2017年2月13日月曜日

第1557話 素晴らしき土曜日 (その11)

とんこつラーメンの「一蘭」を左に見ながら直進。
中央通りを横断してアメ屋横丁へ入った。
急に人口密度が上がり、速やかな歩行がままならない。
昼から飲ませる居酒屋・酒場はどこもいっぱいだ。

結果としてランチを抜いたために腹はペコペコ。
それでも店々にあふれ返る呑ん兵衛たちを
目の当たりにすると飯より酒にはしりたい。
それがJ.C.の生きる道、マイ・デストニーでありまっしょう。

腕時計をしないタチだから携帯電話の画面を見る。
時刻はちょうど午後3時だ。
上野界隈におけるわが憩いの場、
「味の笛」が開店するのが3時。
春日通りを渡り、JR御徒町駅のガード下へ。
1階の立ち飲みコーナーは4時開店ながら
2階の椅子席は1時間早く開けてくれる。

工場直送のスーパードライがノドをすべり落ちてゆく。
フ~ッ、実に美味いなァ。
ただちにもう1杯。
いくらなんでも空腹時につまみナシは身体によくない。
よってカウンターの小鉢&小皿を睥睨(へいげい)に及ぶ。
およそ十数品のうち、珍しい糸瓜の粕漬に惹かれた。

イトウリとはなんぞや?
これはヘチマのことである。
繊維質が豊富なので糸瓜と呼ばれるようになったが
オリジナルはポルトガル語のフェチマだ。

その後、と言っても江戸時代のことながら
イトウリがやがてトウリに転じ、
”ト”の字がいろは歌の”ヘ”と”チ”の間にあることから
ヘチ間→ヘチマとなった由。
いや、昔の人はいろいろ考えたんだねェ。

面白いのは沖縄ではヘチマをナーベラーと言うこと。
ヘチマの繊維で鍋を洗ったために
鍋洗い→ナーベラーとなった。
言われてみりゃ昭和30年代の東京の銭湯では
スポンジ状のヘチマで身体を洗う人が珍しくなかった。
さしずめヒートラーでありますな。
あのヒットラーもビックリだろうヨ。

せっかく粕漬を購入したのだ、日本酒に切り替えよう。
当店の清酒の品揃えは新潟産が主流。
というか、ほかの産地はないんじゃないかな?
J.C.が決まって頼むのは佐渡の北雪。
今宵はその大吟醸の冷たいのを選んだ。

=つづく=