2012年7月18日水曜日

第362話 赤羽発・十条経由・駒込行き (その3)

東十条から歩き始めて王子を抜け、
チンチン電車の荒川線沿いに
栄町・梶原の駅を過ぎた。
都民といえどもこの町々を歩いた人は多くないハズ。
いや、町名を知る人ですら少なかろう。

梶原から軌道を修正して上中里へ。
ここまで来れば、駒込は目と鼻の先である。
闇に沈む旧古河庭園を右手に見ながら
霜降橋の交差点に到達した。

訪れたのは「炒め処 寅蔵」なる小さな中華料理店。
およそ1年ぶりのことになる。
幸いカウンターに席を取ることができた。
中国人の店主が料理、
日本人の奥さんが接客を担当する二人三脚だ。

そこそこの距離を踏破したから
再びノドが渇いてビールが旨いのなんのっ。
M鷹サンの要望に従い、まず焼き餃子を注文。
ついでにすぐ出てくる腐乳も頼んだ。
腐乳は明の時代に沖縄へ伝わり、
豆腐餻(よう)の原形となった発酵食品。

紹興酒と迷った末、
チャイナウォッカの異名を取る白酒の二鍋頭を選ぶ。
ストレートで飲って、あやうくむせそうになった。
度数を確かめたら実に56度だもんネ。
こ~りゃたまらんと、あわてて水と氷をお願い。
酒類のリストには
"北京市民の定番 高粱(コーリャン)から作る蒸留酒”
と明記されている。
おやまあ、そりゃそうだろヨ、コーリャンたまらん。

ハシゴして来たとはいえ、
餃子と腐乳だけではお店に悪い気がする。
何かもう一品ということで、選んだのは木須肉。
豚肉・玉子・青菜・キクラゲの炒め
本場・山東ではムースーロー、
アメリカではムーシュー・ポークと呼ばれる。
本場には行ったことがないが
ニューヨークではランチタイムにさんざっぱら食べた。
当地では北京ダックのように
薄餅(バオビン)に包んで食するのだが
サンドイッチの好きなニューヨーカーに受けもして
みんなでよく分け合ったものである。
おそらく山東でもそうして食べるのであろう。

そういえばこの夜、なぜか名物の鮮魚の清蒸がなかった。
広東料理の代表格、清蒸は大好物。
極め付きのハタは出てこないが
鯛であったり、カレイであったり、とにかくオススメである。

かくして城北ツアーは終焉を迎え、
星のない夜を二つの影はトボトボと・・・。

「炒め処 寅蔵」
 東京都北区西ヶ原1-1-1
 03-3918-2385