2013年7月31日水曜日

第632話 アナタはたら子派? 明太派? (その2)

コリアン・レストランは行かないし、
韓流TVドラマは観たことないし、
オマエは反韓流主義者かっ!
ドヤされても文句の言える義理ではないが
そうでもないんですわ、これが。

伝統的に韓国サッカーをリスペクトしてきたし、
懸案の韓国料理にしたって
あっさり味の参鶏湯と冷麺は大好きだ。
パジョン(日本ではチヂミのほうが通りがいいか?)も
日本のお好み焼きよりお好みであるしネ。

もう20年以上も以前のことだが
ソウルでフグのチゲ鍋を食したあと体調を崩し、
宿のヒルトンホテルで丸一日寝込んだことがあった。
べつに鍋のせいではなく、疲労やら睡眠不足やら水の違いやら、
いろいろと重なった挙句の果てだと思う。
ただ、チゲ鍋にたっぷりと投入された赤唐辛子とニンニクは
見るのもイヤになったことは確かだ。

一日静養して食欲が戻ったのか空腹感を感じ、
ルームサービスで取り寄せたのがスパゲッティ・ナポリタン。
ところが、ところがですヨ、さすがに韓国ですねェ、
ナポリタンは唐辛子とニンニクまみれでありました。
さしものJ.C.、両手を挙げて無条件降伏。
無茶苦茶でござりまするがな、もう!

そんなこんなでソウルをあとに、訪れたのが港町・釜山。

 ♪ 貴方の白いワイシャツ 羽織る
   もう少しで 逢える
   そんな夢みて 私 眠る
   釜山 女ひとりの 釜山
   釜山大橋 見える 釜山 釜山 ♪
           (作詞:吉幾三)

吉幾三の佳曲、「釜山」を聴きながら
気持ちよくこの稿を書いている。
歌詞についてはいずれまた
”この歌詞が魅了するシリーズ”で取り上げてみたい。

この港町で食べた参鶏湯の旨かったこと。
唐辛子とニンニクにただれた胃袋に深くやさしく染み入った。

本題に戻そう。
立場上、食事会や宴席に顔を出すことしばしば。
歓談の話題も”食”にまつわることが少なくない。
自称、他称を問わず、
食通と呼ばれる方々と卓を共にする機会にも恵まれる。

そんな折、同席者に投げかける質問がサブタイトルのコレだ。
「アナタはたら子派? 明太派?」
人の視覚には視力があり、聴覚には聴力がある。
しからば味覚にも味力があるハズだ。

=つづく=

2013年7月30日火曜日

第631話 アナタはたら子派? 明太派? (その1)

たら子と明太子の違いがお判りですか?
そんなもん判っとるヨという方が大半ではあろう。
ところが所変われば呼び名も変わるで
関東以北と関西以西では微妙に違うんですナこれが。

例えば東京ではたら子を唐辛子や清酒などの調味液で
二度漬けしたものが明太子と呼ばれている。
それが関西や九州では東京のたら子が明太子で
東京の明太子は辛子明太子と相成るのだ。
どちらも原料は助宗鱈(スケソウダラ)の真子限定。
真鱈(マダラ)のは大きすぎて大味で塩蔵には向かない。

中国語でスケソウは明太(ミンタイ)、朝鮮語では明太(ミョンテ)。
驚いたことにロシア語もミンタイだ。
もともと塩漬けたら子の生食は日本独自の食べ方だった。
いつしか朝鮮半島でたら子のキムチが作られるようになり、
これが明太子の原型になる。
関釜連絡線で運ばれたたら子キムチが辛子明太子となり、
逆輸入のカタチで下関や北九州地方に広まったわけだ。
ちなみに日本最古のの辛子明太子専門店は1954年、
下関に誕生している。
もっとも辛子明太子そのものは大正時代から輸入されており、
輸入元は下関が8割以上を占めていたそうだ。

J.C.はたら子を好み、明太子を好まない。
明太子を購入することはまずないから嫌いなのだろう。
たら子好きの明太子嫌いって矛盾してるかな?

いや、いや、もう数十年も前になるけれど、
5代目月の家圓鏡(現8代目橘家圓蔵)がラジオ番組で
得意げにくっちゃべっていた。
「オレは天ぷらが大嫌いだけど、天丼は大好きだヨ!」―
そう、こういうことってあるんだよネ。
圓鏡は天ぷらの油っこさがイヤだったが
天丼の甘辛さには目がなかったんでしょうネ。

J.C.の場合も似たり寄ったりで明太子だと味が濃すぎるのだ。
何かの本で読んだところでは
漬ける調味液の原材料がたら子の比じゃなかった。
キムチにしたって韓国の真っ赤なヤツより
北朝鮮でポピュラーな水キムチのほうがいい。
第一、日本には白菜漬という傑作があるじゃないか。

好き嫌いが少ない嗜好の持ち主なのに
韓国料理店だけはあまり足が向かない。
最近は無煙ロースターのおかげで
衣服に匂いが移ることもなくなった。
それでもやはり気が進まない。

おそらく韓国料理は地球上でもっとも味の濃い料理。
焼肉でもチゲ鍋でもビールや白飯の助けが必要不可欠だ。
店内にこもる煙り、飛び散る油の粒子、他に例のない濃厚な味付け、
この3点こそが欧米でなかなか受け容れられない理由だろう。
欧米人は極端にそういうのを嫌いますからネ。
真逆の日本料理がゆっくりと、でもしっかりと
世界に普及してゆくのとは実に対照的な景色がそこにある。

=つづく=

2013年7月29日月曜日

第630話 下町へべれけ道中 (その4)

2軒目の「みたかや酒場」をあとにした。
二人ともほろ酔いながら千鳥足にはほど遠い。
まだまだ足取りはしっかりしている。
取りあえず新大橋通り方向へ。
行く先は西に向かって浜町か、北に上って両国だろう。

ほどなく目についたのが1軒のそば屋だ。
「おにぎりのおかげでお腹は落ち着いたけど、汁モノが欲しいな」―
ありゃりゃ、また始めやがったぜ。
仕方ないから、たぬきそばでも食わせとくか・・・。
たぬきがたぬきそば食ってどうすんの?
てな思いはあったにせよ、大したアイデアもなく入店してみると、
そこは「麺打処 いいじま」なるうどん屋だった。
それも田舎うどんがウリらしい。
どうでもいいけど、田舎うどんっていったい何だ?

うどん屋なのに相方・P子が選んだのはラーメン。
日本そば屋のラーメンは
意外にアタリが多いから言うがままに任せる。
期待もせずに味見をしたらこれが悪くない。
ほかにつまみを取るでもなく、ここでもビールと日本酒である。

あとで判ったことながらラーメンは470円の安さだった。
ほかにタンメン・もやしそば・ワンタンメン・チャーシューメンと
中華系もうどん屋にあるまじき品揃えだ。
1品だけそばメニューがあった、ただし焼きそばだがネ。
中華風あんかけなのか
屋台風ソース焼きそばなのか、そこは不明だ。

3軒もクリアするとさすがに酩酊度は半端じゃない。
酔いざましに中距離を歩きたい気分。
清澄通りを北上して京葉道路を左折した。
左手は鼠小僧の墓のある回向院、右手には大相撲の国技館。
その真ん中を進み、赤穂浪士が渡るに渡れなかった両国橋を渡る。
そのまま神田川の最下流に架かる柳橋を北へ。

さびれ果てた旧花街を縦断し、隅田川のほとりに出た。
川向こうに国技館が黒いシルエットを見せている。
暗い川面にはさざ波が立っていた。
テラスのベンチで休憩すること30分。
二つの影は重なることもなく、時刻は23時を回った。
互いに気を取り直し、最寄りの浅草橋に向かう。
いえ、電車に乗るんじゃなくて、狙いはガード下である。

焼きとんの「ぶたいちろう」に到着すると、タッチの差で閉店時間。
店のアンちゃんに、まだ開けてるところを訊ねたら
紹介してくれたのが「みかみ」という、J.C.未踏の居酒屋だ。
店は八幡様の前にあった。
3階だか4階まである大型店は夜中まで営業しているという。

よく覚えちゃいないが生ビールがめちゃくちゃ安かったような・・・。
そのぶん下らん突き出しに数百円払ったような・・・。
それなりの規模を持つ外食産業の商法は基本的にあざとい。
個人経営の心ある優良店と比べるべくもない。
品書きにはつまらん料理が割高感を漂わせていた。
ここはノータッチが賢い。

サワーに移行してノドの渇きをいやし、夜更けの街へ。
そのあと相方とどこでどう別れたのか、
トンと思い出せない、へべれけ道中記でありました。

=おしまい=

「麺打処 いいじま」
 東京都江東区森下3-6-11
 03-3631-8778

「みかみ」
 東京都台東区浅草橋1-29-1
 03-5835-019

2013年7月26日金曜日

第629話 下町へべれけ道中 (その3)

「はやふね食堂」と「みたかや酒場」はきわめて至近。
徒歩10分足らずで、はしごにはもってこいのロケーションだ。
前回、隣り町と書いたが
最寄りは菊川駅でも地番は森下、近いわけだヨ。

ここへ来るのは1年と数ヶ月ぶり。
相変わらず、女将サンが元気、ゲンキ。
おとなしい旦那をアゴで使っているように見えて
実際は逆に上手く使われているようでもある。
ひょうひょうとした旦那は柳に風と受け流しているふうなのだ。
威張ったところはまったくなく、フトコロの深さを感じさせる。
居酒屋の運営には理想的なコンビネーションというほかはない。

「みたかや酒場」には生ビールがある。
しかも銘柄は好みのスーパードライ、
さっそくの駆けつけ1杯が音を立ててノドをすべり落ちてゆく。
ここ数年、ビールが旨くて仕方がない。

入れ替わり立ち替わり帰国して来るニューヨーク時代の友人たちと
旧交を温める際、ビールをガブ飲みするJ.C.を見た彼らは
一様に”信じられん”といった顔つきになる。
そうだヨなァ、彼の地のレストランでは
小瓶のビールを相方とシェアしたら即ワインに移り、
二次会ではレミーかヘネシーの水割りだったもの。
あまりの変貌ぶりにみな驚くのも無理はない。

以前を言えば池袋に今もある「銀座ライオン」が行きつけの酒場だった。
まるであの頃に立ち返ったようなビールの消費量である。
わが呑ん兵衛人生は双六(すごろく)の如く、振り出しに戻った。

本日のスペシャルに平目の煮付けを目ざとく見つけ、直ちに注文。
2杯目の中ジョッキが半分ほど空いた頃、
運ばれ来たる大皿に二人は瞠目した。
マンマ・ミーア! 何というデカさだ!
食堂の煮魚定食だったら3人前は取れそうだ。
二人でも持て余すサイズだから独り客は立ち往生するに違いない。

何とか大平目をやっつけ、お次は互いの好みを一品づつ。
J.C.は好物の焼きとん・レバ、P子は目の前に置かれたとうもろこしだ。
くだんの店主のコーン・ガイダンスがいい。
「このままの”ゆで”だったらスグ、”焼き”だと10分」
「焼いてください」
さすがにわが盟友、正しい選択である。

「少しでいいから何かゴハンものが食べたいな、おにぎりかな?」
「ここのおにぎりは炊き立てで旨いらしいけど、デッカいぜ」
「じゃあ、半分づつでどう?」
「飲んでるときにゴハン粒はうれしくないなァ」
「判った、P子頑張る!」
結局は薬局、残したらお店に悪いとつぶやく相方に
梅干しのデカにぎりを1/3ほど押し付けられ不承々々クリアした。

やれやれのお勘定。
まだまだ帰宅の途に着くわれわれではない。
 ♪ はしごは続くヨ、どこまでも ♪

=つづく=

「みたかや酒場」
 東京都江東区森下4-20-3
 03-3632-4744

2013年7月25日木曜日

第628話 下町へべれけ道中 (その2)

下町・森下はしご酒、その1軒目。
意気揚々と暖簾をくぐったのは「はやふね食堂」だ。
いまだに信じられないのだが
巷間、齢九十を超えたと伝わる大女将が元気、ゲンキ。
うれしいことに壁の品書きも相変わらず安い、ヤスイ。
あえて不満を言えば、ビールがキリンラガーしかないことのみだ。

店は近所のオッサンたちで七分の入り。
いかにも町の大衆食堂といった空間に身を置いたP子は
珍しそうに店内を見渡している。
「おい、おい、あんまりキョロキョロすんなヨ、みっともないからサ」
「うん、判った、そうだよネ?」
「ああ、そうだヨ、そういうことだヨ」

ビールの旨い季節の到来に大瓶がまたたく間に2本空いた。
好みの銘柄でなくとも旨いものはやはり旨い。
菊正の冷たいのに移行する。
なじみの深い1合瓶だ。
やれ純米だ、ほれ大吟醸だと気取った酒より、
昔ながらのこういうのが好き。
エッ? 耳タコだ! ってか?
ハイ、はい、判りました、今日は多くを語りません。

いつも通りに突き出しはきゅうりと大根葉のぬか漬け。
これが悪くない。
単品で頼むと盛りがよくなるうえにたった30円也。
ただ同然の値付けに驚くばかりなりけり。

相棒が所望したのは、わかめ酢と牛もつ煮込み。
無難なすべり出しと言えよう。
それにしてもわがのみともには男女を問わず煮込み好きが多い。
J.C.が選んだのはたら子のちょい焼きと里芋煮。
たら子は自宅でもちょくちょく食べる。
里芋もときどき食べたくなるけれど、
独り暮らしに袋売りは多すぎてどうにもならない。
まれにじゃが芋の1個売りを見掛けても里芋は見たことないなァ。

冷や酒の追加とともに天ぷら盛合わせをお願い。
内容は海老・小あじ・いんげん・さつま芋。
小あじといってもそこそこのサイズが2枚入りだ。
同じ森下の天ぷら屋「満る善」には遠く及ばぬものの、
大衆食堂のそれとしてはじゅうぶんに合格点を与えられる。

ふと周りを見ると、いつの間にかほぼ満席のご盛況。
安さとくつろぎの空間はそれだけで大衆を引き寄せる。
くだんの女将は非常連客のわれわれにも気さくに応対。
機を見ては隣りに腰掛け、世間話に花を咲かせる。

そろそろ河岸を替えねば―。
あらかじめ決めてあった隣り町・菊川の「みたかや酒場」へ向かう。
大衆食堂のあとは大衆酒場、われら二人、はしご酒の王道をゆく。

=つづく=

「はやふね食堂」
 東京都江東区森下3-3-3
 03-3633-3230

2013年7月24日水曜日

第627話 下町へべれけ道中 (その1)

いつ購入したのかトンと覚えちゃいないが
2枚組CDの「沢田研二 SUPER BEST」を聴きながら
この稿を綴っている。
今、掛かっているのは「あなたへの愛」、
お次は「危険なふたり」が待っている。

たぶん「白い部屋」の影響だろう、
珍しくコーヒーを飲みたい気分。
ところがウチにコーヒーはない、インスタントの粉末すらない。
そこで代替のティーにすがった。
スーパーで買った日東紅茶は50袋入りのティーバッグ。

この蒸し暑いのに熱々のティーを淹れた。
ただし、雰囲気を出すためにデッカいモーニングカップは避ける。
中東や北アフリカあたりでよく見掛けるグラスに注ぎ、
ちゃあんとソーサーも付けた。
もっとも刺身を食べる際の醤油用小皿だけどネ、ハハハ。

マグレブ風にミントティーを試みるも
野菜庫のスペアミントは完全にくたばっており、即廃棄。
タイムやローズマリーは干からびてもなお使えるが
ミント系ハーブはいけません。
仕方ないからレモン果汁を搾った。
シュガーはほどほどにして、ウン、うん、悪かないゾ。

古都・鎌倉在住の若きのみとも・P子からメールが届いたのは先週。
17時には都心で仕事が終わり、
その夜は御茶ノ水だか水道橋だかに宿を取ったから
「一晩つき合え!」との一方的な通告だった。
リクエストは何度か訪れている浅草以外の下町ときた。
フム、ふむ、どこにするべエか・・・。

第一感は深川の門前仲町・木場辺りだろう。
あとは隅田の流れのこっち側、人形町、あるいは浜町かな・・・。
いや、いや、浅草の奥の奥、ドヤ街・山谷で度肝を抜くか・・・。
その対岸、玉の井から向島という手もあるゾ。
算段の挙句、白羽の矢は深川の北のはずれ、森下に立った。
ここもドヤ街があった町で往時は”プチ山谷”の異名を取っている。

森下といえば、ケトバシの「みの家本店」と
煮込み・焼きとんの「山利喜」が二大有名店。
肉体労働者には安くて精力のつく馬肉とホルモンが強い味方だ。
吉原の向かいの山谷に
多くの馬肉屋・もつ焼き屋があったことと一致している。

P子はJ.C.に負けじ劣らじのハシゴ酒愛好者。
待合わせた地下鉄出口にたたずむ彼女は
しっかりとスニーカーを履き込んでいた。
飲んじゃ酔い、歩いちゃ醒まし、また飲んじゃ酔う、
この繰り返しで今宵は3~4軒徘徊することになるのだろう。
長い夜の皮切りは以前”にせどろシリーズ”でも紹介した食堂だ。

ただ今、耳元に響いているのは「カサブランカ・ダンディ」。
聞き分けのない女の頬を一つ二つ張り倒す、あの曲である。
ボギー、アンタの時代はよかった!

=つづく=

2013年7月23日火曜日

第626話 男と女のいる小部屋 (その4) この歌詞が魅了する Vol.3

「白い部屋」がリリースされたのは1975年。
J.C.が欧州放浪の旅から帰り、
生まれて初めてサラリーマンになった年だ。
東京の街には同じジュリーの「時の過ぎゆくままに」が流れていた。
翌々年、レコード大賞を受賞した「勝手にしやがれ」をしのぐ、
最大のヒット・ナンバーがコレ。

しかし、わが心に深く刻まれているのは「白い部屋」。
”朝のコーヒー 冷めてしまうと 僕をゆすり起こした人”、
この部分に差し掛かると、今でも胸の奥が波立つ。
ここ十数年、ほとんどコーヒーを口にしなくなったけれど、
毎朝のように飲んでいた時代があったんだよなァ。
フフッ(自嘲的笑い)、それも遠い昔のこと、
今じゃ、ゆすり起こすのは猫だヨ、
「腹へった、メシよこせ!」ってヨ、ったく。

不可解なことに名曲「白い部屋」はあまりヒットしなかった。
先日ふと思い、年がいもなく(ジュリーよりずいぶん若いけど)、
初めてカラオケで歌ってみた。
いやはや、キーが高いせいかノドが悲鳴を上げたわ。
「勝手にしやがれ」の3倍はエネルギーを消費したネ。
オマケにヘビメタ調の後奏がバカ長く、
まず拍手はもらえないから骨折り損のくたびれ儲け。
これほどカラオケに向かない歌はない、でも、また挑戦するぜ。

「よこはま・たそがれ」のホテルの小部屋や
「積木の部屋」の西日だけが入る狭い部屋と違い、
「白い部屋」にはそれなりのスペースがありそう。
”むなしい広さ うずめるものは”とあるから
主人公の暮らし向きはよかった模様。

でもって、ジュリーのマイ・ベストスリー。

 ① 白い部屋
 ② あなただけでいい
 ③ 時の過ぎゆくままに
  次点:ダーリング

あらためてチェックして再認識した。
五木ひろし、布施明、沢田研二を比較すると、
一番好きなのはジュリーの歌。
色気というか、輝きというか、
観ても聴いても異次元の魅力にあふれていた。
振り返ればこの三人は隔年でレコ大を受賞している。

 1973年 五木ひろし 夜空
 1975年 布施明    シクラメンのかほり
 1977年 沢田研二  勝手にしやがれ

すき間を埋めたのは森進一(襟裳岬)と都はるみ(北の宿から)だ。

最後に一昨日の参院選で、
山本太郎を勝利に導いたのはJR中央線・荻窪駅前における、
ジュリーの応援演説だったことを付け加えておきたい。

=おしまい=

2013年7月22日月曜日

第625話 男と女のいる小部屋 (その3) この歌詞が魅了する Vol.3

いやあ、この4日間というもの、
全英オープンを堪能しましたネ。
しっかし、松山はスゴいなァ。
6位タイの成績は
タラレバながら3日目の1ペナがなけりゃ3位タイだもの。
もはや世界のトッププレイヤーの一人と言っても過言ではない。

ということで先週のつづき、布施明の「積木の部屋」である。
リンゴをかじりながら語り明かすって
いったい何個のリンゴを食ったのだろう?
まっ、若い二人が愛の小部屋に巣食っていれば、
語り合ううち夜が明けてしまうこともしょっちゅうであろうヨ。

そもそも男と女が一つ屋根の下、
狭い部屋に一緒にいたら、その行動は限られる。
語ってるか、食ってるか、飲んでるか、いたしてるか、
大方そんなとこだろう。
あとは喧嘩と睡眠かな?

ご多分にもれず、「積木の部屋」の愛は消えてしまったが
人生なんて所詮は男と女の出会いと別れの繰り返し、
別段、嘆くことでもなかろうヨ。

例によってマイ・ベストスリー・オブ・布施明は

 ① 積木の部屋
 ② めぐり逢い紡いで
 ③ 恋
  次点:カルチェラタンの雪

ヒットした「霧の摩周湖」、「シクラメンのかほり」、
「愛は不死鳥」も嫌いではないが、なぜか上位には来なかった。

3曲目は沢田研二の「白い部屋」を紹介したい。

 ♪ 朝の光りに ひとりめざめて 
   なにげなしに あなた呼んだ 
   答えなんか 聞こえて来ない 
   わかっていたはずだ 僕は 
   いつもコーヒー 冷めてしまうと 
   僕をゆすり 起こした人 
   それが今は かけがえのない 
   だいじな やさしさと知った    
   あなたが消えて こんなに部屋は
   うつろに 冷たいばかり
   むなしい広さ うずめるものは
   あなたのほかにない      ♪
         (作詞:山上路夫

加瀬邦彦の作曲、ジュリーの歌唱と合わせ、
三拍子揃った大好きなナンバーは
わが青春の想い出が詰まってもいるのだ。

=つづく=

2013年7月19日金曜日

第624話 男と女のいる小部屋 (その2) この歌詞が魅了する Vol.3

昨日、初日を迎えた全英オープン。
夕方17時からひかりTVのゴルフ・チャンネルに付きっきりだ。
注目の松山英樹はマキロイ&ミケルソンのビッグネームと
回ったおかげで画面の登場は多いが
ミケルソンのバーディーパットは映っても
松山のは飛ばされたりもして多少なりともストレスを覚える。
連続バーディーでイーヴンパーに戻し、
松山がホールアウトしたあとは
23時からTV朝日でじっくり彼のプレイをおさらいだ。

しかし大した青年ですわ。
物怖じすることがまったくないもんネ。
10番のティーショット後、やおら取り出したのはおにぎり。
カタチは正三角形、きっちり海苔も巻いてある。
コンビニにありそうなヤツは素人が握ったんじゃなさそうだ。
中の具は何だったんだろう、シャケかな?たら子かな?

12番ではマキロイがダボたたいているってのに
グリーンにしゃがんでパットラインを読みつつも
向うずねをボリボリかいてやがった。
ヤブ蚊にでも食われたらしい。

15番のティーグラウンド。
ミケルソンがティーアップしてる脇でアクビを一発。
自分のティーショットが右ラフにつかまったってえのに二発目。
時差ボケがあったにせよ、さすがの怪物ぶり発揮だ。

17番ではセカンド地点へ歩きながらハンバーガーだろうか、
丸っこいパンにかぶりついていた。
弱冠21歳、まだ食べ盛りで腹も減るんだろうヨ。

ただ今、午前2時、この稿を書いている。
小平や藤田が出てきたから、こりゃ4時まで寝られんゾ。
二人ともボロボロとスコアを崩してるがネ。

遅ればせながら、昨日のつづきいきます。
2曲目は布施明の「積木の部屋」とまいりましょう。
スタイルはまったく異なるが
五木ひろしと肩を並べる歌唱力の持ち主、布施明。
まずはお聴き、もとい、ご覧くだされ。

 ♪ いつの間にか君と 暮しはじめていた
   西日だけが入る せまい部屋で二人
   君に出来ることは ボタン付けとそうじ
   だけど 充ち足りていた
   やりきれぬ 淋しさも愚痴も
   おたがいの ぬくもりで消した
   もしもどちらか もっと強い気持ちでいたら
   愛は続いて いたのか
   リンゴかじりながら 語り明したよね
   愛は あれから何処へ         ♪
           (作詞:有馬三恵子)

ずいぶん長い歌詞だ。
印象に強く残るのは”ボタン付けとそうじ”。
今なら女性を馬鹿にするなヨと、一騒動ありそうだ。
でも若い二人の貧しくもつつましい生活がにじみ出ていていい。
今日はThe Open にスペースを取られたので、つづきはまた来週。

=つづく=

2013年7月18日木曜日

第623話 男と女のいる小部屋 (その1) この歌詞が魅了する Vol.3

半月ほど前に紹介した「マンハッタンからのメール」。
盟友・K美子に励ましのメールを送ったら返信が届いた。
何でも彼女がスー・シェフを務めるフレンチレストラン、
「Lafayette」のメニューから因縁のブイヤベースが消えたんだと―。
結局は薬局でご愁傷さま。

さて、本日は”この歌詞が魅了する”、その第三弾。
題して「男と女のいる小部屋」である。
ジャン=リュック・ゴダールの「女と男のいる舗道」を
学生時代に観た覚えがあるが何が何だかよう判らんかった。
NHKの「あまちゃん」よりも理解に苦しんだ。

その点、邦楽の歌詞は、殊に演歌の歌詞は判りやすくてようござる。
1曲目は1971年に本人としては何度目かの、
五木ひろしとしては初めてのデビュー曲、
「よこはま・たそがれ」を取り上げる。

♪ よこはま たそがれ ホテルの小部屋
  くちづけ 残り香 煙草のけむり
  ブルース 口笛 女の涙
  あの人は 行って行ってしまった
  あの人は 行って行ってしまった
  もう帰らない             ♪
        (作詞:山口洋子)

日本TVの「全日本歌謡選手権」を10週勝ち抜き、
プロ再デビューの特典を得てこの曲が生まれた。
作詞・作曲は番組の審査員だった山口洋子と平尾昌晃。
芸名は五木寛之のファンだった山口が拝借した由。
”いいツキ拾し”のゲン担ぎも込められた命名だ。

振り返れば五木ひろしを生かすも殺すもこの曲がすべてだった。
番組でグランド・チャンピオンを勝ち取った歌唱力もさることながら
山口・平尾の名コンビなくして五木の成功はあり得ない。
師匠たちにはいくら感謝してもし切れないものがあろう。

で、歌詞である。
出だしからサビまでは単語の連発。
「なあんだ、コレだったらオレでも書けるわ」―そう思うなかれ。
ユニークな着想に拍手を送りたい。
なおも卓抜な2番と3番を紹介したいくらいのものだ。

最後にお定まりの五木ひろし・マイ・ベストスリー。

 ① よこはま・たそがれ 
 ② 霧の出船
 ③ 待っている女
   次点:あなたの灯

みなデビューから2年ほどの曲だ。
作詞はすべて山口洋子、作曲も③以外は平尾昌晃。
のちのちどんなに大成しようとも
やはり出だしが肝心だってことなんですネ、いや、ジッサイ。

=つづく=

2013年7月17日水曜日

第622話 真夏の煮込み (その2)

都内で所用を済ませてきた盃友と待ち合わせたのは
地下鉄銀座線・末広町駅。
神田と上野広小路の間だが、JR秋葉原からは至近だ。
数分歩いて電器屋の群れの中にポツリとある、
目当ての「赤津加」に到着した。

この店は何と言ってもコの字のカウンターがいい。
テーブル席に落ち着くと魅力が半減してしまう。
気配りの行き届いたオネエさんの客あしらいに
ホッと一息つくことができる。

生ビールもあるが瓶にしてグラスを合わせた相方は
この店が気に入った様子、笑みをもらしている。
そうだヨ、ここへ連れて来て不平不満をこぼされちゃ、
もう連れ込む店がなくなろうというものだ。

突き出しは白く半透明の煮こごり。
煮崩れた白身魚の小片が散っていて
舌に乗せてはみたものの、何のサカナだか判らない。
本日の品書きの刺身にソイとアイナメがあったから
そのどちらかであろうヨ。

いの一番に名代の鶏もつ煮込みをお願い。
コレをぜひとも食べさせてやりたかった。
珍しい鶏の脾臓まで混入している。
目肝(めぎも)、または小豆(あずき)と呼ばれる小粒の臓物だ。
下町の酒場のもつ煮込みは3~400円がいいところ。
それが800円もするんだから、旨くなければ誰も頼まん。

案の定、ツレは心から歓んでくれた。
真夏の煮込みを堪能してくれた。
だろっ? 持つべきものは友だちだろっ?
とは訊かなかった、あまりに恩着せがましいからネ。

菊正の上燗に移行する。
真夏の煮込みに真夏の燗酒もよかろうもん。
一緒に頼んだアイナメ刺しはサッと熱が通されてタタキ風。
真鯛や鰹もそうだが、皮目を残すことによって
旨みが増進するサカナはこの世に少なくないのだ。

穴子と迷った末に天ぷらの最終決定権を渡すと、
相方が選んだのは稚鮎であった。
この時期、稚鮎の産地は十中八九、琵琶湖ということになる。
ただし、養殖じゃないからサイズは中小さまざま。
中にはデカすぎて頭や背骨が歯に当たるのまででる始末だ。
ごく小さい上物は高級天ぷら店に回ってしまう。
まあ、人間様の世界も幼稚園児だってえのに
体重30キロ超えなんて大物も混じってるから仕方がないか。

「赤津加」
 東京都千代田区外神田1-10-2
 03-3251-2585

2013年7月16日火曜日

第621話 真夏の煮込み (その1)

NHKの朝の連続TV小説、「あまちゃん」が人気らしい。
毎週、目を通す「週刊現代」が大々的に取り上げて
何だかキャンペーンを張ってるような勢いだ。
この週刊誌は何かに凝りだすと、
とことん凝らなきゃ気がすまない性癖を持つ。

その「あまちゃん」を何回か観たものの、どうも良さが判らん。
北三陸の空気がイマイチ伝わってこないし、
海女さんの生活臭もまったく匂わんもん。
どうして人気があるのか理解に苦しんでいるのが実状だ。

挿入歌の「潮騒のメモリー」にしたって
そんなにいい曲かしらねェ。
小泉今日子が再び脚光を浴びてるみたいだが
ちょいと太りすぎじゃないかい?
美保純の腹もスゴいけど、
仮にもキョンキョンは元アイドル、
もちょっとウエイト・コントロールに配慮してもらいたい。

でもって、おとついだったかな、
総集編の前編がオンエアされたのを幸いに観てみると、
やっぱり良さが判んなかった。
ヒロイン・能年玲奈の印象はとてもいいんだけどネ。
ただ、じぇじぇじぇの連発はクサすぎていただけない。

両親役のキョンキョンと尾美としのりは何で別れたのかネ?
いきなりの三下り半だもんなァ。
祖父役の蟹江敬三は大好きな役者につき、
このキャスティングには満足。
後半は薬師丸ひろ子が出てくるってんで(もう出てるのかな?)、
またチラチラのぞいてみようとは思う。
でもねェ、AKB48の誰一人として顔と名前が一致しないんじゃ、
結局は薬局、理解するのはムリかもしれん。

それはそれとして「あまちゃん」の舞台から下ること200キロ、
南三陸の町から盃友がやって来た。
ここは一献、傾けないわけにはいけねっぺ。
煮物・汁物に目のない友は東京の居酒屋の煮込みが大好物。
彼の地の酒場では煮込みを供する店が少ないらしい。

このクソ暑いのに煮込みかヨ!
そう思いつつも、そこは世のため、友のため、
何も炎天下で食うわけじゃない、
エアコンが効いた店内でいただくのだ。
いいでしょう、いいでしょう、お連れしましょうと、
選んだ酒場は電機製品とメード喫茶の街、
そう、食の不毛地帯・秋葉原にあった。
街で唯一の優良店は、まさに”掃き溜めに鶴”ですな。

=つづく=

2013年7月15日月曜日

第620話 裕次郎も旭もアサヒ麦酒 (その2)

「錆びたナイフ」を観た二日後に
同じひかりTVで観たのが小林旭の「意気に感ず」。
旭は珍しくも熱血サラリーマンを演じている。
都会派・裕次郎にはリーマンものが多く、
銀座の街角や日比谷の公園に立つと、ピタリ絵になった。
もっとも彼の真骨頂は港と波止場と船の上。
いっぽう旭は草原とギターと赤い夕陽だろうか。

何ともダサいタイトルの「意気に感ず」。
共演者は怪優・伊藤雄之助。
この人の容貌がスクリーンに映し出されると、
ほかの俳優はまったく太刀打ちできない。

女優陣はお馴染み浅丘ルリ子、それに十朱幸代。
当然ながらルリ子のほうが格上だ。
ところが二人並んでいるのを見て驚いた。
存在感ではルリ子が際立っているものの、
清楚さ、可憐さで幸代が圧倒している。
スラリと健康的に伸びた四肢に加え、頭身バランスがとてもよい。
八頭身まではいかなくとも七頭身はクリアしていよう。

東京五輪が無事終わり、高度経済成長真っ只中。
銀幕に1965年の東京の街が活写されてまぶしい。
尾張町交差点(銀座4&5丁目)は服部時計店の時計塔。
有楽町駅前の交通会館に日比谷公園の噴水。
すべてが半世紀を超えてなお、残存しているのはスゴいことだ。

2本の映画の間には7年もの時代差がある。
日活とアサヒの蜜月は続いていたのだろう。
やたらめったらアサヒビールが登場する。
それもメーカーの意向を反映してか、小瓶のスタイニーばかり。
銀座のバーで旭に「アサヒスタイニー!」と叫ばせてるもんネ。
しかも「給料前で金がないから小瓶にしとく」だとサ。
ミエミエの言い訳までさせちゃって、あざとさもここに極まれり。
まっ、しょうがねェか、旭は読みようによっちゃアサヒだから。

そのスタイニーを中ジョッキにドバドバっと注いで
ガバガバっと飲むんだからアカ抜けないことはなはだしい。
当時の”バー”は現在の”クラブ”とほぼ同じ。
今のホステスさんは昔はバーの女給さんだ。
小瓶のビールをジョッキにそそぐ銀座のクラブがどこにある。

それにしてもあの頃のアサヒビールはとてつもなく不味かった。
3年ほど前だと思う。
往時のアサヒの復刻版が季節限定で売り出されたから
ロング缶を6缶も買って飲んでみたら
あまりのヒドさにしばらく手が出なかったもんネ。
結局、友人に
「珍しいのがあるから飲んでみなヨ」―
そう言って処分したんじゃなかったかな?
ふっふっふ、J.C.もなかなかのワルよのォ。

2013年7月12日金曜日

第619話 裕次郎も旭もアサヒ麦酒 (その1)

先週、ひかりTVで2本の日活映画を観た。
どちらも白黒で石原裕次郎の「錆びたナイフ」(1958)と
小林旭の「意気に感ず」(1965)。
もっとも前者には旭も脇役として出ている。

「錆びたナイフ」は小学一年生のときに母親と観た。
これについては以前どこかでふれたことがあるように思う。
そうだ、杉浦直樹が亡くなったときではなかったかな?
毒まんじゅうを頬張る杉浦の演技が子ども心にグサリ、
研ぎすまされたナイフのように突き刺さったのだった。
この作品、けっしてデキはよくないのだが、なぜか好きだ。
 ♪ 砂山の 砂を指で掘ってたら ♪
主題歌も心にググッと響く。

今回、観返すまで映画の舞台は
瀬戸内の岡山か広島の地方都市と思い込んでいた。
架空の街とはいえ、宇高市などといわれたら
第一感で宇高連絡船を連想してしまう。
かつて岡山・宇野駅と香川・高松駅を結んでいた鉄道連絡船だ。

ところが画面に西テツバスの停留所が登場。
瀬戸内に西鉄が走るわけはないから調べると、
舞台は福岡県の門司と判明した。
半世紀以上も勘違いしていたおのれのバカさにあきれたぜ。
まっ、しっかたなかんべサ。

さて、表題のアサヒ麦酒である。
主人公の裕次郎は「キャマラード」なるバーの経営者。
同時期に撮られた「俺は待ってるぜ」と似ているネ。
ちなみにキャマラードというのは仏語で同士、男友だちという意味だ。
バーの壁に日本の”SUNTRY”、フランスの”Marie Brizard”のパネル。
このリキュール・メーカーが
昭和30年代から日本に進出していたとは驚きだ。

「キャマラード」のビールはアサヒの大瓶。
スーパードライが生まれる30年も前のことで
垢抜けないラベルが常にカメラを向いている。
アングルが変わってもなぜかラベルはこっち向き。
カウンターの左側から右側にカメラがパンしても
必ずこっちを向いているんだからいやになっちゃう。

くだらんことに気づいたら最後、
映画の評価まで下がっちまったヨ。
そういえば旭がズベ公の白木マリを
バイクのうしろに乗っけて疾るシーンもヒドかった。
バックはモロにフィルム、交差点を曲がるとこだけ辛うじて実写。
往時の映画界はこんなもんだったんざんす。

=つづく=

2013年7月11日木曜日

第618話 近頃できた行きつけの店 (その2)

上野動物園・池之端門から徒歩1分の「新ふじ」。
実は昨夜もおジャマした。
ここへは昼食より晩酌に訪れることが多い。
夜の営業は17時半からで入店したのは18時過ぎ。
スポーツ誌を手にして二人掛けのテーブルに着く。
生も瓶もビールはスーパードライ、ありがたきかな。

大瓶(650円)をお願いすると柿ピーが一緒に付いてくる。
グラスはごくフツーのコップだ。
地方の駅前の食堂あたりでは
ビールメーカーの名前が入っていたりするヤツ。
ビールにしろサイダーにせよ、このコップで飲むのが一番旨い。
子どもの頃からずっとコレで飲み続けているからネ。

お運びのオネエさん(見ようによってはオバさん)の、
付かず離れずの接客は好感度大。
気が利いていて親切で、余計なことをしないのがよろしい。
町場のそば屋の理想形がここにある。
アルバイトの娘は高校生だろうか?
彼女のたどたどしい働きぶりも初々しくて好もしい。
オネエちゃん、若い頃はそれでいいんだヨ、
高校生のうちに早成しちゃうと、将来ロクな大人にならないからネ。

飲む客が少ないせいか、つまみ類の幅はあまり広くない。
ところが少数精鋭でかなりのレベルに達しているものもある。
カツ皿・牛皿・親子皿、どんぶりのアタマ・トリオはそこそこ。
J.C.の気に入りはもつ煮とニラ玉、あとはもりそばと中華そばだ。

昨夜は初めて注文したニラ肉で大瓶を飲んだ。
豚肉とニラに玉ねぎ入り
ニラ玉はニラと玉子だけだが、こちらは玉ねぎが名脇役。
でもどちらか選ぶとなれば、ニラ玉のほうだろう。

ニラレバが好物だから、よく町の中華屋で頼む。
すると豚レバーとニラのほかにモヤシがドッサリなんて
どうしようもない代物に出会うことが少なくない。
安価なモヤシでボリュームを出す、許しがたき所業と言えよう。

締めは中華そばにした。
昔から日本そば屋の中華そばは当たり!が多い。
「新ふじ」もご多分にもれず、モロに命中である。
これが正統派の中華そば
よき眺めでござるなァ。
見ていて飽きないヨ。
飽きないがずっと見ていると
そばがノビるので速やかに取り掛かる。
麺にはしっかりコシが残り、
和風にすぎるスープはちょいと甘いが、あと味もスッキリ。
いや、実にけっこう。

何だって今の若者は
豚骨臭いのや魚粉臭いラーメンに夢中なんだろう。
ああいうのはおよそ真っ当な人間の食いものではない。
それにつけ麺っていったい何だ?
バカみたいに量が多いだけで旨くもなんともないぜ。
若いうちからつけ麺なんか食ってると
行く先の人生にツケが回ってくるのになァ。
知らぬは本人ばかりなりけり、ってネ。

「新ふじ」
 東京都台東区池之端2-8-4
 03-3821-3913

2013年7月10日水曜日

第617話 近頃できた行きつけの店 (その1)

「今日のブログがアップされてませんよォ~!」―
友人のメールに促され、出先から戻ったところです。
早起きの方々にはご迷惑をおかけしました。
ごめんなさい。

では、あらためて。
リピーターじゃないから行きつけの店はそう多くはない。
それが近頃、週一は出向く日本そば屋ができた。
ここのところ日本そばネタ続きで恐縮ながら紹介したい。

2ヶ月半ほど前(第564話)に一度取り上げた、
上野は池之端の「新ふじ」である。
明治42年(1909年)創業、100年以上の歴史を誇る老舗だ。
前回は板わさの粉わさびを嘆いたりもしたが
その後、次第に親密度が増した。
初対面ではさほど惹かれなかったのに
だんだんと思いを寄せるようになる、
恋の相手に似ていないこともない。

それではなぜ通うようになったのか。
昼どきのどんぶりとそばのセット(終日食べられる)もさることながら
晩酌(夜は17時半開店)タイムがとても快適なのだ。
昼はかなり立て込むから
四人掛けのテーブルにつくと相席を余儀なくされる。
それではおちおち飲んでられないし、
備え付けのスポーツ新聞に目を通すことすらはばかられる。
界隈じゃそれほどの人気店なんですな。

J.C.にとって池之端というロケーションも寄与している。
上野動物園、並びに不忍池はわが心の楽園、
週に一度、いや二度は出没しますもん。
今は水鳥たちが北へ帰り、
たまさか見掛けるのはカモメとカルガモくらいのもの。
その代わりハチス(蓮のことデス)が開花期を迎えようとしている。
そんなことで上野の山下にやって来ると、
ついつい、足が勝手に「新ふじ」へと向かうようになった。

18時前後に入店し、初めに取る行動はスポーツ新聞の確保。
サッカー日本代表の試合があった翌日なんか、
スポーツ誌を読みに行くようなものだ。
駅のスタンドで買い求め、自宅でゆっくり読めば済むものを
そば屋やラーメン屋で読むほうが
より楽しく感じられるから不思議だ。

これが大衆酒場や大衆食堂だとそうはいかない。
第一、酒場で新聞はルール違反だろう。
隣りとのスペースが狭いから他人様に迷惑をかけてしまう。
食堂は比較的ゆったりとしていても
目の前に何品かつまみが並ぶと、
箸の上げ下げを新聞がジャマすることになる。
スポーツ新聞には一杯のラーメンやそばが一番シックリくるのだ。

=つづく=

2013年7月9日火曜日

第616話 巣鴨でそば屋をもう1軒 (その2)

巣鴨は地蔵通りの日本そば舗「菊谷」に入店したところ。
うなぎの寝床とまでは言わないが
幅よりも奥行きのある店内は活気にあふれていた。
外からは予測不可能な繁盛ぶりである。

突き当たりに3~4名掛けの短いカウンターがあり、
ザッと見渡したところ、空席はそこしかないようだ。
案の定、お運びのオバさんに案内されたのはカウンター。
椅子を一つおいて先客は若い女性が独り。
食しているのはもりそばのようであった。

1軒目で中瓶を飲んできたのでビールはガマン。
入店前から食べるのはもりと決めていたものの、
一応は品書きに目を通さねば・・・。

ふむ、ふむ、なかなかにこだわりを見せる店だ。
ゴチャゴチャと但し書きが多いのは垢抜けないがネ。
せっかくだから抜粋して紹介しよう。

=冷たいお蕎麦= 
 ・もり 600円 (大もり800円)
 ・吟せいろ(厳選した蕎麦の実を使用)  850円
    汁にはより厳選された鰹節を使用
 ・利き蕎麦(二種類の異なるもりそば) 1150円
    汁にはより厳選された鰹節を使用
 ・揚げ玉ぶっかけ 800円  (吟) 1050円
    揚げ玉 大根おろし 鰹節 京都祇園の黒七味を添えて

=温かいお蕎麦=
 ・かけ(長崎産焼きアゴ使用) 700円  (吟) 950円
 ・平飼い有精卵の玉子とじ  950円  (吟) 1100円

=小盛りのお蕎麦=
 ・お子様そば(薬味なし) 500円  (吟) 650円
 ・お子様かけそば  600円  (吟) 750円
   大人の方も注文可

 *追加の本わさび 50円 追加のもり汁 100円

とまあ、こんな調子であった。
”より厳選された”の文言がダサい。
”平飼い”されているのは親のほうで有精卵ではあるまい。
大人も注文できるなら”お子様そば”は余計、小盛りそばでじゅうぶん。
細かいところを意地悪く指摘したが
品書きにはセンスの欠如が明らかだ。

利きそばを注文する。
もりと吟せいろ1枚ずつでボリュームは計1.5人前とのこと。
薬味は本わさびと辛味大根、これはうれしい。
つゆは甘みを排して気取ったそば屋にありがちなタイプだ。

もり、吟せいろともにエッジの立った細打ち。
ノド越しより噛み締め感で食べさせる。
運んでくれたお兄サン曰く、
「吟はつなぎ5%です、もりは~~です」―
~~は聴き取れなかったが、あえて聴き返さなかった。

ここ十数年、こんなスタイルのチョイ高そば屋がずいぶん増えた。
江戸前鮨が来た道を江戸そばもまた歩むのだろうか?
庶民に高嶺の花となったら、もはや日本そばじゃあるまいて。
未来を憂う今日この頃であります。

「手打そば 菊谷」
 豊島区巣鴨4-14-15
 03-3918-3462

2013年7月8日月曜日

第615話 巣鴨のそば屋をもう1軒 (その1)

日曜日の昼めしどきに@巣鴨。
「武蔵野本店」のせいろは
バーコードみたいで地肌のすだれが透けていた。
肩透かしを食い、駅前で身の振り方を思案中だ。
真向いの「コージーコーナー」で何か補食してみようか。
パスタや洋食プレート、選択肢は限られるものの、
食事メニューにこと欠くことはない。

実はこの店、今を去ること44年前に
たったひと夏ながら、ずいぶんと通いつめた。
あれは高校三年生の夏休み。
当時のGFと近くの巣鴨図書館で一緒に勉強したあと、
一息つくためちょくちょく立ち寄った。
彼女はとげぬき地蔵の裏手にあった精米店の娘。

白く咲いたが百合の花、
四角四面は豆腐屋の娘、
色は白いが水くさい。

フーテンの寅さんに倣うと・・・

白く咲いたが百合の花、
丸く小粒な米屋の娘、
色は白いがヌカくさい。

てなことになる。
風の噂にシアワセな家庭を営んでいると聞いた。
さしづめ糟糠の妻といったところか。

でもって別段ケーキ屋のスパゲッティなんぞ食いたかないが
懐かしさのつれづれに中仙道を横断して店先へ。
座ったのはいつも2階の窓際だったなァ。
44年ぶりに同じ席にくつろぎ、往時を偲ぶとしましょうか。

店内に踏み込もうとしたとき、
中から中年女性のグループがゾロゾロ出てきた。
すると脇をすり抜けて女子学生が二人、先に入っていくじゃないか。
ここでJ.C.、われに返り、
「コージーコーナー」が女の楽園だったことを思い出す。
そうだヨ、オヤジが独りで窓際じゃ、窓際族もいいとこだ。

気づいたときが身の引きどき。
体裁が悪くてもう入店できなくなった。
近いうちに誰かをつき合わせればそれで済むことだ。
うしろ髪を引かれることもなく、
すみやかにとげぬき地蔵方面へと歩み出した。

そうして見つけたのが地蔵通りの「菊谷」である。
「武蔵野」とは真逆の非町場風たたずまい。
オサレというか、スカシてる(死語かも?)というか、
まあ、そんなタイプで早いハナシが好みとは違うタイプ。
しばし迷った末、「エイヤ!」とばかり、暖簾をくぐったのでした。

=つづく=

2013年7月5日金曜日

第614話 すだれが透けたせいろそば (その2)

巣鴨駅前の「武蔵野本店」に到着。
引き戸を引いて入ってみると、思った通りに見覚えがない。
そりゃそうだヨ、40年以上前に1回こっきりだもん。
おそらくビールは飲んだんだろうが
何を食ったかは忘却のはるか彼方だ。

 山のあなたの空遠く 
 幸い住むと人のいふ
 ああ われひとと とめゆきて
 涙さしぐみかへりきぬ

おっと、もうやめとこ。
何なんだ、ソレは? ってか?
いえ、ドイツの詩人、カール・ブッセの「山のあなた」でやんす。
上田敏の名訳により、広く世に知られていますが
むか~し三遊亭圓歌が歌奴時代に
創作落語の「授業中」で取り上げ、
浪花節の名調子でうなったもんだから
日本全国津々浦々に浸透したってわけです。

さて、店内を見渡すとテーブルが数卓のほか、小上がりにも2卓。
古き良き時間が流れているが、やはり記憶はよみがえらなかった。
日曜なので(言い訳がましいネ、どうも)昼からビールだ。
キリンラガーの中瓶が550円也で
最近、ちょくちょく顔を出す池之端の「新ふじ」と同値。
目当てのもりそばの前に野菜天ぷらをお願いした。
心のうちでビールは1本にとどめておこう、
日本酒に移行してはいけないゾと、自分で自分を説得工作。

ビールがなくなる頃に運ばれた野菜天は
はす・なす・しし唐・いんげん・にんじん・かぼちゃ・しいたけの陣容。
いずれも小ぶりにして魚介も不在なのに
800円は少々高い気がしないでもない。
ビールの残りはコップ1杯ほど、ここはグッと我慢だ。
天ぷらならば、そばと一緒に食べてもいいし・・・。

注文後、10分たらずで整ったせいろ(600円)を一見して
J.C.の端正な(ふざけろ!ってか)顔に浮かんだのは失望の色だった。
そばの下敷きのすだれが透けて見えちゃってるヨ。
昭和27年創業にふさわしいレトロなたたずまいながら
ボリュームは都心の気取った高級店並みだ。
室町、赤坂の両「砂場」や浅草「並木藪」の如し。

これはガッカリ、落胆しつつも一箸口元に運ぶ。
町場風の甘さを備えるつゆは好みなれど、
肝心のそば自体はまあそれなり。
そういやあ、野菜天もそれなりだった。
残しておいた、しし唐といんげんをそばの友とした。

店を出て駅に戻る。
せっかく巣鴨に来たのだ、地蔵通りを無視するわけにもいくまい。
第一、いくら少食のこの身とはいえ、いささかもの足りないのも事実。
駅の真向かいにある「コージーコーナー」を懐かしく眺めながら
思案投げ首のオトコが独り。

「武蔵野本店」
 東京都豊島区巣鴨1-12-3
 03-3945-5501

2013年7月4日木曜日

第613話 すだれが透けたせいろそば (その1)

巣鴨駅前に以前から気になっていた日本そば屋あり。
JR山手線の内側、白山通り(中山道)に面している。
大塚ほどではなくとも巣鴨はときどき飲みに来る街。
ただし、線路の外側の高岩寺(とげぬき地蔵)や
庚申塚辺りに出没するのが常で
そのそば屋の界隈に来ることはまずない。

目抜き通りから1本入ったそば屋の裏手はフーゾク街だ。
J.C.にとってフーゾクは猫に小判、豚に真珠、蛇にピアス、
コオロギにバイオリン、ペンギンに燕尾服、
パンダにパンティーストッキング、
いい加減でやめるが、とにかくそんなもの。
アッシには関わりのねェ世界にござんす。

くだんの「武蔵野本店」は寂れかかってはいるものの、
一応、アーケードのある商店街に風情をたたえて建っている。
見るからに歴史を感じさせるが高級感とは無縁、
ごくフツーの町場のそば屋である。
これなら入店をちゅうちょする客など皆無であろう。

実は今回が初めてではないような気がするのだ。
ここでハナシは42年前に飛ぶ。
1971年の3月半ば、
数日後には横浜の大桟橋から出港する身であった。

父親の発案で家族四人、どこか近場に出掛けることになった。
曰く、ソ連の客船が津軽海峡に沈むかもしれん。
ソ連のジェット機はシベリア大陸に墜ちるかもしれん。
欧州にたどり着いて一安心もつかの間、
復路のルートが同じだから横浜に帰港するまでは
何が起こるか知れたものではない。

よって今生の別れに家族が出向いたのは駒込の六義園。
五代将軍・綱吉に赤穂浪士の切腹を進言したといわれる、
お側用人・柳沢吉保が自らの下屋敷に造営させた名園だ。
奇しくも四十七士討ち入りの年に完成とのこと。
大して広くもない中を2時間ほど遊んだ記憶がある。

そののち徒歩で向かったのが一軒の日本そば屋。
駒込か巣鴨の駅前、それだけは確かなのに
どちらか特定できないところが悩ましい。
取り壊されていたら仕方ないけれど、
もし残存してるとしたら「武蔵野」以外には考えられない。
確率80%でここだと思う。

てなこって敷居をまたいだのは梅雨入り間もない日曜の昼下がり。
さいわいにして好天に恵まれた。
巣鴨駅の改札口は地蔵通りに向かう人々で芋を洗うが如し。
東京に繁華街は数あれど、この日、この時間に
訪問者の平均年齢がもっとも高いのは間違いなくここであろうヨ。
洗われる芋たち(失礼ッ!)を尻目に改札を左に出たJ.C.であった。

=つづく=

2013年7月3日水曜日

第612話 悠が作って さゆりが歌う (その2) この歌詞が魅了する Vol.2

オンナがコース料理でオトコがビュッフェ料理?
いったい何のこっちゃい? ってか?
いや、ごもっとも、ごもっとも。
まあ、お聞きくだされ。

恋愛においてオンナは
コース料理のように一皿づつキチンと片付けていかないと、
次に進めないんですネ。
それに引き換え、オトコのほうは
ビュッフェみたいにボードに並ぶ料理の数々を
あっちゃこっちゃ箸を伸ばしてつまみたいんですな。
ヒドいのになると1枚の皿に冷たいのやら温かいのやら
果てはデザートまで一緒くたに盛り込んで食べる始末。
みっともないったらありゃしない。

おっといけネ、また脱線ししまった。
ハナシを「暖流」に戻しましょ。
ヒロインの心情を映す緑字の部分はとても味がある。

 しんみり → ぼんやり → はらはら

さすが、阿久悠サンですなァ。
そして何たって
 
 ふり向いては駄目よ駄目よ 戻っちゃ駄目

コレにはシビれまくった。
あなたなしで生きることを決めかねているんですねェ。
でも、だいじょうぶ、この女性はもうふり向きませんネ。
J.C.が保証します。

二曲目にまいりましょう。
以前、第227話「さゆりは大きくなりました」でも紹介したが
「能登半島」にいま一度ふれておきたい。

 ♪  夜明け間近 北の海は 波も荒く
   心細い 旅の女 泣かせるよう
   ほつれ髪を 指に巻いて 溜息つき
   通り過ぎる 景色ばかり 見つめていた
   十九なかばの 恋知らず
   十九なかばで 恋を知り   
        あなた あなたたずねて 行く先は
   夏から秋への 能登半島     ♪

”十九なかば”を重ねるところがたまりません。
センス抜群じゃございませんか。
しっかし、時代の変遷には目を見張ってしまいます。
今どき、”十九なかばの恋しらず”なんて生存しますかネ。

「さゆりは大きくなりました」では
石川さゆりのマイ・ベストスリーとして

 ①能登半島 ②風の盆 恋歌 ③暖流

と、したためてはみたけれど、聴きこんでいくうちに
「暖流」がグングン伸びてきて、今じゃ「能登半島」と同率首位。
どちらも歌詞だけでなく、三木たかしの曲がすばらしい。
未聴の方はぜひ、聴いてみてください。

Try it, You will like it.

2013年7月2日火曜日

第611話 悠が作って さゆりが歌う (その1) この歌詞が魅了する Vol.2

ちょうどひと月前に始めた新シリーズ、”この歌詞が魅了する”。
歌謡曲ファンが多いとみえて反響小さからず、
たくさんのメールをいただいた。
根っからの単細胞が気をよくしてその第二弾とまいりましょう。

今回は日本を代表する作詞家・阿久悠と
これまた日本を代表する演歌歌手・石川さゆりのコンビに
スポットライトを当てたい。
実はこれもまたまた日本を代表する作曲家・三木たかしを加えて
ゴールデントリオになるんですがネ。
一曲目は「暖流」。

 ♪ 私これで帰りますと 席を立った
   急にたずねすみませんと 頭下げた
   いいのここで一人にして 下されば
   後はぶらり海を見つめ 過します
   これで心が 晴れました
   あなたなしで生きることに 決めました
   沖を走る潮の流れ 見つめながら
   私しんみり 南国土佐の 昼さがり 

   バスの窓にキラリキラリ 波が光り
   岬までの道がつづく うねりながら
   季節はずれ風がさわぐ 海べりを
   私ひとり乗せただけの バスが行く
   これで心が 晴れました
   あなたなしで生きることに 決めました
   かもめつれて西へ走る フェリーボート
   私ぼんやり 南国土佐の 昼さがり

   これで心が 晴れました
   あなたなしで生きることに 決めました
   ふり向いては駄目よ駄目よ 戻っちゃ駄目
   私はらはら 南国土佐の 昼さがり    ♪

よせばいいのに全部披露しちゃった。
詞があまりにもすばらしいので歯止めが効かないや。
ご覧ください、赤字だらけであります。
”すみませんと頭下げた”
邦楽の歌詞にあって”頭を下げる”というフレーズは前代未聞。
少なくともJ.C.はほかに知らない。
新鮮な驚きに胸を衝かれ、聴いてるほうが頭を下げた。

”心が晴れる気持ち”、よお~く判るなァ。
そうだヨ、せっかく土佐の高知くんだりまで逢いに来た恋人を
そのまま返す薄情者なんか、これからナシで生きていきなさいヨ。
ヒロインがいじらしくて背中をポンとたたきたくなるくらいだ。

別れを決断したオンナは真っ直ぐ前を向いて歩き出し、
もうけしてあとを振り向かないもの。
新しいオトコが出来たら前のオトコの顔つきすら忘れてしまうもの。
ここが男女最大の違いで
料理に例えればオンナはコース料理を
オトコはビュッフェ料理を愛でるのだ。
もっとも近頃はこの格差が縮まるどころか
逆転現象まで珍しくないんだがネ。

=つづく=

2013年7月1日月曜日

第610話 マンハッタンからのメール (その2)

この週末のスポーツ界はいいことがなかった。
松山英樹はプロ入り後、初の予選落ち。
ウィンブルドンの錦織は3回戦で敗退。
もちろん伊達のキミちゃんは相手が相手だけに致し方ナシ。
なでしこジャパンはデカさのドイツに惨敗ときたもんだ。

それぞれを短評する。
行きつけの日本そば屋で読んだスポーツ紙には
”松山も人の子”の大見出し。
まっ、そういうことでっしゃろ。
疲れもたまりにたまっているハズだ。

錦織はまだ若いのに満身創痍もいいところ。
腰だのくるぶしだの、あちこち相当悪いらしい。
その結果、さして鋭くもないサービスはWフォウルトの山。
加えてフォアハンドのミス連発ではフルセットの敗戦もやむなし。
一方、40代のキミちゃんにセリーナの肉塊はむごすぎた。
あれじゃキングコングとアン・ダロウ(映画のヒロイン)だわサ。

なでしこは中盤を空けすぎ。
デカドイツにスッ転ばされ続けたチビなでが
Pエリア内では逆の現象を披露した挙句のPK2発。
敵は倒れる場所をちゃあんとわきまえて倒れている。

おっとっと、先週のつづき、マンハッタンからのメールであった。
K美子が働く新店はフレンチの「Lafayette」。
Noho(ヒューストン・ストリートの北側)のLafeyette St.にある。
取り急ぎ貼付されていたNY TIMESのレストラン・レビューを読んだ。

一応、1スターが付いているからケチョンけちょんではないが
けっこう辛口の批評ではあった。
重箱の隅をつつくみたいな細かいのもあって
パンのバスケットが同席した女性の前にドンと置かれ、
あたかもそのすべてを彼女が平らげるごとくであっただとか、
魚介類のメニューで鯛が鱒に代わっているのに
注文するまで説明がなかっただとか、
かなりの文字数のコラムにせよ、
わざわざ指摘するほどのこともないように思えた。

K美子スーシェフが担当するブイヤベースについてはこうあった。

ニューヨーク屈指のブイヤベースもその器(うつわ)のせいで減点。
見映えはいいが非実用的なのだ。
ロブスター、手長海老、ムール貝、アンコウが気前よく使用され、
魚介の出汁はよく出ていて、サフランとパスティスの香りも高い。
ただし、底の浅い銅製のパンにまとめて盛り込まれているため、
素材もスープも数分のうちに冷めてしまう。
願わくば、磁器のボウルで供してほしいものだ。

なるほど、ブイヤベースはあのスープが命だからねェ。
ただ、フランス人や日本人と違い、
アメリカ人はスープよりも具材の魚介に重きを置くことも確か。
シェフのカメリーニとしてはブイヤベースを
スープメニューの中の一品と取られたくなかったのだろう。

ともあれ、著名な料理人の店でプロモートされたのだから
彼女のキャリアに資することは間違いない。
明日にでも過去の努力をたたえ、
今後の精進を励ますメールを送るつもりでいる。
「よくやった、がんばれヨ、また浅草に連れてくからな」ってネ。