2012年7月19日木曜日

第363話 偽りの生ジョッキ

ある夕暮れ、かつての色街・白山と
門前町・巣鴨の中間に位置する千石に赴いた。
所用を済ませてハタと思い悩む。
もちろん直後の身の振り方について。
いや、身の振り方など決まりきっている。
日課の晩酌のほかに何があろう。
問題はどこでその行為に及ぶかだ。

千石にはこれといって惹かれる店がない。
近場のベストタウンは大塚なれど、
しょっちゅう飲みに出掛けてるしなァ。
ここはひとつお婆ちゃんの原宿にでも行ってみようか。
てなこって巣鴨を目指す
北北西に進路をとったのだ。

老舗の居酒屋「千成」が浮かんだものの、
イマイチその気になれなかった。
結局、存在を認知していても
未訪だった「ながしま」に入った。
本来、ここはうなぎ屋だが専門店ではない。
言わば、うなぎ居酒屋といった性格を持つ。

例によって最初はビール。
スーパードライの生が400mlのジョッキで400円とある。
はっきり400mlと明記されているのが好もしい。
そんならソレにするかと注文したら
ほどなくやって来たソレはヤケにちっちゃい。
こりゃどう見ても400ccは入っちゃいないだろう。
まっ、いいか。

うなぎの蒲焼きはハシゴ派には向かないし、
先立つものに多大な悪影響を及ぼす。
よってうなぎの肝焼きを2本所望した。
1本210円で1本から注文可能というのがエラい。
負け惜しみでなくJ.C.は蒲焼きより肝焼きが好きだからネ。

生ビールと肝焼きはバッチリだった。
トータル820円でシアワセを呼び込めるんだから
婆ちゃんだけでなく何人(なんぴと)にも巣鴨の町はよい町だ。
気をよくして肝わさを追加する。
うなぎは身肉も肝も生では食べられない。
当然、肝わさの肝はゆがいてある。
3粒350円は少量ながら安くて旨いのもまた事実であった。

さて、生ビールのお替わりをするときに
ふと思ったのはジョッキの容量のことであった。
疑問を抱いたら確認すべきであろう。
殊にわれわれ諜報部員(?)はウラを取るべきであろう。
よってスーパードライの大瓶(650円)を頼み、
可愛いオネエさんの運んできたコップをあえて押し返し、
飲み干した生用ののジョッキに注いで計ってみた。

結果、ジョッキの容量は330mlと判明。
明記した容量の2割近くも少ないじゃないの。
店主の判断かメーカーの差し金かは存ぜぬが
まったくもって余計なことをしたものである。
黙っていればどうでもよいことも
いざ宣言しちまったら最後、
責任という名の呪縛がついて回ることになるんだヨ。

「ながしま」
 東京都豊島区巣鴨3-28-7
 03-3918-3255