2011年11月24日木曜日

第191話 川のこっちと向こう側

 ♪   浅草(エンコ)生れの 浅草(あさくさ)育ち
     極道風情と いわれていても
     ドスが怖くて 渡世はできぬ
     賭場が命の 男伊達
     背中(せな)で呼んでる 唐獅子牡丹


     おぼろ月でも 隅田の水に
     昔ながらの  濁らぬ光り
     やがて夜明けの 来るそれまでは
     意地で支える 夢ひとつ
     背中で呼んでる 唐獅子牡丹  ♪


          (作詞:矢野亮・水城一狼)

ご存知、高倉健の「唐獅子牡丹」。
この曲が主題歌の「昭和残侠伝シリーズ」はすべて観た。
作詞が2人というのはきわめて珍しいが
映画では佐伯清なる人物もクレジットされていて計3人。
まったくもってワケが判らん。

浅草をエンコと呼ぶのは”その道”の業界用語。
上野を逆さにノガミと呼ぶが如く、
浅草公園の公園を逆さにしてエンコウ、
それが訛ってエンコとなったわけだ。
さすれば同じく恩賜公園のある上野がエンコになり、
浅草がクサアサになっていてもおかしくなかった。

その夜は浅草1丁目1番地1号に
J.C.オカザワの姿を見ることができた。
見たくない人は目をつむってチョ。
これは浅草のランドマーク、「神谷バー」のアドレス。

アサヒビールから直送された生ビールを
専用の500Lタンクにて
徹底した品質管理を行っております


店のHPにこうある。
食券制の1階席は落ち着かず、陣取るのは常に2階。
何度通ったことか、もはやカウント不能である。
正式名称は1階が「神谷バー」で
2階が「レストランカミヤ」だが
なあに、客の認識は「神谷バー」の1階と2階なのだ。
ジャーマンポテトで生中を2杯楽しみ、早々に切上げた。

おぼろの月を見上げ、隅田の水を渡る。
橋の名は吾妻橋。
都の東にあるため、ずっと昔は東橋と呼ばれたそうな。
目指すは川の向こう側、通称〇ンコビル1階の、
こちらもビヤレストラン、「フラム・ドール」。
屋上に設置された黄金の炎のオブジェが
そのまま店名になっており、アサヒビールの直営店だ。

ここでもやはり生中を2杯。
つまみは”アッとおどろくオリジナルグラタン”なる珍妙な料理。
分厚い食パンを繰り抜いたところへ、
アルモリケーヌ風のソースで煮た小海老がおさまっている。
驚きはしないが、まずまずの一品ではあった。

川のこっちと向こう側。
こっちにはほかに「正直ビヤホール」があり、
向こうには「23Banchi Cafe」がある。
タハッ、ビール好きにはたまらん街だぜ、浅草は!

「神谷バー」
東京都台東区浅草1-1-1
03-3841-5400

「フラムドール」
東京都墨田区吾妻橋1-23-1
03-5608-5381