好がつかない。
ロースの()も注文に及んだ。
これだって750円、コンパクトなのが来るのだろうヨ。

墨田はアサヒビールのホームタウン。
安心の銘柄にノドがリラックスしている。
しかし、そんな平和も長続きはしなかった。
シューマイは何と、中ぶりが7個付け。
いや、これだけならどうにかいけるが、カツも来るんだぜ。

そのまんま、練り辛子、生醤油、とんかつソースなどを
駆使して5個ほどやっつけたとき、ロースカツが揚がった。
ガッビ~ン!
こいつはデカいヨ、分厚いヨ。

こみ上げる不安に苛まれながら果敢に挑む。
うむ、肉質はよいけれど、熱が入り過ぎている。
やたらにはがれるコロモも困る。
山盛りのキャベツは3分の1ほど残した。
スパゲッティ入りポテサラは何だか水っぽい。
だが、シューマイもロースカツもそれなりに美味しい。
よく気の利くマダム、腰の低いシェフにも好感が持てました。

「とんかつ みかさ」
 東京都墨田区業平2-14-10
 03-3623-2548

2019年1月14日月曜日

第2045話 かつ丼食べて活動写真

銀座もずいぶん変わった。
未だに足を踏み入れていないが
銀座シックス、銀座東急プラザ、目を疑うほどの変容ぶりで
ソニービルなんか、昔を偲ぶよすがとてない。

本日の最大目標は映画である。
ん? ちょっと待てヨ。
何の因果か、カツドン食べてカツドウ写真じゃないか!
こいつは春から縁起がいい・・・ベツによくも何ともないか。

やって来たのは日比谷のTOHOシネマズ・シャンテ。
最近は映画館にご無沙汰気味だが
どうしても観たかったのは
ドキュメンタリーの「私は、マリア・カラス」。
年末に封切られたばかりなのに
もうこの日が最終日(渋谷では上映中)。
ロングランを続ける「ボヘミアン・ラプソディ」に比して
何と短い花の命であろうか。
だから常々言ってるんだヨ。
日本人の民度に照らせば、オペラとカジノはまだ早いんだ!

冒頭、カラスの歌唱はヴェルディの「シチリアの晩鐘」から
第5幕の「友よ、ありがとう」。
大好きなアリアで、先ほどCDラックから引っ張り出してきた。
今もコレを書きながら繰り返し聴いている。
歌唱はもちろん、カラス本人、
タクトを振るのは彼女がリスペクトしたトゥリオ・セラフィンだ。

映画で歌われるアリアの曲名は長ったらしいし、
原語の直訳に過ぎないので省くとして
オペラのタイトルのみ記すと
「ノルマ」、「カルメン」、「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」、
「トスカ」、「夢遊病の女」などなど、
ファンにはありがた過ぎるラインナップを存分に楽しめた。
マリア・カラスがもっとも敬愛するオペラの作曲家は
ヴィンチェンツォ・ベッリーニであることも確認できた。

カラスの歌声や実像だけでなく、目を惹いたのは
スクリーンにつかの間、現れては消える大物スターたち。
ルキノ・ヴィスコンティ、ブリジット・バルドー、
カトリーヌ・ドヌーヴ、みんなカラスに魅了されてたんだネ。

さらに若き日のエリザベス女王までも―。
コヴェントガーデンにおける伝説の「トスカ」に姿を見せている。
女王に続いて車から下りたのは妹のマーガレット王女かな?
ホンの一瞬だったので、どうもハッキリしない。
おそらくボ~ッと観てたんだ。
これじゃチコちゃんに叱られても文句は言えないネ。

2019年1月11日金曜日

第2044話 初春の銀座

浅草同様、さっぱり足を向けなくなった銀座。
せっかくエンコへ行ったのに
ザギンを無視しては片手落ちというものだ。
浅草の翌日、昼下がりの銀座に赴く。
種を明かせば、銀座の街を歩きたかったのではなく、
観逃せない映画があったのだ。

東京メトロ日比谷線・日比谷駅の階段を上がると、
日比谷通りには小旗を振る群衆の姿があった。
もうじき駅伝のランナーたちが戻ってくるんだネ。
帝国ホテルと宝塚劇場の間を抜けて外堀通りへ。
相変わらず銀座の街は大陸勢の襲来に見舞われていた。

訪れたのは能楽堂ビルの地下にあるとんかつ店、
「とん㐂」で目当てはかつ丼定食だ。
ここのかつ丼は秀にして逸。
それも(並)のほうが(特)よりバランスがいい。

カウンターの隅に招かれてすかさず注文。
熱いほうじ茶が供された。
(ビールをお願いします)
言葉は喉元まで出かかったものの、
そのまま飲み込んで沈黙を通す。
映画の途中で小用に立つのはイヤだし、行儀も悪い。

久しぶりの「とん㐂(喜)」のかつ丼。
かつて”私の東京三大かつ丼”は
駒形橋のたもとに移転した日本そば店「吾妻橋やぶ」、
西荻窪の食堂「坂本屋」、そしてここだった。
もっとも「吾妻橋やぶ」はご飯モノの提供をやめたので
今はかつ煮を酒の友とするしか手立てがない。

キッチンをうかがうと、
ガスレンジは大が1つ、小が3つの計4台。
大きいのには天ぷら鍋がかかっている。
これでとんかつやフライを揚げるのだ。
その回りの小レンジに3つの親子鍋が配された。
親子鍋というのは親子丼はもとより、
かつ丼など玉子でとじる丼モノのアタマを作る専用鍋。
眺めていて料理人の手際の良さに感心した。
いや、実に美味く仕上げてゆくもんだネ。

何年ぶりかで相対したかつ丼に恋情を覚える。
右端のかつを1切れつまんでパクリ。
瞬時に鼻腔に抜けるラードの香ばしさ。
舌にまとわりつく甘辛さ。
豚ロース肉の厚みほどよく、脂身すら香り高い。
大根とキャベツの浅漬け、
赤身肉・根菜・豆腐の豚汁にも非の打ち所ナシである。

だが、すべてよかったワケではなかった。
以前と比べてごはんがずいぶん柔らかくなった。
丼つゆが底に溜まってしまうほどで
最近のバカ者、もとい、若者好みのつゆだく状態だ。
こりゃ、あきまへんわ。
総合的に合格点を上げられるものの、
マイ・ベスト3からは転落と相成りました。

「とん㐂(喜)」
 東京都中央区銀座6-5-15
 03-3572-0702

2019年1月10日木曜日

第2043話 初春の浅草

今年の初詣は2年前と同じ、向島の白髭神社。
去年は機会を失ったが、ここ数年はずっと詣でてきた。
参拝を済ませ、これも恒例、近くの「志˝まん草餅」を訪れる。
餡入り、餡なし(代わりにきな粉と白みつ付き)が
3個づつ入った詰め合わせを買い求めた。

普段、甘いものはあまり口にしないのに
毎年、これは欠かさない。
いわば、初詣と草餅がセットになっているのだ。
草団子なら葛飾・柴又の帝釈天参道が有名だけれど、
「志˝まん草餅」には遠く及ばない。
寅さんには申しわけないが、J.C.はそう固く信じている。

暖かい陽射しの中、墨堤を歩む。
うららかな陽光とはこのことをいう。
歩行者専用(たぶんチャリンコも)の桜橋で隅田川を渡り、
待乳山聖天のふもとを抜けて浅草へ。

かつては毎日のように出没したエンコも
近頃は足が遠のいている。
外人観光客に駆逐されたカタチだ。
銀座も同様で冷めかけた気持ちはもう、もとに戻らない。

人混みに巻き込まれないよう脇道を通り、
2年ぶりに「三岩」の暖簾をくぐった。
昭和2年開業の昭和の香りと浅草の匂いを併せ持つ、
総合和食の佳店である。

8割方埋まっていた卓にどうにか席を作ってもらい、落着。
さっそく相方とビールのグラスを合わせ、
いつも通りのオーダーを通した。
まぐろぬた、にしん酢、皮付きべったら、穴子天ぷらだ。

ぬたは辛子酢味噌の塩梅がとてもよろしい。
にしん酢はヨソではまず味わえない。
しば漬けをちょこんと添えたべったらは都内随一。
白麹の甘みを活かした一種のたくあんだが
味といい、歯ざわりといい、
東京人には千枚漬けよりすぐきより、これに限るネ。
穴子も実にすばらしい。
浅草の三大天ぷら店、「S」、「A」、「D」を凌駕して余りある。

当方はデンキブラン、相方はレモンサワーに転じ、
かき天ぷらとべったらをお替わりをして
昔懐かしの浅草談議を―。

今は無き、街のシンボルマーク・仁丹塔。
松屋デパート屋上のスカイクルーザー。
宝塚のライバルだったSKDの拠点、国際劇場。
大衆娯楽の殿堂、新世界。
みんなみんな、はるか忘却の彼方である。

飲食店に目を移しても、酒亭「松風」、とんかつ「河金」、
焼きとん「菊水」、洋食「豚八」、挙げ始めたらキリがない。
あの頃の浅草よ帰れ、わが胸に―。

「志˝まん草餅」
 東京都墨田区堤通1-5-9
 03-3611-6831

「三岩」
 東京都台東区浅草1-8-4
 03-3844-8632

2019年1月9日水曜日

第2042話 コッペとカレイとムール貝

渋谷区・笹塚の観音通り。
思いもかけぬ「常盤食堂」の閉業を目の当たりにして
きゅうきょ方針を転換した。
駅前のクイーンズ伊勢丹で何か買って帰ろう。
今宵は家でおとなしく飲もう。

その前に立ち寄ったのが「パンの田島」。
ここ数年、人気復活したコッペパン。
そのサンドイッチをウリとする店だ。
海老カツコッペ、ピロシキ、ビーフシチューパンを購入した。
カレーパンのカレーの代わりに
ビーフシチューを詰めた揚げパンは珍しい。
翌日に食べると、いずれも水準以上であった。

クイーンズではまず最初にベーコンとヴァイスヴルスト。
ヴァイスヴルストはミュンヘン名物の細挽き白ソーセージ。
茹でたところを蜂蜜入りのマスタードで食するのが美味。
J.C.はウインナーでも粗挽きより細挽を好む。

あまり見掛けぬムール貝を発見。
宮城産とあったから、おそらく養殖モノだろう。
迷わずマイ・バスケットへ。

どこの産だったか? 真子ガレイも買い求めた。
三陸か常磐だったように記憶するものの、
目がカレイの腹からはみ出た白子に釘付けとなり、
産地の確認に気が回らなかったのだ。
真子ガレイと呼ばれるくらいだから真子持ちはなじみ深い。
でも、白子持ちは滅多にお目にかかれない。
即売ならぬ”即買”でありましたネ。

帰宅後、キッチンに立ち、
ムール貝はガーリックとパセリを効かせて白ワイン蒸し。
いわゆるマリニエールにしてみた。
というか、ムールの料理はこれが王道。
パエリャには欠かせない食材だが
他のスタイルはすべて亜流じゃなかろうか。

カレイは小麦粉をはたいてムニエル。
買い置きの白ワインがシャブリしかなく、
もったいなかったけれど、
ちょいとばかりぜいたくして存分に楽しむ。

カレイの上半身、というより黒皮の背側は
レモンを搾っていただく。
そうしてから中骨を外し、
白皮の腹側はマリニエールの煮汁を煮詰め、
たっぷりと回しかけて味わった。

もしも「常盤食堂」が健在であったなら
ハムサラダをつまみながらビールを飲んでいたろうに―。

「パンの田島 笹塚店」
 東京都渋谷区笹塚1-22-2
 03-5454-2510

「クイーンズ伊勢丹 笹塚店」
 東京都渋谷区笹塚1-48-14 笹塚ショッピングモールB1
 03-3485-1251

2019年1月8日火曜日

第2041話 中華そばとたこ焼きと (その2)

10号坂を昇り返していてノドの渇きを覚えた。
「福寿」でビールを飲みたかったが
とても頼める雰囲気ではないし、
ハナから酒類は置いてないかもしれない。
その有無を問うことさえためらわれたのだ。

10号通り商店街を笹塚駅方面に向かう。
途中、「みなと屋」なる店に差し掛かり、歩行停止。
店頭でオバちゃんとオネエちゃんの中間、
いわゆるオネバちゃんがたこ焼きを焼いている。
いえ、たこ焼きに惹かれたのではなく、
品書きに生ビールの文字を見つけたのでネ。

「お持ち帰りですか?」
「エッ、いや、その、生ビールが飲みたいと思って・・・」
「じゃ、店内ですネ、でも、生は無いんですヨ」
「ああ、瓶でもいいッス!」

接客はおそらく彼女の旦那だろう。
サッポロ赤星の中瓶(500円)と
たこ焼き6個(520円)をお願いした。
旦那応えて
「青海苔、かつお節、マヨネーズが掛かってますが?」
「ええっと、かつ節だけ抜いてもらおうかな」

当店は地元の人気店であるらしく、
通常のたき焼きのみならず、
たこ玉焼き、明石焼き、たこせんに加えて
夏場の看板賞品、かき氷を通年、提供している。

先客は単身の女性が独りで
さっきの「福寿」と同じシチュエーション。
ビールのほかにハイボール、ウーロンハイ、
レモンサワー、グレープフルーツサワーが揃い、
オール330円と居酒屋より安めだ。

赤星で渇きをいやし、たこ焼きをパクリ。
飛び切り美味しくはなくとも
ビールの合いの手として悪くない。
壁のポスターにはプリッとした大蛸入りとあったが
中身は小ぶりの足先ばかり。
それでも蛸の絶対量に不満とてなく、
もともと細い足は蛸でも女性でも好きなほうだから
まったく問題ないんだけどネ。

2本目のビールを思いとどまり、
甲州街道を渡って、笹塚駅南側の観音通りへ。
気に入りの「常盤食堂」で飲み直すつもりだ。
すでにラーメンとたこ焼きをやっつけているから
つまみは何か軽いモノ1品でじゅうぶんだろう。

ところが「常盤食堂」はいつの間にやら閉業していた。
気に染まった店だけに残念である。
界隈に飲み屋はいくらでもあるが
ことここに及び、スパッと方針を切り替えることにした。

「みなと屋」
 東京都渋谷区笹塚2-41-20
 03-6383-3120

2019年1月7日月曜日

第2040話 中華そばとたこ焼きと (その1)

平成最後の師走に2018年最後の理髪。
行き着けたサロンの店主が数ヶ月前、
病に倒れたことをいきなり知らされた。
快方に向かうよう祈るしかすべがないが
現在は娘のK子チャンが孤軍奮闘している。

やたらスペースのある店は1月いっぱいで閉じるとのこと。
幸い、よい物件が彼女たちの自宅に近い、
東急目黒線・不動前の駅そばに見つかり、
2月末には開業できる由、互いにまずは一安心である。

何とか力になってあげたいのだが
床屋は居酒屋と違い、通い詰めることなどできやしない。
頭は一つしかないし、髪はなかなか伸びない。
友人を紹介しようにも、すでに毛髪を失った老兵少なからず。
とかくこの世はままならぬ。

髪を切って、シャンプーして、少量のジェルで整えて
いつものように渋谷区のハチ公バスに乗り込んだ。
行く先は笹塚である。
10年以上前にしたためた”行きたい店リスト”が最近、
ひょっこり出てき、その中にラーメン店「福寿」の名を見つけた。
図らずも現在まで未訪のままだ。
ハチ公バスがたまたま店の近くを通ることもあり、
この日は家を出たときからターゲットに定めていた。

「福寿」は10号坂ストリートの坂下にポツンとあった。
暖簾には”中華そば 創業67年”の文字。
創業年ではなく、年数を明記しており、
すでに加えて数年、経過しているものと思われる。

さすがに風情漂う店内である。
先客は常連と思しき沖縄出身の娘が一人きり。
楽しそうに店主と世間話を交わしている。
カウンターに座ると、目の前には
かまどに据えられた鉄鍋の湯が煮えたぎっていた。

普段は注文しない五目ラーメン(620円)を通す。
もともとそば職人だった老店主。
その名残りからユニークな具材を使うと聞いた。
はたして、もも肉チャーシューの薄いのが2枚、
シナチク、かまぼこ、ナルト、もやし、
味玉ではない、ただのゆで玉子、
そして甘く煮つけられた椎茸が2片という内容だった。

かたゆでの細いちぢれ麺は好きなタイプ。
甘みの勝った濃い色のスープは意外にあっさり。
しかし、どうしても甘さが気になってしまう。
けして不味いわけではないから
フリークならずとも一訪の価値はあるでしょう。

=つづく=

「福寿」
 東京都渋谷区笹塚3-19-1
 03-3377-2615

2019年1月4日金曜日

第2039話 知る人少なき冠新道

足立市場から北千住へと、さっき来た道を戻り歩く。
途中、プンタレッラがどうしても気になって
くだんのオステリアのドアを引いた。
ハナシがややこしくなるので
今回はパシリを使わず、自分で起動する。

この夜は新三河島の冠新道にある「熱海屋」で飲むつもり。
しかし、もしもプンタレッラのサラダがいただけるのなら
予定変更も辞さない気でいたのだ。
結果、サラダはムリだった。
ストック少量につき、主菜の彩り程度に使用とのこと。
ここはスッパリあきらめた。

夜の帳が下りて冠新道にやって来る。
荒川区民ならいざしらず、
東京都民でここを知る人は少ないだろう。
何度も歩いた商店街だが飲食店を利用したことはない。
新道入口のピッツァ屋でテイクアウトしただけだ。
インパクトのある通りの名は
新道造成の際、冠サンなる奇特な方が
土地を無償で提供したためらしい。

冠姓は全国に600名あまりしかいないレアもので
現在の大阪府と兵庫県にまたがる、
摂津国・島上郡・冠庄にルーツを持つとのこと。
演歌歌手の冠二郎もその地の出かと思い、
調べてみたら噺家の林家たい平と同じ、
埼玉県・秩父市の出身だった。

さて「熱海屋」、昼の足立市場同様に
スーパードライの中瓶で本日二度目の乾杯を―。
ここでもテーブルでなくカウンターに陣を取った。
突き出しは蒸し鶏と青梗菜を合わせたもの。
あまり面白くないし、美味しいものでもない。

狙った馬刺しは入荷ナシ。
仕方なくハタハタの一夜干しと
昼に浮気したせいで食べられなかったかきフライを通す。
ハタハタは可も不可もない。
かきフライは水準に達していたが
添えたキャベツに胡麻だれドレッシングは余計だ。

芋焼酎に移行して
前村貞夫 克(かつ)なる聞きなれない銘柄を―。
造り手の名前だろうが、かようなネーミングは感心しない。
感心しないが珍しさに誘われて試した次第。
すると、意想外になかなかのキレ味だった。
相方は浦霞の冷酒を舐めている。

バルサミコ酢で仕上げたマグロのソテーを追加注文。
ソテーというよりタタキに近く、まあ、これもそれなり。
付合わせのわさび菜(生わさびの葉に非じ)も何だかなァ。
不完全燃焼ながら、広い店内は居心地がよかった。
会計は2人で5千円と、それ相応である。

これからリトル・コリアの三河島に流れるか、
行き着けた西日暮里に落ち着くか、
パワー不足の今宵は無難に西日暮里だネ、たぶん。

「熱海屋」
 東京都荒川区西日暮里6-26-12
 03-3894-4858

2019年1月3日木曜日

第2038話 年の瀬の足立市場 (その2)

千住大橋の足立市場。
ほどなく相方が現れた。
さっそくマトウ鯛の一件をかいつまんで説明し、
偵察を頼み込んだ。
いったんは拒否されたものの、なだめすかしてハシらせる。

こういうケースは入店してテーブルに着いたら最後、
売切れを告げられても店を出にくい。
それなら自分で確認しろヨと言われそうだが
大の男が(女を見下すワケじゃないけど)入っていって
先客たちの見守るなか、目当ての料理の有無を問い、
無ければ立ち去るという所業はやたらに角が立つ。
こういう役目は”女子の特権”なのだ。

斥候が店内に消え、外で待つこと30秒。
再び引き戸が引かれ、指で作った〇サインにニンマリ。
おもむろに敷居をまたいだ。
空いたテーブルをスルーして奥のカウンターへと進む。

壁の短冊を入念にチェックしたのち、
通したのはスーパードライの中瓶。
兵庫産生がきの一年物。
もちろんメインのマトウ鯛ミリン漬け定食。
そして八戸ラーメンとミニ鮪丼のセットである。
海鮮食堂を謳うわりには
八戸ラーメンをもウリとしているらしい。

兵庫のかきはおそらく坂越(さこし)の産であろう。
小粒ながら味は濃い。
八戸ラーメンは昔ながらのシンプルな中華そばだが
具材の焼き麩が珍しい。
ほかには焼き豚、シナチク、焼き海苔が器を彩る。
あっさりとした醤油スープに
細打ちのちぢれ麺はバリカタに近かった。
卓上の白胡椒がエラい。
支那そばや中華そばに黒胡椒は合わない。

セットのミニ鮪丼には
赤身と中落ちが盛合わされて、まあそれなり、
というか、海鮮食堂を名乗るわりには少々もの足りない。
わさびは当然、粉である。

主役のマトウ鯛定食はかなりリッチであった。
切身の脇に大根おろしと玉子焼き、
けんぴ風のさつま芋天ぷら、いかげそボールの炊いたの、
なめこおろし、つぼ漬けたくあん、なめことわかめの味噌汁。
大盛りサービスのごはんは普通盛りでお願いした。

すばらしくはなかったものの、
とにかくマトウ鯛に逢えてシアワセ。
ビールのお替わりを含め、会計は3千円。
納得して年の瀬の魚河岸をあとにした。

「海鮮食堂 かどのめし屋」
 東京都足立区千住橋戸町50足立市場内
 03-3882-5811

2019年1月2日水曜日

第2037話 年の瀬の足立市場 (その1)

足立区・千住大橋のたもとにある足立市場は
築地、もとい、豊洲、太田と並び、
23区内にたった3ヶ所しかない魚河岸の1つ。
コンパクトで素人も利用しやすいマーケットだ。

深川の住まいを舟で離れ、
大川をさかのぼって来た松尾芭蕉は
この地で陸に上がり、日光道中を北上して行った。
ここは「奥の細道」の起点なのである。

市場で昼めしを食べるために友人を誘った。
例によって先乗りを目指し、
降り立ったのは東京メトロ千代田線・北千住駅である。
相方は京成本線・千住大橋駅からアプローチするとのこと。
この駅は市場の真ん前だからネ。

掃部(かもん)宿通りを南下していて
とあるオステリアの店先にあったメニューに注目。
プンタレッラの文字を発見したからだ。
この野菜は永遠の都・ローマの冬の風物詩。
いつぞや2月に当地を訪れた際、
街の青空市場にはプンタレッラだけを商う店があったくらい。
マラソンランナーのドリンクを並べるような細長いテーブルに
山盛りになって売られていたのだ。
ちなみにイタリアでは通常、複数形のプンタレッレと呼ばれる。

先を急ぎ、仲町交差点で墨堤通りを横断。
すると、信号機にとまっていたカラスが舞い降りてきた。
おやっ、珍しくもハシボソカラスじゃないか―。
スッキリした顔立ちはハシブトみたいに憎たらしくない。
クチバシの色は黒くとも、ほとんど九官鳥みたいだから
これなら飼ってもいいかな?
やっぱりやめよう、第一、とっつかまえるのは至難の業だ。

当日の狙いは市場内の「カフェ食堂みどり」。
かきフライでビールを飲むつもりだった。
すでに大半の人々が去った後の市場は閑散。
ぶらり一回りしていたら
またもや、とある食堂の品書きに足が止まった。

長いこと訪れていない足立市場だが
十数年前にはちょくちょく利用した。
その頃には無かった「海鮮食堂 かどのめし屋」の品書きに
マトウ鯛ミリン漬けを見つけたのだ。

ふた月前に幡ヶ谷の大衆割烹「こまい」で
超ビッグな一夜干しをやっつけたばかりなのに
このサカナに遭遇したら最後、矢も楯もたまらない。
これはおっつけやって来る相方に
パシリを任せるしかないな・・・。
悪代官は策謀をめぐらせていたのでした。

=つづく=

2019年1月1日火曜日

第2036話 IWC脱退に思う

新年おめでとうございます。
年が明けるたびに
同じ文句を重ねても仕方ないので
さっそく本題に入ります。

日本政府が来年6月末に
IWC(国際捕鯨委員会)を脱退すると発表した。
よって翌7月から日本のEEZ(排他的経済水域)内で
商業捕鯨が再開される見通しとなった。

=捕鯨支持国=
 クジラを資源として持続的に活用する

=反捕鯨国=
 知的生物・クジラを保護し、絶滅を防ぐ

両者の立場は永久に交わることなく平行線をたどる。
それも意見の食い違いたるや、とどまるところを知らず、
段違い平行棒もかくやの有様だ。

日本をはじめ、捕鯨支持国の資源活用というのは
もっぱら食肉としての利用だ。
こればかりは代替が利かず、
人工鯨肉の開発というわけにはいかない。

そもそも鯨肉は食肉として理想的であるらしい。
牛・豚・鶏に比べ、、タンパク質やビタミンAが豊富で
カロリー、コレステロール値は低く、
食物アレルギーのリスクも少ないという。

各種メディアは脱退のニュースを大きく取り上げ、
社説及び識者の意見の紹介に励んで
ほとんど語り尽くされた感が強い。
そこで脱退支持の立場にあるJ.C.は
少々、視点を転じて語ってみたい。

反捕鯨の旗頭を掲げているのはオーストラリア、
そしてニュージーランド。
もともと両国は国際問題に関して
強硬な意見を述べることがほとんどない、
いわば”おとなしい国々”だった。
それが、こと捕鯨となると、
シーシェパード並みの偏執的姿勢を貫いている。

なぜか?
世論もメディアも捕鯨支持国さえも
うかつに見落としているようだが
ここに彼らがけしてゆずれない大きな理由があった。

クジラやマグロが世界に広く普及すれば、
自国の貿易輸出におけるドル箱的存在、
牛肉・羊肉の需要が減ってしまうと考えているからだ。
上記2国のほかにも反捕鯨国は
ブラジル、アルゼンチン、アメリカなど、
食肉の大量輸出国が雁首並べている状態である。

絶滅の危機にあるクジラたちを
わざわざ銛(もり)のように残酷な方法で撃ち殺さずとも
ほかの肉を食べてれば、それで済むことじゃないか!

フン、よくおっしゃいますヨ。
すべては自国の利益、カネの問題に行き着く。
地獄の沙汰ならぬ、
自国の沙汰もまた、金次第なのである。
いや、実に人間とは
知恵浅くして、罪深き生きものでありますな。