2020年7月31日金曜日

第2449話 湘南・国府津の海を見に (その3)

JR東海道本線・国府津駅前の「餃子ショップ」。
四人掛けを独りで占有している。
中瓶とともにサービスの枝豆もやって来た。
ん? 冷えが甘いな。
いえ、枝豆じゃなくてビールの―。

タイトルロールの餃子(360円)を
頼まぬわけにゃいかんので
まずはお願いしておいて
壁にズラリ貼られた品書きを吟味する。

これからほかの町に移動する予定だから
麺・飯類に手を出すつもりは毛頭ない。
それにこの日は夕刻から神奈川県在住の友人と
帰り途の辻堂で酌交を約してもいた。
ストマックのスペースは
なるべく空けておかねばならない。

つまみメニューは、チャーシュー・ニラレバ・
野菜炒め・ハムエッグ・メンチカツ等々、
一般的なものが並んでいる。
その中でただ一つ、異彩を放つ料理があった。
豚バラ蒲焼き(530円)ってどんなんだ?

蒲焼きの元祖は言うまでもなくうなぎ。
それが、どぜう・なまずにも転じて
蒲焼きは川魚料理屋の十八番(おはこ)となった。
穴子や秋刀魚など、海水魚の例もあるにはあるが
肉系の蒲焼きは初めて見たヨ。
いや、気になるなァ。

あらためて見回すと、酒飲む客、飯食う客が半々。
地元に密着し、愛されている証しだろう。
もう一つの卓が空いたと思ったら
すぐに三人組の親子連れが入店して来た。
着席と同時に鶴ならぬ、パパの一声。
「餃子定食を三つお願いしまぁす!」

おい、おい、「餃子ショップ」だからって
みんなで餃子を頼まんでもいいんじゃないの。
個性に乏しい、つまんないファミリーになっちゃうぜ。
以後、彼等を”金太郎飴一家”と呼ぶことにする。

J.C.の餃子が着卓。
あれれ、コロコロ動いてるヨ。
ずんぐりむっくりが5カン、連結せずに離れ離れ。
おい、おい、昨今は
餃子までソーシャル・ディスタンシングかえ?
たまに見掛けるタイプなれど、珍しいっちゃ珍しい。

何も付けずにパクリとやって、ささやかな驚き。
意想外に旨い。
ニンニクの効いた餡は豚挽き・ニラ・キャベツの構成。
キャベツのシャキシャキ感が新鮮で
皮のモチモチ感とナイス・コラボを具現する。
こと、ここに及び、「餃子ショップ」の稚拙な店名を
赦す、赦す、J.C.は赦す。

=つづく=