鯉のおあとは目白である。
目白といっても目白不動の目白ではない。
小鳥のメジロだ。
長野の生家の両隣りは靴屋と床屋だった。
この床屋のオヤジがよく山に入っては小鳥を捕らえてくる。
ある日、母親が目白を1羽もらった。
雀よりも小柄な小鳥は名が体を表し、
目の周りに白い縁取りがある。
目白は大の甘党で花の蜜を吸う姿が
町なかでもしばしば観察される。
世に広く”梅に鶯”と言われるけれど、
梅の花にやって来るのは鶯じゃなくて目白。
鶯は花蜜をほとんど吸わない。
ホーホケキョの鶯ほど美声ではないが
目白もまたチーチーとよく鳴く鳥である。
さて、母がもらった目白。
捕獲されてすぐに鳴くわけではなく、
何日か餌をやって飼い主に馴らさないと鳴いてはくれない。
それがやっと鳴き始めた頃のこと。
籠から取り出しては幼稚園の友だちに見せびらかす、
バカ息子が居たと思っておくんなさい。
何かのはずみで小鳥をつかんだ手を開くと、
ヤッコさん、この機を逃してなるものかとばかり、
木々の梢に消えてゆきましたとサ。
子ども心に「こりゃ、ヤバい!」と思ったもんネ。
イヤ~な予感がしたもの。
案の定、オフクロはたけり狂った。
空っぽの鳥籠をむんずとつかみ、
息子目がけて投げつけたもんネ。
これが頭に命中して、イテテテテと相成りました。
なおも腹の虫が収まらないと見え、
またもや家の柱に縛りつけられましたとサ。
そんな思い出のある目白だが来年の3月末までは
都の環境保全課に手数料を払って飼養許可を得れば、
1世帯あたり1羽に限り、飼うことができる。
飼いたくて飼いたくて仕方がないけれど、
猫の居る家で飼われたひにゃ鳥は枕を高くして眠れまい。
あまりに可哀相だからスッパリあきらめることにした。
最後は信州名物・野沢菜である。
北信州の野沢温泉近辺が本場のお菜だ。
10月も末になって秋が一段と深まると、
長野市内の家庭でも野沢菜の漬け込みが始まる。
近所の主婦が5~6人集まり、
協力し合って各家庭ごとに順番に漬けてゆく。
”自製自消”のわりにはけっこう大きな樽だった。
野沢菜の漬け込みはまさに晩秋の風物詩。
されど子どもが見ていて別段面白いものではない。
だのになぜか記憶に残り、今でもあの風景が目に浮かぶ。
秩父のしゃくし菜、近江の日野菜、京の壬生菜、安芸の広島菜、
いずれも旨いがやはり青菜漬けは野沢菜にとどめを刺す。
茶によし、酒によし、飯によし、おやきの具材にもまことによし。
ひいきの引き倒しのそしりを受けようとも
所詮、お国自慢とはそういうものであろうよ。
目白といっても目白不動の目白ではない。
小鳥のメジロだ。
長野の生家の両隣りは靴屋と床屋だった。
この床屋のオヤジがよく山に入っては小鳥を捕らえてくる。
ある日、母親が目白を1羽もらった。
雀よりも小柄な小鳥は名が体を表し、
目の周りに白い縁取りがある。
目白は大の甘党で花の蜜を吸う姿が
町なかでもしばしば観察される。
世に広く”梅に鶯”と言われるけれど、
梅の花にやって来るのは鶯じゃなくて目白。
鶯は花蜜をほとんど吸わない。
ホーホケキョの鶯ほど美声ではないが
目白もまたチーチーとよく鳴く鳥である。
さて、母がもらった目白。
捕獲されてすぐに鳴くわけではなく、
何日か餌をやって飼い主に馴らさないと鳴いてはくれない。
それがやっと鳴き始めた頃のこと。
籠から取り出しては幼稚園の友だちに見せびらかす、
バカ息子が居たと思っておくんなさい。
何かのはずみで小鳥をつかんだ手を開くと、
ヤッコさん、この機を逃してなるものかとばかり、
木々の梢に消えてゆきましたとサ。
子ども心に「こりゃ、ヤバい!」と思ったもんネ。
イヤ~な予感がしたもの。
案の定、オフクロはたけり狂った。
空っぽの鳥籠をむんずとつかみ、
息子目がけて投げつけたもんネ。
これが頭に命中して、イテテテテと相成りました。
なおも腹の虫が収まらないと見え、
またもや家の柱に縛りつけられましたとサ。
そんな思い出のある目白だが来年の3月末までは
都の環境保全課に手数料を払って飼養許可を得れば、
1世帯あたり1羽に限り、飼うことができる。
飼いたくて飼いたくて仕方がないけれど、
猫の居る家で飼われたひにゃ鳥は枕を高くして眠れまい。
あまりに可哀相だからスッパリあきらめることにした。
最後は信州名物・野沢菜である。
北信州の野沢温泉近辺が本場のお菜だ。
10月も末になって秋が一段と深まると、
長野市内の家庭でも野沢菜の漬け込みが始まる。
近所の主婦が5~6人集まり、
協力し合って各家庭ごとに順番に漬けてゆく。
”自製自消”のわりにはけっこう大きな樽だった。
野沢菜の漬け込みはまさに晩秋の風物詩。
されど子どもが見ていて別段面白いものではない。
だのになぜか記憶に残り、今でもあの風景が目に浮かぶ。
秩父のしゃくし菜、近江の日野菜、京の壬生菜、安芸の広島菜、
いずれも旨いがやはり青菜漬けは野沢菜にとどめを刺す。
茶によし、酒によし、飯によし、おやきの具材にもまことによし。
ひいきの引き倒しのそしりを受けようとも
所詮、お国自慢とはそういうものであろうよ。